「仕事」と一致するもの

謹賀新年

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 明けましておめでとうございます。

 今年の画像は、年末にMSCベリッシマのクリスマスクルーズに乗船した際のものからです。洋上のジャグジー、暖かい屋内は人が多かったですが、寒い屋外はガラガラ。温水で入っている限りは快適ですが、一度入るとなかなか出られなくなりました(自爆)
 モバイルプリンターを持ち込み、これを年賀状にせっせと印刷。寄港地の那覇から投函したのでした。

■クルーズ
 一昨年の、クルーズ船や鉄道を駆使した地球一周旅行の後、旅行にホトホト疲れ、昨年は静かにしているつもりでした。が、後半になると徐々に安いクルーズ情報を検索するようになり、日本発着が安くなっているのを見つけてしまったのが運の尽き。一番安い、窓の無い内側キャビンで、2人利用時の1人分クルーズ代がUS$219、諸税がUS$180というのを見てしまいました。この客室を1人利用する場合、割り増しされたクルーズ代はUS$258(自分は会員割引があってUS$245.10)でした。つまり、横浜発着の9泊10日で、神戸、那覇、石垣、基隆(台湾)に寄港するクリスマスクルーズが、諸税込み6万5千円程で乗れてしまう。これは乗らねば...となりました。もちろん、毎日の食事やショーも込みなわけで、陸の旅では考えられない安さです。クリスマス当日のショーは、特に素晴らしかったです。

 ちなみにこれは、アメリカ経由の予約の話ですが、同じクルーズを同時期に日本の旅行代理店経由で申し込むと、2~3倍以上の値段になります。20年前に自分が初めてクルーズ旅行をした時からそうですが、海外では高くないクルーズ旅行が沢山あるのに、日本ではクルーズ旅行=高額というイメージが定着しているため、同じクルーズでも高く売られる市場が出来上がっています。日本の値段しか知らなかった場合、今回の一人旅を同時期に日本の代理店経由で申し込むと諸税込み24万3千円でしたから、絶対に乗らなかったでしょう。

 なお、正月明けのクルーズも安かったので、来週は母を連れての珍道中予定です。6泊7日の二人分で、諸税込みで8万円でお釣りが来ました。安いでしょ?

■仕事とか
 昨年50歳になってしまいましたが、40代最後に韓国の仁川にあるカジノの求人に応募し、ディーリングの実技試験で大ミスをし、当然の結果として不採用となったのは落胆しました。それまで、韓国行く気満々で韓国語の勉強し始めたり準備していたのですが、自分でもガッカリなくらい自分のせい。意気消沈して(予定がガッツリ空いたので)箱根へ。箱根はいつも、オンボロ別荘で世捨て人モードがお決まりなのですが、仕事の予定が消えての滞在というのは初めて。そこで、箱根で面白い仕事無いかなと、職探ししてみました。

 すると...ありました。

 いわゆる、リゾートバイトと呼ばれるジャンルがあるのですが、観光地のホテル等の仕事で、寮費無料で住み込み、光熱費無料、場合によっては食事も無料で、時給もまあまあみたいな、そういう求人情報ばかり集めたサイトがいくつもあるのです。当然、人手不足が有名な箱根の求人もヒット。

 ディーラーという仕事はサービス業なので、どうせならサービス業の範疇でやったことない職種をと思っていたところ、箱根のハイクラスなホテルのフロントやレストランの求人がワンサカ。その中に、寮として紹介されている建物に見覚えがあるホテルがありました。別荘からよく歩いて行っている、箱根園の「ザ・プリンス箱根芦ノ湖」でした。ザ・プリまでバイト募集してるのかと驚きましたが、50歳にしてプリンスに直接雇用されて、ホテルのビュッフェレストランでホールデビューと相成りました。

 いつも、サービスを受ける側として行っていた場所に、サービスを提供する側として勤務するというのは、カジノ通いでミイラ取りがミイラになったディーラーとしては既視感が無くもありません。しかし、今まで全く興味が無かったジャンルのせいか、裏と表のギャップの激しさに驚かされる毎日。詳しくは書けませんが、もうお客として高いお金を払うことは無いかなと。

 ここから、箱根の他のホテルはどうなのかと、新しい興味が湧きました。価値のあるサービスを提供していて、働いている人々もハッピーな職場があったら、そこにこそお客として泊まってみたい。そういうところはあるのかなと。
 丁度この頃、箱根の多くのホテルが「タ〇ミー」という隙間バイトアプリを導入して求人していることを知りました。会員制高級リゾートホテル、老舗旅館、有名ホテルチェーン等々、箱根で高額なサービスを提供している現場に、日雇いバイト(どころか、数時間バイト)が日常化していたのです。そこで、自分もタイ〇ーを使って、箱根中のホテルの仕事を転々と経験してみることにしました。

 驚きました。10以上のホテルを経験しましたが、表ではすました顔でサービスしていても、裏では怒号と罵声(「死ね!」とか)が飛び交う超ブラックな会員制高級リゾートホテルのレストラン等、想像を超える酷いところがあったのです。裏を知ってしまうと、もうお客としても全く行きたくない世界でした。(たまに、従業員同士が仲の良い宿で働けると、ホッとしました。)
 特に残念だったのが、どこのホテルも多くの従業員は箱根に詳しくなくて、箱根が好きでも何でもないという人が少なくない点。休日は小田原や東京に遊びに行ってばかりで、自分のようのように箱根の自然を堪能している人には出会いませんでした。地方から働きに来ているだけで、箱根は何もないと思ってるような人が、沢山働いているのです。そういう人々は、箱根ローカルのイベントとも接点が無く、寮と職場を往復する毎日が、彼らの知る箱根の大半だったりします。物心ついた頃から箱根を知る自分としては、そんな人々が箱根に来る観光客と接していることに、心底ゾッとしました。(恐らく、他の観光地も同様なのでしょうね。)

 海外の学生をインターンシップと称して安く働かせている有名ホテルもいくつかあり、台湾やインドネシアの大学生との出会いは意外なものでした。自分たちが他の日本人と比べてどれだけ安く働かされているか知らずにいて、何かのタイミングで知ってしまってショックを受けている学生もいました。同一労働同一賃金とか、夢のまた夢。インターンシップ学生は、日本人バイトより更に低賃金で、ろくな研修も受けずに現場に投入され、慣れるまで苦労していました。研修無しに、教わらなければ絶対に無理なシフトに投入され、トラブルの原因になってしまった学生とか見ましたが、彼らは本当に悪くない。

 人手不足なのに低賃金で、人材教育にコストをかけない。短期間のバイトも集まらず、日雇いで毎日自転車操業。無理なことを繰り返すシワ寄せは、現場に重くのしかかる。あるホテルでは、何週間も休みが取れないとか、今日も帰れないとか、そういう嘆きの声を従業員から聞きましたが、持続可能性の無い、この国の縮図のようなものを見た思いでした。帰国する学生が、「もう二度とここには来ない」と言っていたのが、忘れられません。

 なお、そうして出会った海外大学生とのつながりは今もあり、大事にしたいと思っています。

■はてさて
 今年は、直近の年明けのクルーズの他に、またクイーン・エリザベスに乗りたいと思っています。横浜からアラスカ経由でバンクーバーへ渡る太平洋横断が、値下がりするのを待っています。が、母と叔母の旅をアテンドせねばならない様子。きっと、自分自身は楽しめない旅となるでしょう...シクシク。

 クルーズ旅行のレビューは、以下の口コミサイトにまとめてますので、興味のある方はご覧ください。
https://cruisemans.com/@ranpou

 安いクルーズについて等、質問を頂ければ可能な範囲でお答えしますよ。

堀潤が、とある呼びかけ動画を公開したのを見て、ちょっと書いてみることにする。まずは以下の動画必見。

「【呼びかけ】8bitNews+堀潤のYouTubeチャンネルではメンバーのみなさんを募集中です!想いを込めて9分間お話しました!」

メンバー増えて欲しい。
けど、「市民と一緒に発信する双方向のメディア」と言われても、8bitNewsを今まで知らなかった人にはちょっと補足が必要かなと思った。

10年位前のことから知らないと、お金払ってメンバー登録しようという気にならないのではないかと。(メンバー登録した後に見られる動画では、ちょっと説明されているのだけどw)

■そもそも
NHK入った経緯とか知らない人は、まずは上の動画にちょっと驚くかもしれない。けれど、そういう人なんで、10年前に堀潤がNHKを辞めた時は、結構な話題になったのだ。

「NHK堀潤アナ「脱原発」で退職 上司と「最後の談判」つぶやいていた」
J-CASTニュース:2013年03月21日
https://www.j-cast.com/2013/03/21170563.html?p=all

当時このブログでも取り上げた。
「NHKのジレンマが退職してしまった件」
http://maruko.to/2013/03/post-140.html

ブログの中のリンクは色々と切れているけれど、今もう一度見たらやっぱり面白かった以下の動画はオススメ。まだNHK在籍中の2012年4月、とあるシンポジウムにて、1:26:40あたりからの爆弾発言。

●2011年夏に一度辞表を出していて、慰留され、留学することになった。
●アメリカからパブリックアクセスやSNSのノウハウを持ち帰れば、電波解放やる根拠が生まれる。
●NHKにパブリックアクセスを導入させるのに3年で勝負をかける。できなかったら辞める。
●ダメだったら別の方法でNHKを動かせばいい。

ところが1年後、留学先で原発事故を追ったドキュメンタリー映画を作り、上映しようとしたらNHKに中止を指示される。復帰後にアサインされた番組は、何故か「きょうの料理」だった...というのが、上記J-CASTニュースの話。

3年を待たずに、勝負が見えてしまった訳だ。辞めたの納得でしょ。

■応援したくなる
東日本大震災後、NHK職員としては正直で踏み込み過ぎとも見えるツイートは、当たり前だけれど話題になった。ここでフォロワーが増えたことが、堀潤の背中を後押しした部分もあっただろう。しかし、政治家からはTwitterをやめさせろと圧力がかかり、上司ともめる。当時坂本龍一に心配されたという話も、納得できる。

「追悼・坂本龍一。NHKを辞めた堀潤に託した「大切な言葉」」
Forbes JAPAN:2023年4月10日
https://forbesjapan.com/articles/detail/62313
「負けるな、声をあげよう、諦めるなといった、勇ましい言葉は一つもなかった。ただただ、僕の心と身体を想い「いつでもSOSを出すんだよ、隣にいるから」という優しい言葉が並んでいました。」

これは、色々と頑張った人間でないと、他人にかけられない言葉だ。絶妙なタイミングで、なんと適切な言葉を必要としている人にかけたものだと、坂本龍一に感心してしまう。スゲー。
(対照的に、翌年2012年の上の動画のシンポジウム会場で、堀潤に何年後に電波を解放するのか目標を答えさせた客席の人、ギリギリ頑張ってる人間をよくも追い込みやがって...と思う(苦笑))

そして2013年にNHKを辞めると、フリーになった堀潤を支援しなきゃ的な動きがあり、ブロマガが立ち上がる。この時、ドワンゴに電話してブロマガ開設を手配したのは宇野常寛で、「僕の役割は、堀さんがちゃんと生活して取材もできるようにすることだ」と言ったとか。なんという人徳。
自分も当時早速、これに登録した(遠い目)
https://ch.nicovideo.jp/horijun/blomaga/ar177214
この時の堀潤は、何も仕事が決まっておらず、ニコ生で生活費を稼ぐというところからのスタートだったわけだ。

NHKを辞めた経緯が原発絡みということもあり、使ってくれるメディアなんて無いのだろうと思っていたけれど、約半年後にはTOKYO MXでまさかのレギュラー番組MCに抜擢。更にその半年後には「モーニングCROSS」が始まり、現在の「モーニングFLAG」へとつながる。あっという間に同局の朝の顔となった。(流石「再生工場」MX(笑))

しかも、番組はTwitterとか活用しまくっていて、パブリックアクセス的な堀潤の過去の発言を知っている視聴者からすれば、それが単なる流行りを取り入れただけではないということがよく分かった。
その後の八面六臂の活躍は、本当に敬服する。

もうブロマガ会員で支援しなくても大丈夫と思った頃、自分はブロマガ解約してしまったのだが(^^;;

■さて8bitNewsとは
https://8bitnews.org/?page_id=320
「誰もが一次情報発信者になれる時代。既存のマスメディアによって濾過された情報とは対局にある発信がそこにある。8bitNewsは ニュースルームに革命を起こす。「パブリックアクセス」の実現を掲げ「市民の発信力強化」に貢献する。電波を解放し、だれもが自由にマスメディアを使って 発信できる権利をこの国に根付かせる。」

パブリックアクセスが良く分からない人は、wiki読んで。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9

日本では、一部のケーブルテレビやコミュニティFMで実現している部分もあるけれど、他国と違って法整備されていないことが問題の一つ。だから、NHKではパブリックアクセスが実現していない。堀潤がNHK時代に言っていた電波の解放というのは、NHK内部からパブリックアクセスを実現するという話だったけれど、今はそれを外部から実現するために8bitNewsがある。

他国では、市民がパブリックアクセス出来る能力を学ぶためのアクセスセンターがあったりもするけれど、日本にはそれが無いので、
「一方で市民が発信力を高めるために、演習の場を提供する。取材力、撮影技術、編集能力、制作力、そして発信力。 8bitNewsのグループがこれらを身につけた市民の育成を支援する。」
というのも8bitNewsの使命になっている。

パブリックアクセスの必要性自体が分からない人は、昔書いた以下の投稿をご参照下さい。
http://maruko.to/2013/04/post-141.html

民間の運営会社の不透明な判断基準でいつアカウントを凍結されるか分からない、Twitterでつぶやくのと一緒ではないです。

特に大事なのは、有事の時。
堀潤には、東日本大震災当時の、公共放送としての役割りを果たさなかったNHKへの苦い思いが、今もきっとある。

チャンネルのメンバー登録しても良いけど、胡散臭いなぁ~という人。
東京都で公開されているNPO法人としての情報はこちら。定款、役員名簿、事業報告書も読める。
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/houjin/npo_houjin/list/ledger/0010080.html

正式名称は「特定非営利活動法人8bitNews」
定款第3条に記された目的は以下。
「この法人は、居住地域を特定しない人々(以下市民)に対して、各個人が取材する映像および記事を自ら情報を発信する仕組みを提供し、市民が社会により積極的に関わることができる環境整備を促進させる事業を行い、市民が情報を自由に発信し、かつその情報を取捨選択することができる社会の実現に寄与することを目的とする。」

あと、出来た当時の紹介記事があった。

朝日新聞デジタル:2012年8月10日
「NHK・堀潤アナウンサーが参加 新たな市民ジャーナリズム「8ビット」」
http://www.asahi.com/digital/mediareport/TKY201208070168.html

当時と今では変わっている部分もあるだろうけど、これをNHK在職中に立ち上げたということ自体、驚くべきことだ。

■10年経って
先月末、10年前にブログで書いたことを当時Facebookに投稿していたのが、「思い出」としてリマインドされ、堀潤NHK辞めて10年と気付いた。

もう、MX以降の堀潤しか知らない人も多いだろうから、上に書いた経緯のようなことを改めて書いておきたかった。

坂本龍一とか色んな方が亡くなって途方に暮れたくなるのは分かるけど、そういう堀潤自身だって、きっと誰かの希望に違いない。

今後も応援し続けたいので、ご自愛下さい。不摂生で健康害したりしたら、勝手連はきっと許さんです...とか言ってみるテスト(死語)

ということで、早速YouTubeチャンネルのメンバー登録したので、今後も「したたかに、しなやかに。」を是非是非。

謹賀新年

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 明けましておめでとうございます。

 昨年はついに、ローマで新型コロナ陽性となりました。85日かけて地球を一回りする珍道中の途中で、母が熱を出したのでローマの薬局で1個3.9ユーロの抗原検査キットを買って試したら、親子そろって陽性。色々大変でしたが、幸いイタリアの自己隔離はちょっと不思議で、隔離中もスーパー等へ買い物に行けるので助かりました。短時間で買い物を済ませなければならないのですが、外出して食料を買うことが可能だったお陰で、親子そろっての隔離期間中でも食べ物に困りませんでした。プライベートスペースにシャワーや洗濯機、冷蔵庫もそろった、広いバルコニーのある部屋で民泊していたので、部屋に閉じこもる必要もなく、バルコニーでゆったりと食事を取り、洗濯物を干す毎日でした。宿のオーナーに伝えたところ、共用部分のキッチン等の使用は禁止と言われましたが、それ以外は特に制限なく滞在出来ました。重症化せずに済んだのは、ワクチン接種済み(当時自分は3回、高齢な母は4回)だったお陰と思っています。

 この旅で興味深かったのは、様々な国のコロナ対策の違いです。例えば、スイスは屋内でも誰もマスクしていない国で、列車内など公共交通機関でもノーマスクだったのですが、陸続きのイタリアへ列車で国境を超えると、バスも列車もFFP2の高性能マスク着用が義務。母が座席でドリンクを飲むのにマスクを外したまま着用を忘れていたら、車掌に怒られてしまいました。(シンガポールでも、屋外でマスク外していたまま地下鉄駅に入って改札を通ろうとしてしまった際、駅の係員にマスク着用するようちゃんと止められました。)他のお客は皆、当然にマスク着用が徹底されていました。スイスとイタリアはシェンゲン協定加盟国ですから、国境超えると言っても何もないわけですが、ルールがガラリと変わり、それがちゃんと守られている。
 また、クイーン・エリザベスで2週間かけて大西洋横断した時は、船の屋内でのマスク着用義務と、屋外デッキでのノーマスクへの切り替えを、乗客がしっかり意識して行動していたのが印象的でした。日本人客は我々二人だけで、つい日本の癖で屋外でもマスクを外し忘れていても、他が誰もマスクしていないので、徐々に自然と外すようになりました。クイーン・エリザベスは、そもそもドレスコードの厳しい船で、同じ船内でも時間帯や場所によってフォーマルやカジュアルの指定がはっきり決められており、乗客もそれを守ってオシャレを楽しみます。マスクもドレスコードの一種と言えなくもなく、決められた場所で着用するという行動は、乗客にとっても違和感の無いルールだったのだろうと思います。一度、母がマスクを忘れて自分のキャビンを出てしまった時は、クルーにマスク着用を指摘されても持っていなかったため、FFP2の高性能マスクを無料で渡されました。
 対して、エーゲ海クルーズで乗船したノルウェージャン・ジェイドという船は、クイーン・エリザベスとは違い、船内でのマスク着用義務が守られていませんでした。この船会社は、フリースタイルを売りにしており、ドレスコードが殆ど無いのですが、同様にマスクも自由な感じになってしまっていたわけです。マスクを着用するよう言われたのは乗船時のチェックインでクルーズターミナルに到着した時だけ。以後は、船内でマスクしていなくても全く何も言われないのです。マスク着用を義務とする案内板はありましたが、それを守って船内でマスクをしている乗客は、ほぼゼロでした。
 では、ノルウェージャン・ジェイドは、クイーン・エリザベスより危険だったのかというと、これが全く分からない。ビュッフェの入口では、消毒液を吹きかけて簡単に済ませるのではなく、石鹸でしっかり手洗いすることを求められました。乗客も、クルーの指示に従って手洗いに並ぶ。この光景は、消毒液を使うだけのクイーン・エリザベスには無かった。どちらの船のやり方が乗客として正解なのか、簡単には言えません。しかし、安心感という意味では、クイーン・エリザベスが正しいと思える違いが明確にありました。
 クイーン・エリザベスでは、船内の陽性者率によって4段階に対応が決められていて、レベル4になると母港のサウザンプトンに帰港しなければならないと言われていました。アメリカのフォートローダーデールから私が乗船した時点で、既にレベル2だったそうで、途中でレベル3に上昇。バーカウンターでの対面サービスが停止され、セルフランドリーは使用禁止、シアターは1席空けての着席、ルームサービスは隔離者への対応に忙しいからと、極力使用せずにレストランへ行くようアナウンスがありました。いくつかのデッキに、客室への通路のドアが閉じられた区画が出来ていましたが、そこが陽性者の隔離客室の区画だと聞きました。つまり、マスク着用が徹底されていても、サービスを制限する程船内の新型コロナ陽性者率が上昇していたのがクイーン・エリザベスでした。対してノルウェージャン・ジェイドでは、そういったサービスの制限が全く無く、陽性者が出ているのかどうかすらも分からない。陽性者が全く出ないとは思えませんが、特にアナウンスが無いので、乗客としては分からない。この分からなさは、屋内で誰もマスクせずとも注意されない船内で、不安感を生みました。サービスが制限されたとは言え、決められたルールを徹底して守り、情報を共有するクイーン・エリザベスは、とても誠実に思え、安心できたのです。
 逆に共通しているのは、乗船時にいくら陰性証明書を確認しても、乗ってから陽性になる乗客を防げるはずもなく、海外のクルーズ業界は、陽性者が出ることは当然に織り込み済みで運行しているという事実です。日本ではつい最近も、日本のクルーズ船が出航後に陽性者が数名出たというだけでニュースになっていましたが、そんな程度がまだニュースにされてしまうのは日本だけでしょう。

 一番対策が厳しいなと思ったのは、アブダビでした。Alhosnという健康管理アプリをスマホにインストールし、ワクチン接種証明やPCR検査結果等の条件をクリアーしているとグリーンパスという画面が表示される仕組みがあり、商業施設等の入口でこれを警備スタッフに見せないと入れてもらえないのです。ところが、事前にスマホにインストールした際、SMSで認証が必要なのに、認証コードが届かないという不具合が。当時契約していたキャリアに問い合わせたりしましたが、特に障害は起きていないとのことで、何度も試しましたが諦めました。そこで予約したホテルに問い合わせると、Alhosn無くても空港でPCR検査受けて陰性証明取得すれば良いと言われ安心しました。(チェックイン時点で陰性結果が届いていなくても構わないが、レストランやプール等のエリアを利用する際には提示する必要があるとのことでした。)
 ただ、一筋縄ではいきませんでした。空港で受けたPCR検査の結果は、Email不可で、SMSでのみ送ってくるとのことで、空港到着後直ぐに購入した現地SIMの電話番号で対応は出来たのですが、検査から3時間程で届いた結果のSMSにあった陰性証明書PDFへのリンクが、何度クリックしてもエラー表示に。深夜だったので翌朝まで待ちましたが回復せず、検査を行った業者のホームページを探し、問い合わせフォームからダメもとで問い合わせました。すると、意外にも2時間もかからずに担当者からメールが。本人確認にSMSのスクリーンショットやパスポート画像を送り、更に2時間後には無事PDFの陰性証明書を取得できました。(なんだかんだで半日は行動できず、夕方からの観光となってしまったのは残念でしたが。)
 ショッピングモール等に入る際、毎回これを提示した訳ですが、その都度じっくりと記載内容を確認されるので、面倒ではあるのですが、こういったルールの運用が形式的にならずしっかり守られているというのは、とても好感が持てました。

 どの国でも、屋外ではマスクをしないのが普通だったので、それに慣れて帰国したら、屋外でもマスク着用が多数派の日本が異質だと、やっと気付きました。更に日本だと、バスなら乗車口で運転手からマスク着用を求められることもありますが、地下鉄の駅等でマスクをしていなくても、止めたり注意する駅員を自分は見たこと無いなと。よく考えたら変だなと。
 そもそも、成田の帰国時点で、入国審査より前に煩雑な導線で多数のスタッフとやり取りしなければならなかったのですが、これが異様な光景でした。ワクチン接種証明や健康管理アプリの確認のためだけの非正規雇用の外国人スタッフが多数いて(しかも、特定の国がやたらと多い印象で、私の対応をしたのも外国人でした。)、簡単なタスクがいくつもに細分化され割り振られ、それぞれの場所へ複雑な導線が組まれてグルグルと歩かされる。その為、一つ一つの通路は狭く仕切られ、他人との距離が近い。
 本来少人数で対応可能なタスクを、何故か細かく切り分け複数名に担当させるのは、無駄に人件費を膨らませているように見える。そんな面倒なことをやっている国は、この旅で他に無かったので、強く違和感を覚えました。健康管理アプリをインストールしているか聞いて次の行き先の書かれた紙を渡す人、アプリの画面を見て説明しつつ冊子を渡す人、通路の途中で前のポイントで渡された紙を持ってるかチェックするだけの人等々...無駄な導線減らせば一人で対応できるのでは?という作業分担。
 しかしそこで、ふと気づきました。非正規の多数のスタッフの様子が、私が前年経験した某国際大運動会の現場とそっくりだったのです。これは、どこかのイベント系の人材派遣会社が食い込んで、なるべく人月多くなるように仕事を作っているのではないか...そういえばあの大会も、何故かバングラディッシュ人が多数スタッフとして雇用されていて仲良くなったな。自分が今会話してる相手も、同じように見えるなと。
 なんというか、途端に極東の島国っぽさ満載な歓迎を受けた感じで、帰ってきたんだなと、生暖かい気持ちになりました。まあ、10月下旬の話なので、今はどうなのか知りませんが。

 ちなみに、この時のクルーズ乗船記は、以下に詳しく掲載しておりますので、ご興味のある方は是非。
 https://cruisemans.com/@ranpou
 https://www.cruisebrothers.jp/p/20238.html

 では、本年もよろしくお願い致します。

変なものを見つけてしまった。
ジョイカジノと三宅村が提携
魚拓

自然が豊かで真っ青な海に三宅村で、仕事もプライベートも充実させてみませんか?
魚拓

三宅村役場がオンラインカジノに協力するとは思えないので、調べてみた。

こちらが現在の三宅村の公式ホームページ
https://www.vill.miyake.tokyo.jp/
やっぱチゲー

でも
https://www.miyakemura.com/
これが完全にニセモノかと言うと、ちょっとヤヤコシイ。

2017-3-24
この頃まではホンモノだった。新着情報も更新されてる。
http://web.archive.org/web/20170324103954/www.miyakemura.com/

2017-5-25
抹消され、リニューアルされた現在のURLへ転送されるように。
http://web.archive.org/web/20170525214145/www.miyakemura.com/
2018-10-17
までは残っていたが、その後恐らくドメインが期限切れ。

2018-12-19
miyakemura.comはドロップキャッチされ、第三者の手に。
(三宅村に更新する気があったのかどうかは知らんけど。)

2019-1-12
この時点で、リダイレクトされるように。
http://web.archive.org/web/20190112222546/www.miyakemura.com/
どうやら、オンラインカジノ事業者に、ゲームのプログラムを提供する会社の模様。

2019-3-3
消えた。
http://web.archive.org/web/20190303000902/www.miyakemura.com/

2019-5-6
なんと、2017年に抹消されたはずの旧ホームページが復活ww
http://web.archive.org/web/20190506153809/www.miyakemura.com/
以後、時々404 Not Foundになったりしながらも、現在に至る。
サーバはイギリスにある様子。すげーな三宅村...じゃなくて。

この、謎に復活した三宅村旧ホームページに、最初に紹介した、オンラインカジノ業者と三宅村が提携したという記事や、三宅村にオフィスを作るというオンラインカジノ業者のライター募集の求人情報とかが、掲載されているわけ。

三宅村役場の人、知ってましたか?
そちらの旧ホームページ、丸ごとコピられた上に、旧ドメインで中身追加されて悪用されてませんか?

提携の記事の中身も吃驚。
「オンラインカジノ上ではこの三宅村を舞台にオンラインカジノのスロットゲームやブラックジャック などが組み込まれています。さらにオンライン宝くじやビンゴゲームもあり、買った場合には勝ち金として出金できることはもちろん、三宅村からの栄養満点な食材が選べる豪華なチョイスなども存在します。某有名ECサイトが行っているふるさと納税をオンラインカジノで行い、三宅村をモデルに使わせていただくかわりに、そのよう形で村に貢献をしたいと思いました。」

ふるさと納税をオンラインカジノで?
どこのECサイト??ww

求人情報の「どうしてIT企業のカジ旅が三宅村に注目をしたのか?」という段落に、「tabicasi casino mix(旅カジカジノミックス)は2020年に創立された日本人向けのオンラインカジノサイトです。」ってあるから、完全に本家が運用停止した後に追加された記事と分かる。

ちなみにジョイカジノ、既に運営終了とか。

こういうことやってる業者が、オンラインカジノは違法じゃないとか言うわけで、へそで茶が沸きますな!

■3/29追記
その後、三宅村役場に確認したところ、
「旧三宅村役場のHPについては、当村と提携等は一切なく無関係となります。既に警察等に連絡し相談はしておりますが、削除されないのが現状ではあります。」
とのご返答を頂いた。そりゃ、警察に相談しても削除されないだろうと思ったのだけど、これは明らかな著作権侵害でもあるので、Google先生に検索結果からの削除を申請すれば、第三者が偶然辿り着いてしまう機会をグッと減らせ、騙されて違法な業者を信じる被害者を発生させない一助になる旨申し上げた。
それに対し、「申請等行っていこうと思います」とのご返答を頂いたけれど、一カ月以上過ぎた今でも、まだ検索結果に出てくる。申請しても削除されなかったのか、まだ申請してないのかは、分かりません。

謹賀新年

2022年賀状_blog.jpgのサムネール画像

あけましておめでとうございます。
昨年はカジノ管理員会規則案へのパブコメのことしか書いてないですが、夏は反対していた運動会の仕事に入ってみて、報道されない裏側の杜撰なところを色々と自分の目で確かめたりしました。まあ、ネットに書いたら訴える、監視してると連日脅されたので、コワイので書きませんけど、酷くて吃驚しました(苦笑)

元々反対していても、終ったらやって良かったとか言う人がいるみたいですが、その現実から目をそむけられる能力、幸せな人だなぁと、ある意味羨ましく思います。

ちなみに、カジノ管理委員会へのパブコメの結果は、自分の意見が一つ認められ、ブラックジャックのディーリングのルールが修正されました。が、自分は二十数個の問題点を指摘していたわけで、そのうちの1つしか問題が解消されなかったというのは、本当に深刻な問題だと思ってます。

ただ、もっと問題なのは、将来カジノに関わる当事者たるディーラー界隈の人々が、この問題を全く認識していないということ。Twitterでつぶやいても、反応薄かったなぁ。
自分がどれだけヤバいルールのカジノで働くことになるのか、もう少し興味持った方が良いです。

カジノ管理委員会に関わりたいなぁ...

謹賀新年

2021年賀状.jpg
あけましておめでとうございます。
今年の年賀状は、GoTo先の屋久島は宮之浦岳山頂での360度写真です。

昨年は、横浜からバンクーバーへ太平洋横断片道クルーズをしようと、一昨年末から散々検討していたのですが、COVID-19のためにクルーズがキャンセルされてしまいました。途中でロシアを経由し、2週間でバンクーバーへ到着するこのクルーズ、プレミアム客船で当然に食事もショーも込みで、安い内側船室なら一人400ドル程度にまで値下がりします。ずっと値動きを追っていましたが、全て徒労に終わりました。

カジノツーリズムは諦め、仕事も無いので、ほぼ箱根に引き籠るようになりました。ヤフオクで安いプロジェクターを落札すると、延々とFallout76オープンワールドを大画面で旅する毎日。その合間、たまに最寄りのスーパーまで食料補給で片道7・8km歩けば、鹿と猪に遭遇。感染症より猪が怖いという生活でした。

■オンラインとか映画祭とか
そういった中でも、様々なイベントがオンライン開催となったお陰で、通常なら参加が困難な映画祭やイベントにオンラインで参加出来たというのは、とても有難かった。アヌシー国際アニメーション映画祭も、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭も、そして何よりバーニングマンも、オンラインで堪能しました。特に、VRを活用するバーニングマンは凄かった。通常なら、現地に行かなければ参加できなかったし、そもそもバーニングマンなどチケット入手すら大変なわけで、COVID-19のお陰でローコストにこれらへ参加出来たというのは、リアルとはまた違った価値ある体験となりました。

対照的に残念だったのは、広島国際アニメーションフェスティバルです。
https://hiroanim.org/
なんと、その存在価値を理解できない広島市の方針転換で、昨年が最後の開催でした。他の映画祭のようなオンライン対応がほとんど出来ず、世界中から寄せられた作品を審査員がオンライン会議で検討し、受賞作品名等がホームページに公表されるだけでした。歴史も重みもある映画祭が、こんな終わり方になるとは、本当に残念でした。
以前は理解があり、広島市長も舞台に上がって流暢な英語でながーい挨拶されてたのに感銘を受けたこともあったので、この方針転換は本当に驚きです。)
https://cgworld.jp/interview/202010-hranm18th.html

自分は学生の頃から行きはじめ、CG制作会社に入社してからは会社の部活動として、同僚と共に参加させてもらっていました。フレームインという、事前審査も何もなく持込上映させてもらえる枠があり、そこにまだプロ・アマの垣根もなかった頃、自社の仕事をVHSで持参し上映させてもらい、その場で批評を受けたり、叱られたり、全ては良い思い出です。行きの飛行機で、当時審査委員だった海外の著名なアニメーション作家と親しくなり、会場でその人の特集プログラムに参加し、自社のデモリールを手渡ししたことも。映画祭は色々行きますが、そんなことが容易に実現する権威ある映画祭、他に国内に無いですよ。

国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)公認で、アヌシー、オタワ、ザグレブと並ぶ世界4大アニメーションフェスティバルの1つだった訳ですが、それがどうやって成立してきたのか現在の広島市は理解していないのではないでしょうか。博報堂や中国新聞と組んで、名声を掠め取るような後続イベントを計画しているとか。米国アカデミー賞公認でもあり、広島のグランプリ作品はアカデミー賞ノミネート候補にもなっていたわけですが、ASIFAを足蹴にしてそんな真似は不可能。そういった意味で、価値のない後続の商業主義イベントを、さも歴史も権威もある以前の映画祭と関係があるかと世界に誤解させて作品を集めるような恥ずべき行為だけは、やめてもらいたいものです。
https://www.cartoonbrew.com/events/hiroshima-city-says-it-plans-to-hold-animation-festival-in-2022-asifa-protests-198499.html

ASIFAは、まだ広島市に再考を促そうとしています。
http://asifa.net/news/petition-to-save-hiroshima-festival

Change.orgで署名も集めています。
https://www.change.org/p/mayor-of-hiroshima-keep-the-hiroshima-international-animation-festival-going

一度決めたことは、どんなに間違いでも殆ど変更できないこの国ですから、それが恥ずべき行為でも、広島市が再考することは無いだろうとは思います。が、自分も一応署名しました。長年広島に通ってきたのに、もう広島に行く理由が無くなってしまったのは、非常に残念です。とうか、こんな不義理をやらかす広島市には、行きたくなくなってしまいました。

昨年は、GoToと併用できる各地方自治体の助成制度が色々とあり、それらを活用して旅しましたが、広島も大変安く旅行できる制度がありました。しかし、全く広島には興味が湧きませんでした。商業主義に踊らされる広島市の今後は、期待しないで生暖かく見守ります。

■その他GoToとか
世間では、GoToで豪華な宿をお得に、みたいなのばかりが話題でしたが、自分の場合は3泊で1万円くらいの格安ゲストハウスに使ったり、せいぜい1泊1万円程度のホテルでよく利用しました。じゃらん等の予約サイトでは、各地方自治体が助成する観光促進のための割引きクーポンが多数配布され、GoToとこれを併用するというのがお得でした。10,000円以上の宿泊費に対し5,000円助成される地域だと、GoToで3,500円引かれ、支払い1,500円に対して地域共通クーポンが2,000円もらえるというケースもザラ。こんなことに税金ばらまくなんて酷い国だと思いながら、活用しました(苦笑)
鹿児島県の屋久島や種子島、山梨県の富士吉田、静岡県は下田や熱海、東京だと伊豆大島等を長めに回りました。カジノの無い国内旅行は久々。種子島なんて、筑波宇宙センターに勤務していた頃だって行ってないのですが、南種子町の助成金が素晴らしく、初めて種子島宇宙センターも見学できました。屋久島は、感染症対策で山小屋(避難小屋)での宿泊はなるべく避けるようアナウンスがされてたので、テント持参で山中泊(ここにGoToは関係無いですが)。3泊4日かけて宮之浦岳等縦走しました。
様々な地域を回ると、感染症対策の温度差のようなものも実感でき、非常に興味深かったです。例えば箱根では、温泉にサウナが併設されていても、感染症対策を理由に使用中止が当たり前。これが、鹿児島の某砂風呂施設の温泉にあるサウナでは、入れる人数を減らしただけで、かなり密で使用させていて驚きました。狭いサウナ内は向かい合う席の配置で、流石に正面は空席にされてますが、ひな壇でその1段上がった位置は使用しており、そこのおじさんの荒い鼻息が丁度自分に当たってるんじゃねーかと気付いた時は、サウナなのに寒気が(苦笑)
また別のサウナでは、敷いてあるタオルがそのままなのに、そこに直に座らせるというのはどうかと思いました。誰かが座ったタオルの上にそのまま裸で座るとか、以前はそれほど気にしなかったと覆いますが、今となっては軽くホラーです。(サウナの温度でウィルス死ぬんだよと笑い話にする人もいましたが、もちろんそうとは限りません。)
マシな施設だと、一人一人入口で消毒したシートを持ってサウナに入り、座布団のように敷いて座り、出る時に持って出て消毒して返却とかさせていて、利用する側としても安心でした。(そういえば、以前ドイツのバーデンバーデンのスパに行った時は、サウナは自分用のシーツみたいのを敷いて座るのがマナーで、気付かずに直に座ったら、他のお客から静かに指摘されました。感染症対策云々じゃなくても、それがサウナの正解な気はしますね。)
その他、宿のチェックイン時の検温と身分証の確認とかは、もう本当にバラバラ。ちゃんとやっている施設が多いですが、感染症対策と称して無人チェックインを実施してますなんて宿もあり、宿泊中一度もスタッフに会わずにチェックアウトしたこともありました。そんなところは、検温やってないわけです。チェックイン時、書類に健康状態を自己申告で書いて、レセプションのポストに投函するだけ。そこに体温計があるわけでもなく、測りもせずに「37.5度以上はありません」とチェックするだけ。こんなの、いくらでも嘘ついて泊まれます。この宿は都内でしたが、年末に東京に久々に戻って実感したのは、東京は感染症対策杜撰なところ多いなということ。新宿のそれなりの商業施設でもエレベーターの人数制限をしておらず、人が沢山乗ってたりする光景、GoToで行った他所の県では見なかったので、ゾッとしました。ここに戻ってしまった以上、安易に他所の県には行けないと思いました。まあ、この年明け早々、某ワクチンの治験に参加予定で、しばらく待機せざるを得ないとうのもあります。初回健診で対象外と言われたら終わりですが、1年後まで通院予定が決まってたり、色々面倒ですし、プラセボだったりするかもしれません...が、どんな1年になるのやら。

中身のあるブログ更新何年ぶりだよという感じだが、過去にここで注目していた事案のその後についての話。


「日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー 経産官僚の暴走と歪められる公文書管理」を読み終えた。本書は、かつて産業革新機構からの出資による官製映画会社と言われた株式会社All Nippon Entertainment Works(以下「ANEW」とする。)にまつわる不審な公金の行方や、実績とされた映画化案件に実体が存在しなかったこと等を暴きつつ、クールジャパン政策の数々の問題点を具体的な事例を元に指摘する。この問題を長年追及してきた著者には、本当に敬意を表したい。
しかし、それだけに留まらず、著者も属する映画産業の発展に本当に必要な支援とは何か、海外の成功事例を豊富に紹介しつつ論じている。映画や広く映像産業に関わる人は、この本を読むべきかもしれない。自分のように、既に部外者となって久しい人間には、もったいない内容だった。
純粋に、アメリカ等海外と映画製作する際の流儀というか、コスト管理や契約締結に必要な実務的な知識、不合理な契約を押し付けられないためのメルクマールのオンパレードという側面も、ある意味貴重だった。というのも、著者が訴える経産省やANEWの問題点を読者が理解する前提として、ハリウッド等アメリカの映画製作実務の知識が必須な為、その解説に多くのページが割かれているからだ。目から鱗と感じる関係者もいるかもしれない。普通なら、それだけでもお金払う価値がある。

ANEWについては、設立当初から自分も興味を持ってこのブログで取り上げていたけれど、いつになってもガイキングは完成せず、あの会社どうなってんの?と思ってきた。しかし、著者のように情報公開請求したり、関係者の発言や発表を時系列で追ってその矛盾を発見したりすることは無かった。ジャーナリストでもない著者が、このような不正義を長年追及してきたのは、ご自身が映画産業関係者であり、国の無策に苦々しい思いをさせられてきたからだろう。しかも、無策なだけじゃなく、クールジャパンと称して税金を私物化している連中がいる。許せないという気持ちに違いない。自分は以前CG制作会社で働き、映画制作を受注する現場側として興味を持ったのが最初なので、著者にはとても共感しながら読ませてもらった。

ただし、ANEWのような官製映画会社が作られた経緯について、本書で触れられていないことがある。著者はご存じ無いのかもしれない。本書巻末のANEW年表は、経産省が産業革新機構に対しANEW設立を打診した2010年前半から始まっているのだが、実はこの前がある。

■ANEW設立の前段階
2010年初頭、民主党政権下の経産省は、民間から誰もが自由に国策等を提案できるアイデアボックスというサイトを運営していた。ここで多くの支持を得た「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」という映画制作現場からの意見があり、自分はこれが、ANEWを正当化する民意として経産省に利用されたと、現在では理解している。

経済産業省アイディアボックス
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」
https://web.archive.org/web/20100523203033/http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/

この直後の2010年4月、「経済産業省は5日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の産業競争力部会に「文化産業大国戦略」案を提示した。」として、「映画などのコンテンツを海外で販売するのに不可欠な資金を提供する官民出資の「コンテンツ海外展開ファンド」を創設する。」と毎日新聞が記事にしていた。

アイデアボックスに意見を投じたご本人は、コンテンツ海外展開ファンドの創設を前進と評価されていたが、
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/04/blog-post.html

自分は意見が歪められたと感じていた。
「クール・ジャパンのマヌケ」
http://maruko.to/2010/04/post-83.html

それでも、2011年にANEWの設立がニュースとなった頃は、
「国策会社とクール・ジャパン」
http://maruko.to/2011/11/post-123.html
「ハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢」に変わったと感じ、「単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。」と考えていた。

しかし、そもそも2009年の麻生政権下で、産業革新機構から資金調達して「コンテンツ海外展開ファンド」を創設するという話は、既にニュースになっていた。
「国産比率と法令遵守を条件に」
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
2009年5月4日の時事通信の記事では、「国内の制作会社や作家からコンテンツの海外ライセンス(使用許諾)を取得するとともに、海外の制作会社に出資し、国際展開を後押しする。」と説明されており、正に、後のANEWそのものと言える。産業革新機構とコンテンツ海外展開ファンドを駆使した税金私物化の不正の概要は、自民党政権時代に出来上がっていたのだ。

■政権交代の影響
2009年当時の自分は、制作現場が潤わない新たな利権を生むだけの麻生政権の愚策に批判的だったのだが、政権交代と2010年のアイデアボックスを経て、多少はマシになったのではないかと、期待してしまっていた。民主党政権とは、はてブにオープンガバメント推進ブログを経産省が作っていた、そういう時代だった。
https://ideaboxfu.hatenadiary.org/entry/20100527/1274919221

けれど、野田政権の最後にANEWがガイキングについて発表したのを最後に、クールジャパンはブラックボックス化してしまう。
「民主党政権の残したクール・ジャパン」
http://maruko.to/2012/12/post-135.html
オープンガバメントな手法を駆使し、親しみすら感じていた経産省が、自民党への政権復帰と共に、遠い存在に戻ったという気がした。

著者は、様々な情報公開請求、不誠実な経産省の対応で苦労されるわけだが、これは単に経産省が悪いというより、それを許すようになった現政権に最大の問題があるのではないかと思う。公文書管理や情報公開への姿勢に問題があるというのは、経産省というよりも、現政権の顕著な特徴なのだから。現政権の不正のオンパレードの中に、本件は埋もれてしまったという気がする。

まあ、ガイキングにしてもいかなる契約も存在していなかったというのだから、民主党政権下で自分が「多少はマシになった」と当時思ったのも、ただの虚構だったのかもしれないが。

■当時における官製映画会社の必要性
第4章「官製映画会社構想のそもそもの過ち」には、「国による「ANEW設立の打診」には、産業政策上の「事実」に当てはまらない致命的な思い違いが、大きく分けて2つ存在します。1つは個人レベルで解決できる課題に焦点を当てていたこと、もう1つは「ビロー・ザ・ライン」へ支援が向いていなかったことです。」とある。自分は、後者には賛成で、アイデアボックスの議論の後に骨抜きにされたのが、正にこの部分だと感じている。しかし、前者については異論がある。
著者はここで、「リング」が契約に失敗し、ハリウッドリメイクから配当を得られなかった事例について、プロデューサーら個人の問題と捉えている。そして、「映画化権の交渉における契約法務に長けた弁護士やエージェントなどを利用するという、簡単な手段で解決できます。」と。リメイクを通じてハリウッドのノウハウを蓄積し還元するような官製映画会社は、前提とした必要性がそもそも無かったと。
しかし、映画化権のハリウッドとの交渉に長けた弁護士にアクセスすることは、この国で本当にそんな簡単なことだろうか。著者は、ANEWが支援したのが東映アニメーションや日本テレビという資金力のある大企業であったことから、そのような会社が国の支援がないとリスクをとることが難しいわけがないと論じている。しかし、その様な大企業のみを支援するのが、ANEW設立の前提だったわけでもないだろう。

第1章「株式会社ANEWと消えた22億円」では、「官製会社の民業圧迫行為」と題し、漫画「銃夢」がハリウッド映画化された「アリータ:バトル・エンジェル」の契約法務の事例を引き合いにしている。「銃夢」のように、日本の法律事務所が代理人としてハリウッドと交渉した事例があるではないかと。ANEWのような官製映画会社が無くとも民間で対応できるのに、対価を求めずに同様のサービスをANEWが提供することは、民業圧迫だったと。しかし、原作者のインタビュー記事を読むと、「アリータ:バトル・エンジェル」こそが契約法務に不備があったと疑われても仕方のない問題ケースだと思えてくる。

「銃夢」の作者・木城ゆきと氏にインタビュー、「アリータ:バトル・エンジェル」映画化の経緯から「銃夢」の奇想天外なストーリーの秘訣まで聞いてきました - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190221-alita-battle-angel-yukito-kishiro-interview/
「当時集英社でも前例がまったくありませんでしたから。きちんとマネジメントをしてくれる代理人契約を電通さんと結んで、ちゃんとした体制でこっちも向かわないといけないという風になりました。」と原作者の木城氏が語っており、そもそも弁護士に直接アクセスしていないことが分かる。加えて、最も問題があると考えるべきなのは、次の部分だ。
「タフな交渉だったので2年ぐらいは色々ともめたんですが、最終的に2000年の暮れごろに僕が契約書にサインして、契約が成立しました。」
「2016年になってプロデューサーのジョン・ランドーが来日して、「『アリータ』を作ることになりました。監督はロバート・ロドリゲスが担当します」と。」
つまり、契約から16年もの間、「銃夢」の映画化は動かなかった。元々、他にも映画化を交渉していた競合プロデューサーが存在したような人気コンテンツで、2年も交渉して締結した契約が、そこから更に16年も塩漬けにされることが許されるような内容だったことになる。
本書では、「海外映画化権の契約では、製作を実現できないプロデューサーの元に映画化権が半永久的にとどまることで知的財産が活用できなくなるのを防ぐために、条項を取り決めることもできます。」として、「権利の復帰条項」(Reversion)が解説されている。にもかかわらず「アリータ」を引き合いに出されると、こういった条項が欠けていた事例に思え、むしろ民間にハリウッドとの契約法務のノウハウが無かったことの証拠に思えてくる。電通経由で、どこの法律事務所が関係したのかは知らないし、実際にどのような契約が締結されたのかは確認しようがないが、確認しようがない失敗のノウハウは、共有されることもない。

そんな状況で、国策として海外へコンテンツを売り込もうというなら、(その国策自体の是非は別にしても、)国がサポートするというのは、そんなにおかしなことだとは思わない。ただし、結果として何の役にも立たないANEWが作られ、投入された税金が雲散霧消したことは、まったく酷い話だと著者に同意する。

自分の経験で言うと、映像制作の現場に法的知識のある人間が必要という観点から、かつて弁護士を目指しロースクールに通った。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの理事などの弁護士から、直接学んだ。しかし、実務家(弁護士)が映像制作現場の状況を理解しているとは思えなかった。それから10年経ち、今なら状況が変わっているのだろうが。

■驚いた話
ANEWの件は長年興味のあった問題であり、著者のSNS等の情報発信をフォローしていた身なので、ほとんどの内容は想定内ではあった。しかし、第4章の「労働搾取を推奨する日本の代表」はぶったまげた。2012年の東京国際映画祭に併設されていたTIFFCOM(テレビ、映画の見本市)にて開催された「日本のインセンティブの未来を考える」というセミナーでのこと。「ジャパン・フィルムコミッションの副理事で、その後2019年10月まで理事長を務めた」人物が、海外の映画製作者に向け、「日本のロケ誘致のインセンティブとなる特典要素」として次のような発言をしていたという。
 ・外国と違い、日本で撮影を行う場合、日本のクルーは週末、深夜、長時間労働に対応が可能
 ・日本のクルーは残業代がかからない
 ・エキストラを無償で用意することができるところもある
著者は、このセミナー以前から、複数の映画産業関係者より、ジャパン・フィルムコミッションがロサンゼルス等海外でのプロモーション事業においても無償残業の提供を吹聴していると聞いていたそうで、それを自分の耳で確認することになり、怒りを覚えたという。この人物は現在、内閣府知的財産戦略本部が組織した映画産業振興のためのタスクフォースや、「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」のメンバーだそうだ。
ぶっちゃければ、確かにそういうこともあるかもしれないが、少なくともそれは悪しき慣行であり、ロケ誘致のインセンティブとして宣伝材料になるような要素ではない。海外の映画製作者が、違法な労働力の提供を魅力に感じると思っている点でアホだし、それを公の場で公言してしまう感覚も理解できない。本書で紹介されている、世界各国がどのようなインセンティブ政策でロケ地やプロダクションの誘致に成功しているかの事例と比較し、驚きを通り越して悲しくなった。

皮肉なことに、「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」が公開している2018年4月の中間取りまとめの報告書には、真逆の記述がある。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/location_renrakukaigi/pdf/h3004_houkoku.pdf
ロケ撮影を巡る現状認識等について、関係団体・企業の委員から、次のような指摘が出たというのだ。
「制作部のスタッフの多くはフリーだが、昨今人材そのものが減少。制作現場としてもコンプライアンス遵守や、働き方改革を意識していかないといけないが、一方で、その皺寄せがフリーのスタッフに行かないよう業界全体として考えていく必要がある。米国やフランスのようなユニオンのような仕組も含め、映像産業全体として、魅力的・理想的な体制を目指すべき。」
「ロケ現場におけるコンプライアンスの確立と強化が重要。日本の製作現場においてコンプライアンスが確立されれば、すなわちそれが海外作品誘致のアピールにもつながる。」

このコンプライアンスの重要性に関する今更の指摘は、同年3月の第3回会議において出たものだ。同会議には、2012年に労働搾取をインセンティブとして海外にアピールしていた件のジャパン・フィルムコミッション理事長も出席している。自らの過去の問題発言の重大性を自覚してくれたと期待するしかない。

■プロダクションインセンティブとか
著者は2017年、知的財産戦略本部へ「日本におけるプロダクションインセンティブ制度設置についての提言」を提出している。
https://hiromasudanet.wordpress.com/2017/02/19/production_incentive_for_japan/
この内容は、本書とも重なるのだが、この後に設置された「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」では、プロダクションインセンティブについての検討がされた。そして昨年、実証調査事業としての「外国映像作品ロケ誘致プロジェクト」を映像産業振興機構(VIPO)が運営事務局となり、支援対象の募集がされた。
https://www.vipo.or.jp/project/locationuchi/
採択案件2作品については、今年1月に公表された。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/location/20200110.html
この重大性について、期待する声も業界にはあるようだ。
https://cinefil.tokyo/_ct/17357929
しかし、これについても本書は、具体的根拠を示して厳しい指摘をしている。

ただ、自分が気になった点は別で、VIPOの示していた当該事業の事業期間は「受給資格通知日から2020年1月31日」とされ、事業終了報告書の提出期限も1月31日とされていたのに、「G.I.ジョー: 漆黒のスネークアイズ」の日本での撮影が終わったのは、2月に入ってからのようなのだ。
https://theriver.jp/snake-eyes-wrapped/
大丈夫か?

尚、今年の募集については、新型コロナの影響で受付開始時期が未定だが、事業期間は2021年2月1日までとされており、もう無理だろうと思わざるを得ない。
https://www.vipo.or.jp/project/location-project/

■蛇足
本書の扱うクールジャパン絡みの問題は範囲が広い上に、映画に関しては特に専門的であり、読み物として面白いわけではない。しかし、最近も新型コロナを大義名分として、何故かクールジャパンに巨額の予算が計上される事案も発生しており、これらの動向を継続的に検証するメディアの必要性が増しているように思う。本書のような問題意識は、もっと共有されるべきだと思う。しかし、こういう本がバカ売れするはずもなく、なんとも難しいですね。

謹賀新年

2018ranpou_blog.jpg
明けましておめでとうございます。
何と、前回の投稿が一昨年の年賀状という酷い状況で、久々の更新です。

昨年は、カジノスクールに通いはじめたのをきっかけに、久々にカジノ通いも復活しました。
最初は、マニラにできた日本資本のカジノ、オカダ・マニラを見てみたいというのがスタート。次は、仁川にできたセガサミー出資のカジノを見てみたいということで、パラダイス・シティへ。
夏は、当初スーパースター・ヴァーゴという船で、横浜から上海へ行って帰ってくるクルーズの予定でしたが、厄介な台風の影響で船会社からクルーズをキャンセルされてんやわんや。急きょ乗れたのが、香港から沖縄へやってくる中国人向けのクルーズで、ゲンティン・ドリームという最新鋭の15万トンの船。船上でのボルダリング、初めて体験しました。
その後、サイパンで仮オープンしてたカジノが、やっと工事が進んで新しい場所で営業開始したというのを知り、何十年ぶりかでサイパンへ。インペリアル・パシフィック・リゾートの宮殿のようなカジノでしたが、まだホテル部分は工事中。ホテルがオープンしたらまた行ってみたい感じでした。
そして、どうせなら、最近の済州島はどうなっているのかと調べてみたら、これまたリニューアルオープンしたカジノを発見。ラマダプラザのカジノが興味深かったので、情報不足でしたが色々回ってみるつもりで久々に済州島へ。最後、カジノからお土産もらってしまいました。
ここまでくると、アジアで行ったことのないカジノを体験してみたいという感じになり、セブ島へ。久々に場末感溢れるカジノに辟易。
この辺で、昨年は打ち止めの予定でしたが、カジノスクールの休みをついて、週末にまた仁川だのマニラだの行ってました。
マニラは、オカダ・マニラ以外にも巨大カジノが3つあり、近場では結構オススメです。
特にそのうちの一つ、リゾート・ワールド・マニラには、フリーベットブラックジャックという面白いテーブルがありました。なんと、9・10・11からのダブルダウンと、20からを除いたスプリットが無料というブラックジャック。高額ベットしてる時にスプリット、スプリット、ダブルとかチャンスが来ると、同時に大ピンチでもあるわけですが、それがノーリスクでできちゃうわけです。こんな素晴らしいルールのブラックジャック、他所のカジノで見たことがありません。ただし、ディーラーが22になっても、バーストではなく引き分け扱いというのが時々痛いのですが(苦笑)

そんな感じで、カジノ法案の行方を横目に、日本にできるはずの統合型リゾートの未来、そこで必要とされるコンテンツとはどんなものか等々、また考え始めました。

年末、古巣のVSLという、今はない会社の忘年会で、デジタル・ハリウッドの杉山校長とか懐かしい人々に会いましたが、思えばラスベガスに通いはじめたのも、デジタル・ハリウッドでSIGGRAPHついでにラスベガスに連れていかれたのがきっかけ。あの時、カジノリゾートとコンテンツの関係を初めて意識しました。
VSL時代の最後、それを引き継いだダイナモピクチャーズ時代と、会社の忘年会でプレゼント交換会をやってましたが、自分はいつも、ラスベガス旅行を誰かにプレゼントしてました。いつか仕事に役立つだろうと。

今年は、カジノスクールの友達とカジノへ行ってみたいです。
そろそろ、筑波宇宙センターでの知財の仕事は終わりにして、カジノとエンタメとコンテンツ分野に軌道修正したいところ。どんな年になるのやら...

謹賀新年

2015nenga.jpg

あけましておめでとうございます。
今年は、グランドキャニオンのブライトエンジェルトレイルを少し下ったところで撮った写真をベースに、スマホのゲームで最近珍しく興味を持ったIngress風味にアレンジしてみました。
なお、フォントやロゴは以下を使用させていただきました。
http://tanukifont.com/ingress-glyphabet/
http://cr0ybot.github.io/ingress-logos/


昨年は、最後の受験も結果を出せず、ただの無職となりました。
長年応援してくださった方々の期待に応えられず、申し訳ありません。

社会復帰する前にと、色々と旅行など画策し、あれやこれやと時間が過ぎましたが、古巣の社長に「ダメでした」報告もして自分なりにケジメをつけ、年末を前にやっと職探しを始めました。で、長年の目標を失い、さて何をするかと考え始めると、41歳にして無駄に悩むのであります。

行政書士だの知的財産管理技能士、ビジネス実務法務検定なんぞの資格はあるけれど、長年法律を勉強したからとそれを生かそうとこだわることは、サンクコストを切り捨てられないだけなんじゃないか?

でも、知財を勉強したのは、そもそもコンテンツ界隈の発展に寄与したい的な、制作現場の役に立ちたい的な、モロモロの思いがあったからで、そこにつながる仕事にこだわるなら、単なるサンクコストじゃないよな、とか。

久々に就活してみると、41歳なんて悩んでる時間はないのだという現実も直視することになるのですが、ここまでやりたいことをやってきたのだから、単に資格や能力が条件を満たすだけの仕事には躊躇するのであります。

それでも、偶然にも超興味のある求人を見つけ、年末に一社応募してみました。就活年越し予定はなかったのですが、自分的にツボな仕事を見つけてしまったので、応募してみる価値はあると。まあ、転職エージェントは条件に適合すると認めてくれましたが、面接に進めるかはまだ分かりません。

書類選考で落とされたら、残ってるデルタのマイレージ14万マイルで現実逃避するとかしないとか(苦笑)

そんなこんなで、本年もよろしくお願いいたします。

ご無沙汰

気がついたら、半年以上も更新してませんでした。

最後の司法試験を三振し、これから何にチャレンジしようかな...という今日この頃。
というか、早く社会復帰せねば(^^;

お勉強のために仕事を辞め、長らく引きこもり生活をしていたので、我慢していたやりたいことというのが色々とあり、第二次モラトリアムというか人生の岐路のようなこのタイミングで、それをやってから次の路へ...とか思っていたけれど、無職のくせになかなか自由にならないものです。

血迷って、山形まで合宿免許取りに行って、40歳の終わりに初自動車免許を取得。
合宿で一緒になった女子大生とFacebookでお友達になってニヤニヤしたとかしないとか。

久々に広島国際アニメーションフェスティバル行って、働いていた会社の特殊映像研究会の部員の面々と飲んだとか。

芦ノ湖でインフレータブルカヤック初挑戦して、そのまま箱根から自転車で杉並の自宅まで帰ってみたとか。(帰宅途中でスマホのバッテリー切れて、トラックデータは自由が丘で終わってます

高校時代の野球部の監督が退職したので、お疲れさま会に参加したら、酔ってヘベレケな監督と抱き合ってしまったり、厳しかった先輩が僕が司法試験チャレンジしてたの知ってて気にしてくれてたのを知ってちょっと嬉しかったとか。

本場のバーニングマン行きたいと思って色々準備したけど行けず、グランドキャニオンの谷底のPhantom Ranchに泊まりたいとか色々調べたりしてたら、何故か母と叔母の70代姉妹のラスベガス旅行のツアコンとなり、久しぶりにラスベガスへ2週間行ってきたとか。

そんなこんなの近況です。

高齢者の旅のお供は、本当に大変で...というのはどうでもいいのですが、元々ラスベガス好きなギャンブラーなので、この2週間の旅の紹介で、ブログ再開してみようと思います。これからラスベガス行きたい人には、少しは役立つかと。まずは、旅の準備段階のSIMのお話を。

■旅の準備:スマホのSIMをどうするか
久々の海外旅行ということで、旅行事情の浦島太郎状態から情報収集せにゃならなかったわけですが、同行者を迷子にするわけにいかないので、まずはメンバー間の通信手段を安価に確保するところから調べてみた。

とはいっても、高城剛氏をこよなく尊敬する身としては、国際ローミングで高額請求されるに任せるなどあり得ない。海外じゃ、スマホのSIMを差し替えるのが当たり前、くらいのことは遠い記憶に残っていた。
幸い、以前からSIMロックフリーなイーモバイルのスマホばかり使って3台目なので、同行者二人には使わなくなった古いスマホを貸せば、端末は足りる。

問題は、どこでアメリカのSIMを入手するか...

●HanaCell
で、SIMだけなら安く入手できるとは思っていたけれど、こんな安さは想定外。
http://www.hanacell.com/jp/tariff/simonly.php

送料込みで1ドル?
は?
こんな会社知らないけど、何か裏があるんじゃないか?

というのが、最初の感想。
-->2015/1/4追記
いつの間にか9ドルに値上げされてた(^^;
<--

月額基本料金のかからない「プリペイドX」の場合
米国内の通話料金:$0.27 /分
データ通信:$0.50 /MB

まあ、データ通信が割高だけど、ラスベガスはホテルでWiFi使えるので、余程のことがなければスマホでデータ通信はしない前提(タブレットにデータ通信専用のSIMを買う予定だった。)で、短期の旅行なら十分安心して使える通話料金。

しかも、「プリペイドX」なんて商品名なのに、チャージする必要なしの「使った分だけ後からお支払い」って、どこがプリペイドなんじゃい!(^^;
と思わずつっこみたくなる明朗会計。次にいつ渡米するか分からない旅行者としては、使わない間は一切費用がかからないのに電話番号が維持できるなんて、本当に助かる。
どうやら、mobellの子会社らしい。

$1ならダメもとで...ということで、とりあえず自分一人契約。
アメリカからじゃなくて、日本に発送元があり、注文からほんの数日で本当にSIMが届いた。

DSC_5177.jpg

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これと並行してメールで、SIMに割り当てられる電話番号の案内も届いた。(アメリカでしか使えないSIMは、アメリカで使える状況になるまでスマホに電話番号は表示されないので、出発前に日本で番号を教えてくれると知人に教えたりできるので助かる。)

悪い噂も見当たらないので、これなら大丈夫だろということで、同行者二人それぞれにもHanaCellと契約してもらった。その際、先に契約した自分の電話番号を伝えることで、お友達紹介キャンペーンで$10の無料通話ももらえてしまった。

結果、最初の渡米地ポートランドでスマホの電源を入れ5・6分後、スマホに電話番号が表示され、無事に通話できるようになった。その後、ラスベガスでもちゃんと使えた。ただ、グランドキャニオンでは、Maswik Lodge周辺で一度だけ通話しようとしたが、アンテナが立たず使えなかった。

カバーエリアはAT&Tの基地局により、以下から確認できるが、グランドキャニオンは「Partner」の地域となっていた。
http://support.hanacell.com/jp/myService/documents.php
Partnerでも使えることになっているが、自分が使えなかった時の状況を詳しく調べなかったので、どうして使えなかったのかは分からないが、目的地がカバーエリアかどうかは契約前に確認すべきだろう。

いずれにしても、現地での通話はHanaCellで格安に確保でき、非常に助かった。


ちなみに、GSM方式で850MHzと1900MHzに対応していることが「ケータイ持込み」プランの条件であり、古いS31HWS51SEがそのまま使えた。ただ、事前にHanaCellに問い合わせた際、イーモバイルがSIMロックフリーであることや、S31HWがIDEOSであることをサポート担当が知らなかったりしたので、日本のスマホ事情を詳細に理解されているわけではないかもしれず、自分のスマホが対応しているかどうかは、自分でよく確認した方が良いだろう。SIMロックフリーのスマホだからと、周波数が対応しているとは限らない。

また、アメリカの携帯の電話番号は、日本と違って市外局番が割り振られるので、ケータイ持ちこみプランで申し込むにしても、とりあえずの訪問先のZIPコードが必要になる。ラスベガス旅行なら、宿泊するホテルの住所に「89109」とか5ケタの数字が書いてあれば、それを伝えることでラスベガスの市外局番でSIMに電話番号が割り当てられる。申し込み時、どうして滞在先の郵便番号が必要なのか不思議に思うだろうが、とりあえずそういう仕組みなので、その市外局番で電話番号が割り振られたからと、他の地域で使えないわけではないので、一番滞在時間の長そうな地域の郵便番号を申請すると良いだろう。

●READY SIM
スマホと別に、タブレットのNexus7にデータ通信オンリーのプリペイドSIMを探していて、データ通信はタブレットだけにしようと思っていた。そこで見つけたのがこれ。
http://www.readysim.com/shop/data-only.html

http://www.blogfromamerica.com/wp/?p=20954
http://www.blogfromamerica.com/wp/?p=16626
ここで、単発渡米の旅行者にREADY SIMがすすめられていたのがきっかけ。
この商品購入代行で、Dataオンリー14日間500MBのREADY SIMが、送料込みで$19.50で売られていたので、旅行の期日が迫っていたがギリギリ間に合いそうなので申し込んでみた。ところが、READY SIMの入荷がいつもより遅れてしまい、結局旅行に間に合わないので、先方が注文をキャンセルしてくれた。

それでも諦めたわけではなく、現地で買えば良いと思っていた。
http://www.readysim.com/where-to-buy
ここでラスベガスのZIPコードを入れて検索すれば、ディーラーがいくつも表示されたから、不安はあったが買えないことはないと思っていた。

ところが、Tropicanaの「Essentials」や、Excaliburの「Welcome to Las Vegas」に行っても、売ってるのはスマホ用のPhone/Text/DataのSIMばかり。タブレットのDataオンリーのSIMは皆無。たった2軒で諦めるなと言われそうだけど、Excaliburの「Welcome to Las Vegas」はショップを見つけるだけで精根尽き果ててしまった。

最初、ホテル内でちょっと探して見つからなかったので、ホテルの人に聞いたら、「Welcome to Las Vegasはラスベガスブルーバードは南に行って...」とか道順説明が始まった。

待て待て、それはあの有名な看板の話だろ?
http://en.wikipedia.org/wiki/Welcome_to_Fabulous_Las_Vegas_sign
聞きたいのは、観光名所になってる看板のことじゃなくて、このホテル内のショップのことなんだよ。Welcome to Las Vegasってショップ名なの。

すると、知らないからコンシエルジュに聞いてみろと。

仕方ないので、運悪く行列のできてるコンシエルジュのカウンターに並んで待つこと十数分。やっとコンシエルジュに質問した回答が、
「Welcome to Las Vegasはラスベガスブルーバードは南に行って...」
待て待て。おまえもか。

Welcome to Las Vegasはこのホテルのテナントで入ってるショップの名前なんだよ。
何?知らない?
いやいや、だから、READY SIMってSIM業者のホームページで、地図入りでこのホテルのショップがディーラーとして紹介されてんだよ。こういう名前の店が、このホテルにあるはずなの。
知らない?マジですか...

段々こちらも、READY SIM側の情報が間違ってたんじゃないかと不安になったところで、ちょっと待てと。日本人かと聞かれ、待たされた結果、なんと日本語通訳が電話で登場。

えーー
たかが店の場所質問してるだけなのに、通訳さまの登場?
確かに自分の英語は酷かったけど、意思疎通はできてたと思うのだけど...

申し訳ない気分いっぱいで、通訳に状況を説明。コンシエルジュはないと言ってるけど、そういう店を探してるだけなんだと。

ところが、この会話の最中に、コンシエルジュが何か思い出した。
通訳から、2Fにそういう看板を出してる店があるとコンシエルジュが言ってると伝えられる。

だろーーー
あるだろーーー
ないのに理解できないで駄々こねてる日本人じゃなかったろーーー

その後、コンシエルジュ自身がショップまで連れて行ってくれることになったのだけど、店が多すぎて把握できなくて...みたいな言い訳を、恥ずかしそうにしていた。

そうして、ショップに到着するまでに、新たな悩みが生じた。
このコンシエルジュは、自分のホテルのテナントの名前も覚えてないなんて使えないけど、英語の不自由な日本人にわざわざ通訳を呼んでくれたし、お店まで直接案内してくれるとか、親切ではある。この一件だけで、もう30分以上は費やしてる。一応誠実にここまでしてくれてるけど、チップを払うべきか...

いや待て。そもそも、コンシエルジュがテナントの名前を覚えてれば、ものの数分で解決できた問題じゃないか。場所だけ教えてもらえれば、わざわざ店まで連れて行ってもらうほどの問題ではない。通訳だって、いらなかった。親切だけど、時間を浪費された自分は、本当は怒っても良い状況のような...だって、探してるのはたった$15.00の品だぞ。

とかグルグル考えているうちに、店に到着。
確かにその店は実在した。

コンシエルジュには、日本式に頭を下げて、礼を告げた。
チップを待ってる感じで直ぐに立ち去らないコンシエルジュに、にこやかに二度目の頭も下げた。コンシエルジュは、後ずさりしながら二度見して帰っていった。

まあ、そもそもコンシエルジュのサービスにチップが必要かは分からないが、有能なら即答できるレベルの、明らかにチップ不要な容易な要求しかしてないのに、たまたま能力不足な故に時間をかけて親切丁寧にサービスを受けてしまった場合にチップを払うというのも変なので、これで良かったと思う。

で、苦労してたどり着いたそのショップでREADY SIMを探した結果、Dataオンリーはなかったわけだ。これで、能動的にディーラーを探すのは諦めた。旅先の貴重な時間を無駄にできない。

後は、他の買い物でSIMを扱ってる店に入るごとに、READY SIMに限らず適当な商品がないか探していたが、他社製品は割高で、結局買わなかった。

旅先でのデータ通信の必要性は人それぞれだろうが、自分の場合、WiFiの使えるホテルにいる間にほとんど用事が済ませられた。旅先の屋外で一番使うアプリはGoogleマップだと思うが、事前に地図は保存できるので、現地で通信できずとも使える。ホテルの部屋のWiFiで地図を保存し、次の移動先までのルートを検索すれば、初めてのバス停に迷わずたどり着いて、バスに乗って目的地に到着するまで、Data通信は必要なかった。

困ったのは、WiFiのなかったグランドキャニオンの宿くらいだった。事前に読み込んでいた地図より、詳細な拡大地図が見たくなったが、できなかったので夜中に迷った(苦笑)
(その辺の話はまた後で)

まあ必要はなくても、使えれば便利なわけで、次の機会があれば、またREADY SIMを注文したくなるだろうけれど、現地のホテルに届けてもらうという方法を紹介されているのを見つけた。
http://blog.livedoor.jp/rakutk2010/archives/4732560.html
まあ、今回の場合はホテルに届けてもらうにも日程に不安があったので、どうしようもなかったとは思うが、現地のホテルに届けてもらうなら送料かからないとなると、それが一番安い買い方なのだろう。ホテルでチップを払うかどうかは知らないが。

ということで、次回はポートランドについて。
ラスベガスにポートランド経由で行くと、結構楽しいよ、というお話。

待機児童問題で都知事を選ぶなら

http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/03/tochiji-taikijidou_n_4720496.html
これ見て、「保育園ふやし隊@杉並」の各候補への待機児童対策についての公開質問の答えを見た。

宇都宮さんも舛添さんも、一見するともっともなことを言っているように見えるけれど、はたしてそうだろうか?

例えば、「認可保育所の増設について、東京都としてどのように支援しようとお考えですか。」と聞かれて、宇都宮さんは認可保育所の増設で定員を増やすとしか答えてなくて、それを東京都としてどう支援するか答えてない。
区立の保育園は存在しても、都立の保育園なんて聞いたことがないわけで、認可保育所を増やすとか都知事選で言われても、そもそも保育所を作るのは東京都の仕事ではない。どうして都知事候補がそんな約束をできるのか、イマイチよく分からない。これが区長選なら、もっともな公約なんだけど。
「保育園ふやし隊@杉並」の側は、実際に作るのは東京都じゃないことを理解してるから、どう「支援」するかと聞いているのに、宇都宮さんは質問の意図を理解できてないわけだ。

舛添さんは、質問の意図は理解していて、「運営事業者が初期投資を押える形で認可保育所を設置できるようにする」とは答えているけれど、他の討論番組なんかでの発言を聞いていると、基本的に施設の要件の緩和(規制緩和)が当たり前と考えているようだ。

まあ、いずれにしても、認可保育所を増設するとか、そのために要件を緩和するとか、保育士の待遇改善で人員を確保するとか、そんなの誰だって最初に考えるレベルの話でしかない。

もっと、既に子供一人当たりにすれば高額な税金を投入しているのに、どうして今まで問題が解決しなかったのか、そこに触れてもいいじゃないか。例えば、年収800万円を超えてる正規の年配保育士の隣で、非正規の若い保育士なんかが年収200万円以下とかで働いてたりするかもしれないわけでしょ?

こんなブログがあった。
http://d.hatena.ne.jp/azuma_ryo/20100826/1282795083
「自分の4倍も給料を貰っている人が隣で働き、経験の差はともかく、仕事内容もについても同じ保育だとしたら、モチベーション下がりますよね。オマケに指導等が丁寧にあるわけではなく、感覚で覚えろという姿勢であれば尚更です。そのためすぐに辞めてしまい、保育士に嫌気がさし、別の業界に行ってしまうのです。ちょっと脱線してしまいましたが、これが保育士が不足している理由のひとつです。
補助金の額が少ないのではありません。年配職員の既得権利にしがみつく姿勢こそが若い人を苦しませているのです。これが理由のすべてではないですが、大半を占めていると私は思います。」

自分も昨年10月に、NHKが保育士の平均賃金についての誤報を流した時に書いたけれど、
http://maruko.to/2013/10/post-146.html
2000年以前の行政職俸給表で高給をもらってる年配保育士の既得権益に、切り込む候補者はいないのかな?

まあ、宇都宮さんなんか、支持政党の性格からして切り込めないのは当たり前なんだけど、だとしても他にやり方はある。

もちろん、極論的に紹介されてるこんな案はダメだろう。
http://wk.tk/7MF
「コストだけを考えると、0~5歳の子どもひとりにつき、月20万円現金で渡してしまったたほうが良いかもしれません。
20万円もらえるなら、家にいて自分の子どもの面倒をみたいという親はたくさんいるでしょう。逆に保育園が空いてくるのではないでしょうか。一気に待機児童も解消です。」

自分で面倒を見る親に現金を渡すというだけでは、自己実現としての仕事を失いたくない親には解決策にならない。しかも、直接現金がもらえるなら、もらえない地域からの転入が大変な数になるだろう。あくまで、働きたいor収入を失うわけにいかない親に対する支援であるべきだ。

なら、現在の育児休業給付金に対して、
http://allabout.co.jp/gm/gc/10843/
保育にかかる行政コスト分を上乗せする形で、期間も1歳半までなんて制限もなくし、もっとフレキシブルに利用しやすい制度は考えられないだろうか。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/
事業主への給付金との中間的な制度設計にして、解雇しない事業主へのインセンティブ的な性格を強化しても良い。

この場合に間違ってはいけないのは、安倍政権が当初叩かれた、3歳まで母親が育てろという3歳児神話のアレ(親学)のためじゃない。
例えば、本当は自分で面倒を見たいけれど、親が収入を失うわけにいかないために保育園に預けたいor預けているいという場合、預けなくとも収入が確保されるなら、そっちの方が理想という人も一定程度いるわけだ。
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2011/0331/398321.htm?g=05
パートなどで働く週3日だけ一時保育を利用し、残りは自分で面倒を見るなら、保育を利用しない残りの日の分に給付金が出るとか。今はフルで預けて働いている人でも、給付金が出るなら週の半分は自分で面倒を見たいとか。需要ないの?
選択肢を増やすことで、保育園や保育士が増えずとも、需要側を減少させる役には立つかもしれない。


ところで細川さんは、「保育園ふやし隊@杉並」の公開質問に対し、
「立候補表明に際して発表した政策方針において、『「待機児童ゼロ」を任期の間に早急に実現します。全国の先進事例に学んだ行動計画をつくります。』と表明しております。ご質問の諸点は、就任後に、皆様のご意見も参考にしながら、検討し、判断してまいりたいと存じます。」
と回答している。

(他の争点の、青少年健全育成条例について、「エンターテイメント表現の自由の会」から公開質問された時も、細川さんは就任後に検討すると答えている。勉強不足な点を隠さず、安易に答えない、ある意味正直なところがある(^^;)

それでも、ニコ生の討論番組では、施設の要件緩和(規制緩和)を主張する舛添さんと対照的に、要件緩和は慎重であるべきだと強調していた。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw935913
「待機児童の問題でですね、何年間でゼロにするというような、いろいろな、それぞれに公約を出しているわけですけれども。でも、最低基準は一畳の畳にひとり、ということになっていますね。そこにただスペースの問題でですね、スペースを広げるだけで、3人4人も一畳のたたみに子どもが入るということになれば、これは本当にちょっと大きな問題だと思うんですね。だからやっぱり質の問題を考えないと、ただゼロになっただけでは、私はやっぱり問題は解決しないと。そう思います。」

最近も、認可外で死亡事故の発生率が高いというニュースがあったばかりだけど、細川さんも、子供の環境を軽視すべきではないという問題認識は持っているわけだ。

「保育所事故で19人死亡 自治体任せ、検証ゼロ」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014020202000096.html

舛添さんは、
「切羽詰まっているんですよ。共稼ぎしたい、仕事と家庭を両立したい、そうしたときに、100%しか保育士が揃ってなければ入れちゃいけませんよっていう立場と。そりゃですね、10人必要なのに、1人しかいない。それはもう論外ですよ。だけど、8人まで揃っているんですから、それでどうですか、っていったときに、私は、切羽詰まっているお母さんの立場になれば、「それでも入れて下さい」ということがあるんではないでしょうか、ということを申し上げているんで。」
ということで、働きたい母親のためなら子供の環境は多少悪くなってもいいじゃないか、という発想なわけだ。

この二人の違いは、とても分かりやすい。


つまるところ、この争点でこの面子から選ぶなら、あまり解決策にならない主張ばかりする候補と、子供の環境への認識の甘そうな候補と、問題意識は共有しつつも当選後に熟考すると言っている候補と、どれを選ぶ?ということになるみたいだ。

ちょっと究極の選択っぽいけど、これから考える人の方が、のりしろがありそうに見えてしまうのは皮肉なものだ。細川さんに実務的な副知事がついたら、面白い化け方をしそうだとも思うのだけど、こればっかりは分からんですね。

職務発明の行方

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg8701.html
5分くらいからの、特許権の職務発明についての話は重要。研究者な知り合いがいたら、教えてあげよう。

経済界からの要望で政府は、
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0700A_X00C13A6EB1000/
職務発明の権利を現在の発明者帰属から、法人(使用者)帰属に法改正する検討を始めるというのが前からニュースになっていた。成長戦略として、企業の経営上のリスクを軽減すると閣議決定も。
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/046.html
知的財産戦略本部が6月7日に発表した知的財産政策ビジョンは以下。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/vision2013.pdf

その後の、いわゆる産業界側な面々の一方的な世論作りは、かなりドン引き。
『「職務発明は法人帰属にすべき」特許法第35条改正に向けた取り組み(上)
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20130807.html
「職務発明がその企業(法人)に帰属するのは、本質を考えれば当然のことなのです」
「『対価』ありきは、疑問! 発明者への褒賞はリスクをとっている企業が自身の裁量で決定すべきものです」

『特許法第35条の改正は産業競争力強化に必要な「制度のイノベーション」特許法第35条改正に向けた取り組み(下)
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20130809.html
「職務発明を法人帰属にしなければ本質的な問題は解決しません」
「職務発明がその企業(法人)に帰属するのは、本質を考えれば当然のことなのです」
 ↑
 重要なので2度言ってみたの?(苦笑)

要は、「相当の対価」も払わずに、特許を受ける権利や特許権(以下「特許を受ける権利等」とする。)を発明者個人から会社側が奪うのが、彼ら的には「本質を考えれば当然」というお話。

詳しいツッコミはあとでするが、まあこれだけ見ても、「日本て研究者に冷たい国なんだな」と分かってしまう残念さ。(もちろん、まともな会社さんも多いことは、言うまでもないが。)

で、まあ知財界隈では賛否両論のインパクトのある話題なのだけど、一般ウケは低調という感じだった。
http://webronza.asahi.com/science/2013061800002.html
みんな、自分は発明なんかしないと思ってるので、どうでもいいのだろう。むしろ、個人から権利を奪ってみんなで富を分配する方が、自分の利益と思っているとかだろうか。日本人は社会主義的な仕組みが好きなのかね。

この間、特許庁は
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC0300S_T00C13A7EE8000/
「企業の知的財産担当者や学者など約15人が参加し、特許を受ける権利の帰属や社員への対価について議論」してもらっていたそうだ。

設置された職務発明に関するワーキンググループは、8月から3回開催され、その経過を受けての中間報告が冒頭の動画でされているわけだ。そこで、動画中のパワポ画像からポイント3つを書き出してみる。
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●ポイントその1
研究者のインセンティブ確保のためには、処遇、研究の自由度、予算など、研究開発環境を向上させることが決定的に重要!
●ポイントその2
・産業界と企業研究者のご意見:
 発明の源泉は「チームの強み」
・大学の研究者のご意見:
 発明の源泉はスーパー研究者などの「属人的な能力」
●ポイントその3
職務発明制度の見直しについて国民の理解を深めるためには、客観的なデータを示すなど丁寧な説明が必要
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その1については、職務発明制度見直しの前提として「産業界が、発明者のインセンティブ向上のためどのような対策を講じるのかを具体的に示すことが必須」というのだが、企業側は、相当対価請求権の有無に関係なく、発明者のインセンティブを高めることは大事なんで、色々やりますよと言ってるそうだ。そんなの当たり前すぎて、声を大にして言うほどのことではないのだけど、わざわざ言わなければならないくらい、今まで蔑ろにしてきたのかもしれない。

その2いついては、立場の違いが明らかだ。これを念頭に、柔軟な制度設計の検討が必要というのだけど...

発明者個人の能力こそが発明に必要不可欠という、大学の研究者の意見は分かりやすい。が、産業界の意見というのはどうだろう。確かに、発明者をサポートするチームは重要だ。しかし、それは属人的な能力を否定する根拠になっていない。要は、プロデュースしたのは企業側だと言いたいのかもしれないが、それを強調し過ぎてスーパー研究者はいなくてもOKと言っているようなレベルまで研究者をボロクソに言っていては、両者の溝が埋まるとは思えない。

でもってその3は、なんと約1.4万人の研究者に対し何がインセンティブか、約2千社の企業に対し職務発明制度の運用実態はどうなのか、特許庁にアンケート調査するように指示したそうな。
今のところ企業側は、対価請求権があることで対価についての予測可能性が低くなり、そんな不確実な制度では海外の研究拠点で研究者が集まらないだの、みんな海外に行ってしまうだのと主張。それに対して研究者側は、職務発明が法人帰属になったら、優秀な研究者はみんな海外に逃げてしまうと主張。互いの言い分が真逆で平行線なので、網羅的客観的な調査を行って、実際のところを判断しようというわけだ。

そりゃ凄い。本当に客観的な調査ができるなら、是非やって欲しい。いつの間にかロビー活動で議員立法されちゃうとかじゃなくて、当事者の意見を生かした客観的論理的な判断ができるなら、これは素晴らしいことだ。(そういうことができるなら、昨年の著作権法の改悪なんかも再調査して、元に戻してもらいたいのだけど...)

問題提起した産業界からすれば、自分たちの言い分だけ聞かれるはずが、まさか客観的に調査されるなんて、寝耳に水だろう。今後は、この調査の行方を冷静に見守り、報道がどこかの影響力で変な記事で世論を誘導したりしないか注視したい。

ということで以下は、ポイントその2について考えるために、冒頭で後回しにするとした日経BP知財の2つの記事から、企業側の論理について理解してみたい。(以後、日経BP知財の2つの記事からの引用は、それぞれ(上)(下)で示します。)

■研究者の扱い
(上)「イノベーションは個人ではなく、組織が実行するものです。企業はイノベーションを起こすためヒトやモノに投資します。そこから生まれてくる職務発明は従業者個人に帰属するのではなく、企業に帰属するのが本来の筋であると考えています。」
(上)「企業はヒトとモノに対して投資します。事業活動で企業に帰属しないものは何かと考えると、特許の権利以外ありません。事業活動の中から生まれてくるもの、例えば製品やサービスなどのアイディアはすべて企業に帰属します。研究所に投資して、研究テーマに投資して、研究者に投資して、そこから生まれてきた特許の権利だけがなぜか企業に帰属しません。企業は従業者(発明者)から権利を買い取らなければなりません。こうした構造そのものがとても不思議です。」

どうも視点が一方的過ぎると感じる。研究者の関わり方、企業の開発環境や規模、プロジェクトの置かれた状況など、発明と言ってもその成立過程は様々なパターンがあるはずだが、そういう違いを考慮していない感じだ。

(上)「そもそも発明者には他の社員と同じようにきちんと給与が支払われているのです。なぜ、発明者に、他の社員の仕事の結果とは異なる特別な手当てをしなければいけないのかについて合理的な説明がつきません。」
(上)「イノベーションの観点からすると研究者以外の従業員も重要です。なぜ研究者だけが法律で守られるのか、そこが不自然に思われます。」

少なくとも彼らの認識している企業では、研究者というものを何も特別視していなくて、事務職や営業職と同じなんだと言いたいらしい。

(上)「日本企業の研究者は雇用が守られ、リスクはほとんどありません。それにもかかわらず、特許に基づく製品利益の何%かの対価請求権を持っています。それはビジネスの常識から考えるとおかしなことです。」
(上)「リスクをとっているのは企業です。発明者はリスクをとっていません。終身雇用的制度の中で研究者は研究しています。」

余程お気楽な仕事と思われているのだろうか。
終身雇用でリスクがないとか、研究開発部門のある日本の企業って、潰れず、リストラもしない良い会社ばかりなんですか?
へー知らなかった(棒読み)

ベンチャーや中小の研究者は、ガン無視って感じですかね。
まあとにかく、彼らが研究者のことを本当に下に見ているということが分かります。
それがビジネスの常識なら、まずは常識を改めるところから始めてはいかがでしょうか。

(上)「企業にはいろいろな部署があり、特許技術を事業化して成功を収める上ではそこで働く人たちにも大きな貢献があります。」
(上)「企業活動は研究、企画、製造、営業など役割分担の中でチームを組んで進められます。そうした中で特許法第35条は企業活動の大きな混乱要因となります。従業員に対する不公平感を生じさせます。」

不平等だから研究者を優遇しないとおっしゃる。

(下)「例えば、生産ラインで車を作っている労働者が完成した車の所有権を主張できるでしょうか。完成した車は労働者のものではありません。労働者は労働を提供し、給与を得ています。労働の中で生産された車は当然企業の所有になります。労働の中で生まれたものが、車なのか職務発明なのかの違いだけです。」

うわぁ...こうゆう比較が適当だと思ってるわけですね。

(下)「職務発明の対価は、企業の中で公表されていません。なぜなら、従業員が非常に不平等を感じるからです。企業の中である事業が成功すると、それに最も貢献した人が誰であるかは関係者であれば分かります。ところが、特許法第35条はそんなことは忖度しません。」

35条5項は相当の対価の額について、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。」と規定しているので、発明者以外の貢献は使用者等の貢献に含めて算出すれば良いかと。関係者なら貢献具合が分かるというなら、簡単でしょう。

(下)「発明者以外の従業員からすれば、なぜ発明者だけが特別の対価を得られるのかという気持ちになり、不平等感を持つのです。多くの企業で少しずつこうした不平等感を持つグループが生まれているのではないかと思います。」

なんか、仲間の成功を妬む人だらけな、嫌な雰囲気の会社が多いということですね。
で、妬む人を基準に、平等に利益を分配すべきって感じですか。
そういう企業さんは、まさか、非正規雇用を低賃金で使ったりはしてないですよね。
同一労働同一賃金なんて、当たり前になってますか?
まさか、都合の良い時だけ、平等とか持ち出してこないで下さいよ。

(下)「収支に増減がある中で、企業は安定的な雇用を維持するために努力し続けています。それが企業の存在意義でもあります。特許法第35条でこうしたことが捻じ曲げられるのが問題です。」

失敗もあるのに、成功した場合に対価を吐き出したら、企業は成り立たないと言いたいのですね。でも、35条は、全て吐き出せとは言ってないですよね。そんなことしたら会社が潰れちゃうことくらい、一般企業に勤務経験のない裁判官だって、理解できると思いますよ。それに、そういう心配をしているなら、そういうことを特に考慮すべき事項として、35条5項に文言として入れてもらえば良いのではないですかね。相当の対価の算定に反映されるように。「捻じ曲げられる」とか、単なる被害妄想だと思いますよ。

(下)「「対価」ではなく、成果が上がれば「報奨」という形で評価していくことが適切であると考えます。」

ははぁーん。飼い犬が芸をしたらご褒美をあげる感じですかね。
飼い犬が飼い主に何か要求する権利を持ってるのが、しゃくなんですね。
でも、成果にみあった報奨を払っていないから、裁判になってるって可能性はないのですか?

(下)「今の法律で多くの企業が悩んでいるということは、法律そのものを変える必要があるのではないかと考えました。」

企業の都合で法律は変わるべきだと...

(下)「欧米のように成熟した社会で企業の営みの本質が理解されているような国では、おかしなことは起こらないでしょう。契約社会である米国であれば契約で処理されます。仮に訴訟が起こっても、コモンローに基づき妥当な判断が下されるでしょう。ところが、日本は成文法の国です。予定調和的に処理されていたものが否定され、文言通りに解釈されると企業にとっては大きな問題となってしまいます。」

日本は未成熟社会で、成文法はクソだと言っているのですね。
でも、日本だって、判例の蓄積によって判断が妥当になっていくことはありますよ。
判例が反映されて法改正されたりもするのですから。今の35条だって(ry

(下)「海外の特許制度との比較は難しい面があります。特許法の条文だけで比較するのではなく、労働環境や従業員の報酬制度などを含めて比較することが必要となります。」

これは同意しますね。
労働法とか含めた視点が必要かもしれません。
終身雇用ばかりの会社とは限らないので、研究職の雇用の流動化も踏まえて、契約社会に馴染まない日本人がどうやったら保護されるか、考えるべきでしょう。

(下)「日本の企業の場合は、研究者を総合職として雇用し、研究職以外に配属する可能性があります。研究者は経営企画部門や営業部門に配属されることもあります。」

研究職に就きたいのに、配属先が営業とか、本当に悲しいですね。
まあ、会社都合だから、仕方ないですよね。でも、その会社都合を理由に、研究職の待遇も下げたいとか、面白い論理構造ですね。

(下)「同じ仲間である研究者を我々はリスペクトしています。もちろん、お金を欲しいですかと聞かれれば、それは欲しいと答えるに決まっています。ではお金のためだけに働くかといえば、実はそうでもありません。」

あはは。リスペクトすればOKって、違法にアニメをネットにアップする中学生と同じですね。それに、リスペクトで満足できる人が、本当にリスペクトされてると実感してるなら、そもそも裁判なんて起こさないでしょうね。
大体、上で今まで言ってることをどう解釈しても、リスペクトのリの字も感じられませんけどね。


ということで、我が国の産業界における研究者の扱いが、大体分かったでしょうか。
(重ねて言うけど、こんな酷い会社ばかりじゃない。)

■ついでにイチロー
企業側の論理では、
(下)「野球ではイチローみたいなスーパースターがいます。しかし、イチローもチームの一員としてチームプレーの中でスーパースターとなっています。1人でプレーが成立しているわけではないのです。」と言われている。

対して、iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が、青色LED訴訟で多額の対価を得て話題になった中村修二氏に触れつつ、研究者の金儲けについて語っている場面ではこうだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20121009/237845/
---
山中:中村先生は勇気を持って、当然の権利を主張したと考えています。その彼が、今は米国で教壇に立っている。日本人としては寂しいことです。すごい技術を開発した研究者に、日本の若い人たちが学び、後に続くことができたら、どれだけ素晴らしいことか。
 ただ、多額の報酬を得ることへのアレルギーは、少しずつ緩和されているかもしれません。イチローなどの野球選手は、何十億円稼いでも叩かれなくなりました。サッカー選手も同じです。
---

産業界は、スーパースターのイチローの成功はチームのお陰と言いたいのは分かったけど、彼が「相当の対価」を十分に得ていることを無視している。おまけに、海外に移籍していることも。
発明者の権利を企業が奪う論理に使われてしまったイチローからすれば、自分の努力を否定されたようなものではないだろうか。

イチローが結果を残しているのは、どう考えてもイチロー個人の「属人的な能力」が優れているからでしょ。


■忘れてはならない雇用状況の変化
終身雇用・年功序列賃金を前提とした古い時代には、会社に長く居続けることにインセンティブがあったのだから、上手く回っていたのだろう。会社と争う研究者は稀で当然。ところが世の中は、研究職の雇用も流動化している。

http://okwave.jp/qa/q3615269.html
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2008/1113/212676.htm

もちろん、研究職と研究補助職をごっちゃにしてはならないが、チームの強みが発明の源泉というなら、チームみんながもっと優遇されて然るべきだろう。

スーパー研究者な山中教授のiPS細胞研究所の職員の9割が非正規雇用だったりして、そういう研究者自身が、最もその状況を危惧していたりする。
http://blogos.com/article/48270/


こんなのもある。

「平成24年度科学技術の振興に関する年次報告」(平成25年版科学技術白書)
第4章 基礎研究及び人材育成の強化、
 第2節 科学技術を担う人材の育成
  2 独創的で優れた研究者の養成
  (2)研究者のキャリアパスの整備
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa201301/detail/1338261.htm
「優れた研究者を養成するためには、若手研究者のポストの確保とともに、そのキャリアパスの整備等を進めていく必要がある。その際、研究者が多様な研究環境で経験を積み、人的ネットワークや研究者としての視野を広げるためにも、研究者の流動性向上を図ることが重要である。一方、流動性向上の取組が、若手研究者の意欲を失わせている面もあると指摘されており、研究者にとって、安定的でありながら、一定の流動性を確保されるようなキャリアパスの整備を進める。」

遡れば「平成14年度 科学技術の振興に関する年次報告」もこうだ。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpbb200301/hpbb200301_2_014.html


こんな時代に、職務発明は法人帰属で当たり前とか、対価請求権を認めないとなったら、研究職の使い捨てを促進するだけだ。まして、これから我らが政府は、非正規のまま10年雇用できるように法改正を検討しているのでしょう?

もちろん、流動的な雇用に見あう対価をセットで提示して試行錯誤している企業も、とっくにいる。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD060GX_W2A100C1TJ2000/

チームによって発明がもたらされると思っている方々は、非正規雇用の安価な研究開発チームを効率よく回転させようとか、まさか考えてないですよね?

個々の会社毎に内部事情は異なるだろうから、特許庁のアンケートでは是非、そういう労働環境の良い会社と悪い会社を比較できるような調査もして欲しいところだけど、まあ難しいだろうか。


つまるところ、研究職における雇用の流動化に対し、それを補うべく相当の対価の議論もリンクさせなければ、いつになってもバランスはとれないのではないか。研究者という仕事を、発明しても権利は対価なしに会社に取られ、いつ雇用契約が終わってしまうか分からないような、夢のない仕事にしてはいけない。

最近、なんでもかんでも非正規雇用の問題に辿り着いてしまう。


■そもそも
「相当の対価」が注目されだしたのは、平成15年4月22日の最高裁判決(オリンパス事件)がきっかけだ。その判決後に経済界は、対価についての予測可能性が低くなったと、実は今回と同じ文句を言っていた。

勘違いしてはいけないのだけど、現行法でも職務発明は、使用者側が通常実施権を無償でゲットできる(特許法35条1項)。これを法定通常実施権という。つまり、対価なしでも、企業側はその発明を利用できる。でも、それ以上に権利を独占したいから、対価が問題になる。

普通の使用者は独占するために、社内で定める職務発明規定やら勤務規則によって、特許を受ける権利等を発明者から予約承継している。原始的には、特許を受ける権利等は発明者たる従業者に帰属するのだけど、予め社内ルールを定めておいて、発明したら権利を会社が承継するよと、(一方的に)決めてるわけだ。

オリンパス事件でも、特許法35条2項の反対解釈として、「使用者等は、職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる意思を従業者等が有しているか否かにかかわりなく、使用者等があらかじめ定める勤務規則その他の定め(以下「勤務規則等」という。)において、特許を受ける権利等が使用者等に承継される旨の条項を設けておくことができる」と言われており、社員の意思なんて関係なく一方的でOKなのは、裁判所のお墨付きなわけだ。

(なので実は、特許を受ける権利等の法人帰属問題は、あんまり重要じゃない。発明した従業者が嫌でも、使用者側は特許を受ける権利等を承継できる。結局、問題は対価だけだったりする。だけど、そもそも対価なんて払いたくないから、原始的に権利を法人帰属にしたいと企業側が文句を言っているというのは、上の方で散々引用したところだ。)

ただし上記最判は、職務規則等で特許を受ける権利等の「承継について対価を支払う旨及び対価の額、支払時期等を定めることも妨げられることがない」としつつ、そこで規定された額が「相当の対価」の額に満たないなら、著作権法35条3項の規定に基づいて、「その不足する額に相当する対価の支払を求めることができる」と言った。

当時の特許法35条4項によれば、相当の対価の額は、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」とされていた。これらを考慮して計算した額より、職務規則等で一方的に定めた額が少なければ、使用者側は差額を払わなければならなくなったわけだ。しかも、裁判沙汰になれば額を決めるのは裁判所であり、相当の対価を算定する裁量は、使用者にない。

経済界は、これらの状況について、対価の予測可能性が低くなったと言い出したわけだ。

追い討ちをかけたのが平成16年1月30日の東京地裁判決、青色LED事件だ。200億円支払えという結果に、企業の法務・知財部門は、腰が抜けたという感じだろうか。
(とは言っても、結局は控訴審段階で和解が成立した。その際、使用者の貢献度を95%として、相当の対価についての和解金は6億857万円を基本として算定されるべきとの和解勧告がされ、これを含む8億4000万円が支払われた。つまり、企業側の主張は概ね認められた。以後、使用者の貢献度を95%と踏襲する判例が多いのではないか。)

そこで、使用者の予測可能性を高め、同時に発明者たる従業者の研究開発意欲を喚起するためにできたのが、平成16年改正職務発明制度(平成17年4月1日施行)、つまり現行の特許法35条だったりする。
詳しくは、以下のリンク先の下の方に、改正後の35条4項、5項の説明があるのでどうぞ。
http://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/shokumu.htm

で、舌の根も乾かぬうちにというか、まだ今でも改正前の旧35条の裁判だらけで、やっと下級審で現行の35条の事件が出てきたかくらいなのに、そもそも対価なんて払いたくないという産業界が、また同じ文句を言い出した...というのが、今回の安倍政権への働きかけだったりする。

ブラック(ry


■海外との比較
知的財産政策ビジョンや、動画のパワポにも出てくるが、海外ではどうなっているのか紹介されてたので、それを参考に書き出してみる。

●使用者(法人)帰属、対価請求権なしの国:スイス  ←我が国の産業界が望んでいるもの
 従業者による発明の権利は、雇用契約によって使用者に与えられる。
 従業者に対する追加的な補償の規定はない。
●使用者(法人)帰属、対価請求権ありの国:イギリス、フランス
 職務発明の権利は使用者に帰属するが、対価請求権によってバランスを図る。
●発明者帰属、対価は契約に委ねる国:アメリカ
 職務発明規定は存在せず、特許を受ける権利は常に発明者に帰属。
 その従業者から使用者への特許を受ける権利の承継は、契約などに委ねる。
 給与の中に対価が含まれる雇用契約が一般的。
●発明者帰属、対価請求権ありの国:日本、韓国、ドイツ
 職務発明に係る権利を従業者に原始的に帰属させる。
 ドイツは、従業者に対する補償金の算出基準の詳細なガイドラインが存在。


つまり、産業界の意見が通ると、我が国はスイス状態になる。

ヒヤッホーイ!なんか楽しそう。
クララが立った的な、新たな一歩を踏み出したいのですね!!!
 ・
 ・
 ・
って、なぜスイス...orz

対価請求権があることによって、対価の予見可能性が低いことが問題だと言うなら、ドイツのように算出基準のガイドラインを作って欲しいというなら納得できる。ところが何故か、発明者から特許を受ける権利等を奪うことで、対価請求権そのものをなくしてしまおうって、論理飛躍し過ぎでしょ。


来年の臨時国会か、再来年の通常国会あたりで、法改正の話が出てくるらしい。
研究者の皆さんは、特許庁からアンケート依頼がきたら、ここに書いたような状況をよ~く踏まえて、慎重に、熟慮して、回答して欲しい。


■蛇足
ところで気になったのが、著作権法の職務著作との違いだ。

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15条1項:職務上作成する著作物の著作者
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
--

職務著作は、「使用者の発意」「使用者の業務に従事する者」「職務上作成されたもの」「使用者の名義」「契約、勤務規則その他に別段の定め」という要件で、自然人でない法人を著作者とすることを認めている。これは、著作者人格権まで法人が得るので、実際に創作したはずの個人には何も権利が発生しない。

対して特許法35条1項の職務発明の定義はこうだ。
「従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」

つまり要件は、「従業者等の発明」で、「使用者等の業務範囲に属し」かつ「従業者等の現在又は過去の職務に属する」ことしかない。職務著作と比べて要件が甘く、範囲が広い。「使用者の発意」(の解釈はかなりルーズだが)を要する職務著作が、過去の職務に属するものを含み辛いのと異なる。

判例でも、かなり簡単に職務発明と認めた後で、貢献度の違いを「相当の対価」で計ることになっている。青色LED事件の東京地裁中間判決でも、職務発明ではないとして原告が主張した理由としての、別の研究をしろとの社長の業務命令に反して発明したという事情は、相当の対価算定に際して会社の貢献度の認定をするのに考慮すべき事情とされた。

ところが産業界は、この対価を廃止したいというのであり、上でいくつも引用した通り、会社の貢献度が絶対的に高いという大前提に立っている。すると、簡単に職務発明と認めた後には、最早その貢献度の差を争う手段がなくなってしまう。個別具体的な事案毎に貢献度を考慮すべきなのに、それは会社の裁量に任せろというなら、せめてその前段階で、そもそも職務発明かどうかの基準を、より厳格に規定すべきだろう。

もちろん企業側は、何でも全部職務発明にしたがるだろうが、社長の業務命令に反して発明した場合、そんな社員を会社がまともに優遇するとは限らない。少なくとも、終身雇用でリスクがないのだから全部会社の権利だとか、会社のリソースを少しでも使えば職務発明で会社の権利になってしまうというのは、そこまで社員を支配させて良いのだろうかと思ってしまう。勤務時間外に、個人的に過去の職務に属する発明をしたとして、当然に会社の権利になってしまうと言われて納得できる研究者だらけなのだろうか?


ということで、もしも職務発明は法人帰属というなら、その前に発明がどういう状況下でなされたものかの違いによって、職務発明かどうかを柔軟に判断できるようにすべきだと思う。


ついでに、映画の著作物に関する著作権法16条、29条1項も、雇用形態や貢献度の違いの処理の参考にもなるかもしれない。

--
16条:映画の著作物の著作者
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
--
29条1項:映画の著作物の著作権の帰属
映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
--

まあ何にしても、研究開発のスタイルは、産業界が自己正当化のために主張するようなステレオタイプなものばかりではないはずだ。職務発明の見直しは、薙刀を振るうような大変革というより、きめ細かいメニューの提供による柔軟化を目指した方が良い気がする。

CGの児童ポルノが摘発されたのか?

■本題に入る前に、前提状況から
ここ数ヶ月、児童ポルノ禁止法に関し、実在児童が被害者の場合を規制対象とする現在から、被害者のいないアニメやマンガなどの創作物も規制対象に含むべきという与党の動きがあり、
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130521/plc13052123040018-n1.htm
変な改定案が国会に出されたことで、
http://taroyamada.jp/?p=3145
選挙戦の前までは話題となることが多かった。

きっかけは、みんなの党の山田太郎参議院議員が、4月に与党の改定案を公開し、問題提起したあたりからだろう。
http://taroyamada.jp/?p=2014

山田氏は、反対の立場から国会でも質問に立ち、メディアが次第に取り上げるようになった。
http://www.cyzo.com/2013/05/post_13274.html
http://news.livedoor.com/article/detail/7667547/
http://www.cyzo.com/2013/05/post_13360_2.html

ヤフオクは自主規制のようなことをアナウンス。
http://topic.auctions.yahoo.co.jp/notice/rule/adult_rules/

6月に入ってからは、参院選後に自民党が過半数となって同法の改悪を強引にしてしまうだろうということで、選挙を通じた反対の意思表示を山田氏は訴えていた。
http://yukan-news.ameba.jp/20130613-426/
http://www.j-cast.com/2013/06/23177612.html?p=1
http://taroyamada.jp/?p=3508

■本題
選挙戦が始まると、山田氏は今回の改選組ではないが、同党の候補者の応援に忙しく奔走し、新聞などもこの話題は静かな感じだったのだが、そんな11日、ちょっと驚くようなタイトルのニュースが話題となった。

「CGの児童ポルノを初摘発」(時事ドットコム2013/07/11-12:48)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307%2F2013071100306&g=soc
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18歳未満の少女の写真を参考に描いたCG(コンピューターグラフィックス)のポルノ画像を販売したなどとして、警視庁少年育成課と南千住署は11日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で、岐阜市正木のデザイン業、高橋証容疑者(52)を逮捕した。同課によると、CGを使った児童ポルノの摘発は全国で初めて。
--

つまり、現行法でもCGが児童ポルノに含まれると捜査機関が判断したらしいということで、この問題点を理解している人々の間で、一気に注目された。そして、これに早速、山田氏が動いた。
http://taroyamada.jp/?p=2231

選挙戦で忙しいだろうに、迅速に警察庁から事件の詳細のヒアリングを受け、公開してくれた。正直、いい仕事をしてくれるなと、関心してしまった。

■問題点
そこで、山田氏によるヒアリングと論点を参考に、CG制作会社の元社員として感じた問題点を書いてみる。

まず、本件が「CG」として報道されたことに、ある種の意図を感じた。昨年12月の事案が、何故選挙戦さなかの今のタイミングで逮捕なのかというのもあるが、そもそも本件はCGですらないのではないかと。

何故なら本件は、写真のレタッチか、せいぜいアイコラに分類されるもののように読めるからだ。CGの世界では、Photoshopなどのレタッチソフトによる写真の修整は、コンピュータを使っていても、それだけでCGとは呼ばない。今どき、写真館で証明写真を撮っても背景はグリーンバックで、撮影後に好きな背景を選択して合成してもらえるのであり、コンピュータで合成やレタッチをしたらCGなんだとなると、証明写真もCGになってしまう。しかし、そうは言わないわけだ。

また、そもそも本件は、著作権法違反が先にあると思ったのだが、元の写真と修正した画像との関係が、「原著作物と翻案された二次的著作物」の関係なのか、「原著作物とその複製物」の関係なのかが、とても重要に思える。多少手が加えられていても、本質的な部分が原著作物のままで、創作性が乏しいなら、その画像は限りなく「原著作物の複製物」に近かったのではないか。
もちろん、児童ポルノ禁止法の解釈に著作権法の概念を持ち込んでも仕方ない。しかし、コンピュータを使って修正していても、三号ポルノ写真と解釈する上で問題視された部分に、著作物と言えるような新たな創作性がないなら、単純に三号ポルノ写真の複製物を不特定多数に提供した事件に過ぎなかったのではないかと思うのだ。

すると、コンピュータを使ったかどうか、CGかどうかは、実は全く問題ではないのに、そこを強調してメディアに報道させ、世論のミスリードを誘っている誰かがいるのではないか。誰かが、選挙後の法案提出の下準備として、「CG」での事件の前例を作りたかったのではないかと、疑いたくなってしまう。

次に、今回は約30年前の児童の写真が元とのことだが、もしも江戸時代の児童の写真があって、それが元にされていたらどうなっていただろうかと思った。「実在する児童」という時、それが「かつて実在した児童」まで無限に過去を含むのか。過去も含むなら、児童を題材にした写実主義の、著作権が切れてるような古いエロ絵画等があったとして、それを模写しても該当してしまうのか。

つまるところ、創作性の有無と時間的要素の判断なしに、「CGでも違法」という報道を一人歩きさせてはいけないと感じる。それを許すことが、「実在」と「非実在」との境界を極めて曖昧としてしまうのであり、法改悪を狙う人々にとっては好都合となるだろう。間違っても、「創作物でも該当する場合があったじゃないか」と言わせる事案にしてはいけない。構成要件の解釈において、この点は明確に報道して欲しいところだ。また、法改悪に反対の人は、ついに創作物が違法とされてしまった等と、本件を悪しき創作物の例として宣伝する手助けをすべきではないだろう。

■蛇足
うちのブログで山田氏を取り上げるのは、実は初めてではない。2010年の前回の参院選で、山田氏が創作物表現規制に反対の立場を表明して立候補した時が最初だ。
http://maruko.to/2010/06/post-86.html
しかし落選してしまい、残念なのでもう一度取り上げてしまった。
http://maruko.to/2010/07/post-89.html

落選した山田氏が、何故今参議院議員として活動しているかというと、昨年末になって繰り上げ当選したからだ。みんなの党から3人の議員が維新の会に移るというゴタゴタがあり、ニュースになったが、その結果、2010年に比例で落ちた内の上位3人が繰り上がり、そのうちの1人だったのだ。

この偶然がなければ、児童ポルノ禁止法の問題点は、今ほど話題になっていなかっただろう。当然、今回の事件について警察庁からヒアリングする議員がいたか疑わしく、その情報も公開されていなかっただろう。山田氏が繰り上がって、本当に良かったと思う。
公約を簡単に反故にするどっかの与党の議員は、落選当時の主張を貫き問題を追及する山田氏の姿勢を、少しは見習えと言いたい。

今度の参院選で、どうせ与党が過半数を取ってしまうのだろうが、みんなの党が議席をどう増やすか、山田氏が仲間をどれだけ増やせるか、注目したい。

必殺!アドビのノーガード戦法!!

http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/20130108_cs2_downloads.html
アドビが、CS2のアクティベーション(ライセンス認証)サーバーを停止したこととの引換えに、正規ユーザー向けに、アクティベーションサーバーを介在しないで起動できるインストーラーとシリアルを公開したそうで、当然色々と祭り状態になった。
http://matome.naver.jp/odai/2135760297416235101
http://room402.biz/adobe-cs2-is-not-free/

そもそも、ネット経由でアクティベーションするシステムが導入された当時から、将来いつまでサーバーが維持されるのか、利用し続けられるのか、自分のような社内のライセンス管理をする立場だった人間は気が気でなかったわけだけど、これがその答えというわけだ。

「技術的な理由」としているが、つまりはコスト削減だろ?という感じがしないでもない。

アドビは昔から、正規ユーザーのライセンス管理がおろそかで、自分の昔のmixi日記なんぞ読み返すと、涙なしにアドビとの格闘の日々を語れない(嘘)のだが、ユーザー管理部門のスリム化・適正化というのが、アドビの変革の歴史なのではないかと思っている。

手紙でシリアルコードを送付させて、人力でユーザー登録処理していた時代、アドビのサポートは正規ユーザー情報を管理しないともノタマイ、アドビのユーザー情報のデータベースが壊れていても、その修正に膨大な時間と労力をユーザーに負担させた。そういう意味では、アクティベーションサーバーによる自動化、その後のサブスクリプションやらクラウドの導入というのは、ユーザー管理の効率化の歴史であり、ユーザー側のライセンス管理の負担軽減の歴史でもあった。しかし、逆に言うと、そのために無駄なバージョンアップがなされ、大した機能向上もないのに新バージョンを買わせる口実にもされた。
(あんまりこの辺を語りだすと愚痴だらけになるので、やめておくけれど(苦笑))

さて巷では、こんな大胆なことをやって大丈夫なのかと、不正利用が増えるのではないかと、アドビを心配する声もあろうが、アドビがこういうことをやらかすのは、実は今回が初めてではない。アドビは昔から、不正使用を誘発することを躊躇しない会社なのだ。例えば、昔のMac版のPhotoshop等では、イントラネット上でアドビ製品が起動している数をチェックしていて、5ライセンス購入者のシリアルでは、同時に5台でしかソフトを起動できない制限があったが、Win版では無制限に何台でも起動できた。また、昔のAfterEffectsでは、ドングルというハードウェアキーをPCに接続し、これがなければプロ版の起動ができない制限があったが、あるバージョンからこれが廃止され、プロ版がノーチェックでいくらでも起動できてしまうようにされた。社内でライセンス管理する立場としては、「ドングル買わないと起動できないのですから買いましょう」と、必要数のライセンス購入を促す社内の説得材料がなくなり、困ったものだ(苦笑)

しかし、不正使用によってアドビの売上げが下がるなんてことはなく、いつも確実にシェアを拡大し、売上げは右肩上がり。これが、プログラムの著作物たるソフトウェアの面白いところだ。

もちろん、今回の本来の目的はこうだ。
「これらの製品は、7年以上前にリリースされたものであり、現在多くの方に利用されている主要なオペレーティングシステムでは動作いたしません。 しかしながら、旧来のオペレーティングシステム上で継続してCS2製品およびAcrobat 7を利用されるお客様に引き続きご利用いただけるよう、CS2およびAcrobat 7の正規ライセンスを所有されているお客様を対象として、アクティベーションサーバーを介在しないソフトウェアをアドビ システムズより直接提供させて頂いています。」
今更、CS2を使ってる正規ユーザーからは、不満の声は出ないだろう。

しかし、喉の奥に何か引っかかる説明が続く。
「弊社が不特定多数の皆様に対して無償でソフトウェアを提供することが目的ではございません。本措置は既存の正規ライセンスを所有されているお客様の利便性を損なわないための顧客支援の一環の措置であり、正規ライセンスを所有されていないお客様のご利用はライセンス違反となり得る旨、ご理解の上ご利用いただけますようお願い申し上げます。」

>ライセンス違反となり得る旨
「なり得る」とは、「なる」ではない。
なぜ、正規ライセンスを所有せずに利用する場合を、ライセンス違反と断言しないのだろうか。

>ご理解の上ご利用いただけますよう
ご理解すれば、ご利用いただいても構わないのですか?

「正規ライセンスを所有されていないお客様は、ご利用いただけません。」とは、何故書かないのか考えてみよう(笑)


■そもそもダウンロードして良いのか
例えば、パッケージ製品を購入するユーザーは、パッケージに印刷された利用規約を読み、その内容を了承してパッケージを開封することで、権利者と契約が成立するとされている。シュリンクラップ契約というが、これ自体、民法上は色々と問題がある。

今回アドビは、当初アナウンスが不適切で、無償で公開したかの誤解が広がったわけだが、アナウンスをし直した後に至っても、ライセンス条項や利用規約のようなものの表示は一切なしにダウンロードが可能なまま。というか、アクセスが集中してメンテナンスした後、ついにはAdobeIDすら不要で、誰でもダウンロードできるようにされた。言ってることと、やってることが逆だ。
不特定多数がダウンロードしたことが推測されるが、それが具体的に何に違反をするのか、その過程で表示していないままだ。

もし仮にアドビが、ダウンロード者をIPアドレスから特定し、正規ユーザーでなければ著作権侵害として訴えるとか、正規料金の3倍払え(これは不正利用者と訴訟になった場合のアドビのスタンス。損害額を正規小売価格の2倍とし、これを払った上に、更に新規に正規ライセンスを買わせる。もっとも、日本の裁判所は2倍の損害額を認めないけれど。)と請求するような対応をしたとしたら、どうだろう?

ワンクリック詐欺と、どう違うのだろうか。(もちろん違うがw)

そもそも世の中には、フリーソフトウェアやシェアウェアも存在するのであり、正規ライセンスを所有していない状態でソフトウェアをダウンロードすることが、即違法となるような慣習はインターネットに存在しない。
著作権法的には、私的使用のための複製はセーフであり、プログラムの著作物は、違法ダウンロード刑事罰化の対象でもないし、なにより今回、アドビという権利者本人が自動公衆送信している。

また上記の通り、ダウンロードの画面上に許諾条件の表示もないし、同意ボタンもなく、申込と承諾の過程が皆無なわけで、オンクリック契約、クリックラップ契約の欠片もないように見える。

つまるところ、正規ユーザーのみがダウンロードできるように制限をかけるくらい、アドビには造作も無いのに敢えてやらず、ダウンロード前にライセンス条項等を容易に認識できるステップも踏ませず、無駄に太っ腹にいくらでもワンクリックでソフトウェアがダウンロードができる状態をあえて作出している以上、正規ライセンス所有者でない者がダウンロードすることまでは、目的外だが想定済みということなのだろう。だから、「ご利用」がライセンス違反となり得るという書き方になっているわけだ。

何故こんなノーガード戦法を選択したのか、理由は色々あるだろうが、そもそも制限しても無意味だからだろう。
仮に、正規ユーザーにのみダウンロードを許したところで、アクティベーションサーバーを経由せずに起動できる共通のシリアルとセットで配布したが最後、足がつかないので、正規ユーザーがそれをコピーして第三者に渡してしまうことを防げない。どうせ防げないなら、無駄に制限をかけても意味がない。むしろ、ダウンロードを自由にすれば、不正コピーを売買して利益を貪る輩を防げるくらいの話だ。

ということで、アドビの目的ではないにしても、ダウンロードを正規ライセンス所有者に限定する気は、毛頭ないのだろう。要は、結果として最新版の売上げが減少しなければ、今更売れない旧バージョンがいくら使われても、実質的な損害はない。それよりも、正規ユーザーがアクティベーションできないことの方が問題なのだから。


■ライセンス違反となり得るのか
では、どの段階でライセンス違反が成立し得るのか。インストールするのに、どんな契約を交わしているのだろうか。

アドビ製品を買ったことがなくてライセンス条項を知らない人や、当初の祭り状態につられて、無償と信じてインストールしてみた人もいるだろう。
そういう人に対しては元より、そうでない人に対しても、ライセンス違反と言うには、その前に前提となるライセンス契約が存在しなければならない。
ソレがないなら、「ご利用いただけません」と言えない。

さて...ソレはないのだろうか?


インストール時にクリックして承諾させられる、アドビのソフトウェア使用許諾契約書というのがあるので、読んでみれば分かる。

実はこっちもノーガードだw
確実に1台にはインストールが許される規定っぷり。
ワイルドだろ~?(苦笑)

何故ならこの契約書は、ライセンス契約の存在が使用許諾の前提条件になっていない。それどころか、「お客様が本ソフトウェアをAdobeまたはその公認ライセンシーから取得し、本契約の条件に従う場合には、Adobeはお客様に対し、下記に定めるように、マニュアルに記載されている方法および用途に本ソフトウェアを使用するための非独占的なライセンスを許諾します。」という規定がある。

つまり、今回アドビがダウンロードページで主張しているような、正規ライセンスを所有している人に使用を許すのではなく、その逆で、インストール時に使用許諾条件を承諾した人に、アドビが正規ライセンスを許諾しなければならない建て付けの契約になっている。そして、本来あったはずのアクティベーション(ライセンス認証)というのは、この使用許諾契約で許可された以外のコンピュータにソフトウェアがコピーされるのを防止する仕組みだったのだ。

唯一の例外は、「お客様は、本契約の全部または一部を補足し、またはこれに代替する別個の契約書(例えば、ボリューム・ライセンス契約)を直接Adobeと締結している場合があります。」という記述。
昔、CLPというボリューム・ライセンス契約をアドビと交わしたことがあるが、あれは確かに、インストールの前にライセンスが存在した。しかしもちろん、そんな契約をするのは法人くらいであって、個人では聞いたことがない。
アドビは、単発のライセンスの場合と、ボリューム・ライセンスの場合とで、ライセンスの発生するタイミングがインストール開始と前後し得るのだ。ややこしぃ...

なので、この使用許諾契約が有効である限りは、今回配布されているプログラムのインストール開始前は、ライセンスを有しないユーザーこそ一般的であって、それがライセンス違反になるという論理には無理があるんでないかい?

言いたいことはよく分かるけど、法務部ちゃんと仕事してるの?


■どうしてこうなった
思うに、今回のような手法で製品版をアドビ自身が配布してしまう事態は、この使用許諾契約書は想定していないのだ。だから、アドビ自身から取得(今回の場合はダウンロード)さえしていれば、それは不正ユーザーではないという大前提で、用法を守るならライセンスを許諾してくれちゃう。しかも、「本契約は、権限を有するAdobeの役員が署名した文書による場合のみ変更できます」とされているので、今回のダウンロードページに何と書いてあっても、それがAdobe役員の署名した文書によるものでなければ、意味がない。契約条件の変更権限を有しないアドビ社員が、ダウンロードページにどんな条件を呈示したところで、使用許諾契約書の内容は変更できない。

ということで、アドビの社員さん、ちゃんと御社の契約書の内容理解してください。
契約書の想定外の配布方法を取りながら、使用を制限したいなら、ちゃんと御社の役員に署名してもらって、使用許諾契約書を改定してください。
現状、私的使用目的なら、著作権法的にも、使用許諾契約書的にも、誰でも使えちゃうとも解釈可能なわけで...え?だから「ご理解の上ご利用いただけますようお願い申し上げます。」なわけ?(嘘)

おや、誰か来たようだ...


■補足
今回は、そういう解釈もあるんでないかい?ってことで書いてるだけなので、これを根拠にアドビ様に立てついたりしてはいけませぬ。ならぬことはならぬものです。

民主党政権の残したクール・ジャパン

政権交代し、昨日第二次安倍内閣が発足した。
まあ、世間の人は興味ないだろうが、クール・ジャパン担当の大臣が、表現規制推進な稲田朋美氏ということで、コンテンツ界隈はザワザワしてる。

まー、クールじゃないよね。

でも、クール・ジャパンがクールじゃないのはいつものこと。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
とっくに、クールでもなんでもない事業が大半になっている。今更、担当大臣が表現規制推進だろうと何だろうと、これ以上悪化の余地はなさそうだ(苦笑)

とは言っても、民主党政権下のクール・ジャパン推進が全部ダメだったわけではない。世間は注目してないだろうが、このブログで注目していたAll Nippon Entertainment Works(以下「ANEW」とする)の事業で、野田政権終了間際に面白そうな発表があった。何と、ガイキングのハリウッド実写映画化が!w
http://www.an-ew.com/ja/article/120/
http://corp.toei-anim.co.jp/press/2012/12/anew.php
http://www.animeanime.biz/all/1212194/

ANEWは、政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して設立した国策会社であり、ハリウッド映画を作って儲けることだけが目的ではない。作品の権利は持つけれど、ノウハウがなくてハリウッド進出がなかなか成功しない日本のコンテンツ企業に、グローバル展開のノウハウ蓄積、人材育成をする機会を与えることなども想定されている。(ただ、当のANEWのサイトの説明には、ちょっと抜けてるような気もするが...)
詳しくは、以前書いたものをどうぞ。
「国策会社とクール・ジャパン」
http://maruko.to/2011/11/post-123.html

長年注目してきたので、やっとここまで来たかという感じがする。

俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れる!とか大きな勘違いをしていた麻生政権時代から、民主党政権下でここまで修正・進展したことは、素直に評価したい。しかも、民主党政権はどうやってここに辿り着いたかと言えば、2010年の経済産業省アイデアボックスを無視できない。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/open-meti/

オープンガバメント推進の一環として、経済産業省アイデアボックスで国民の意見募集したことで、自民党政権時代には届かなかったコンテンツ業界の現場の声が、やっと政府に認識された。

ガイキングの権利を持っている東映アニメは、ヴァルハラ・エンタテインメントと共同プロデューサーとして関わるとのことだが、ハリウッドのノウハウをしっかり吸収して欲しい。そして、単なる金儲けで終わらせず、日本のコンテンツ制作現場に、ハリウッド映画制作の仕事を振ってくれ!

国策会社とクール・ジャパン

ちょっと気になる話題だったので、更新。

「政府、ハリウッドにアニメ・玩具セールス 国策会社設立」asahi.com:2011年11月3日3時7分
http://www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
-->
日本のアニメや玩具などのコンテンツをハリウッドで映画化するプロジェクトが、今月スタートする。政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して10月に設立した新会社が日本に利益をもたらすため、ハリウッドに素材を売り込む。
<--

朝日新聞デジタルに加入してないので、記事の続きは見てないけれど、この国策会社とは
http://maruko.to/2010/04/post-83.html
この時に「コンテンツ海外展開ファンド」と言われていたやつだろう。

「株式会社 All Nippon Entertainment Works」の設立については、アニメ!アニメ!ビズでも、3ヶ月前に書かれていた。
http://www.animeanime.biz/all/118161/

産業革新機構のホームページを見てみよう。
http://www.incj.co.jp/investment/deal_022.html
以下のPDFの4ページ目参照
http://www.incj.co.jp/PDF/1313377374.01.pdf
-->
【案件の意義(投資インパクト)】
●本邦コンテンツをグローバルに展開、結果としてグローバル市場からの収益を最大化した上で国内に還元し、グローバル市場で大きな収益を上げる革新的事例を創出し、文化産業からの次世代の国富獲得に貢献する
●国内コンテンツ業界の人材を育成し、グローバル市場における事業化ノウハウを蓄積。また、関連する各種ビジネスを日本勢が獲得することにより、国内産業のグローバル水準でのオペレーション能力を育成、日本の人材及びコンテンツ業界がグローバルビジネスの一角を占めることをめざし、全体のエコシステムを進化させる
<--

これ自体は、特に悪い事業とは思わない。
何故なら、昨年「クール・ジャパンのマヌケ」で書いた「コンテンツ海外展開ファンド」への苦言に、一部応えてくれたような内容だったからだ。

前提として、日本のコンテンツ業界が、グローバル展開に力不足であることを認めている点は重要だ。リメイクを通じた人材育成で、ハリウッドの流儀を身に付けるというのは、つまりは産業育成だ。これが成功した先に、初めて、オリジナル作品の自力でのグローバル展開なんて可能性が開けるのではないか。

記事が浅いから、誤解するだろうが、短絡的に否定しても何も始まらない。
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1320260613/
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/showbiz/manga/TKY201111020748.html

そら、政権批判とか、誰でも簡単にできる上に共感も得やすいから、楽だろうけどさ。

実は、産業革新機構使ってコンテンツ海外展開ファンド創設するって酷い話は、麻生政権時代にできている。(「クール・ジャパンのマヌケ」書いた時、忘れてたけどね(自爆))
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
前提として、俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れるとか大きな勘違いをしていたので、この頃のスキームだったら、日本のコンテンツ産業は空洞化して終わり。

それが、リメイクの過程でハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢になったのだから、同じ産業革新機構経由でも、単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。一見残念なのは、制作する現場への支援が見えない点だけど、この辺に関しては別の事業がいくつか存在するので、分けて考えているのかもしれない。まあ、分けられると、制作現場としてはガッカリなんだけど。

それから、朝日の記事でもう一つ誤解されている部分がある。
-->
まず、映画化を目指す日本の素材の権利を取得したうえで、米国のプロデューサーらと脚本作りや監督、俳優の選定などを進める。当初3年で権利10件、30億円の投資を見込んでいる。
<--

素材の権利を、何故All Nippon Entertainment Worksが取得するのか。
(この部分も、自民党時代と同じ。)

答えは、日本のコンテンツ特有の欠点の一つが、製作委員会方式で権利者がウジャウジャいることだからだろう。こんな面倒なことは、ハリウッドではやっていない。それが、この会社を通せば一社で権利処理できることで、あらゆる展開がスムーズに進められるようになるわけだ。この辺は、エンタメ系の弁護士あたりが思いつきそうな話だ。

今までは、リメイクしたくても、交渉せにゃならん会社が沢山あって、誰の許諾を得れば良いのか分からない場合などもあった。法律にはないが、窓口権というのを製作委員会のメンバー各社が持っていて、誰もがリメイクに協力的とは限らない。その一部が倒産したり、担当者が退職して引継ぎされてなかったりすると最悪で、後からどんな問題が生じるのか恐くて手が出せないとか。まあ、とにかく、ハードルが高いわけだ。リメイクの話なのだから、ある程度古い作品が対象だろうが、もっと古い作品だと、そもそも著作権の帰属レベルで、国内でも裁判だらけだったりするしね(苦笑)

それに、All Nippon Entertainment Worksが「権利を取得」すると言っても、条件付きの使用許諾の類ではないだろうか。オリジナルの権利者が、自らに不利な条件を簡単に飲むはずないので、単純に権利を失うような契約を前提にしているとは考え難い。ということで、そんなに目くじらたてる問題ではないだろう。


ところで、それにしても出資の仕方が迂遠ではないかと思うかもしれない。
実は、経産省のクール・ジャパン戦略推進事業には、北米向けにコンテンツ系のものが存在しない。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
流石に、俺たちクールとか言いながら、ノウハウ教えてくださいとは言えない。
でも、経産省がやるとしたら、確実にクール・ジャパン戦略推進事業の枠組みになってしまう。

クール・ジャパンと距離を置いて推進すべきという意味で、こういうアプローチをすること自体は、ありでしょ。望ましいとも言える。だから、あんまり国策会社とか強調しない方が良い。それこそ、こっそりやるべき事柄だ。

そんなわけで、All Nippon Entertainment Worksを頭から否定はしないのだけど、できればお願いしたいことがある。

そのリメイク作品のVFX、日本のCG制作会社とか絡ませて欲しい。
どのみち、将来日本に制作の仕事が回ってこないような話なら、意味ないしね。
間違っても、違法でも安価だからと、アジアのどっかの国にばかり仕事ふるようなスタイルは、学ばなくて良いから。
国産比率と法令遵守を条件に...とまではいかずとも、ハリウッドのVFX仕事の下請けでも、参加できるようにしてもらえませんかね?(^^;

まあ、All Nippon Entertainment Worksが天下りの隠れ蓑だったりしたら、最悪だけどね(苦笑)
目的は良くても、手段が杜撰でろくな結果が出なけりゃ、ちゃんと批判しよう。
怪しけりゃ、河野太郎とかが叩いてくれることに期待しつつ(笑)

陸前高田へ2

■再び陸前高田へ
先週1週間ほど、また難民支援協会(JAR)の被災地支援ボランティアで陸前高田に行ってきた。
   月曜夜:東京出発 → 火曜~日曜:陸前高田で活動 → 月曜早朝:東京戻り
http://www.refugee.or.jp/event/2011/06/13-1127.shtml

震災から半年ということで、そろそろボランティアの足が遠のいているのではないかと思ったのと、これより後は某受験勉強に集中したいので参加できなくなるという事情で、このタイミングで精一杯の1週間の労働力を提供させてもらった。

ところが、陸前高田のボランティアは、実はかなり活況だった。理由は、他所の地域のボランティアセンター(以下「VC」)が閉鎖されたり、個人の参加を締め切ったりで、比較的従来通りボランティアを受け入れている陸前高田に、結果として人が集まってきていたのだ。その結果、週末に合流したメンバーには、各地のVCを転戦している歴戦の勇者的な人が多く、各地の受け入れ状況の問題点など、興味深い話も聞けた。

まあ、それ故の組織的な困難さもあったが、結論から言うと本当に参加して良かった。心からそう感じている。依頼者(被災者)との出会いは当然として、様々なタイプのボランティアメンバーとのソレも、喜怒哀楽に溢れていた。そしてこれは、1週間活動したからこそ実感できたのだとも思う。

こういう言い方はアレだが、元来自分はこの手の場所で人脈作りとか全く興味がなく、終わったらサヨナラな人で、特に人脈作りに来てんじゃねーの?的な人には冷淡なのだけど、今回ばかりは別れを惜しく感じてしまった。

特に、複数の学生からFacebookをやっているかと聞かれたのが意外だったのだが、多くの人とつながることができたのは、素直に嬉しい。

今までは、Facebookの使い勝手が嫌いで、アカウントはむかーしから取ってたけど、ほとんど使わないようにしてきた。しかし、大学生から「おじさんでもFacebookやるんですね」と言われてムキー!となったので、本腰入れることにした!(苦笑)

■6月と9月で変わった点
行く前は、草刈のような仕事が増えていると聞いていた。しかし今回、驚いたのだが、企業を支援することが2回あった。工場が被災した会社で、海水で真っ赤に錆びてしまった資材の錆取りを手伝ったりした。

IMG_4265.jpg

この会社は海が近く、工場の高い天井まで津波を被っていたが、天井に流木が引っかかったままの状態で、その下で仕事をしていた。そして何と、6ヶ月たった今でも、電気が復旧していなかった。

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辛うじて水道は使えたが、電気がないので錆取りに電動の研磨機が使えないのだ。発電機が一台だけあったが、膨大な量の資材に対して、全く足りてなかった。そこで、人海戦術しかないわけだが...

「皮すき → ワイヤーブラシ → スチールたわし」


この順でひたすら研磨するよう指示された。ところが、そもそもこれらの道具も数が限られ、ボランティア4名分しかなかった。その日は丁度、我々は男4名女3名と少人数だったので、むしろ丁度良い人数だと喜ばれたが、沢山ボランティアが来ても道具が足りなくて仕事がないわけだ。人海戦術すらできてない。
こんな状況で、ひたすら終わりの見えない作業を続ける社員の方々も凄いなと思ったのだが、作業を教えてくれた方々も解雇されているので、自分たちもボランティアみたいなものですと、笑って教えてくれた。

企業活動を支援するというのは、実はちょっと線引きが難しい。地域によっては、ボランティアの対象外としている。しかし、陸前高田のVCでは認めており、数日の活動では終わりが見えないような膨大な作業に、連日異なるボランティアが関わっているわけだ。自分がどんな作業にマッチングされるかはVC次第なので、個人の被災者のためにお手伝いしたいという意気込みで来ると、場合によっては納得し難い場合もあるかもしれない。
特に、上記のような津波被害をダイレクトに受けた現場ならまだしも、間接的な被害を抱えた会社の支援となると、躊躇する人も少なくないだろう。もう一つの現場がそうだった。

石材を扱う会社で、大きな石材を積んでいたプレートが壊れたり、袋が破れたりして散乱している砂利などを、再び販売するために積み直したり土嚢袋に詰めなおす、ひたすら力仕事の過酷な現場だった。ところがそこは、海から遠く、高台にあった。どう考えても津波被害はない。では、地震被害だろうか?と思いつつ作業していた。が、昼休みに従業員の人に聞いてみたら、地震の被害でもないという。え?

結局、地震・津波の直接の被害はそれ程ではなかったが、震災後しばらく業務が困難だったため、石材を放置せざるを得ず、その結果木製のプレート等が腐り、石材等が崩れてしまったというのだ。つまり、業務が滞ったことによる間接被害なわけだ。
VC側の基準がよく分からないが、もしもこの様な仕事ばかりだったら、ボランティアのモチベーションを維持するのは難しかったかもしれない。

■変わらぬ点
しかし、幸いと言うとおかしいが、そういう仕事の翌日は、以前と同じような個人の被災者のための瓦礫撤去だった。こういう仕事がまだ残っているのは、本当は残念なことなのだろう。しかし、海の近くで流されてしまった家の跡地や畑跡を、全て畑としてやり直したい老夫婦の依頼は、非常にやりがいがあった。

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地中に埋まっている瓦礫を撤去したり、生え放題の雑草を根っこから排除する仕事で、1日じゃ半分も終わらず、リーダーがVCに希望して2日続けて作業させてもらった。だから、余計に感情移入してしまった部分もあるかもしれない。

お婆さんは初日、僕らのために南瓜の煮付けを、二日目はオニギリ等を振る舞ってくれた。お爺さんは、見ているだけでは耐えられないようで、僕らと一緒に汗を流した。依頼者はボランティア保険に入ってないのだから、怪我でもしたらマズイわけで、手伝ってもらうのは本当は良くないのではないかとも思ったが、向こうからすれば自分のことを手伝ってもらうのに、傍観はできないのだろう。その気持ちもよく分かった。

まあ、そもそも自分のようなヘタレより、遥かにお爺さんの方が頼もしいのだが(自爆)

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一緒に、瓦礫を積んだリアカーを引いたりしながら、色々話をした。非常に優しいお爺さんで、水道すらまともに復旧していない現場で、作業後にろくに手洗いもさせられないことを申し訳ないというので、僕らはVCで洗えるし、帰りに花巻で温泉に入りますからというと、とても安堵したようだった。花巻の温泉は有名だから、是非疲れを癒してくれと。
他のメンバーとも色々話をしていたが、孫のような年齢のボランティアに囲まれ、お爺さんも色々と思うところがあったようだ。帰り際には、敷地の奥で栽培していたプチトマトを大量に(本当に大量w)収穫して、お土産にくれた。そして、バスから見えなくなるまで、深々とお辞儀をして見送ってくれた。涙を拭いながら。

実はこの日、地元の方の涙を目にするのは2回目だった。ボランティア参加者は、毎朝VCでオリエンテーションを受けるのだけど、この日の担当女性は、僕らのバスで説明を始めるなり、かなり泣いてしまったのだ。JARが継続的に支援していることに地元民として感謝していることや、震災当時のことを思い出しつつ話していたら、抑えられなくなってしまったようだった。
オリエンテーションでは、ボランティア作業中に津波の危険があれば、周囲を助けようとせずにとにかく一人で逃げろということを説明するのに、震災当時の辛い話を色々とされることがある。例えば、お婆さんを背負って逃げていた男性が、もうこのままでは逃げられないと、お婆さんに御免ねと謝って降ろして逃げのびた話などだ。地元の方々は、一人でも助かることを望んでおり、他人を助けて共倒れしないで欲しいと、ボランティアに言うのだ。もちろん、担当者によって違いはあるけれど、ボランティアに地元民の思いを理解させるのに、辛い話を毎朝している人もいるわけだ。この日の女性は、震災後家族と連絡が取れなくなった期間の辛い思いを、リアルに思い出してしまったようだった。

最近自分は、歳をとったせいか涙もろいと感じることが多く、この日は涙腺が緩みっぱなしだった。

おまけで、翌日の現場に行く途中、偶然に前日の現場の前をバスが通ったのだが、丁度お爺さんが作業していてバスに気付き、お互いに大きく手を振った。お爺さんは、あの場で黙々と畑仕事をしているわけだ。プチトマトは、その日のお昼に美味しくいただいた。

■ここまでのメンバー
月曜に共に出発したのは、確か日本人10名、外国人5名(内アフリカ系難民1名)で、夏休みな学生率は高かったが、自分同様「現在は働いていない」人が4名ほどおり、肩身は狭くなかった(自爆)

参加者によって、少し短く木曜に帰ってしまう組がおり、金曜は日本人3名、外国人4名に減少し、なんとスペイン人がリーダーとなり、気付いたら第一言語が英語状態になっていたのはなかなかレアな体験だった。

今回の外国人の多くは、上智の大学院等への留学生で、彼ら(Lilian、PatrickそしてリーダーとなったRuben)は過去にもJARのボランティアに参加しており、以下のサイトを立ち上げている。
http://www.311relief.com/

今回の活動については、以下のCeciliaの寄稿部分で取り上げられている。
http://www.311relief.com/index.php?id=20

夜は、リーダーがカルボナーラなスパゲッティを作ってくれるというのでお任せしたところ、適当なチーズが入手できなかったようで、チーズでコッテコテに固まった不思議なカルボナーラを体験した。そして最後は、鍋に大量に余ったソレを、Ceciliaが何故か僕の皿に全て盛り付けてくるもので、ノーサンキューを連呼して逃げた。が、既にテンコ盛りだった(^^;

このカルボナーラ、一人600円というのが少々お高かったが、Rubenが更にチップ1万円と言ったら、ここは日本だからチップの習慣はないねーという外国人達の一斉の反論が面白かった(笑)

その後は、英語で猥談が凄いディープなことになり、日本人3名は置いてけ堀状態(え?自分だけ?w)。ナニな件について日本人はどう思うのかと聞かれてもねぇ(^^;;

そんなボキャブラリーありませんがな!

■後半メンバーとの合流
金曜夜に東京を出て、土日だけ活動する後半組もいて、これが大変多かった。金曜に7人に減少したのが、一気に30人越えの大人数に膨れた。すると、よく戦争ものドラマにありそうな、アレな状況が生じた。古参兵のいる分隊規模の独立愚連隊が、突如新規の小隊に編入され、その指揮に従えと言われて...というアレですよ(苦笑)

最大の問題は、新しいリーダーとサブが、合わせて4人もいたことだったと思う。船頭多くして船山に登る的な状況があった。しかし、色々あったが、幸い男性リーダーに人望があったことで、小隊は瓦解を免れた。同時に、色々あったことで、古参兵同士の連帯感も増したように思う。
こういう問題は、少なからずボランティアにはあるものなのだろうが、一般の会社でもよくあることだ。まあ、だからこそ組織とは面白い(笑)

■市立広田中学校周辺
土曜の現場は、単に広範囲なのと電柱がゴロゴロ転がってた以外は、至って普通な個人の畑の瓦礫撤去だった。コンクリの電柱は重いけれど、なんせ男手は大量にあったので、皆で運べた。後は、掘れば掘るほどキリがないが、時間までできることをやるだけだった。まあ、場所が広田町で、市立広田中学校周辺までバスで来た時は、どこまで行くのかと驚いたが。

IMG_4278.jpg

問題は、日曜の市立小友中学校周辺だった。こんな現場がまだ残っていたとは...

■市立小友中学校周辺
VCの当初の指示では、側溝の泥欠きと、手が空いていれば畑だかの草刈という程度のもので、あまり状況が分からなかったが大変という認識はなかった。ところが、現場に行って呆然。

地図にある側溝の位置が、実際にどこなのか分からなかった。道路と畑の間に、側溝らしき形跡なんて見当たらない。リーダーが苦労しつつ、目的の側溝に接続しているであろう他の側溝を見つけたところ、つまりは目的の側溝が完全に埋まっていることが分かった。深さ1mくらい?

えええーーー!!!

ここは、依頼者が現場に来てくれない(そういう現場もある)ので、側溝の一端は判明しても、それがどう伸びているのかは想像するしかない。道路に対して直線とは限らない。しかし、判明している側からのみ徐々に掘り進めるのでは、数人しか作業できない。せっかくのマンパワーが無意味になる。そこでリーダーは、つるはしやスコップを持つメンバーをおよその予測で並ばせ、側溝に当たるように各自掘らせた。恐らく、あの時点でベストの指示だったろう。

午前中は、皆ガムシャラに掘っていたと思うが、この地中には板状の大きなアスファルトの塊がワンサカと埋まっており、思うように掘り進められなかった。道路のアスファルトが津波で剥がされ、一人じゃ持ち上げられないようなサイズのまま、側溝の上に覆いかぶさって泥とまみれて層になっていた。そして、これが下手をすると、アスファルトが側溝の底や壁なのではないかと判断を誤らせた。逆に、側溝の壁すら、埋もれたアスファルトと区別がつかない。

大きなアスファルトの場合、その一端が見えても、大半は泥に埋もれている。すると、その見えている一端が邪魔なだけでも、どかすには全体の上にある土を掘らなければならない。アスファルトが分厚すぎて、割ることも難しいのだ。そうして掘ってみたら、また別のアスファルトが重なってたりする。しかも、それだけ苦労して掘っても、その下に側溝があるかどうかは分からない。しかし、掘るしかない。

IMG_4336.jpg

自分も一応、一時はつるはしで掘ってたのだが、ヘタレなんで(自爆)、つるはしを自分より上手く扱える人に任せ、別の仕事に着手した。側溝の壁探しだ。

分かっている側溝の一端とは、そこが一端であろうこと以外、どこに壁があるのか誰も確認していなかった。それなりに掘れてはいるが、掘った傍から泥水が流れ込み、底も何も見えない。足を踏み入れれば、長靴が埋まってしまう。スコップで掘ろうにも、泥水みたいな場所は、ほとんど掘れない。で、地道に手で泥を確実にすくうことにした。

触感に頼ってみると、スコップじゃ分からなかった泥底の感覚から、目には見えずとも埋まっているものの存在を認識できるようになった。で、被さっていたアスファルトやら謎の鉄板などを引っぺがしたら、やはり泥水で目視はできずとも、やっと側溝の壁が触感で認識できた。

ところが、端からこの側溝の両壁を両手で触りつつ歩いてみたら、既に予測で掘られた溝に対し、壁がクロスしていた。つまり、我々が掘り進めてしまっていたのは、途中までは正しかったが、その先は側溝ではない場所だったわけだ。

何か、見つけてはいけない真実を知ってしまったような、そんな感じ(^^;
みんな、一生懸命掘ってるけど...

ということで、リーダーを呼んで報告したところ、やはり側溝より畑側を掘っているということが確認され、方向転換がアナウンスされた。しかし、結局作業時間修了と相成り、修正は間に合わなかった。後は、後日の別のチームが誤った溝に騙されないように、目印などを立てて終わった。

hxdD.jpg

こりゃ仕方ありませんがな(^^;;
しかし、いまだにこんな、とんでもない未着手の場があることに、最後に驚かされた。

■昼休み
なお、この日の昼食は、市立小友中学校の体育館入口らしき場所でとらせていただいた。
IMG_4308.jpg

中学校は、2階途中まで津波を被っており、そのままにされていた。
IMG_4307.jpg

教室の黒板には、様々なメッセージが書かれており、興廃した校舎内との対比が、これまた感じるものがあった。
IMG_4314.jpg

翌日が卒業式の予定だったんだね。
IMG_4316.jpg

やはり、涙もろくなった。

■蛇足1
その他、印象に残ったのは、我々のバスの運転手さんだ。一度、前を走っていたバイクが急に曲がり、事故りそうになったのだが、そのバイクの爺さんに、「津波からせっかく生き残った命を粗末にしてはいけない!」と怒っていた。

この運転手さんはハートが熱く、VCでのバスの誘導が不合理だったりすると、喧嘩しそうでヒヤヒヤもさせられた。しかし、7・8カ国もの国籍が入り乱れたメンバーに対し、日本語で臆することなく話しかけて打ち解ける、素晴らしいハートの持ち主だった。

こういう人に偶然当たれたというのは、幸運なんだと思う。

前半で帰ったアフリカ系難民は、ボランティア活動中は暴走するくらいパワーがあって働くのに、活動後に皆で温泉に行く際はタオルも所持しておらず、当初は下着を着たまま風呂に入ろうとしたくらいで、結構周囲のサポートが必要だった。

難民故かは分からないが、準備不足で所持金が底をついたというか、着替えなども足りず、本来は1週間共に活動するはずだったところを木曜に短縮して帰るようにJARに言われて突然帰ってしまったのだが、活動後皆で温泉に行く際に、そんな彼にタオルをくれたのも運転手さんだった。

よくバスの前で立ち話していたが、もしかすると難民と一番フランクなコミュニケーションをしていたのが、運転手さんだったかもしれない(笑)

■蛇足2
キャンプ中の食事なのだが、当初は花巻のスーパーで弁当でも買うつもりでいた。というのも、前回6月の時に、バーベキューやってご飯担当した学生が、自炊経験ゼロで、米を大量に入れて炊いてしまって大失敗したからだ。皆で作るとなると、色々と面倒だなと思っていた。

ところが今回、一人で何人分でも作ってくれてしまうスーパー料理人がおりまして、朝晩美味しいご飯を毎日格安で振る舞ってもらえた。美味しくて、減るはずだった体重が、増えてしまった(自爆)

彼とは、前半組が帰った後、本来なら一人一テントで寝られたところ、一緒に寝ようよとお誘いを受けた(危ないw)

そしたら、何と寝言で、英語でボランティア活動の指示を出していた!
あれは、「スゲー!」と思った。一生忘れない(笑)

彼の料理あってこその連帯感だったとも思う。

■蛇足3
今回出会ったメンバーの大学生は、素直に関心する、とても共感できる、ステキな逸材もいれば、全然超ヘタレなのもいて、そういう一人ひとりが面白かった。

例えば、1週間キャンプ場と被災地を往復し、キャンプ場の汚ねートイレとか慣れちゃって、このまま東京に戻っても、公衆トイレの便座すら汚くて座れないと言っている友達たちと、普通に会話できるだろうか?と、冗談半分に心配してた僕より20歳年下の女子大生とかいた(笑)

彼女は、瓦礫の分別にしてもいい加減な仕事が嫌いで、とにかく黙々と我が信じる道を行く、ヘッポコな命令に反意を示す立派な古参兵だった。
そのくせ、人生の目標的なやりたい事が見つからないとも嘆く。

まるで昔の自分を(以下略

そんなの18歳なら当たり前じゃんか!と、おじさん、おばさん世代は簡単に思うわけだ。
しかし、そこを悩むのが学生にとっての大きな壁であることは、昔を思い出せば理解できる。

まあ、自分のような人生遠回り組みからすれば、道なんて長いほうが楽しいのだけど、こればっかりは人様にゃ安易に勧められない。

でも、こんな過酷なボランティアに1週間も一人で参加しているような人間は、既に正解出してるんだよね。
高城剛的に言えば、「アイデアと移動距離は比例する」わけだ(笑)
答えが見つからなければ、とりあえず動いてみることが正解の一つだったりするさね。
それに気付いているのかどうかは、あえて聞かなかったけど。


対して男子はだ、持参するパンツの枚数計算間違えて、最後の温泉の後、履くパンツがないと悩んでいるのがいた。一度履いたのをその場で洗って、直ぐに乾きますか?って(^^;

洗えば数十分やそこらで乾くわけないのだから、濡れたまま履くなんて有り得ない以上、一度履いたやつでもそのまま履いちゃえよと答えた。ところが、横の友達に聞いて、二人揃ってそれは有り得ないという結論に。一度履いたのを履くくらいなら、履かない方がマシだと言われた。

えーーーー!
そういうもんなの?
つか、それで本当に洗うか迷ってんの?

いざとなったら女子は生き残れそうだけど、この男子たちは...悩むところ間違ってるだろ(爆)

あと、前回6月に参加した際に一緒だった大学生もいて、自分を覚えてくれていたのは素直に嬉しかったかな。


さて、自分も前進せねば。

韓流とクール・ジャパン

■クールXXX
テレビ等の韓流過多を嫌うのは、自分も同じ。
だけど、嫌いなら見なけりゃ良いだけと思っていた。ネットと同じ。
なんせ、嫌いな番組なんて、韓流以外にも沢山あって、やらせだってなんだって沢山ある。
しかも、やらせだからと悪いわけじゃないしね。
川口浩探検隊とか、昔は大好きだった。子供心を、何度裏切られたことか(自爆)

なので、最近のフジテレビへのデモとか、みんな、どんだけTV大好きっ子なんだよ?と驚きつつニュースに接した。


遡れば、クール・ブリタニアなわけだ。
ブレア政権当時、来日してクラブシーンを盛り上げていた英国のDJなんか、実は英国の国家ブランド戦略の一環だったりした。
そんな国家戦略とは知らずに、若者は英国に慣れ親しんだ。
そしてもちろん、興味のない人は、保守による反対運動だの嫌英とか言わなかった。

もっと遡れば、ハリウッドへの憧れ、アメリカへの憧れは、反米と直結しなかった。
日本のTVじゃ、韓流に負けないくらい、アメリカのドラマも流されてきたと思うのだけど、アメリカの陰謀とか工作とは言わない。
ハリウッドの俳優をどんなにヨイショしたって、それも当たり前と、既に刷り込まれてる。
「全米が泣いた」と宣伝され、何度騙されても、それを「デマだ」とは騒がない(笑)
宣伝に見えないような番組で、ハリウッド映画を絶賛されたって、違和感を感じない。

だって、それがテレビだからね。
そんなの、みんな知ってることだ。

何故、欧米は許されて、韓国のソレは許せないのか。単にやり過ぎという問題ではない気がする。自分も、上に韓流過多を嫌うと書いた通り、受け入れられないという感情がどこかにあるので、自分自身にどう説明できるか考えてみたりしたのだけど、そういうことを考えるのはちょっと面白い。

ステルスマーケティングが酷いとか言う話もあるけれど、それなら消費者庁の出番かもしれない。しかし、どっかの消費者団体が問題視してるという話も聞かない。
まあ、民放からステルスマーケティングを完全排除できるなんて到底思えないけれど、それは「韓流に限らない問題」として、十分に議論すべき課題だと思う。

個人的には、フジテレビはノイタミナ流してくれてるだけで、十分ですけど(自爆)


しかし、忘れてはならないのは、我が国は、クール・ジャパンを国家戦略にしてることだ。そして、韓流のアレも、「COOL KOREA」な国家戦略なわけ。
http://www.apalog.com/kurita/archive/937
日本の場合、ステルスし忘れて自分からクールですからと言っちゃって支持されると思ってるのが、むしろマヌケだろというのは、過去にも書いてきた。同じく英国を手本にした国家戦略を遂行する国同士として、むしろ韓国の手法は、参考にすべきと思っていたくらいの話だ。


■コンテンツ規制
ところが、韓国では日本の番組が規制されてきたし、中国だって国産アニメ振興で外国番組比率を決めており、かつてのように日本のアニメが中国で大量に放映されていた時代は終わった。中国が日本の影響を排除しようと、国産番組比率を定めた時は、少なくとも自分は彼らを非難した側だった。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060830/108901/
http://www.toho-shoten.co.jp/beijing/bj200608.html

そして日本は現在、韓国や中国に対し、コンテンツ規制の緩和・撤廃を要請している立場。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/2011/dai2/gijisidai.html
【資料3】参照
ここで韓流を安易に排斥してしまったら、我が国がクール・ジャパンを海外に押し売りする戦略自体の正当性が失われてしまう(苦笑)

台湾が、国産番組比率を20%から40%に引き上げることになって、それを韓流排除だと喜んでる日本人に至っては、正気を疑う。
http://hamusoku.com/archives/5459259.html
今は日本の番組が少ないから被害が少ない?
永遠に負けてる前提かよ(^^;

パイが縮小すれば、韓流番組が減るのと同様、将来日本の番組が放送される可能性も確実に減る。コンテンツや文化の海外輸出拡大を国策としている以上、我が国にとって、大きいパイのままの方が良いに決まっている。これに逆行する動きに賛同するとは、それこそどこの国の回し者だ(苦笑)

韓流過多なテレビ局やそのスポンサーを、反日、非国民のように非難している人々は、クール・ジャパンをどう見ているのだろう。今、シェアで押されているからと、相手を排斥できるようなルール変更を喜んでいては、将来逆転を狙う手段が奪われる。

韓流排除のために、日本も他国のように外国番組規制をすべきなんて聞くと、何でそっち方面だけ中国や韓国の真似をしたがるのか、本当に不思議に感じる。


かつてフランスは、日本のアニメを「文化侵略を行う敵」と定義した。
http://www.hh.iij4u.or.jp/~iwakami/anime1.htm
韓流に反発してデモする人々は、この頃に日本が言われていたことを知っているのだろうか。

フィリピンでボルテスVが放送禁止された経緯も、忘れてはいけない。
http://www.nx.sakura.ne.jp/~haituu/nhktv.htm

日本のアニメは、国内で利益回収した後、安価に輸出され、粗悪なコンテンツとされていた。ディズニーのフルアニメが本物で、日本のリミテッドアニメは偽物と。安価だからと、粗悪なコンテンツによって文化侵略を許すな、と言われてきたわけだ。

しかしこれが、クール・ジャパンの源流にあることは、誰も否定できない。
今のフランスのアニヲタを見るに、少しは侵略成功という気もしないではない(笑)
日本のコンテンツも、もっと海外で排斥されるべきだったのかね?

(ちなみに、日本のアニメは残虐で、教育上相応しくないと海外で言われだした頃、子供に相応しいと言われたディズニーのアニメも、日本で作ってたりしたんだけどね(爆)
目に見える部分を排除しても、ハッピーにならんのよね。まあ、日本で外国のコンテンツを制限するような法律を作ろうとしたら、アメリカ様が黙っておるまいが。)


今回の騒動をよく理解できないのは、例えばこういう声。
http://www.j-cast.com/2011/08/07103785.html?p=all
>行列に加わっていた女性は、フジの韓流偏重に「不快感」を感じていたと話し、
>「SNSを通じて巻き起こった、エジプトの革命のようなことが日本でも起これば面白いなって」

エジプト人に謝れ(苦笑)

まあ、色んな意見の参加者がいるとは思うけど、一見右翼的主張を左翼的行動原理で実現しようとする、自称保守な、その実は排外主義者にも見えるのだけど、なんとなくファシストと呼ぶのが適当かもしれない。

彼らをネトウヨと呼ぶ人もいるみたいだけど、右翼というよりファシストな気がする。
しかも、革命が起これば面白いって、外山恒一か(笑)

まあ、大した根拠はないけど、外山恒一は嫌いじゃないけどね。
デルクイは面白かったw)


面白いのは、職を奪われるとか生命を脅かされるとか、生存に直結する訴えではなく、テレビが自分の好みでないという、世界にも稀な恵まれた欲求でデモをしている点にある。

自分は、右翼も左翼も、それぞれ一定の正しさを認める部分があると思っているし、ファシストにも一定の理解が可能とは思っているが、どうも今回のはダメだ。

そりゃ、昼間TVつけたら、テレ東以外の民放が全部、韓流かショップチャンネルしか流してなかったりすると、心底ゲンナリする。フジテレビだけじゃないだろう。

でも、TV消すだけで十分なんだよな。(悪態くらいつくけどねw)

ネットで、ファビョッてるサイト見るのと、感想は同じ。公共性云々言う人は、まだテレビを過大評価してるのだろうけど、もうテレビなんてどうでも良いじゃん。
NHKとテレ東とMXテレビがあれば(ry


もちろん、彼らのような(相対的な意味での)第三者ではなく、実際に自らの仕事が侵されていると感じた当事者たる俳優などが抗議するのは、ある程度理解できる。しかしそれも、文句があるならハリウッドみたいに、自分らの職を守るための協定を結ぶように、労働組合運動すべきでしょ。

古今東西資本主義国家では、資本家に対抗するための手段なんて、限られてるわけ。ハリウッドなら全米映画俳優協会。だけど、今の日本人て、そういうのサヨクっぽくてかっこ悪いとか、偏見で自己防衛手段を放棄してないかい?
日本俳優協会なんかは、この一連の問題に対して、何かアクションしてるとは聞かない。


かつて我々がエコノミックアニマルと呼ばれ、経済摩擦の厳しかった頃、アメリカなどで日本製品のボイコットや破壊が行われ、その過激な映像がTVを賑わせていた。過激に日本製品の排斥運動をする外国人の映像をニュースで見る都度、子供心に「そんなにうちらの製品が優秀なのが羨ましいか」と内心ニヤニヤ、「あいつら馬鹿だなぁ」と思っていた。もちろん、日本製品が叩かれたのは、決してステルスマーケティングだからじゃなかったけどね。

ま、アメリカ人が日本車を破壊して、自国メーカーの車に乗ろうと気勢を上げていた頃、そのパーツの多くは日本製だったというオチはともかく、日本人なら、絶対にあんな馬鹿げた方法で抗議しないと思っていた。が、今起こっていることは、なんかそれを思い起こさせる。違いは、対象が無体物ってこと。破壊が難しい(^^;

通常、海外製品が安価に日本に売られることで、日本の事業者が損害を被るなら、ダンピングとしてWTO提訴するとか、公正取引委員会の出番ではないか。

しかし、不勉強で分からんけど、コンテンツに対してダンピングて概念あるのかね?
同等製品が存在しない前提というか、同じものなら著作権侵害の問題かな。
だけど、同等の市場を争う同種のコンテンツは、確実に存在するわけ。
しかも、著作物って、無限にコピーできる概念だから、安価に複製することは非難対象じゃないんだよね。

そういう意味で考えると、構造的には、ネットで違法に映画を無料配信されちゃって著作権者自らが怒るのと、安価な韓流ドラマに押されて市場を荒らされたと感じて俳優とかが怒るのと、ちょっと似てるかもしれない。

非常に難しいとは思うけど、仮にダンピングと定義できたとしても、やはり国内の同業者が声を上げなければ意味がない。国内の番組製作会社とか周辺は、韓流ドラマをどう考えているのか。市場を荒らされていると感じているのかね。

まあ、TPPに反対する農家みたいになったら、そもそもその業界はヤバイと思うけどね。
コンテンツ分野は、元来輸入過多だけど、だからこそ、輸出を伸ばすべき成長分野と目されているわけで、保護対象になんてされたら、もう自称クールなんて恥ずかしくて二度と言えないと思うのだが。

だからこそ、自国ではコンテンツ保護してるような韓流も、クールには見えない。
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022401000298.html
韓国での日本大衆文化の流入制限とか、いい加減にしてくれ。

早く完全に同じ土俵に立たせろやゴラァ!(笑)
話はそれからだ。

陸前高田へ:続き

前回の続き。

さて、今回参加した難民支援協会(JAR)の陸前高田における被災地ボランティアは、金曜夜に仕事を終えて参加し、月曜は早朝に戻れるのでそのまま出社できる。とはいっても、流石に月曜は有休という人が結構いた。ボランティア休暇があるという人も。
(学生の参加者も多かったのは、金銭的な理由が大きいのかもしれないが。)

しかし、JARのHPを見れば分かるが、参加は何も、金曜からの3泊4日(車中2日)だけではない。もう一週間いて翌週帰っても良いし、そもそも交通費を払うつもりなら、往復に手配されたバスに乗らずに、平日だろうと自腹で行って、現地でJARのボランティアに合流できる。(なお、平日のボランティアは人数が激減してしまうそうだ。当たり前だけど。)

だから、今回も行きと帰りの人数は違ったし、現地で前週から活動してる人とも合流したし、活動後の日曜のうちに新花巻から自腹で新幹線で帰ることもできる。説明会への参加と、事前の参加申込みや合意書の提出などをちゃんとしていれば、日程は自由なわけだ。

長期参加できると、現地で可能なボランティアの内容も色々あって、災害ボランティアセンター(VC)での仕事もあったりする場合がある。毎日やってくる個々のボランティアへの対応や、ボランティアと被災者を結ぶマッチングなども、これまたボランティアが入っている。

また、女性の被災者への対応のための、女性限定のボランティア活動もあることがあり、行きのバスの中で希望者を募っていた。

被災地でのボランティア活動とは、力仕事ばかりではないわけだが、長期活動して現地VCと信頼関係を構築できているNPOの活動に参加することで、個人の参加とは違うことができる可能性があるということだろうか。これは、一つのポイントだろう。


では、実際に参加して感じたことを。

■準備段階
まず、マスクについて迷った。
少し前のニュースでは、家屋からのアスベストをボランティアが吸い込んでしまう危険が話題になっていた。マスクは用意してくれるとはいえ、顔にフィットしないと意味がない。様々な種類もある。だから、防塵マスクがどんな形態のものか気になっていた。

結果としては、N95の折りたたみ式の使い捨て防塵マスクが配布され、使いやすかった。しかし、以前も参加したという人の話では、以前は違う種類のマスクだったとのこと。つまり、特に種類は決まってないようだ。作業中、マスクが息苦しいと外してしまう人もいたのだけど、配布されるマスクが合わずに外してしまうくらいなら、自分に合ったマスクを持参した方が良いかもしれない。どういう現場に派遣されるかによって、マスクの必要性が低い場合もあるけれど、活動内容はVCの指示次第なので、気にし過ぎない程度に気をつけるしかないとも思う。
--
>追記
現在は、マスクは参加者負担に変更となったとのこと。最低限、顔の大きさに合わせてサイズくらい気をつけて選ぼう。
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また、服装も悩んだ。
作業の安全のためには、長袖が必須ということになっている。が、晴れた日の外での力仕事なら、長袖はきつい。しかし、夜のテントは寒そうだ...荷物を減らしたいのだけど...

結果として、Tシャツと、その上に長袖で頑張った。特に日曜が暑かったのだけど、Tシャツで活動する人も多く、その一人が軽い怪我をしていた。擦り傷で、長袖なら防げた感じ。まあ、これから夏の長袖はムリというのも分かる。正解はないけど、軽装なら余計に気をつけるしかないってことで。

それから、個人差はあるにしても、耳栓を持参すべきかと(^^;
バスで寝るにも、テントで寝るにも、耳栓がないと寝不足になるかもしれない。キャンプ地に到着すると、テントで一緒になる面子を自由にその場で決めるのだけど、幸い自分のテントの皆は静かでも、他所のテントの声もかなり聞こえるので、イビキ対策はおすすめ。

■1件目
依頼者の家の周辺の、土砂と瓦礫で流れなくなった排水路を復活させる。土砂は土嚢袋に詰め、刈った雑草や瓦礫と共に道路沿いに山積みし、回収できるようにする。

リーダーから簡単な指示をされただけで、誰も文句言わずに、各自が手にした道具で、ひたすら重労働をする。一輪車(猫車)を使ったのなんて、高校の野球部のグランド整備以来かもしれない。午後になると、ちょっとしたことで息があがってしまい、最近のヘタレ生活を反省しつつ、みんな凄いなぁと関心。

瓦礫と言っても、やはり色々なものが出てくる。「MY ALBUM」と書かれたCD-ROMや、フィルム、ビデオテープ、レコード、写真など。思い出の品は別にして、後でVCにサブリーダーが引き渡していた。

また、あまり適切ではないが、休憩する都度に依頼者のおばさんが様々なもてなしをして待ってくれており、ご好意に甘えさせていただいた。というか、断れる状況にない(^^;

IMG_3782_cut.JPG

20人もいるのに、一人2つ分のお餅を焼いて持ってきてくれ、イチゴを潰して牛乳かけたり、昼には味噌汁、更に様々な果物をヨーグルトに入れて...美味しい!

でも、おばさん、そんなに気を遣わないで!

別の近所のおじさんからも、どこから来たのかとか聞かれて、応えると突然お礼を言われてしまい、何と言葉を返して良いのか戸惑ってしまった。道ですれ違う人からも、ありがとうとお辞儀をされてしまう。こちらこそ、こんなことしかできなくて申し訳ないです。

■2件目
依頼者の家の周辺の瓦礫と、室内のあらゆるものを捨てて欲しいと。

外の瓦礫はともかく、所有者の明確な家に土足で上がって家財道具を捨てるというのは、やはり違和感がある。依頼者のお婆さん曰く、必要なものは全て運び出したので、残っているものは全て捨てて良いというのだけど、津波をかぶってないものもあれば、高そうな品、何かの記念の品だの、普通なら捨てないようなものが沢山ある。最初の頃は、お婆さんに皆が確認を取っていたけれど、ついには「1000万円出てきても聞かないで捨てて良いから(笑)」と言われてしまう。一つ一つ聞かれてしまえば、どれも思い出があって捨てられなくなってしまうけど、これ以上持って行けないのだから、聞かずに捨ててくれと。そっか...

その家は、取り壊しは決まっているのだけど、解体業者の順番待ちで、年内に壊してくれるかどうかも分からないという状況だそうで、つまりはそれまで、住めない家の建っている土地をどうしようもない。どうしようもない話を聞いてしまうと、なんとも切ない。

しかし、とにかく喜んで、色んな話をしてくれる。津波が来た時の危機迫る話から、避難所で10日ほどしてから、孫がお菓子を食べたいと言い出した話。瓦礫に埋まった車に東京の美味しいお菓子が入ってたと言ったら、皆で掘り起こそうという話になって、掘り起こしたら車が壊れてなくて、孫はお菓子で喜んで、自分は今も車に乗れている。お菓子のお陰で、車を諦めなくて良かった(笑)とか。

そんな話をしている場所から、昼休みにちょっと歩いてみたら、家の形すら残ってない、広大で、言葉も出ない風景が広がっていたのだが。

■3件目
海岸線が後退した海の近く、入り込んだ海水の大きな水溜りと瓦礫の山が入り組んでいる場所で、瓦礫の山を、回収できるように道路沿いに移動させる。

地図なら、目の前は陸があって道路が通っているはずのところが、海になっている。自分のemobileのスマホで、GPS使って地図見たけど、目の前の風景とのギャップから、通信に失敗して地図が更新されてないのかと思った。バスも、ここに辿り着くのに道に迷っていた。

海水の水溜りに瓦礫の角材で近道を渡し、何度も往復。瓦礫の山は、家電や寝具、網や板切れに、何やら長いパイプや、一人じゃ持ち上がらない丸太まで、色んなものがスパゲッティー状態。3・4人で担げるものは良いのだけど、どう頑張っても動かせない太さの丸太も。VCで借りてるノコギリで切れるような太さでもない。チェーンソーが必要じゃないかと思った。ところがその丸太は、留学生と難民が、ロープを上手く使って担ぎ棒を通し、見事に運び出してくれた。

IMG_3869.JPG

■気になった点
まず個人的に驚いたのだけど、そもそもJARの活動に関して理解してない参加者が多かった。(それが悪いという意味ではない。今回は被災者支援なので、それで構わないのだろう。)

が、日本の難民問題を知らない参加者からは、難民と普通に友達のようになって、メアド交換して、今度飲もうみたいな話が聞こえてきてしまう。JARからは事前に、ボランティア期間中の難民との接し方について確認事項が提示されており、ボランティア活動以外で個人的関係につながる行為は、一応禁じているのにだ。(難民の方々は色々な問題を抱えている場合があるので、個人的に問題に関わってしまったりすると適切ではないと言われている。)

参加者は、難民に対する最低限の理解をしておく必要があると思うのだけど、JARの説明や配布資料は控えめで、どうも伝わってないのではないかな。

JARが、被災地支援活動にかこつけて難民支援を積極的に宣伝しようという意思がないのは、とても良い姿勢とは思うのだけど、結果として確認事項も参加者に忘れられてしまうなら、もう少し難民問題を主張してみても良いのかもしれない。(逆に、難民問題を知らない人こそ、普通に接することができるという見方もあるかもしれないが。)

次に、被災地での写真撮影について、かなり気を遣った。事前に、リーダーから厳重注意もあったが、ボランティアに来たのか写真撮影にきたのか分からないような、撮影ばかりしていた酷いボランティアの話が、一つの伝説のようになっているようだ。

しかし、写真撮影を一律に禁止するというのも行き過ぎな話であって、休憩時間に、節度を守った撮影は良いだろうという意見も出た。依頼者とうちとけて、別れ際に一緒に集合写真も撮ったりもしていたが、撮影の前に相手の許可を得るくらいの気遣いは必要とされていた。

このブログもそうだが、現地の今の様子を他人に伝えることは、無駄ではないと思っている。活動中は撮影せず、休憩時間や活動終了後、バスでの移動中等に写真を撮った。

なお、共にボランティアをする難民の顔写真の撮影、ブログ等への掲載は、難民問題の特殊性から、本人やJARから同意を得た以外は、確認事項として禁止されている。(自分も、このブログも含め、Twitterの情報発信についても、ボランティア参加申込みの段階で、JARに申請している。)

ま、あんまりこういうことを書くと、ボランティア面倒と思う人が出ると困るのだけど、まだまだ被災地は人手不足なんで、今からでも遅くないので、なかなか準備が大変だと思って躊躇している人は、JARのボランティアに参加することは、とてもおすすめする。

■蛇足
被災地にゴミを増やさないため、自分が出したゴミは、極力持ち帰った。帰りにバスが止まったサービスエリアのゴミ箱からは、大量にゴミが路上に溢れており、サービスエリア全体に異臭を漂わせていた。あれが、ボランティア帰りに捨てられたものでないことを祈る。

陸前高田へ

久々の更新です。今年は某受験は回避しました。ヘタレです。

ヘタレなんで、なかなか体を動かすボランティアは出来ずにいたけれど、このブログでも過去に登場した難民支援協会(JAR)が、東日本大震災後からは震災支援活動も行っており、やっとこれに参加し、今その帰りのバス。

難民支援のNPOが、何故震災支援をするのかと疑問に思うかもしれないが、日本在住の難民の方々から、是非とも被災地でボランティア活動をしたいという要望が多かったそうで、それに応えた形で実現したそうだ。新聞やTVで、被災地でボランティア活動する外人が何度か取り上げられているが、その中にもJAR経由の参加者がいるようだ。
(まあ、今回は普段別の活動をしているNPOが震災支援も行う例は、日本ユニバの件などもあり、珍しくないのだろう。)

とは言っても、参加者を難民に限定しているわけではなく、広く一般に参加募集をしている。日本人だろうと外人だろうと関係なく参加できるが、難民と共に活動をする点が、JARの震災支援ボランティアの特徴と言える。

難民の方々というのは、それぞれ複雑な背景があるので、彼らと行動を共にするには、難民問題に関するそれなりの理解が必要だ。ちょっと古くてリンクも切れてる部分があるが、以下のエントリーなど多少は参考になるだろうか。
http://maruko.to/2009/03/post-10.html

そういった前提条件をクリアーしているとして、JARのボランティアに参加するとなると、以下の部分をJARが用意してくれる。

・東京からの花巻までの往復バス
・花巻のキャンプ場から被災地への往復バス
・ボランティアに必要な道具(長靴、軍手、マスク、ショベル等)
・テント、寝袋、キッチンセットを含むキャンプ道具
・ボランティア保険(天災Bプラン)

活動場所は陸前高田だが、キャンプ地は花巻と、ちょっと遠い。これは理由はあるのだが、今後はもう少し近場への移動も検討しているそうだ。


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まあ、とにかくある意味お得だ。お得な必要は無いがこれで参加したいという人は、別の形でその分寄付するとかありかもね。まあ、応募者多数の場合は、選考もあることになってるけど。

(自分の場合、JARには本来の難民サポートの他に、震災支援活動に対する寄付も別口でしているので、結局自腹を切っている以上に、何か不思議な感じだ。お前、仕事辞めて無職になってるのだから、他人に寄付してる場合じゃねーだろというつっ込みは禁止(笑))

後は、自分で持っていくのは
・食料(自炊or花巻のスーパーで調達可能)
・常備薬
・防寒具を含む自分の服
・入浴用品(有料の温泉がある)
・ポケットライト

あとは、電源の数が少ないので、携帯の充電方法を準備する、程度ということになる。つまり、かなり身軽で済むので、週末に気軽に参加できるだろう。

詳しくは、以下のJARのサイトを参照のこと。
http://www.refugee.or.jp/event/2011/06/13-1127.shtml

事前の説明会に参加し、いくつかのJARとの合意事項について書類提出を要するので、いきなり当日から活動には参加できないので、要注意。

また、今のところ7月まで予定が発表されているが、もっと先も予定はあり、夏休みになれば学生の参加者が増えるだとうとのことだ。

と、ちょっとこれだけで長めになったので、現地の話はまた後日。

なお、ブログに書きますよとは、事前にJARに伝えてあります。

>追記
「ボランティアに必要な道具」は、参加者負担に変更になったそうです。ご注意を。

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写真素材のピクスタ

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