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4/2~5/9の間でパブコメ募集されていた、カジノ管理委員会規則案について、締め切りギリ1分前に提出完了!
最後の最後に機種依存文字とかエラー出て焦った。

この一カ月、暇を見ては赤ペン片手に計264頁ある案文に目を通していた。我ながらアナログ過ぎて泣けたけど、かつて司法試験の勉強してた頃を思い出し、この程度楽勝だろ?と自ら鼓舞。しかし、老眼と集中力不足...寄る年波には勝てず。結局最後の3日間で山奥に一人籠り、ギリ1分前にヒーヒー言いながら提出。夏休みの宿題を最初の週に終わらせてたような子供時代だったのが懐かしい...(遠い目)

Twitter見てると、カジノ界隈の人々があんまりパブコメのことを話題にしてなくて、こんなヤッベー内容なのに、みんな意見しないと後悔するよ?と思ってた。でも、この分量の条文とか普通の人が見たら、そりゃ諦めるか...とも。

言いたいことが山ほどあって、最後の何時間かで上限の6000文字に削るのに苦労した。本当は、カジノ文化舐めんな的な、意見書の体裁をちゃんと整えて訴えたかったのだけど、余りにも個々の規定に欠陥が多すぎて、箇条書きで問題点を指摘しただけで軽く6000文字をオーバーしてしまい、ただの添削文になってしまった。
こんなんで読んでもらえるのか心配。

ゲームの種類にしても、ハンドヘルドなブラックジャック入れて欲しいとか、クイックペイブラックジャックとかおもろいでーとか、こんな厳格にルール決めてカジノ事業者の裁量を奪ってる国無いよ的な苦言も呈したかったけど、全部諦めた。

下に提出したパブコメをコピペしたので、条文解釈とか間違いあったらご指摘頂けると幸い。主義主張の違いはご勘弁下さい。
案文別表第一の、第二の1というのは、ブラックジャックのルールなんかを規定しており、こんなんじゃお客と喧嘩になるよ的な、つっこみ処満載。時間と文字数の関係で、自分はブラックジャックしか詳細にチェックしてないけど、きっと他のゲームも悲惨なのではないかな。まあでも、自分が経験不足なだけで、どっかにこんなルールのカジノがあるのかな...

疲れたのでもう寝る。

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■案文本則
●第八条6項十号
施設土地権利者について申請者が廉潔性を証明するように見えるが、当該土地は誘致する自治体が選定しているはずであり、カジノ事業者にとって施設土地権利者を選ぶ自由は無い。区域整備計画審査の時点で検討されるべき施設土地権利者の欠格事由を、免許申請時にチェックするのは遅すぎる。少なくとも、区域整備計画の認定から免許審査までの間、融資契約や着工が進む中で段階的な事前審査をすべきである。最後の最後に問題が発覚した場合、取り返しがつかない。
●第十二条一号ヲ
入場料等納付後に入場禁止対象者と判明した場合の返金について規定すべき。
●第十二条一号ヲ(3)、(5)
チップ換金のためケージの行列に並んでいる間に、再賦課基準時(再々賦課基準時)に達するケースが想定される。遅滞なく退去するための行動を起こしている場合、再納付(再々納付)を免除すべきである。ここで入場料を徴収された当該納付者は、退去する理由を失い、追加の入場料が惜しいので、再びゲームに戻る恐れがある。入場料が、ギャンブル依存を増加させる原因となってしまう場面では、これを免除することに制度上の合理性がある。
●第十二条二号ロ(1)
ディーラー等への心付け禁止は、当該従業者に対してではなく、一度カジノ事業者に心付けを供与する形をとり、カジノ事業者がこれを従業者に公平に分配する場合は許されると解する意見がある。実際、心付けを集計し同じ時間帯に勤務するディーラー全員に公平に分配するカジノはあり、特定のディーラーが顧客と癒着する心配が無いので禁ずる必要が無い。本規定が、カジノ事業者を介した心付けまでは禁じていないという解釈は可能か、見解を示すべきである。
●第五十四条1項四号
入場禁止対象者を「直ちに」退去させるべきではない。当該入場禁止対象者が、カジノ行為区画に24時間以上滞在することにより入場等回数制限対象者に該当することとなった者である場合、所持するチップを換金する必要がある。猶予を与えるため「遅滞なく」退去させる規定を設けるべきである。チップ換金のためケージの行列に並んでいる間に入場等回数制限対象者に該当することとなる日時に達することも想定される。
●第五十六条1項
五号ロは、ブラックジャックにおけるカウント行為等を機器若しくは装置をもって行うことを防止する措置と解するが、五号トによれば、機器若しくは装置を使用せずに顧客自身が行うカウント行為も防止する措置を講じることとなるか。口頭の指示等で措置を講じた場合、従わない顧客に対し、三号ハ該当としてカジノ行為を行わせないこととなるか。また、「必要な措置」には、退場乃至入場禁止対象とする等まで含まれるか。
●第九十三条二号
「カジノ事業又はカジノ施設に関する広告又は勧誘に係る業務」に、カジノ事業者以外の事業者がカジノ行為関連景品類(法第二条13項二号)を提供する業務は該当するか。該当しない場合、1年未満かつ3億円未満の契約(第九十六条)であれば認可不要で、法第九十九条二号に該当しなければ事後届出も不要か。チップと交換可能な金銭その他の経済上の利益であるカジノ行為関連景品類を提供できるカジノ事業者以外の事業者とは、反社会的勢力にとって魅力的であり、背面調査等の対象たり得るか心配である。
●第百三条1項
チップ譲渡禁止の例外と言える関係の判別に苦労するだろう。同性の事実婚なども例外に該当する。自己申告を信じるしかないのか。
また、ブラックジャックのスプリット等の場面では、チップが足りない顧客にチップを融通する顧客がいる。勝てば借りたチップはその場で返却されたりする。譲渡と貸与の線引きが難しい。仲間で訪れ、チップの換金を一人に任せることもあろう。第百三条1項二号の措置をカジノ事業者に課す以上、限界事例を列挙し現実的な落としどころを示すべきである。カジノ事業者が義務違反を問われることを恐れ、曖昧なケースに過剰に同号の措置を講じる事態は避けるべきだ。
●第百三条2項
バウチャーもチップに含まれるため、紙であるバウチャーの持ち出しを阻止しなければならないが、第百三条2項各号の措置及び同条3項の努力義務は全く効果的ではない。空港のセキュリティよりも厳格な身体検査が必要だが、それは現実的ではない。
幸いバウチャーは30万円までである。この持ち出しを許しても、マネーロンダリング規制としては十分だ。
カジノの常識からすればチップの意義にバウチャーは含まないが、法第七十三条6項のせいでそう解釈するのは困難ではある。しかし、法第二条13項二号のカジノ行為関連景品類が金銭その他の経済上の利益であってチップと交換可能にも関わらず、カジノ事業者以外の事業者が提供できることから、カジノ行為区画外での存在が前提とされている。当該カジノ行為関連景品類は、クーポンのような形で提供されるのであれば実質的にバウチャーであり、制度として整合性が取れていない。ここはバランスを取り、バウチャーをチップと別に定義し、持ち出しを制限しない規則に改めるべきである。
24時間あれば、カジノ行為区画と外部を何度も行き来するだろうが、その都度バウチャーやチップと現金の交換を繰り返し、無駄に1営業日当たりの取引金額(別記表第三十一号様式4(1))が100万円を超えれば、それだけで「現金取引の届出」(第百十一条)の対象となってしまうのではないか。監視対象とすべきでない大量の顧客が、職業や勤務先情報を含めカジノ管理委員会に届出られるのは不適切である。また、悪意無くバウチャーや少額チップを持ち出そうとした顧客が退場時に自己申告(第百三条2項二号)したとして、ケージやバウチャー払戻機へ換金に向かう間に、当該顧客が入場料の再賦課基準時に達したり、入場等回数制限対象者に該当することとなる日時に達することが十分にあり得るのは、第十二条一号ヲ(3)、(5)及び第五十四条1項四号について上記したのと同様である。
●第百二十二条1項
顧客がディーラー等の氏名を容易に知りカジノ行為区画外で接触する危険を排除すべきという場合、但書によって、氏名等が記された証明書を見えない方法で携帯することが許されるという解釈でよろしいか、見解を伺いたい。
●その他
顧客のカジノ所得は、確定申告ベースでの課税となると思われるが、その際参考となる情報提供を、カジノ事業者に求める規則を設けるべきである。米国等のカジノ事業者の顧客向けサイトでは、5・6年前まで遡って勝ち負けの金額を本人が閲覧できるものもある。但し、不正確な情報も多く、これのみを確定申告の添付書類とするようなことまでは期待すべきでないが、自身の勝敗を容易に閲覧できる仕組みは、依存症対策にも役立つ。

■案文別表第一
●第一の2(準用含む)
ディーラー自身のリフルシャッフル等でスタックを初期化することも許すべきである。トランプシャッフラーのブラックボックスの中でシャッフルされるより、目の前でディーラーがシャッフルするテーブルを好んで選ぶ顧客もいる。カジノ事業者の裁量に任せるべきである。
●第二の1
・五のイ
アップカードは、裏面を上面として配布し、ノーホールカードルールなら主たる区画に2枚目を配布した後に表面へ、ホールカードルールならホールカード配布後に、アップカード表面を上面にひっくり返すことが一般的だと思われる。顧客は、自身の2枚を確認した後にアップカードが判明する方が盛り上がるし、ディーラーはアップカードを後からゆっくり表面にすることで顧客を楽しませることができる。単に表にするタイミングの違いだが、これがエンターテインメントの余地を生む。
・九ニ(1)の(二)
スプリットしない決定権者以外の顧客が、「当初の掛金が対応することとするものを選択する」とある。複数名いると意思確認とチップの移動が煩雑になるので、最初に配られたトランプを含む手札に固定されても良いのではないか。決定権者がリスプリットを繰り返した最後の手札にのみ、決定権者以外は賭けることが可能となるというのは、決定権者よりも自由度が高く思え疑問だ。今まで、選択している場面に出会ったことがない。
・十
顧客が全員バーストしている場合でも、ディーラーは一人でハード17やソフト18以上となるまでトランプを自身に配布し続けなければならないように読める。追加配布せず、ラウンドを終了する規定を明確に置くべきだ。
・十六イの(4)(準用含む)
ディーリングシューにトランプが無い場合、バカラの第一11のニでは「当該ラウンドにおけるカジノ行為の結果は発生しなかったものとする」のに、トゥエンティワンでは使用済みトランプを「初期化して当該ラウンドを継続」しなければならないのは不合理である。
・十六イの(7)
主たる区画に2枚のトラプが配布されなかった場合、「当該手札に対する賭けに係るカジノ行為」のみ「結果は発生しなかった」とするのは不適切である。他の顧客は、本来自分に来るはずではないトランプでラウンドを継続しなければならない。誤ってトランプが次の顧客の主たる区画に配布されることは多々あるが、その場合は本来配布されるべき主たる区画にトランプを移動することで責任者が顧客の同意を得て、全ての主たる区画でラウンドは通常通り継続されるべきである。
・十六イの(8)
規定に従わずに引かれたトランプが表向きとなっていても、最初の2枚等、それが予め表向きとされるトランプで、かつ、配布順序に選択肢が無く、本来配布されるべき主たる区画が定まっている場合、「既に使用されたトランプ」とせずに、バカラ(第一11一のハ)の「順番が特定できる場合は当該順番に従って使用」と同様にすべきである。顧客に対し、本来と異なるトランプを配布することとなる対応は、トラブルの元となる。
・十六イの(9)
「当該トランプが表向きにされた後」は「当該ラウンドにおけるカジノ行為の結果は発生しなかったものとする」のは、大変問題がある。ディーラーにブラックジャックが成立していないのに誤って2枚目を表向きにした場合は、イーブンマネーの選択をし損ねた顧客にブラックジャックの配当をすべきである。また、インシュランスのみ意思確認しイーブンマネーの意思確認を怠っていた場合でブラックジャックが成立していた場合、イーブンマネーに関係無い手札の顧客の結果は、正当なものである。
・十六イの(10)
インシュランス及びダブルダウンでは、掛金の「上限」(六のイ、九ニの(2))を定めているのであり、「少ない場合は当該定める額との差額」を追加で置かせるというのは、スプリット(九ニの(1))の場合のみであり、本規定は誤解を生む。
・十六イの(11)
顧客の選択が終わる前にディーラー手札が明らかになってしまった場合、選択を終えていないプレイヤー手札のみ、結果は発生しなかったものとするのは、必ずしも適当ではない。これによって、選択を終えていない顧客が本来ヒットしたであろうトランプがディーラーに渡り、バーストするはずだったディーラーが21になってしまうと、この結果を有効とされる顧客に納得させるのは困難である。
・十六イの(12)
ダブルダウンやヒットの意思表示をしている顧客をステイと勘違いし、次の顧客のヒットにトランプを配布してしまった場合、配布されなかった顧客の手札に対する賭けの結果を一律に発生しなかったものとするのは問題がある。1枚配布ミスをした時点で顧客に指摘される場面が最も多いであろうが、その1枚が、配布されなかった顧客にとって最適なトランプ(11でダブルダウン時の10等)で、誤って配布されてしまった隣の顧客にとっては最悪でバーストするトランプであった場合、いずれの顧客も結果に納得しない。本来の順序に配布し直すことが不合理でない限り、配布されなかったプレイヤー手札にトランプを移動し、本来の賭けの結果を発生させるべきである。
・十六ロの(6)
インシュランス及びダブルダウンでは、掛金の「上限」(六のイ、九ニの(2))を定めているのであり、「少ない額」という場合が当てはまらない。また、スプリット(九ニの(1))で「少ない額」を賭けていることに気付かずに勝った顧客に対し、本来の掛金との差額に係る勝金まで支払うというのは、適当ではない。少ない額と同額のみを勝金として支払うことが、最も倫理的である。掛金が不足するケースとは、顧客がそれ以上のチップを所持していないケースも多く、本来の掛金は現実的に支払えなかったのに、その差額の勝金を得られるというのは、道理に合わない。また、少ない額でも本来の勝金が得られるとなれば、顧客が意図的に不足する額を賭け、勝った場合のみ自己申告するという行動を誘発する。
・十七のロ
ディーラー操作式電子テーブルゲームにおいて、トランプの配布は、テーブルゲームと同様と解しているようだが、トランプの配布方法が異なるシステムの存在を考慮していない。ディーラー1人に対し、50~100人等多数の顧客が同時にブラックジャックに賭けられるディーラー操作式電子テーブルゲームでは、顧客の2枚目までは全顧客に共通で、3枚目以降はコミュニティカードとしてテーブル中ほどに配布する。顧客により、2枚でステイなら3枚目以降は関係無いが、ヒット等する顧客がいれば配られる。その同じ3枚目の意味は、人によってはスプリットだったりもする。ダブルダウンした人はそこで終わりでも、まだヒット等する人がいれば4枚目以降のコミュニティカードがテーブル中ほどに配布され続ける。
ディーラー操作式電子テーブルゲームシステムを導入する最大の利点は、少額しか賭けない顧客を多人数同時に、少ないディーラーで相手にすることが出来る点にあると思われるが、その場合のコミュニティカードの取り扱いに対応した規定に改めなければ、多人数向けのディーラー操作式電子テーブルゲームは導入出来ないこととなる。
なお、テーブルゲームのように少数の顧客を相手に、テーブルゲーム同様にトランプをディーラーが配布し、顧客が掛金を置いたりする部分のみを操作画面から行うディーラー操作式電子テーブルゲームも存在するが、ディーラーによる通常のテーブルゲームが存在するカジノにおいては、このタイプのシステムに需要はほぼ無いと思われる。よって、コミュニティカードを用いるディーラー操作式電子テーブルゲームシステムに適用できる規定を、新たに設けるべきである。

謹賀新年

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2019年賀状.jpg

ということで、あけましておめでとうございます。
ブログは何とかしないとダメですね(苦笑)

謹賀新年

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2018ranpou_blog.jpg
明けましておめでとうございます。
何と、前回の投稿が一昨年の年賀状という酷い状況で、久々の更新です。

昨年は、カジノスクールに通いはじめたのをきっかけに、久々にカジノ通いも復活しました。
最初は、マニラにできた日本資本のカジノ、オカダ・マニラを見てみたいというのがスタート。次は、仁川にできたセガサミー出資のカジノを見てみたいということで、パラダイス・シティへ。
夏は、当初スーパースター・ヴァーゴという船で、横浜から上海へ行って帰ってくるクルーズの予定でしたが、厄介な台風の影響で船会社からクルーズをキャンセルされてんやわんや。急きょ乗れたのが、香港から沖縄へやってくる中国人向けのクルーズで、ゲンティン・ドリームという最新鋭の15万トンの船。船上でのボルダリング、初めて体験しました。
その後、サイパンで仮オープンしてたカジノが、やっと工事が進んで新しい場所で営業開始したというのを知り、何十年ぶりかでサイパンへ。インペリアル・パシフィック・リゾートの宮殿のようなカジノでしたが、まだホテル部分は工事中。ホテルがオープンしたらまた行ってみたい感じでした。
そして、どうせなら、最近の済州島はどうなっているのかと調べてみたら、これまたリニューアルオープンしたカジノを発見。ラマダプラザのカジノが興味深かったので、情報不足でしたが色々回ってみるつもりで久々に済州島へ。最後、カジノからお土産もらってしまいました。
ここまでくると、アジアで行ったことのないカジノを体験してみたいという感じになり、セブ島へ。久々に場末感溢れるカジノに辟易。
この辺で、昨年は打ち止めの予定でしたが、カジノスクールの休みをついて、週末にまた仁川だのマニラだの行ってました。
マニラは、オカダ・マニラ以外にも巨大カジノが3つあり、近場では結構オススメです。
特にそのうちの一つ、リゾート・ワールド・マニラには、フリーベットブラックジャックという面白いテーブルがありました。なんと、9・10・11からのダブルダウンと、20からを除いたスプリットが無料というブラックジャック。高額ベットしてる時にスプリット、スプリット、ダブルとかチャンスが来ると、同時に大ピンチでもあるわけですが、それがノーリスクでできちゃうわけです。こんな素晴らしいルールのブラックジャック、他所のカジノで見たことがありません。ただし、ディーラーが22になっても、バーストではなく引き分け扱いというのが時々痛いのですが(苦笑)

そんな感じで、カジノ法案の行方を横目に、日本にできるはずの統合型リゾートの未来、そこで必要とされるコンテンツとはどんなものか等々、また考え始めました。

年末、古巣のVSLという、今はない会社の忘年会で、デジタル・ハリウッドの杉山校長とか懐かしい人々に会いましたが、思えばラスベガスに通いはじめたのも、デジタル・ハリウッドでSIGGRAPHついでにラスベガスに連れていかれたのがきっかけ。あの時、カジノリゾートとコンテンツの関係を初めて意識しました。
VSL時代の最後、それを引き継いだダイナモピクチャーズ時代と、会社の忘年会でプレゼント交換会をやってましたが、自分はいつも、ラスベガス旅行を誰かにプレゼントしてました。いつか仕事に役立つだろうと。

今年は、カジノスクールの友達とカジノへ行ってみたいです。
そろそろ、筑波宇宙センターでの知財の仕事は終わりにして、カジノとエンタメとコンテンツ分野に軌道修正したいところ。どんな年になるのやら...

前回前々回に続き、旅行の話。
というか、もう3ヶ月前のラスベガスの話(苦笑)
(ここ2ヶ月ほど、そろそろ働こうと情報収集始めたら、結構面倒でブログが後回しになってしまった。)

昔は、会社の納会でマイレージ使ってラスベガス旅行を同僚にプレゼントしていたくらいで、自分でも何度となく訪れていたラスベガス。司法試験の勉強が終わるまでと思って、しばらく行っていなかった。

前回行ったのは、STAR TREK THE EXPERIENCEが終了すると知って駆けつけた2008年8月だから、6年ぶりだ。この間の変貌振りは激しく、新しいホテルや施設がどれくらいあるか調べ、それらを含めて回ろうと計画するだけで、アホみたいに時間がかかってしまった(苦笑)

お初にお目にかかるのは...
CityCenterThe LINQAriaVdaraThe CosmopolitanElaraThe DDowntown GrandSLSThe Cromwell

日本食レストランとして有名なNobuまでがホテルに進出してた。

逆に、SaharaIMPERIAL PALACEといったリーズナブルなホテルは消えた。

つーか、IMPERIAL PALACEがThe QUADになって、The LINQに改装中とか、変化が速すぎてガイドブックにゃ書いてない。
The Quad Starting To Morph Into The Linq Hotel

TropicanaはHiltonになってるし、マイナーチェンジを含めたらワケワカメだ。

無料ショーとして有名だったSirens of TIが終了(左)してたのは知ってたけれど、フォーラムショップスFestival Fountainもなくなっていたのは行って吃驚(右)。
end.jpg

Sirens of TIは次のショーの予定も聞かないし、Festival Fountainの後がどうなるのかも知らないけれど、無料のショーが減り、リーズナブルなホテルが減りゴージャスでオサレに変貌し、カジノ以外も金がかかるようになってきたということなら残念だ。

そして、そういう意味での象徴的な変化が、ホテルの料金体系そのものに表れていた。


■不透明な料金体系
特に今回悩ませられたのが、宿泊料金に追加で徴収されるResort Feeというやつ。最初、ホテルの予約サイトの説明読んだ時は、何か新しい税金かと思った。でも、Resort Fee自身にも税金がかかるというので、なんじゃそりゃ?と。
http://www.lvtaizen.com/_backnum/html/10072main.htm

以前なら、インターネットや電話は、使った人だけが追加料金を請求されていたのだけど、今は使うかどうか関係なく、一泊毎にそれらの代金として強制徴収されるようになったと...まあ、こういうことは他のリゾートでもあるらしいけど、胡散臭いし面倒だ。

こんな一覧まである。
http://www.vegaschatter.com/story/2014/1/19/195044/059/vegas-travel/Las+Vegas+Resort+Fees%3A+The+2014+Guide

2012年と比較するだけでも、Resort Feeが値上げされ続けている変化が分かる。
http://www.vegaschatter.com/story/2012/1/3/211037/0031/vegas-travel/Las+Vegas+Resort+Fees%3A+The+2012+Guide

追加料金なのにオプションではなく、このシステムを導入しているホテルでは必ず徴収される。しかも、ホテルによって金額も内容も違う。エクスペディア等の予約サイトなどで金額でホテルを比較したい場合、宿泊料金だけで比較されるので、ホテル毎に異なるResort Feeを自分で合算して計算し直さないと、本当の比較ができない。何十ものホテルを全日程で比較検討するのは面倒だった。

予約時に予約サイトで支払う金額と別に、現地チェックアウト時にホテルに直接Resort Feeを支払うことになるので、それを理解せずに揉める客がいるらしい。

追加料金なんてたかが知れてるとか思ってはいけない。
ホテルによっては、宿泊料金よりResort Feeの方が高額だったりした。どっちがメインなんだ?と、つっこみたくなる。

以下、今回宿泊したホテルの料金。

9月ホテル名宿泊料金Resort Fee備考予約サイト
2日Hooters4,100円1,793円3人1泊エクスペディア
3日Hooters1,787円1,793円1人1泊エクスペディア
MGM Grand7,005円3,038円2人1泊M life
4日Stratosphere4,613円2,165円3人1泊Hotels.com
5日
6日
Downtown Grand13,065円4,387円3人2泊エクスペディア
7日Hilton Grand Vacations
Suites on the Las Vegas Strip
8,007円なし3人1泊Hotels.com
8日
9日
JOCKEY CLUB
(Jockey Resort Suites Center Strip)
25,220円なし3人2泊エクスペディア
10日Wynn22,066円3,075円3人1泊Red Card
11日RIVIERA2,222円1,832円3人1泊Booking.com
12日
13日
グランドサークルツアー参加ツアー込み205,263円VELTRA
14日RIVIERA2,222円1,833円3人1泊Booking.com

HiltonとJOCKEY CLUBがResort Feeなしなのは、どちらも本来は会員制リゾートなコンドミニアムだからだろう。(カジノのないコンドミニアムなんて、以前は割高な気がしていたけれど、高額なホテルが増えた結果か、印象が変わった。初めて利用してみたら、便利だしとても良かった。特にJOCKEY CLUBは立地も良いのだけど、一般客は常時利用できるわけではないらしいので、タイミングも良かった。)


■合計約11万円
グランドサークル観光を2泊3日したところを除き、3人でラスベガス11泊の合計が約11万円ということで、1泊1万円だったことになる。安いRIVIERAから豪華ホテルなWynnまで含め、地域的にはストリップ南の新フォーコーナー、フォーコーナー、ストリップ北、ダウンタウンと、ラスベガスの主要スポットを網羅した。網羅して、豪華ホテルも入れ、可能な限り安くできる日程を組んだらこうなった。上記リストに含まれない食費は想定外に高くついたけれど、ラスベガスのホテルのコスパが良いのは昔からだ。
(ちなみに、RIVIERAに2回宿泊しているのは、グランドサークルのツアーに参加するのに荷物をホテルに預けたからで、ツアー参加前後で同じホテルにする必要があったからだ。ツアーは早朝から参加で、帰りも遅いし翌日には帰国で早朝出発だし、どうせホテルは楽しめないと思い、ストリップでとにかく安いホテルを探したらこうなった。RIVIERAが好きなわけではない(苦笑))

昔はResort Feeがなかったので、もっと安かったけれど、カジノがあると関連施設が安くできるということ自体は確かだ。にもかかわらず、カジノのない高級ホテルが増えたり、Resort Feeのような宿泊施設の収益を増やそうという動きは、カジノ収益に依存した状態からの脱却ではある。

かつてのギャンブラーの街から、シルク・ド・ソレイユに代表されるショーなどエンターテイメント都市、ビジネストラベルのMICE都市へと変貌発展し、脱カジノ依存(「脱カジノ」ではない)の統合型リゾート(IR)として成長したけれど、まだ現在進行形で変化し続けているわけだ。

バーニングマンじゃあるまいし、こんな砂漠に何故世界中から人が集まるのか。
ラスベガスのスタイルを模倣したショッピングモールなど、お台場でも人気(ヴィーナスフォートとか)だろうけど、観光立国を目指す日本が学ぶべき点は、形式ではなく、その姿勢の違いではないかと思う。


と、話がズレてしまったけれど、旅のお話は年越しで(^^;;

前回に続き、ラスベガス旅行の話。今回はその経由地、ポートランドについて。


イーツアーを使って、デルタ航空の安いチケットの空席状況とにらめっこしながら、出発の一ヶ月前にギリギリ押さえられたのが、成田(NRT)からポートランド(PDX)経由でラスベガス(LAS)へ行くものだった。(本当は、羽田から深夜0:30とかに出発して前日の日付で現地に到着する便にしたかったのだけど。)

ポートランドといえば、自分にとっては鬼門。また引っかからなきゃいいけどと思いつつ、今回は別の問題があった。
NRTからPDX到着は朝9:11で、PDXからLASへの出発が16:50であり、7時間以上も時間があったのだ。これを空港内で待つのは、流石に勿体無い。簡単にポートランドを観光できないかな?

ということで、トランスファーの時間を有効活用するために、ポートランドの情報収集を始めた。

■なんだ、魅力的な街じゃないか...
正直、ラスベガスへの経由地くらいの認識しかなかったポートランド。でも、調べるうちに魅力が理解できてきた。

http://www.travelportland.com/lang/japanese/

コーヒーとビールが美味しくて自転車で観光するのが楽しそうな...いいね!
http://portland.junglecity.com/enjoy/index.htm
なんか、住んでみたい街だな。こんなことなら、7時間といわず、一泊くらいしても良かったかも...と思っても後の祭り。格安航空券はチケットの変更はきかないし、同行者の目的はあくまでラスベガスなので、貴重な時間をどう有効活用して観光するか考えてみた。

初めての街を短時間で効率的に楽しむとなると、自由に散策するよりも、ツアーに参加するのが良い。そこで、travel PORTLANDの観光ツアーのページで紹介されているツアー情報を参考に、参加可能なツアーを絞り込んだ。

個人的には自転車ツアーとか行きたいけれど、同行者は高齢なので無理。
同行者のことを考えると日本語ツアーが良いのだろうけど...
そもそも、この手のツアーはホテル宿泊者を前提に組まれているものばかりで、空港から参加するには時間が読めなかったりで情報不足。だけど、一々問い合わせしてる暇もないな...
オレゴンの自然を満喫するようなツアーも良いけど、どうせラスベガスからグランドサークル行くから、自然を楽しむのはそっちで十分だしな...

コーヒーツアーとかいいよね。
http://www.thirdwavecoffeetours.com/tours-jp.html
でも、ポートランドに9:11到着予定で、10時からのツアーというのは無謀だ。
順調に到着して順調に入国できたとしても、まず間に合わない。
http://www.forktownfoodtoursportland.com/#!our-tours-japanese/c1kpp
こんなのも魅力的だけど、曜日が合わないし...

とかウダウダ考えていたのだけど、最終的にPortland SpiritのDowntown Lunch Cruiseに決めた。
http://www.portlandspirit.com/portlandspirit.php#lunch

11:30から乗船開始の、12:00から14:00までのランチクルーズで、ポートランドの中心部を流れるウィラメット川(コロンビア川の支流)から街を紹介してくれる。到着や入国で多少遅れても、12時には間に合うだろう。日本語ツアーではないけれど、どうせランチは食べなければならないのであり、限られた時間で食事と観光ができれば一石二鳥だ。

結果的に、これで大正解だった。

■荷物の問題
そこで心配になったのが、ポートランド観光中に荷物をどうするかだ。
自分の荷物は大したことないが、同行者の荷物は多そうだ。とても、荷物を全て持って観光するわけにはいかない。

アメリカからの帰国の場合は、アメリカ国内を経由しても、途中の空港で受託手荷物を返却されることなく日本の空港まで運んでくれるが、日本から行く場合は、最終目的地ではなく、アメリカで最初に入国する空港で、受託手荷物を一度引き取らなければならない。つまり、帰りはLASで預けた荷物はPDXで返却されることなくNRTまで届くが、行きにNRTで預けた荷物は、PDXで一度受け取らなければならない。そして、PDXで再度荷物をチェックインしなければならない。

通常なら、乗り換え客には専用の荷物再チェックインカウンターがあり、受託手荷物を受け取ってもすぐに預けられて、身軽になれる。しかし今回は、次の便まで7時間以上あるのが心配だった。乗り継ぎ便はアラスカ航空であり、アラスカ航空は通常7時間も前に荷物を預からない。

そこで、デルタのカスタマーサポート用のTwitter公式アカウントに質問してみた。




すると、営業時間になってから、予約の詳細を確認するのでダイレクトメッセージで予約確認番号とか送ってほしいとの返事があり、それを伝えると迅速に返事がきた。

以下、ダイレクトメッセージでのやり取りはこんな感じだった。

デルタサポート
「PDXで預け荷物を一度受け取っていただき、乗り継ぎカウンターにて再チェックインが必要です。乗り継ぎカウンターへお進みいただきますと、乗り継ぎ待ちのお客様の待機場所となります。PDXの市内観光をご希望の旨を空港職員へお伝え下さい。」

自分
「乗り継ぎカウンターでアラスカ航空の職員に市内観光希望を伝えれば、7時間前でも荷物をチェックインできるだろうということですね。ちなみに、アラスカは荷物1個から有料ですが、デルタで無料で預けた荷物は、別料金を取られることはないですよね?」

デルタサポート
「この度ご購入いただいている航空券は国際線とアメリカ国内線を1つの旅程として発券している航空券なのでアメリカへ到着する弊社の荷物規定が適用されます。また、今回はお乗り換えカウンターでの再チャックインとなりますので7時間前でも対応しております。」


自分の質問は、空港職員とアラスカ航空職員を混同しているが、最終的には、デルタのこれらの回答がほぼ正しかった。(「乗り継ぎカウンターへお進みいただきますと、乗り継ぎ待ちのお客様の待機場所となります。」というのを除いて。)

しかし出発当日、成田のチェックインカウンターのデルタ職員が異なる説明をしたせいで、非常に混乱した。

自分
「今、NRTでチェックインしたのですが、PDX乗り換えが7時間あるからアラスカの搭乗券は発券できないと言われ、PDXでアラスカに搭乗券を発券される6時間前まで荷物も預けられないと言われてしまいました。困りましたが仕方ないですね。ご報告まで。」

デルタサポート
「ご報告いただきましてありがとうございます。こちらにて情報が誤っており申し訳ございません。チェックインやお荷物のお預けにつきましては、ポートランドにて再度ご確認いただきますようお願い申し上げます。ラスベガスへの旅、お楽しみ下さい。」


この時点で、既にランチクルーズは予約済みなので、今更荷物を預けられないとか言われても困るのだが、サポートから違う説明を受けていると言っても、成田のデルタ職員の返事はそっけなく、ポートランドで荷物をどこかに預ければ良いと言われてしまった。(結果的に、この職員の説明は間違っていたので助かったが。)

しかも、トランスファー時間で市内観光なんて、到着が遅れる可能性もあるのに、予約するのが悪いと言わんばかりの態度。(そんなの分かってるよ。)というか、何かイラッとすることを言われたが、忘れた(苦笑)

大体、日本のようにそこら中にコインロッカーがあるわけもなく、ポートランドのどこで預かってもらえるのか知ってて言ってるのか聞きたかったが、何か不毛な感じがしたので諦めた。ここでゴネても仕方ない。

事前に以下を見ていたので、
http://portland.junglecity.com/enjoy/basicinfo/airport.htm
「荷物預かり所(storage)」があること自体は分かっていたが、料金とかよく分からないので、利用することにならないことを祈っていた。

サポートからの「ポートランドにて再度ご確認いただきますようお願い申し上げます」という返事には、成田の職員が間違ってるのではないかというニュアンスが読み取れたが、実際にPDXに到着してみたらこうなった。

自分
「PDX、結果的に直ぐに荷物の再チェックインできました。荷物がベルトコンベアで運ばれた後に搭乗券を求められ、まだ発券されてない旨理解されると係員は困った顔してましたが、何も言われませんでした。先に確認されていたらどうなったのか、分かりません(^^;」

デルタ
「PDXでお荷物を直ぐ再チェックインが出来ましたとの事、何よりでございます。市内観光はお楽しみいただけましたでしょうか。ラスベガスの滞在も満喫くださいませ。」

ということで、無事に市内観光を満喫できた。


ちなみに、デルタのサポートとは、もう一つ別の質問もしていた。

自分
「NRTでe搭乗券を使った場合、PDXでアラスカ航空に乗り換えるのに、スマホのe搭乗券はそのまま使えますか?また、帰国の際、LASからPDXへのアラスカ航空について、Fly Deltaを使ってチェックインしてe搭乗券を使うということはできますか?」

デルタ
「スマホのE搭乗券でのご搭乗は、現在の所、弊社便のみでご利用可能と認識しております。恐れ入りますが、ご帰国時もアラスカ航空ご利用区間があります為、スマホのE搭乗券はご利用いただけないかと存じます。ご不便をお掛けし大変申し訳ございません。」

事前にこれを読んでいたので、
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/075/75095/
e搭乗券を使ってみたかったが、他社便が絡む今回は使えなかった。


■ポートランド国際空港の親切な職員さん
ポートランドで受託手荷物を再度預けた際、言われるままに階段を上がったら、すぐにセキュリティのいるゲートがあって、機内でもらったペットボトルの水とか、その場で捨てろと言われた。

「あ、このまま進むとセキュリティチェックポイントで、乗り継ぎ便のゲートまで行ってしまう」と分かったので、荷物を再チェックインしたカウンターで、市内観光希望を伝えなければならなかったのだと気付いた。

先のデルタサポートのツイートでは、
「乗り継ぎカウンターへお進みいただきますと、乗り継ぎ待ちのお客様の待機場所となります。PDXの市内観光をご希望の旨を空港職員へお伝え下さい。」
と言われていたので、待機場所らしき場所に行ってから伝えるのだと思っていたのだけれど、荷物の再チェックインカウンター周辺にそんな場所はなく、市内に出るのにセキュリティチェックポイントを通る必要はないはずなので、乗り継ぎ便のゲート付近の待機場所まで行くのは間違いだと思った。

そこで、セキュリティの職員に市内観光したい旨を理解してもらうと、ならここを通る必要はないという感じで、言ってることはよく分からないけど((^^;)下に行けという感じだったので、荷物を預けたカウンターに戻って市内観光に出たい旨を伝えた。

すると、外に出る場合の注意事項について説明を受け(たような気がする(自爆))、構わないと応えると、偶然そこに居合わせた初老の職員に何やら説明し、彼について行けと指示された。

で、その職員について行くと、シャトルバスが待っており、どこを通ったか分からないが、国内線のBaggage Claim (lower level)エリアに到着。もう、そのまま外に出られる場所だ。
途中、乗り継ぎに何時間あるのかとか、どこに行くのかとか会話していたのだけど、受託手荷物以外にも同行者がちょっと大きな手荷物(機内持ち込みしていた荷物)を持っていることに気付いて、荷物一つ$10で安いから、市内観光するなら預けた方が良いと、荷物預かり所にも案内してくれて、受け付けに事情を説明してくれた。

CIMG9156.jpg
写真の左側の場所で預けたわけだけど、正直、自分だけなら、ここが預かり所とは気付かなかったかもしれない。国内線のBaggage Claim (lower level)エリアのかなり奥まった場所にあり、しかもパソコンに向かってる兄ちゃんが一人いるだけで、カウンターもないただの事務所だった。でもお陰で、本当に身軽に街に出られた。

ここで荷物を預けるのに時間がかかっている間に、案内してくれた職員さんは他所に行ってしまったのだけど、市内に出るためのマックス・ライトレールのレッドラインの乗り場を探している時に、エスカレーターを昇って行くさっきの職員さんを見つけた。で、思わず軽い気持ちで「レッドラインはあっちですよね?」と確認のために声をかけたら、その職員さんはエスカレーターで遠ざかりながら詳しく説明しようとし始め、無理だと悟ると、他に利用者のいないそのエスカレーターをまさかの逆走!もうビックリ!!
かなり上まで昇っていたエスカレーターから、コーヒー片手にドッカンドッカンと駆け下りてきた(^^;;;;

見てるこっちがハラハラ。あわわわわ!!危ないですよぉ!!!
という感じ。

声かけてしまって申し訳ありませんm(_ _)m
そこまで親切にしてくれるとは、思ってもみませんでした。

エスカレーターを逆走してにこやかに駆けつけると、もう本当に親切に、レッドラインの券売機の前まで連れて行ってくれて、丁寧に教えてくれた。

高齢者を二人連れているせいもあったかもしれないけれど、アメリカ到着早々に不慣れなポートランドで受けた衝撃的な親切に、一同感激してしまった。

で、別れ際に母がチップを渡そうとしてしまい、職員さんがいやいや要らないよとジェスチャーし、自分もこの親切にチップを渡すのは失礼だと思って母を止めた。

爽やかに去っていく初老の職員さんの後姿は眩しかった。


■交通
空港から市内へは、マックス・ライトレールのレッドラインが安く便利だった。

CIMG9026.jpg

http://trimet.org/fares/index.htm
大人の場合、2時間券が$2.50、一日券が$5.00。
65歳以上のシニアだと、Honored Citizenというチケットになり、2時間券が$1.00、一日券が$2.00。
つまり、70代2名を連れて3人でポートランドでかかった交通費は、全部でたった$9.00だった。
まあ、アメリカの公共交通機関の運賃の安さというのは、他の都市でも驚かされるけれど、ポートランドのこのチケットは、他にバスや路面電車(ストリートカー)も乗れるそうで、安いだけではなく、その利便性の高さにも驚かされた。

CIMG9148.jpg

ポートランドは自転車専用レーンが整備されていたり、自転車に優しい街なのだけど、これが車内の自転車置き場。自転車で乗車してくる人は、垂直に自転車を立てて、写真上部の黄色いパイプの下にちょこっと出ているフックに前輪を引っ掛ける。大きな荷物や乳母車のスペースも兼ねている。

たったこれだけで、自転車が他の乗客の邪魔になることなく、スムーズに乗り降りできていた。
日本なら、折りたたんで輪行袋に詰めるのが自転車持ちこみの条件だったりすることが多いので、自転車も特殊だし、持ち込むのも面倒だったりして、一般的ではないと思うのだけど、ポートランドのこの方式は自転車そのままを何も準備なしに迷惑なく持ち込め、誰もが気軽に利用できるというのが、多くの利用者を見ていて分かった。

以下の様子も、利便性が理解しやすい。
CIMG9138.jpg
CIMG9139.jpg

これは、ランチクルーズ船乗り場の近くのマックス・ライトレールの駅。歩道とプラットホームがシームレスで、車内で運賃を払うわけでもないのに改札もない。何もないけど、乗客は自動券売機で切符を買う前提なわけだ。恐らく、キセルがばれた場合の罰金が高いのだろうけど、日本との設計思想の違いが面白い。不正利用者の排除より、正しい利用者の利便性を優先すると、こんなに街に馴染んだ鉄道が生まれるということだろうか。こんなだから、乗ってきた自転車で簡単に乗車できるわけだ。

駅前で駐輪してる自転車まで、街に馴染んでた(^^;
CIMG9141.jpg

■ランチクルーズ
目的のクルーズについて調べた際、ランチを食べないクルーズのみの客も一緒で、時々そういうチケットをアメリカのグルーポンで売ったりしているようだと分かった。クルーズのみの客は、乗せすぎて座る場所もない時があるようで、混んだクルーズに乗った客から低い評価を受けていた。しかし、その不満は、ランチの客が優先されていることへの不満だったので、逆にランチクルーズは安心して予約できた。まあ、$40という料金もリーズナブルだと思ったので。

そして当日、定刻通り9時過ぎに到着したポートランド国際空港から乗船の桟橋に到着したのは、乗船開始の11:30丁度だった。色々心配していたのに、順調過ぎて嬉しくなってしまった。(逆に帰国の際のポートランドは苦労するのだけど、その話はまた後日。)

桟橋では記念写真を撮られ(後で買いたい人だけ買うやつ)、乗船の際に苗字を確認されて予約席に案内されると、出航の12時を待たずにコーヒーやパン類は運ばれてきた。

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オプションでワインや前菜を注文できるのだけど、飲まないし、どうせメインの量が多いと思って頼まなかった。

そして出航すると、注文を聞きに来ていたサーバーだった船員などが歌ったりし始め、そういやクルーズの説明に「live entertainment」と書かれていたのを思い出した。結構埋まっているランチの客席は、和やかに盛り上がっていた。

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メインの料理が運ばれてきたのは12:30頃だったけれど、それまではショーだの景色だの眺めていたらあっという間だった。

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メインの選択肢は4種類で、ベジタリアン向け、チキン、ビーフ、ティラピアとあったので、自分はティラピアを頼んでみたが、まあ普通に美味しかった。
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ゆっくりと食事を終えた後も、しばらくその席から外の景色を眺めていたのだけど、いつの間にか他のランチ客はかなり席を立って移動していた。それで、食後は上のフロアや甲板に自由に移動し、もっと景色を楽しんだ方が良いと気付いた。

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しかも、ランチのフロアでは聞こえなかった観光案内のアナウンスが、甲板に出たら響いていた。

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甲板はそれほど広くなかったけれど、強い日差しも気持ちよく、結局最後まで甲板にいた。
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こうしてクルーズを堪能して14時過ぎに下船すると、何やら鳥の群れが。
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人から逃げることもなく、通行人と鳥の群れが普通にすれ違う不思議な風景。
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でも子供は天敵(^^;
CIMG9128.jpg

最後まで、いい街だなぁ~という感じ。
またレッドラインに乗って空港に戻ったのが15時過ぎ。
預けていた荷物を受け取り、16:50のアラスカ航空の便に丁度良い時間で、焦って急いだりすることもなく、最終目的地ラスベガスへと旅立てた。

ということで、ポートランドで乗り換え時間を有効活用した市内観光は、声を大にしてオススメしたい。そのために便の時間を変更しても良いくらい。
もちろん、乗り継ぎに失敗しても知りませんが(笑)


帰国してからこんなの読んで、えらく納得。
http://tripplanner.jp/pickup/planner/eb5e85ee2fba30c914e8712c534d738a/
http://blog.compathy.net/2014/05/26/portland-craftsmanship/
http://blog.compathy.net/2014/05/27/portland-craftsmanship2/
http://www.cos-kyoto.com/soup/soup_vol_sp01.html


では次回、やっとラスベガス。

http://gigazine.net/news/20130710-little-witch-academia-2/
この成功は素晴らしい。
で、政府のクール・ジャパン推進とは、どんな関係があるのだろうか。

というのは、こういうのがクラウドファンディングで成功するなら、政府のクール・ジャパン推進機構による金銭的支援なんて要らないというツイートを見かけたからだ。

まあ、確かにそういう側面があるのだけど、じゃあ国の支援なんて全く要らないかというと短絡的過ぎで、そもそもこの作品が、文化庁の支援で作られたという経緯がもっと理解されるべきだろうと感じた。
http://animemirai.jp/about.php

アニメミライのプロジェクトが始動した2010年の前、どんな状況だったか、覚えているだろうか。
前年の2009年、麻生内閣は、「アニメの殿堂」とか「漫画の殿堂」、「国営漫画喫茶」と揶揄された117億円の箱モノをお台場に作ろうとして、大きな批判を受けた。このブログでも批判した。
http://maruko.to/2009/04/post-25.html
-->
まだ、117億で、5・6本でも継続して作品に投資してくれた方がマシだ。
コンペは、代理店抜きなら10本作っても十分おつりくるぜ?
受注条件は、制作会社を国内に限定し、海外への下請けや外注は、極力制限しても良い。あと、制作過程でコンプライアンスを遵守させることは、必須条件だ。経産省とも連携すれば、
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20390487,00.htm?tag=nl
これのガイドラインを生かした成功例にさせても良い。
<--

その後、国立メディア芸術総合センターという仮称を得たのだけど、当時はmixiのコミュなんぞでも色々議論されていた。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43952487&comm_id=111198&page=all

そして7月、設立準備備委員会に日本アニメーター・演出家協会(JAniCA)が出席し、人材育成の必要性を訴えた。
http://www.janica.jp/press/mediacenter.html
国立メディア芸術総合センターを作るなら人材育成に使わせろと。

経産省も「アニメ産業コア人材育成事業」が動いていて、日本動画協会が随意契約してJAniCAが再委託していた。
http://www.meti.go.jp/information/data/c90728aj.html

で、9月に麻生内閣が終わり、民主党政権が始まった。

当時の「コンクリートからヒトへ」という大きな流れは、まだ誰もが覚えているだろう。
国立メディア芸術総合センターの話は消えたが、JAniCAによる人材育成の必要性の訴えが通じ、2010年、文化庁委託事業として「若手アニメーター育成プロジェクト」(後のアニメミライ)が始まった。

当初は、作品制作団体選定に関連してJAniCA内部でちょっとしたイザコザがあったり、心配な時期もあったが、今から考えれば大成功だったと言えるのだろう。
http://www.janica.jp/press/janicatimes_001.pdf
http://www.janica.jp/press/janicatimes_002.pdf

そうして、アニメミライ2013で制作されたのが、リトルウィッチアカデミアだったわけだ。
http://www.animemirai.jp/c2.php

「俺たちクールとか言ってる場合じゃねーよ。絶滅危惧種なんだよ!」と言ったかどうかは知らないが、アニメミライとは、「コンクリートからヒトへ」の民主党政権が、とても上手く機能した例だったのかもしれない。政権が自民党に戻って、経産省のクール・ジャパンがまたヘンテコな方向に進んでいても、
http://www.huffingtonpost.jp/social/Hiroshi_Koga/story_n_3438220_260977327.html
文化庁のアニメミライは健在(縦割りのお陰?(苦笑))であり、
http://www.animeanime.biz/all/136295/
http://www.kickstarter.com/projects/1311401276/little-witch-academia-2
こんな成功につながっているのだ。

こういう支援こそ、クールだと思う。

と、ここまで書いてから検索したら、
http://ure.pia.co.jp/articles/-/12761
丁度いい記事もあった(^^;

■感銘を受けたシンポジウム
先日、シンポジウム「日本はTPPをどう交渉すべきか ~「死後70年」「非親告罪化」は文化を豊かに、経済を強靭にするのか?」の中継を見て、非常に感銘を受けた。
http://thinktppip.jp/?p=128
http://togetter.com/li/526246

もちろん、TPPにおける著作権問題は認識していたし、非常にマズイとも感じていたけれど、TPPそのものに反対する立場ではなく(選挙の時は反対してた議員だらけの自民党が賛成するのは、民主主義的な「手続の正義」に反してクソったれだと思っているので反対だが)、今までなかなか意見表明できなかった。しかし、このシンポジウムの説得力は、著作権問題については自分も何か言わなければという気にさせてくれた。

中でも、特に感銘を受けたのが、青空文庫呼びかけ人の富田氏が紹介された、芥川龍之介の「後世」からの引用だ。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/33202_12224.html
--
 時々私は廿年の後、或は五十年の後、或は更に百年の後、私の存在さへ知らない時代が来ると云ふ事を想像する。その時私の作品集は、堆(うづだか)い埃に埋もれて、神田あたりの古本屋の棚の隅に、空しく読者を待つてゐる事であらう。いや、事によつたらどこかの図書館に、たつた一冊残つた儘、無残な紙魚(しみ)の餌となつて、文字さへ読めないやうに破れ果てゝゐるかも知れない。しかし――
 私はしかしと思ふ。
 しかし誰かゞ偶然私の作品集を見つけ出して、その中の短い一篇を、或は其一篇の中の何行かを読むと云ふ事がないであらうか。更に虫の好い望みを云へば、その一篇なり何行かなりが、私の知らない未来の読者に、多少にもせよ美しい夢を見せるといふ事がないであらうか。
 私は知己を百代の後に待たうとしてゐるものではない。だから私はかう云ふ私の想像が、如何に私の信ずる所と矛盾してゐるかも承知してゐる。
 けれども私は猶想像する。落莫たる百代の後に当つて、私の作品集を手にすべき一人の読者のある事を。さうしてその読者の心の前へ、朧げなりとも浮び上る私の蜃気楼のある事を。
--

果たしてこの芥川が、TPPで著作権保護期間が死後70年に延長され、しかも著作権侵害が非親告罪化されるかもしれないという未来を知ったら、どう思うだろうか。

著作権が切れてパブリックドメインとなり、青空文庫の方々の努力で無償公開されている結果として、未来の読者に作品がダウンロードされているという現在に対し、「俺の作品なんだから勝手に読むな。金払え。」と言うだろうか。(もちろん、芥川の場合は死後70年も既に経過しているので、今回のTPPの影響はないが。)

そんなに過剰に著作権が強化されてしまったら、自分や作品が忘れ去られてしまうだろうとは思っても、そこまでして自分の作品を死後も守りたいと思って創作活動をするクリエイターがいるとは、どうにも想像しがたい。

■オーファン・ワークス
ほとんどの著作物は、死後50年も待たずに商業的価値を喪失していることがシンポジウムでも明らかにされていたが、商業的価値がなくなってもパブリックドメインにならないとなると、たとえそれを後世に伝えたいと思った第三者が現れても、容易に手が出せない。更に、誰に許諾を得れば良いのかすら分からない、オーファン・ワークスになっている場合も大半なので、権利者の意思に関係なく非親告罪として逮捕されてしまうかもしれないというなら、社会的文化的に価値がある作品を見つけたとしても、それを世間に紹介することが著しく困難なわけだ。

著作者死後70年の保護期間を終えるまで、商業的価値を喪失した著作物が語り継がれる可能性がほとんどないとなると、人類の文化的遺産を喪失させるのが著作権法ということになる。「文化の発展に寄与することを目的とする」著作権法1条にも反する。自分としては、我が国の著作権法が保護する、死後50年でも長すぎるくらいだと思っている。

もともと、著作権保護期間の延長は、ミッキーマウス保護法と揶揄されるくらい悪名が高い(アンサイクロペディアのコレは最高にブラックw)のだが、既に70年に延長している国々でも悪影響が問題視され、実は短縮すべきという議論も始まっている。我が国は、映画の著作物は公表後70年(著作権法54条)に延長しているが、他の著作物の保護期間を延長しようとする動きは、長い議論を経て辛うじて封じられてきた。それが、国内のそうした議論を無視して、TPPだからと簡単に著作権法を改変して良いものではない。

■大御所がパブリックドメインになる時
シンポジウムでは、漫画界では松本零士氏など大御所中心に延長論者が多く、なかなか抵抗できないと赤松氏が弁明していたが、過去の作品を守りたい側の論理と、古典の活用を含めた自由な文化の発展を望む側の論理は、大概において衝突する。(既得権益保護 v.s. 規制緩和による新規参入促進というと分かりやすいか。)松本氏は、手塚作品の著作権が切れてもいいのか等と言うそうだが、手塚の「罪と罰」も「ファウスト」も、ドストエフスキーやゲーテの著作権が残っていたら、果たして描かれていただろうか。パブリックドメインだったから、漫画にできたのではないのか。

個人的には、手塚作品がパブリックドメインになる時、日本では「手塚祭り」になるだろうと想像している。パロディ、続編、リメイクと、手塚作品の二次的著作物による大きな手塚ブームがやってくるのではないかと。
もちろん、田中圭一氏などの手塚作品のパロディは今でも人気だし、それを許容する著作権者の度量も素晴らしいと思っているが、ある種の配慮が必要なくなった時、どんな自由な創作文化が花開くことか...
http://twitpic.com/cowdza
いや、こういうのばかりじゃなくてw

■我が国特有の二次的著作物の文化
シンポジウムでも指摘されていたが、非親告罪になると、コミケがいつでも起訴・処罰可能となるので、表現の幅は大きく狭まるだろう。萎縮効果だ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1304/17/news060.html
しかし、他国には我が国のコミケのような規模の、二次的著作物が扱われる市場も文化も存在しない。TPP交渉において、我が国特有の文化的事情というものを、単なる経済問題ではないのだと主張してもらわなければならない。俳句の季語だって、最初に考えた人が権利を主張していたら、他人が使えず、季語として定着しなかっただろうとも指摘されていたが、クールジャパンを支える創作活動は、二次的著作物に寛容な文化がその裾野を支えている。

正式な許諾はないけれどグレーゾーンを著作者が黙認するという、著作者による著作物のコントロールを国が奪い、勝手に逮捕するというのは、本当に著作者が望むことなのか。二次的著作物を黙認する「黙認マーク」を提唱した赤松氏は、8月からの漫画の新連載で早速「黙認マーク」を使いたいそうで、クリエイティブコモンズなり文化庁なりのお墨付きが欲しいと発言していた。今まで「あ・うんの呼吸」で機能していた文化の土壌を守るのに、非親告罪化が問題になるのは日本くらいというのは、TPP交渉において非常に厳しいところだ。

■70年という期間を想像してみる
今から70年前といえば、まだ第二次世界大戦も終わっていない。もちろん、現行法でパブリックドメインになっている作品は、保護期間が70年に延長されたからと権利は復活しない。しかし、著作者死後70年の保護期間に延長すべきという考え方は、例えば戦前のような昔に亡くなった人の著作物ですら、まだパブリックドメインにするなと言っているわけだ。仮に、戦前戦後のような過去の混乱期に、日本人が何を考え、どう表現していたか、商業的価値は低そうだが、我が国の社会・文化・風俗を知るうえでは重要なオーファン・ワークスがあったとして、それを活用しようとすると逮捕されるかもしれない...そんな社会にしようというのが、著作者死後70年への保護期間延長と、非親告罪化だ。もっと言うなら、今から70年後の未来の日本人にとって、東日本大震災や原発問題についての現在の日本人の活発な議論は、教訓として重要な遺産だろう。著作権を強めたり絶対視すると、彼らに我々の経験を承継することが困難になる。

もちろん既に「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ」は、複数の震災関連アーカイブを横断検索できる。
http://kn.ndl.go.jp/
ここで、「そこ、つっこみ処ですから」と検索すれば、ハーバードのエドウィン・O・ライシャワー日本研究所が構築している「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」に複製された、
http://jdarchive.org/ja/home
うちのブログからのエントリーがいくつか出てくる。
自分としては、アーカイブの一部として複製されたことに何の異議もないし、そもそもクリエイティブコモンズライセンスとして許諾の表示をしているので問題ない。

しかし、フェアユースが認められない我が国(日本版フェアユースが骨抜きにされたことはご存知の通り)では、こういったアーカイブ構築にも必ず著作権処理が壁となってきた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1112/28/news053_2.html
フェアユースが認められるアメリカから、70年への延長と非親告罪化を求められて、フェアユースを否定したまま我が国がこれを受け入れるという最悪の事態だけは、絶対に避けなければならない。TPP交渉に当たり、我が国の著作権分野交渉担当者がどこまで著作権問題に精通しているか、非常に心配だ。

■相続問題
そもそも、法人著作になるような映画ならともかく、個人が著作者な大半の著作物について、相続の問題を無視して死後の著作権は議論できない。

著作権の相続問題は、100年も昔から裁判のネタだ。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00843849&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1

著作者が死ぬということは、それを相続する者が著作権を得るだけでなく、当然に相続税が発生する。では、保護期間を延長するのは当然という人は、不労所得の恩恵を受ける遺族等が相続税もその分多く払うべきだと、当然に考えているのだろうか?

国税庁の財産評価基本通達、第7章「無体財産権」第4節「著作権、出版権及び著作隣接権」には、以下のように規定している。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/07/01.htm#a-148

---
(著作権の評価)
148 著作権の価額は、著作者の別に一括して次の算式によって計算した金額によって評価する。ただし、個々の著作物に係る著作権について評価する場合には、その著作権ごとに次の算式によって計算した金額によって評価する。(昭47直資3-16・平11課評2-12外改正)
 年平均印税収入の額×0.5×評価倍率
 上の算式中の「年平均印税収入の額」等は、次による。
(1) 年平均印税収入の額
 課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の額の年平均額とする。ただし、個々の著作物に係る著作権について評価する場合には、その著作物に係る課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の額の年平均額とする。
(2) 評価倍率
 課税時期後における各年の印税収入の額が「年平均印税収入の額」であるものとして、著作物に関し精通している者の意見等を基として推算したその印税収入期間に応ずる基準年利率による複利年金現価率とする。
---

つまり、どんな人気の時に死ぬかと、謎の評価倍率によって、著作権の相続税は定まる。
が、正直、この計算はよく分からない(苦笑)

人気絶頂で死ぬと、相続税が大変なことになるのだろう。
逆に、死ぬまで世間に評価されないと楽だ。
死後65年くらいでリバイバルブームが来ると、保護期間70年の世界では、著作者の生前の苦労を何も知らない孫やひ孫の世代辺りの相続人が、大儲けできるかもしれない。

もちろん、著作権保護期間延長が、相続税の計算に直接影響を与えるものではないだろうが、延長することに価値があるという主張が認められるなら、相続税にも反映されなければおかしい。
「著作物に関し精通している者の意見」を基に推算される、未発生の将来の印税収入期間を前提に相続税が算定されるなら、いっそのこと「印税収入期間」=「著作権保護期間」とすべきだ。ここをダブルスタンダードにする必要はない。

つまり、死後70年保護されるべきというなら、謎の「著作物に関し精通している者の意見」に関係なく、印税収入期間も70年として、相続税を算定すべきだろう。もちろん、相続人の立場からすれば、バカ言うなと思うだろう。未発生で確実に得られるかどうかも分からない不労所得を前提に、相続税なんぞ払えるかと。しかし、相続税で計算していない期間まで、死後のブームで相続人が大きな不労所得を得られることがあるというのは、第三者からすれば不公平な税制ということになる。

逆に言えば、我が国が保護期間を70年にしてこなかったのは、「著作物に関し精通している者」の公の議論の結果であり、相続税は「著作物に関し精通している者の意見」を基に算定するというなら、著作権保護期間を延長しないという公の議論の結果も尊重されるべきだ。

こういう話をすると今度は、著作権保護期間は、金の問題ではないのだとかいう声が聞こえてきそうだ。著作者人格権として重要なんだとか。

なら、いずれにしても、経済連携協定たるTPPで、経済問題として交渉すべきトピックではない。少なくとも、TPP交渉における他の経済分野を守るためのバーターとして、著作権分野を明け渡すような愚行だけはしてはいけない。

■意見表示
以上のように、この問題については色々と言いたいところだけど、TPP政府対策本部は、現時点でTPPはパブリックコメントの対象ではないと断言し、7月17日17時締め切りで、団体等からの意見提出を受け付けている。
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo.html#setsumeikai
6月26日の日本農業新聞には、「意見は業界団体以外の個人などからも受け付ける。ただ、個人などの意見については寄せられる意見の数や内容によって、どう扱うか調整する予定。」とも掲載されたそうなので、個人の意見がどう扱われるかは分からないが、全く無視されるわけではないらしい。もう交渉は間に合わないからと、我が国の文化の土壌を政府がアメリカに明け渡すのを傍観せずに、問題意識を持った人は、個人でも、団体でも、積極的に意見をTPP政府対策本部へ提出すべきだろう。

ちなみに自分は、内閣府の国政モニターなので、この問題を6月分の提案とした。例によって400字に収めなければならないので、色々と省略せざるを得なかったが、できる抵抗はしておきたい。
http://monitor.gov-online.go.jp/report/kokusei201306/detail.php?id=37005
--
TPPで著作権保護期間延長と非親告罪化を要求されますが、これらは長年の国内議論の結果、社会的文化的に多大な弊害があるので法制化が回避されてきた問題です。大半の著作物は、著作者死後50年を待たずに商業価値を喪失するため、70年では、文化的価値はあるのにパブリックドメインでないがために社会から存在すら忘れ去られます。オーファン・ワークス増加も問題で、既に70年の国々でも短縮議論が始まっております。また非親告罪化は、クールジャパンを根底から支える二次創作を主体としたコミケを崩壊させますが、これは日本特有の文化的背景であるため、TPP交渉過程で我が国が特に主張し抵抗する必要があります。多くの創作活動は、他人の作品を真似るところから始まるので、著作者の意図と関係なく罰せられては日本のコンテンツ文化が衰退します。間違っても、何かをTPP例外とするために、著作権分野をバーターで明け渡さないでください。
--

政権交代し、昨日第二次安倍内閣が発足した。
まあ、世間の人は興味ないだろうが、クール・ジャパン担当の大臣が、表現規制推進な稲田朋美氏ということで、コンテンツ界隈はザワザワしてる。

まー、クールじゃないよね。

でも、クール・ジャパンがクールじゃないのはいつものこと。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
とっくに、クールでもなんでもない事業が大半になっている。今更、担当大臣が表現規制推進だろうと何だろうと、これ以上悪化の余地はなさそうだ(苦笑)

とは言っても、民主党政権下のクール・ジャパン推進が全部ダメだったわけではない。世間は注目してないだろうが、このブログで注目していたAll Nippon Entertainment Works(以下「ANEW」とする)の事業で、野田政権終了間際に面白そうな発表があった。何と、ガイキングのハリウッド実写映画化が!w
http://www.an-ew.com/ja/article/120/
http://corp.toei-anim.co.jp/press/2012/12/anew.php
http://www.animeanime.biz/all/1212194/

ANEWは、政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して設立した国策会社であり、ハリウッド映画を作って儲けることだけが目的ではない。作品の権利は持つけれど、ノウハウがなくてハリウッド進出がなかなか成功しない日本のコンテンツ企業に、グローバル展開のノウハウ蓄積、人材育成をする機会を与えることなども想定されている。(ただ、当のANEWのサイトの説明には、ちょっと抜けてるような気もするが...)
詳しくは、以前書いたものをどうぞ。
「国策会社とクール・ジャパン」
http://maruko.to/2011/11/post-123.html

長年注目してきたので、やっとここまで来たかという感じがする。

俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れる!とか大きな勘違いをしていた麻生政権時代から、民主党政権下でここまで修正・進展したことは、素直に評価したい。しかも、民主党政権はどうやってここに辿り着いたかと言えば、2010年の経済産業省アイデアボックスを無視できない。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/open-meti/

オープンガバメント推進の一環として、経済産業省アイデアボックスで国民の意見募集したことで、自民党政権時代には届かなかったコンテンツ業界の現場の声が、やっと政府に認識された。

ガイキングの権利を持っている東映アニメは、ヴァルハラ・エンタテインメントと共同プロデューサーとして関わるとのことだが、ハリウッドのノウハウをしっかり吸収して欲しい。そして、単なる金儲けで終わらせず、日本のコンテンツ制作現場に、ハリウッド映画制作の仕事を振ってくれ!

ちょっと気になる話題だったので、更新。

「政府、ハリウッドにアニメ・玩具セールス 国策会社設立」asahi.com:2011年11月3日3時7分
http://www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
-->
日本のアニメや玩具などのコンテンツをハリウッドで映画化するプロジェクトが、今月スタートする。政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して10月に設立した新会社が日本に利益をもたらすため、ハリウッドに素材を売り込む。
<--

朝日新聞デジタルに加入してないので、記事の続きは見てないけれど、この国策会社とは
http://maruko.to/2010/04/post-83.html
この時に「コンテンツ海外展開ファンド」と言われていたやつだろう。

「株式会社 All Nippon Entertainment Works」の設立については、アニメ!アニメ!ビズでも、3ヶ月前に書かれていた。
http://www.animeanime.biz/all/118161/

産業革新機構のホームページを見てみよう。
http://www.incj.co.jp/investment/deal_022.html
以下のPDFの4ページ目参照
http://www.incj.co.jp/PDF/1313377374.01.pdf
-->
【案件の意義(投資インパクト)】
●本邦コンテンツをグローバルに展開、結果としてグローバル市場からの収益を最大化した上で国内に還元し、グローバル市場で大きな収益を上げる革新的事例を創出し、文化産業からの次世代の国富獲得に貢献する
●国内コンテンツ業界の人材を育成し、グローバル市場における事業化ノウハウを蓄積。また、関連する各種ビジネスを日本勢が獲得することにより、国内産業のグローバル水準でのオペレーション能力を育成、日本の人材及びコンテンツ業界がグローバルビジネスの一角を占めることをめざし、全体のエコシステムを進化させる
<--

これ自体は、特に悪い事業とは思わない。
何故なら、昨年「クール・ジャパンのマヌケ」で書いた「コンテンツ海外展開ファンド」への苦言に、一部応えてくれたような内容だったからだ。

前提として、日本のコンテンツ業界が、グローバル展開に力不足であることを認めている点は重要だ。リメイクを通じた人材育成で、ハリウッドの流儀を身に付けるというのは、つまりは産業育成だ。これが成功した先に、初めて、オリジナル作品の自力でのグローバル展開なんて可能性が開けるのではないか。

記事が浅いから、誤解するだろうが、短絡的に否定しても何も始まらない。
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1320260613/
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/showbiz/manga/TKY201111020748.html

そら、政権批判とか、誰でも簡単にできる上に共感も得やすいから、楽だろうけどさ。

実は、産業革新機構使ってコンテンツ海外展開ファンド創設するって酷い話は、麻生政権時代にできている。(「クール・ジャパンのマヌケ」書いた時、忘れてたけどね(自爆))
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
前提として、俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れるとか大きな勘違いをしていたので、この頃のスキームだったら、日本のコンテンツ産業は空洞化して終わり。

それが、リメイクの過程でハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢になったのだから、同じ産業革新機構経由でも、単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。一見残念なのは、制作する現場への支援が見えない点だけど、この辺に関しては別の事業がいくつか存在するので、分けて考えているのかもしれない。まあ、分けられると、制作現場としてはガッカリなんだけど。

それから、朝日の記事でもう一つ誤解されている部分がある。
-->
まず、映画化を目指す日本の素材の権利を取得したうえで、米国のプロデューサーらと脚本作りや監督、俳優の選定などを進める。当初3年で権利10件、30億円の投資を見込んでいる。
<--

素材の権利を、何故All Nippon Entertainment Worksが取得するのか。
(この部分も、自民党時代と同じ。)

答えは、日本のコンテンツ特有の欠点の一つが、製作委員会方式で権利者がウジャウジャいることだからだろう。こんな面倒なことは、ハリウッドではやっていない。それが、この会社を通せば一社で権利処理できることで、あらゆる展開がスムーズに進められるようになるわけだ。この辺は、エンタメ系の弁護士あたりが思いつきそうな話だ。

今までは、リメイクしたくても、交渉せにゃならん会社が沢山あって、誰の許諾を得れば良いのか分からない場合などもあった。法律にはないが、窓口権というのを製作委員会のメンバー各社が持っていて、誰もがリメイクに協力的とは限らない。その一部が倒産したり、担当者が退職して引継ぎされてなかったりすると最悪で、後からどんな問題が生じるのか恐くて手が出せないとか。まあ、とにかく、ハードルが高いわけだ。リメイクの話なのだから、ある程度古い作品が対象だろうが、もっと古い作品だと、そもそも著作権の帰属レベルで、国内でも裁判だらけだったりするしね(苦笑)

それに、All Nippon Entertainment Worksが「権利を取得」すると言っても、条件付きの使用許諾の類ではないだろうか。オリジナルの権利者が、自らに不利な条件を簡単に飲むはずないので、単純に権利を失うような契約を前提にしているとは考え難い。ということで、そんなに目くじらたてる問題ではないだろう。


ところで、それにしても出資の仕方が迂遠ではないかと思うかもしれない。
実は、経産省のクール・ジャパン戦略推進事業には、北米向けにコンテンツ系のものが存在しない。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
流石に、俺たちクールとか言いながら、ノウハウ教えてくださいとは言えない。
でも、経産省がやるとしたら、確実にクール・ジャパン戦略推進事業の枠組みになってしまう。

クール・ジャパンと距離を置いて推進すべきという意味で、こういうアプローチをすること自体は、ありでしょ。望ましいとも言える。だから、あんまり国策会社とか強調しない方が良い。それこそ、こっそりやるべき事柄だ。

そんなわけで、All Nippon Entertainment Worksを頭から否定はしないのだけど、できればお願いしたいことがある。

そのリメイク作品のVFX、日本のCG制作会社とか絡ませて欲しい。
どのみち、将来日本に制作の仕事が回ってこないような話なら、意味ないしね。
間違っても、違法でも安価だからと、アジアのどっかの国にばかり仕事ふるようなスタイルは、学ばなくて良いから。
国産比率と法令遵守を条件に...とまではいかずとも、ハリウッドのVFX仕事の下請けでも、参加できるようにしてもらえませんかね?(^^;

まあ、All Nippon Entertainment Worksが天下りの隠れ蓑だったりしたら、最悪だけどね(苦笑)
目的は良くても、手段が杜撰でろくな結果が出なけりゃ、ちゃんと批判しよう。
怪しけりゃ、河野太郎とかが叩いてくれることに期待しつつ(笑)

■クールXXX
テレビ等の韓流過多を嫌うのは、自分も同じ。
だけど、嫌いなら見なけりゃ良いだけと思っていた。ネットと同じ。
なんせ、嫌いな番組なんて、韓流以外にも沢山あって、やらせだってなんだって沢山ある。
しかも、やらせだからと悪いわけじゃないしね。
川口浩探検隊とか、昔は大好きだった。子供心を、何度裏切られたことか(自爆)

なので、最近のフジテレビへのデモとか、みんな、どんだけTV大好きっ子なんだよ?と驚きつつニュースに接した。


遡れば、クール・ブリタニアなわけだ。
ブレア政権当時、来日してクラブシーンを盛り上げていた英国のDJなんか、実は英国の国家ブランド戦略の一環だったりした。
そんな国家戦略とは知らずに、若者は英国に慣れ親しんだ。
そしてもちろん、興味のない人は、保守による反対運動だの嫌英とか言わなかった。

もっと遡れば、ハリウッドへの憧れ、アメリカへの憧れは、反米と直結しなかった。
日本のTVじゃ、韓流に負けないくらい、アメリカのドラマも流されてきたと思うのだけど、アメリカの陰謀とか工作とは言わない。
ハリウッドの俳優をどんなにヨイショしたって、それも当たり前と、既に刷り込まれてる。
「全米が泣いた」と宣伝され、何度騙されても、それを「デマだ」とは騒がない(笑)
宣伝に見えないような番組で、ハリウッド映画を絶賛されたって、違和感を感じない。

だって、それがテレビだからね。
そんなの、みんな知ってることだ。

何故、欧米は許されて、韓国のソレは許せないのか。単にやり過ぎという問題ではない気がする。自分も、上に韓流過多を嫌うと書いた通り、受け入れられないという感情がどこかにあるので、自分自身にどう説明できるか考えてみたりしたのだけど、そういうことを考えるのはちょっと面白い。

ステルスマーケティングが酷いとか言う話もあるけれど、それなら消費者庁の出番かもしれない。しかし、どっかの消費者団体が問題視してるという話も聞かない。
まあ、民放からステルスマーケティングを完全排除できるなんて到底思えないけれど、それは「韓流に限らない問題」として、十分に議論すべき課題だと思う。

個人的には、フジテレビはノイタミナ流してくれてるだけで、十分ですけど(自爆)


しかし、忘れてはならないのは、我が国は、クール・ジャパンを国家戦略にしてることだ。そして、韓流のアレも、「COOL KOREA」な国家戦略なわけ。
http://www.apalog.com/kurita/archive/937
日本の場合、ステルスし忘れて自分からクールですからと言っちゃって支持されると思ってるのが、むしろマヌケだろというのは、過去にも書いてきた。同じく英国を手本にした国家戦略を遂行する国同士として、むしろ韓国の手法は、参考にすべきと思っていたくらいの話だ。


■コンテンツ規制
ところが、韓国では日本の番組が規制されてきたし、中国だって国産アニメ振興で外国番組比率を決めており、かつてのように日本のアニメが中国で大量に放映されていた時代は終わった。中国が日本の影響を排除しようと、国産番組比率を定めた時は、少なくとも自分は彼らを非難した側だった。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060830/108901/
http://www.toho-shoten.co.jp/beijing/bj200608.html

そして日本は現在、韓国や中国に対し、コンテンツ規制の緩和・撤廃を要請している立場。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/2011/dai2/gijisidai.html
【資料3】参照
ここで韓流を安易に排斥してしまったら、我が国がクール・ジャパンを海外に押し売りする戦略自体の正当性が失われてしまう(苦笑)

台湾が、国産番組比率を20%から40%に引き上げることになって、それを韓流排除だと喜んでる日本人に至っては、正気を疑う。
http://hamusoku.com/archives/5459259.html
今は日本の番組が少ないから被害が少ない?
永遠に負けてる前提かよ(^^;

パイが縮小すれば、韓流番組が減るのと同様、将来日本の番組が放送される可能性も確実に減る。コンテンツや文化の海外輸出拡大を国策としている以上、我が国にとって、大きいパイのままの方が良いに決まっている。これに逆行する動きに賛同するとは、それこそどこの国の回し者だ(苦笑)

韓流過多なテレビ局やそのスポンサーを、反日、非国民のように非難している人々は、クール・ジャパンをどう見ているのだろう。今、シェアで押されているからと、相手を排斥できるようなルール変更を喜んでいては、将来逆転を狙う手段が奪われる。

韓流排除のために、日本も他国のように外国番組規制をすべきなんて聞くと、何でそっち方面だけ中国や韓国の真似をしたがるのか、本当に不思議に感じる。


かつてフランスは、日本のアニメを「文化侵略を行う敵」と定義した。
http://www.hh.iij4u.or.jp/~iwakami/anime1.htm
韓流に反発してデモする人々は、この頃に日本が言われていたことを知っているのだろうか。

フィリピンでボルテスVが放送禁止された経緯も、忘れてはいけない。
http://www.nx.sakura.ne.jp/~haituu/nhktv.htm

日本のアニメは、国内で利益回収した後、安価に輸出され、粗悪なコンテンツとされていた。ディズニーのフルアニメが本物で、日本のリミテッドアニメは偽物と。安価だからと、粗悪なコンテンツによって文化侵略を許すな、と言われてきたわけだ。

しかしこれが、クール・ジャパンの源流にあることは、誰も否定できない。
今のフランスのアニヲタを見るに、少しは侵略成功という気もしないではない(笑)
日本のコンテンツも、もっと海外で排斥されるべきだったのかね?

(ちなみに、日本のアニメは残虐で、教育上相応しくないと海外で言われだした頃、子供に相応しいと言われたディズニーのアニメも、日本で作ってたりしたんだけどね(爆)
目に見える部分を排除しても、ハッピーにならんのよね。まあ、日本で外国のコンテンツを制限するような法律を作ろうとしたら、アメリカ様が黙っておるまいが。)


今回の騒動をよく理解できないのは、例えばこういう声。
http://www.j-cast.com/2011/08/07103785.html?p=all
>行列に加わっていた女性は、フジの韓流偏重に「不快感」を感じていたと話し、
>「SNSを通じて巻き起こった、エジプトの革命のようなことが日本でも起これば面白いなって」

エジプト人に謝れ(苦笑)

まあ、色んな意見の参加者がいるとは思うけど、一見右翼的主張を左翼的行動原理で実現しようとする、自称保守な、その実は排外主義者にも見えるのだけど、なんとなくファシストと呼ぶのが適当かもしれない。

彼らをネトウヨと呼ぶ人もいるみたいだけど、右翼というよりファシストな気がする。
しかも、革命が起これば面白いって、外山恒一か(笑)

まあ、大した根拠はないけど、外山恒一は嫌いじゃないけどね。
デルクイは面白かったw)


面白いのは、職を奪われるとか生命を脅かされるとか、生存に直結する訴えではなく、テレビが自分の好みでないという、世界にも稀な恵まれた欲求でデモをしている点にある。

自分は、右翼も左翼も、それぞれ一定の正しさを認める部分があると思っているし、ファシストにも一定の理解が可能とは思っているが、どうも今回のはダメだ。

そりゃ、昼間TVつけたら、テレ東以外の民放が全部、韓流かショップチャンネルしか流してなかったりすると、心底ゲンナリする。フジテレビだけじゃないだろう。

でも、TV消すだけで十分なんだよな。(悪態くらいつくけどねw)

ネットで、ファビョッてるサイト見るのと、感想は同じ。公共性云々言う人は、まだテレビを過大評価してるのだろうけど、もうテレビなんてどうでも良いじゃん。
NHKとテレ東とMXテレビがあれば(ry


もちろん、彼らのような(相対的な意味での)第三者ではなく、実際に自らの仕事が侵されていると感じた当事者たる俳優などが抗議するのは、ある程度理解できる。しかしそれも、文句があるならハリウッドみたいに、自分らの職を守るための協定を結ぶように、労働組合運動すべきでしょ。

古今東西資本主義国家では、資本家に対抗するための手段なんて、限られてるわけ。ハリウッドなら全米映画俳優協会。だけど、今の日本人て、そういうのサヨクっぽくてかっこ悪いとか、偏見で自己防衛手段を放棄してないかい?
日本俳優協会なんかは、この一連の問題に対して、何かアクションしてるとは聞かない。


かつて我々がエコノミックアニマルと呼ばれ、経済摩擦の厳しかった頃、アメリカなどで日本製品のボイコットや破壊が行われ、その過激な映像がTVを賑わせていた。過激に日本製品の排斥運動をする外国人の映像をニュースで見る都度、子供心に「そんなにうちらの製品が優秀なのが羨ましいか」と内心ニヤニヤ、「あいつら馬鹿だなぁ」と思っていた。もちろん、日本製品が叩かれたのは、決してステルスマーケティングだからじゃなかったけどね。

ま、アメリカ人が日本車を破壊して、自国メーカーの車に乗ろうと気勢を上げていた頃、そのパーツの多くは日本製だったというオチはともかく、日本人なら、絶対にあんな馬鹿げた方法で抗議しないと思っていた。が、今起こっていることは、なんかそれを思い起こさせる。違いは、対象が無体物ってこと。破壊が難しい(^^;

通常、海外製品が安価に日本に売られることで、日本の事業者が損害を被るなら、ダンピングとしてWTO提訴するとか、公正取引委員会の出番ではないか。

しかし、不勉強で分からんけど、コンテンツに対してダンピングて概念あるのかね?
同等製品が存在しない前提というか、同じものなら著作権侵害の問題かな。
だけど、同等の市場を争う同種のコンテンツは、確実に存在するわけ。
しかも、著作物って、無限にコピーできる概念だから、安価に複製することは非難対象じゃないんだよね。

そういう意味で考えると、構造的には、ネットで違法に映画を無料配信されちゃって著作権者自らが怒るのと、安価な韓流ドラマに押されて市場を荒らされたと感じて俳優とかが怒るのと、ちょっと似てるかもしれない。

非常に難しいとは思うけど、仮にダンピングと定義できたとしても、やはり国内の同業者が声を上げなければ意味がない。国内の番組製作会社とか周辺は、韓流ドラマをどう考えているのか。市場を荒らされていると感じているのかね。

まあ、TPPに反対する農家みたいになったら、そもそもその業界はヤバイと思うけどね。
コンテンツ分野は、元来輸入過多だけど、だからこそ、輸出を伸ばすべき成長分野と目されているわけで、保護対象になんてされたら、もう自称クールなんて恥ずかしくて二度と言えないと思うのだが。

だからこそ、自国ではコンテンツ保護してるような韓流も、クールには見えない。
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022401000298.html
韓国での日本大衆文化の流入制限とか、いい加減にしてくれ。

早く完全に同じ土俵に立たせろやゴラァ!(笑)
話はそれからだ。

復興カジノ

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最近、仙台カジノ構想とか、カジノで被災地復興をという話が、新聞等でも頻繁に取り上げられるようになった。

自分は以前から、震災と関係なくカジノ賛成で、そのことはここでも書いてきたので、大変良い動きだと思っている。

ただし、観光や雇用、周辺産業等へのプラスの経済効果を生じさせるための手段であるはずのカジノが、キーワードが一人歩きし、カジノそのものが目的化しそうという不安が、少々ある。

例えば、ラスベガスのような、カジノを中心とした複合エンターテインメント・シティ(と言う呼び名が適当かどうかは別にして)と、ソウルのような、普通の街中のホテルにカジノがあるだけとでは、同じカジノでもその意味が全然違う。

日本では、この違いですら理解できていない人が少なくないだろうが、復興カジノであれば、どちらかと言えばラスベガス型だろう。(もちろん今なら、マカオやシンガポールなど、参考にすべき形態は色々あるが。)
ところが、巨大な街を作ろうとする時に、個別の施設の話が先行しているような話を見かけるに、少々心配な感じがしている。

誤解を気にせずに言うなら、ラスベガスを目指すと言いながら、ソウルのカジノくらいしか出来上がらない手法になってやいないか?という感じか。

例えば、ラスベガス、マカオと言えば、誰もがカジノを連想する。しかし、ソウル、インチョンと聞いてカジノを連想するのは、自分のようなカジノ好きだけだ。復興のための仙台カジノ構想というからには、今後仙台と言えば、世界中の観光客がカジノを連想するような、壮大なプロジェクトを目指すハズだ。

そういう時に、仙台空港近郊にカジノが1つできるとか、関連施設の具体案を話し合うとか、そんなのはどうでも良いことだ。

そもそもそんなことは、そこでカジノ開業を許された民間業者が中心になって考えることだ。(もちろん今回は、震災復興という性格上、地元の意見が尊重されるべきだろうが。)現時点における個別の施設の具体案などは、特定の業者が当該事業を請け負うことが予め決まっているような、怪しい癒着の存在する状況でなければ、無意味なはずだ。そういう矮小化された議論に陥らないよう、今後の報道を注視したい。


ところで、一つ誤った記事を見つけた。

「"復興"カジノが仙台にできる!菅退陣にらみ加速」
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110723/plt1107231519001-n1.htm

菅退陣は関係ないだろと思うが、そこは産経のzakzakなんで仕方ない(笑)
問題は以下。
<--
「2005年にハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを直撃し、同地は壊滅的な被害を受けた。同地はもともとカジノが原則禁止で、ミシシッピー河の船上で例外的に認められていたにすぎなかった。だが、この被害で方針を転換し、復興財源確保から陸上でのカジノ解禁に踏み切った」

 そのニューオーリンズは、いまやラスベガスに次ぐ一大カジノ・リゾートに変わり、「年間の売上高は500億円を超え、地元経済の活性化に寄与している」(先の関係者)。
-->

これは、とても誤解を生むし、間違っているとも言える。

ミシシッピ川はニューオーリンズを流れていて、確かにハリケーンで、ニューオーリンズは甚大な被害を受けた。しかし、ハリケーン前から、ニューオーリンズの街中には1軒カジノがあった。

船上カジノを例外として認めていたのではなく、船上カジノを原則認めて、陸地のカジノを例外的に認めていたというのが正しいのではないか。何をもって、カジノが原則禁止だった等と言っているのか、理解に苦しむ。

しかも、その陸地の1軒は、かなり巨大だった。
そこで負けたことがある人間が言うのだから、間違いない(自爆)

2000年にニューオーリンズでSIGGRAPHがあって、会社の出張で行ったついでに、旧ハラース・エンターテインメント(現シーザース・エンターテインメント)のカジノで大負けしたw
http://maps.google.co.jp/maps/place?q=Harrah%27s+New+Orleans&hl=ja&cid=8438002675536921036

確かにハリケーン後、ニューオーリンズは、カジノを活用した街の再建を計画した。しかし、原則禁止からの方針変更というより、当時も「カジノ拡大」と報道されていたはずだ。

市長は、500室以上の大型ホテルであればカジノ併設を許可するという新方針を打ち出しつつ、フレンチ・クオーター内のホテルには、カジノを許可しないと言ったと報道されていた。観光資源として、既に十分に魅力がある地域は、カジノから守る姿勢も示したわけだ。
その後の詳細は、あまり報道されていないので、正直よく分からない。
(また行ってみたいなぁ~)

しかし、議連関係者とやらが、「年間の売上高は500億円を超え」ることが地域経済の活性化に寄与していると言うこと自体、ニューオーリンズを理解していないのではないかと思う。元々メジャーな観光地であるニューオーリンズ市の税収(大半が観光収入)は、ハリケーン前の2004年で約49億ドル。当時は1ドル110円くらいの時代なので、約5400億円だ。しかも、元々カジノもあったことは上記の通り。すると、500億円のうち、増えたカジノの純粋な効果って、ナンボ?

アメリカでも有数の観光地という前提条件のあるニューオーリンズにカジノが増えたことを、観光立国発展途上の日本の仙台にカジノを作ることの引き合いに出すこと自体、とても不適切に感じる。


そこで、議連関係者とやらの知識がいい加減という前提に立ってみると、もしかして、ミシシッピ州の話もごっちゃになっているのではないかと思えてきた。ミシシッピ州も、ハリケーン被害を契機に、復興のためにカジノ法を改正した。ニューオーリンズにミシシッピ川は流れているが、あそこはルイジアナ州だ。この議連関係者とやらは、ニューオーリンズがミシシッピ州にあると誤解してやいないか。話がゴッチャになっている気がする。

水上で限定的にカジノを認めていたのを、陸上でも認めるように法改正して震災復興に成功したのは、ミシシッピ州なんで。

まあ、間違っていようと、実際に参考にすべき成功事例があるなら、目くじらたてる程のことではないとも思う。しかし、要はその程度のいい加減な知識しかない人々が、この議論を間違った方向に利益誘導しやしないか、そういうのがとっても心配なんだよね...


ミシシッピ州の、震災からの復興のためのカジノ活用の成功については、以下の方のブログに大変詳しい資料があったので、興味のある方は参考にどうぞ。
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/5093310.html
「2)カジノは産業を生む」の「<参照>」のリンク先から、資料をダウンロードできます。

http://www.yomiuri.co.jp/election/local/2011/news1/20110410-OYT1T00573.htm
(2011年4月10日21時17分 読売新聞)

>パチンコと自動販売機で合わせて1000万キロ・ワット近い電力が消費されている
>パチンコする人は我慢なさい、自販機がなくても生きていける

石原という人は、またサラッと大嘘つくよな。本人は、事実だと誤信してるのだろうけど、まあ高齢者だから仕方ないか。
このインタビューがTVで流れてたけど、kWkWhの区別ができてないらしく、福島の原発から供給している電力と丁度同じだと、とんでもないデマを真面目に語っていた。もともとは、読売新聞が東京ドームの消費電力が大きくないと主張するための記事で、他の産業と比較したのが始まりみたいだ。

3月24日の記事によれば、東京電力管内の主な産業や施設などの1日あたりの電力使用量として、以下のように紹介されていた。
自動車・電機など :4617万kWh
化学       :2470万kWh
鉄鋼       :1753万kWh
鉄道       :1726万kWh
食品       :1530万kWh
パチンコ      :415万kWh
飲料自販機     :400万kWh
東京ディズニーリゾート:57万kWh
東京ドームプロ野球1試合:4万kWh

パチンコと自販機合わせても、1日で815万kWhなんだけど、パチンコは1日12時間営業とするなら、
415万kWh÷12h≒35万kW
自販機は24時間稼動してるだろうから、
400万kWh÷24h≒17万kW

だから、合計するなら50万kWくらいってのが事実で、どう計算しても1000万kWなんてない。ちょっと考えれば、福島の不足分がパチンコと自販機だけで足りるなんて、有り得ない話だと気付くはずなんだけどな(苦笑)

おまけに、パチンコや自販機が電気を食うにしても、今はどっちも節電やってるから、実際はもっと少ないだろうね。
彼のような誤解は、ネット上に出回ってるみたいだけど、あの人意外と、ネットがソースみたいな話が多い気がする(^^;
--
>追記
読売の記事を紹介してパチンコを批判するサイトの多くは、記事を書き写す時点でkWhkWに間違ってる(故意?)ものがゾロゾロなのだ。それじゃあ、自動車・電機+化学だけで、東電の供給力をオーバーしてしまうのだけど...
--

大体、「~がなくても生きていける」なんて基準で規制が正当化され始めたら、全ての娯楽がアウトだ。彼が、娯楽全般がなくても生きていけると思っているなら、パチンコを規制することの波及効果は絶大だけど。(まあ、原発ならなくても生きていけるとは思うけどw)

パチンコ産業が衰退すると、ソフトを供給しているCG・ゲーム業界も落ち込んで、映像産業全般に深刻な影響が出るだろう。また、あれは精密機械の塊なんで、チップや液晶などハード面を供給してる国内メーカーも、収益の柱の一つを失うだろうね。

20兆円もの巨大産業ってのは、一見それと関係なさそうな複数の産業がぶら下がって国内に利益を還元しているので、代替する産業(カジノとか)の成立とバーターじゃないと、簡単に衰退されちゃ困るんだよ。

パチンコの負の側面を強調するのは、誰でも簡単にできるのだけど、それを規制することの負の側面は、議論が足りない。

http://www.yomiuri.co.jp/election/local/2011/news1/20110410-OYT1T00567.htm
(2011年4月10日23時27分 読売新聞)
>我欲を抑えて、自分の生活をつましくしないと日本がもたない。日本人全体がスクラムを組みながら肩を組んでやろう

と団結を呼びかけながら、特定の産業や販売形態のみ名指しで攻撃するのは、そもそも矛盾してるしね。ま、都民じゃなければ、我欲を抑えるのは都民の問題であって、日本人全体とか何言ってんの?と思うかもしれないが。
つか、自販機は震災時に無料開放する防災インフラとして有効なことが、今回証明されたはずなんだが...


以前は、彼の言う「我欲」ってのは、「欲しがりません勝つまでは」なのかと思ったけど、実は、永遠に「欲しがるな」って話なんだろうと思えてきた。去年の都条例改悪と、根は一緒かもしれない。パチンコ規制なんて、彼の欲する無欲社会実現からすれば、小さな切っ掛けの一つに過ぎないのだろうね(^^;

そういえば選挙前に、副都知事がこんな話をしていた。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110401/dms1104011624020-n1.htm
(2011.04.01 zakzak)→魚拓
しきりに政府批判しながら、4000万株の大株主の東京都が主導できることがあるのではないかという問いに、「それは、いま考えるべきことではない。未曾有の国難を迎え、国も地方自治体も国民も試されている。首都圏のすべての住民にとって、地域の共同性を再構築する機会でもある。」と。

つまり、未曾有の国難は、地域の共同性を再構築するチャンスだから、大株主だけど放置してるわけだ。

震災後、都知事の発言も話題になったけど、その後も、震災を自らが都知事選に出馬する天命だと思ったと発言してたから、少なくとも震災をネガティブには捉えてなかった。

「地域の共同性を再構築」し、生きるのに必要のない「我欲」とやらを捨てる社会にする機会だから、震災を上手く利用して不作為で状況を悪化させたいというなら、都知事の数々の発言は矛盾せず、整合性がある。カルト宗教みたいだけど。

東電株価暴落で何百億円単位で大損失を出してる当事者たる東京都が、東電の取締役の責任追及に言及しないという不合理な行動にも、説明がつく。単なる選挙対策じゃなさそうだ。

以前は、東京都の東電の持株比率を増加させて、都民に対してもっと責任ある行動を取らせれば、都民ひいては国民の利益に適うのではないかと思っていたけど、彼が当選した以上は、そういう望みはないってことなのだろう。

ところで今回、高齢者の支持で彼が当選したのだけど、40代以下の不投票率高すぎ。
http://twitpic.com/4j9i91
今までからすれば、当選したとはいえ「過半数から選ばれなかった」という結果は大きいだけに、残念だ。高齢化社会の実害というのは、若者のマイノリティー化にあるのに、加えて投票しないというのは、高齢者のやりたい放題を受け入れるってことなのかな。
みんな、高齢者に優しいね(苦笑)


>追記
日本自動販売機工業会が反論してた。
http://www.jvma.or.jp/information/peakcut.pdf
読売の記事のせいか、無知な高齢者のせいか知らないけど、名指しでメディア使ってデマレベルの因縁つけられた業界は、風評被害を打ち消すのに大変だなぁ。本当に同情する。

ということで、自販機のところの計算、24hで割ってるのはやっぱり単純すぎて、夏場の電力需要が上昇する時間帯は、エコベンダーのピークカット機能で、もっと極端に電力消費が抑えられるとのこと。

しかし、こんなに自販機の性能が発達してる国って、ある意味誇らしい。海外の自販機で痛い目にあわせられたことが多い身としては、尚更実感(^^;

>追記2
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110416k0000m010055000c.html
(毎日新聞 2011年4月15日 19時18分(最終更新 4月15日 20時58分))
「石原知事は「国難の中で生活様式を変える必要がある。戦争中も灯火管制で明かりが漏れたら周りから注意された」など戦時中の体験を引き合いに、パチンコや自動販売機の電力消費を「無駄」と改めてやり玉に挙げた。」

ははは...
前に「計画停電を楽しもう」で
http://maruko.to/2011/03/post-110.html
>ネオンサインを統制したら、次は何?
>ネオンサインだけじゃ、済まないでしょ?
と書いた通りだね。

そんなに戦時中が懐かしくて再現したいなんて、彼はどんな軍国少年だったのかな?
そんなノスタル爺は要らない」んだけど、多数派の高齢者が彼を選択した以上、東京はもう仕方ないね。

こういう、おかしなこと言う高齢者は、そりゃどこにでもいる。だから普通は、気にしない。うちの父親だって、死ぬ前は相当におかしかった。

でも、この場合、当選なんてしちゃったものだから、こんな醜態を世間に晒すことになった彼は、心から哀れだと思う。だって、彼がどんなマヌケな大嘘を言っても、それはもう権力者の発言であって、影響力があって、実現しちゃったりするわけで、老人の妄想じゃ済まない。

間違いなく、若いころの石原なら、今の石原老人を差別的な発言で罵ることに躊躇しないだろうにね(苦笑)


ついでに、上記記事に、各業界からのピーク時の電力消費についての記述があったので触れておく。
「業界によると、東京電力管内のパチンコ店のピーク時の消費電力は計84万キロワット、清涼飲料水の自販機は計26万キロワット」

ということで、単純計算より多かったど、それだけ、他の時間帯は極端に少なくなるということだ。自販機なら、ピークカット機能が作動するより前の時間帯がピークなのだろう。


>蛇足
来月が某試験なので、しばらく更新が滞るかもしれません。
が、そもそも、全然合格の気配がないので、今年は受験しない可能性も...
せっかく仕事辞めたのに、何やってんだかという感じですが(涙)
もう少し悩みますが、既に1回空振りしてるので、あと2回は慎重に球を選ぼうかと。
箱根での引き篭り山篭り生活で、体が溶けてしまわないように気をつけます(自爆)

■廉価版DVD
今更という話ではあるけど、アニメのDVDの価格設定が面白い。旧作の廉価版DVDが大量に出始めて、コアなヲタクでなくても衝動買いできるようになってきている。

去年からのバンダイビジュアルのEMOTION the Bestというシリーズの登場がきっかけの一つのようだけど、ジェネオンのRONDO ROBE SELECTIONも、11月末までの期間限定の廉価版という形で販売していて、廉価版がちょっとしたブームになっている。こういう場合の期間限定という言葉の使い方は、購買意欲をくすぐる(笑)

以前、DVDのセル市場の価格設定について触れた、
http://maruko.to/2009/01/post-5.html
上記の第7項にも書いたけど、この市場には、ヘビーユーザー層(年間購入金額3万円以上)と、それ以外のライトユーザーというか、いわゆる一般消費者層が存在し、売上げの大半は少数のヘビーユーザーによって成立している。

ところが廉価版DVDは、売上げに寄与してこなかった一般消費者層を開拓しようとするもので、画質にこだわるヘビーユーザー層は高額でもブルーレイを買うという棲み分けが成立した時代ならではの、ダブルスタンダード戦略だろう。ちょっと、昔を思い出しながら、廉価版の背景を想像してみる。


■昔のOVA
そもそも、OVAが登場した1980年代、ヘビーユーザーというか、まだ規模の小さなヲタク第一世代を対象に市場が形成されたため、価格は高いのが当たり前で、ビデオ作品を買うことへのハードルは、今とは比べ物にならない程高かった。まだ、大きなお友達が今ほど多くなく、大人がアニメを見るのもはばかられる時代に、平気で1万円以上の価格設定がされていたという状況の特殊性は、当時を知らないと理解し難い。最近だって、アニメはブルーレイが高い高いと言われているわけだが、約25年前はもっと高かったのに、ファンはそれが仕方ないと理解していた。日陰者の嗜好品というと語弊があるが、TV化が無理な作品をマイナー市場向けに製作するのだから、高いのが当たり前で、しかも買うというより、良作の作品作りにダイレクトに出資しているような感覚に近かったかもしれない。買い支える感覚だ。

丁度、当時のOVAの値段について、面白いツイートがある。
http://togetter.com/li/18577

皆でお金を出し合って買って観たなんてツイートもあるけれど、個人でいくつも買えるシロモノではなく、買ったら皆で貸し合うことに、著作権侵害だなんて誰も言わない時代だ。

当時、お金のないアニメファンがOVAを見る手段の第一は、アニメ専門誌(アニメージュアニメディア、ジ・アニメ、遅れて登場したニュータイプ、OVAのためのアニメV、他にも、アニメックファンロード月間アウトとか)のイベント告知のページで試写会情報をゲットし、せっせとハガキで応募することだった。(主要都市でしか開催されないので、地方在住のアニメファンは、さぞかし苦労しただろう。)

試写会会場では、普通の映画の試写会と異なり、アニメ本編の試写の前に、主題歌のライブコンサートなんてものも定番だった。というのも、会場ロビーではOVAの予約受付や、サントラのレコード販売が行われており、試写会と言いながらも即売場を兼ねていたからだ。

声優や監督の裏話やコンサートの合間に、必ず物品販売の告知が入り、「本日この会場でビデオの予約をされた方には、サイン入りポスターを差し上げます!」とか、「予約者は、イベント最後に、セル画や関係者のサイン色紙が当たる大抽選会に参加できます!最後に声優さんと握手も!」とか、「本日、まだ予約が少なくて、是非皆さんのご協力が必要です。続編につなげるためにも、是非!」みたいな、泣き落としもあった。

あ、当日既に販売会社の解散が決まっていて、この作品で最後ですから買ってください、なんて試写会も思い出したw

まあとにかく、未成年が大量に含まれる会場で、コンサートやイベントで昂揚させて判断能力を低下させ、その場でグッズ購入やOVAの予約をしなければ損だという印象を植えつけ、高額商品を売りつけ...というと、一歩間違えばマルチ商法の勧誘のようだが、別に悪質なわけではなく、レコードやビデオは、値引き無しの定価販売が当たり前の時代でもあって、特典がもらえるならと、こぞって予約の列ができていた。

それを羨ましく眺めつつ、OVAを買う金がないので、仕方なくサントラのレコードを買っていたのを思い出すが、LPレコードは大きいので、ジャケットの大きな絵をゲットできてちょっとお得に感じていたような気もするし、レコードでも、買えば当日の抽選会に参加できたり、関係者と握手できたり...って、やはり冷静な判断力を失っていたかな(自爆)

で、レンタルビデオを待つのが、第二の手段だ。いつからOVAがレンタルされるようになったのか定かでないが、OVAが置いてあるレンタル屋を見つけるのに、店を転々としたファンも多かろう。で、借りたら当たり前に、VHSのデッキを2台つないでアナログ劣化コピーして、よく分からない満足を得ていた。コピーガードなんて施されていない時代のお話(苦笑)


■価格破壊と市場拡大
今の感覚だと高いと感じるかもしれないが、一話4800円という価格破壊をもたらしたパトレイバーが、自分が初めてシリーズもので買い揃えられた作品だった(後に、演出してた澤井さんと職場が一緒になった時は、実はかなりブッたまげた)。その後、ウィークリービデオ(隔週で二話づつビデオを送ってくる)と称して一話2500円計算で全26話を予約者のみに限定販売した銀河英雄伝説、それらにつられて安く価格設定されたレア・ガルフォースなども、頑張って買ったw

今のアニメからは想像がつかないだろうが、パトレイバーも銀河英雄伝説も、途中のアイキャッチで、TVのようにCMが入っていた。ビデオ販売作品なのに、企業CM入れてコスト削減し、更には、いつかTVで放映できる日に備えていたのだ。

こうして、低価格化(当時として)、一般向けに市場拡大を目指す流れができた結果、予算をかけて自由に創った作品を少数者に売る市場としての、OVA本来の存在意義が、変化を始めた。マンガ連載との相乗効果を狙う、メディアミックス路線の作品が増えたのもこの頃からだろう。

OVA+マンガから始まったパトレイバーが、劇場版、TV放映へとつながっていく様は、サクセスストーリーそのものだったのではないだろうか。シリーズを買い支えたファンは、作品の成功そのものに歓喜したと言っても、言い過ぎではない。


■メジャー化の代償
パトレイバーを中高生で体験したヲタク第二世代は、第二次ベビーブーム世代でもあり、角川のメディアミックス路線や、攻殻機動隊、エヴァも体験しつつ、1990年代後半には大きなお友達へと成長し、高額作品でも買い支えられるようになった。すると、価格を気にせずクオリティにこだわるようになる。

しかし、深夜アニメの登場や、エヴァが社会現象となっていくにつれ、ビジネスとしてのヲタク市場の拡大は、ヲタクそのものが一般化していく過程と重なる。拡大した市場における一般化したヲタクは、最早本来のヲタクではないのと同様に、OVAも本来のOVAではなくなった。そこに残ったのは、単なる商品とその消費者、という関係に見えた。

かつては見る機会すら限られていたような作品が、衛生や地上波で放送されるような時代になったが、それをVHSで録画しても、最早満足しない。丁度、VHS+LDでの販売スタイルから、DVDへのメディアチェンジのタイミングで、劣化しないデジタルメディアで作品を保有したいという欲望が、TV放映そのものを作品の宣伝媒体と捉えるビジネスモデルを支えた。もちろん、旧作のVHSからDVDへの買い直し需要も生じた。

ヲタクの支払い意欲額の限界に挑戦するかの販売手法が登場する一方、低価格化で市場拡大を目指す必要性が薄れたのか、ガイナックス商法など、焼畑農業に躊躇がなくなった(苦笑)

それでも、好んで焼かれるファンとの蜜月が続き、市場が成立していた頃は良かった。しかし、理由は様々あろうが、ついにパイが縮小し始めたことで、ほころびが生じてきた。

第二次ベビーブーム世代の大きなお友達も既婚者が増えたろうし、そもそもデフレだし、昔と異なり携帯などの通信費が毎月生じる現在、どの世代も趣味に使える金が減っているのだろう。最近のヲタクにとって、映像作品の購入は必須でなくなり、ヲタク的なサービスやファッションその他、ライフスタイル全般におけるヲタク的消費の一部という位置付けとなり、マイナー市場を買い支えるという認識が希薄化したのだろうとも思う。かつてのOVAのような、稀少価値のある嗜好品ではなくなったのだから、そりゃ支払い意欲額も低下する。しかしそれは、そういうビジネスモデルを選択した結果でもある。ま、ジャパニメーションだのクールジャパンだの自画自賛したことの帰結とも言える。シビアな財布で選択と集中の結果、選択に漏れる作品が出たとしても、最早パトロンでもない消費者に文句は言えない。

そういう意味で、ネットの違法配信の影響云々言うのは、これが80年代の稀少価値がある時代のOVAなら理解できるが、90年代以降の、TV放送を前提としたビジネスモデルからすれば、売上げに悪影響が出る要因とは言えないはずで、何とも間が抜けた言い訳に聞こえる。初めから、放送の録画で満足して完結しない人々に向けて、その先の展開で利益を出す計算なのだから、ネット配信で満足してしまうような人は相手にしていなかったはずだ。

だから、
http://maruko.to/2010/07/post-90.html
こういう話になる。

メジャー化し、稀少価値が薄れた現在、消費者の支払い意欲額を引き上げるために、再度の囲い込みを狙うというのは、何とも後ろ向き過ぎる。囲っては焼き払い、囲っては焼き払いでは、いつしかペンペン草も生えなくなる。

あれ?
なんだか話が違う方向に進みすぎた(苦笑)

まあ、そんなこんなで、囲い込みではない、耕作面積拡大のための廉価版販売というのは、大いに賛成だ。

■廉価版の恩恵
減少しているとはいえ、依然としてヘビーユーザーは大事だ。ブルーレイに特典付けて高額にしても、ヘビーユーザー需要はまだ存在する。しかし、それ以外の一般消費者に対する働きかけの必要性も増している。単に、ブルーレイよりDVDが少し安い程度では、一般消費者にはそれでも高すぎる。双方に両立する有効な売り方は...

ということで、旧作DVDの廉価版販売という戦略が、流行りだしたのではなかろうか。ヘビーユーザーが高額で買う時、同時発売で極端な廉価版を出すわけにはいかないし、特典で差を付けるにも限界がある。そこで、時は金なり。旧作扱いなら、廉価版を出しても文句はなかろう。しかも、今更ヘビーユーザーは、DVDなんぞ欲しがらないから悔しくない。

ブルーレイへの過渡期だからこそ可能な、ヘビーユーザーの気分を害さない形での廉価版での需要創出というバンダイビジュアルの手法が継続し、各社も同様の戦略に出ている今、これは買う側にとってもチャンスだろう。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1011/11/news025.html
これのせいで今後は、廉価版を物理的なメディアで売るという販売手法自体が消える可能性すらある。そういう意味でも、一応メディアとして保有したい人には、今が本当の最後のチャンスかもしれない。

え?
メディアで保有したいって発想自体が、とっくに少数派?
すみません、元ヘビーユーザーだったもんで、やっぱ形が欲しくて(苦笑)


以下、一応自分向けメモとして、気になるのを貼っておこう。


って、気になりすぎる!!(自爆)


■蛇足
今頃、自分が最後にサポートした仕事が、やっと発売するのを見つけた(笑)

廉価版じゃないのにこの価格なのは、お子様向け作品だからだろう。
まぁ、記念に自分用に買っておくかな。

当たり前の話
先日、以下の記事を読んで、何をアホな話をしているのかと、ある意味驚いた。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1007/26/news010.html

先祖帰りとか、何言ってんの?

「それならば、作品に関連したおもちゃを買ってもらう代わりに映像はタダですよ、で僕はいいと思っています。」って、それ当たり前の話ではないか。

アートアニメじゃあるまいし、マーチャンダイジングとセットでビジネスを考えるのは、商業アニメとして何も珍しい話じゃない。

今までそれが当然と思っていなかったなら、根本的に、権利をクリエイトするという発想が抜けてる、典型例だろ。


で、ネット社会の弊害?
ジブリのやり方に付いていく?
10人程度の会社で?

言ってることが滅茶苦茶。

ネットの力に屈して作画クオリティを上げて失敗したとか、この人が言うとギャグみたいだが、クオリティを諦めてブランド力を上げるとか、何の夢物語だろう?


ヲタク市場
確かに、ヲタク市場のパイの奪い合いには限界がある。

そもそも、DVD のセル市場は、少数のヘビーユーザー(年間購入金額3万円以上)によって買い支えられてきた。5年前の日本映像ソフト協会の調査では、国民(16~69歳対象)の6%のヘビーユーザーの購入金額が、セル市場全体の77.7%を占めていたが、昨年の調査では、ヘビーユーザーが5.1%に減り、金額はセル市場の57.5%に減少した。5年前のセル市場は、3,124億円で、昨年は2,674億円だ。

敢えて言うなら、DVD、ブルーレイのヲタク市場そのものが縮小してるのだ。

だから、ヲタク市場の外へ、ブランド力を上げて打って出ようという考え自体は正しい。内輪受けビジネスには限界があって当然で、そんなことは何年も前から、言われていたことだけどね。

だけど、その手法がまた、「浮動票みたいなところで争うのではなくて、組織票でがっちり固めてしまうという。」のはどうか?

また囲い込みかいな(苦笑)
逆に、浮動票の広大な市場を相手にすべきなんじゃないの?


■「Cat Shit One」
そんなことを思っていたら、市場拡大を具体的に目指している、とある作品に出会った。インターネットをネガティブに捉えず、本編全て(22分)をYouTubeで無料配信(公開期間:2010年7月17日~9月20日)している、「Cat Shit One」だ。
http://www.catshitone.jp/

そして、そのプロデューサーが、大変良いことを話している動画を見つけた。

こういう手法を選択したプロデューサーが、どんな考え方なのか興味があったのだけれど、 元ビルドアップの岡部氏で、いつの間にか円谷プロを辞職して、新会社を作っていたようだ。時期的に考えれば、円谷がパチンコメーカーのフィールズの子会社になる直前だから、それを嫌っての辞職なのかもしれない。まあ、想像の域をでないが。

以下、面白い発言を抜粋してみる。
-->
オンラインで映像を輸出することがテーマにある。
日本の市場が冷え込んでる。お子様が減ってますから。
だから、やっぱりコンテンツは、海外に対して売っていかなきゃいけない。色んなところで唱えてるけど、ほとんどシカトされてるんですけど。

そういうところでインターネットのインフラを使えば、まずは単純に売れる。
じゃあそのお金どうするのというところがあるはある。
僕から言わせれば、海外と、じゃあパートナーシップどっかと契約して、どっかの放送局とやってどうこうやる形よりは、自分たちで海外に向けて発信して売っていく方が、最終的には利益がデカイだろうと。

あとは、ジャパンなんとかクールとかおっしゃってるけど、あれはでも、なんでしょうねぇ。例えば、アメリカのアニメエキスポとかコンベンションで、そういう人が取材にきて、ほらアメリカではこんなに凄い、日本のコンテンツがウケてるんですよと、そこだけ切り取って全米とか見ちゃうのヤバいでしょうと、僕5年住んでたから分かるんですよ。そんなにはウケてないんで。

自分たちで売っていくってところで、インターネットをフル活用して動いていけば、僕はもう活路が出ると。

なんでハリウッド映画が、凄く巨額のお金をかけるかとすれば、それはマーケットが広いからであって、だからマーケットを広げるってところを、僕らも模索していかない限りは、いくらクリエイティブで凝ったモン作るとか、もっと愛情がどうこうとか、そんなもの、全然お金って裏付けがなければ表現できませんから。

それをじゃあ、僕は実はずっと、そういう座布団を用意してくれるプロデューサーが現れると思っていたんです。作っていたから。
だけど、そんな人一生現れない。僕は40過ぎた時に分かったんです。ああ、もうない。そんな人現れないから、じゃもう自分でやろうと。
<--以上、抜粋終わり


なんつーか、成功して欲しいですな。

通常、短編作品を単館上映しても、赤字。でも、劇場公開で認知度上げて、DVDとか売る。今回は、赤字の劇場公開の部分が、YouTubeに置き換わった。

今のところ、国内のアドレスからのアクセスしか、YouTubeは見られない設定だそうな。

今後、DVDとブルーレイに加え、Amazonでフィギュア売って、そういうマーチャンダイジングを全部、製作元で仕切るそうな。(日本て、製作委員会で権利を細分化するから、ダメなんだよね。)

あと、3D版も作ってるとか。


ということで、公開されてる本編。(追記:既に公開は終了しており、見られません。)


感想としては、よくできてると思うけど、原作がベトナムなのに、現代風に中東を舞台にしてしまったのは、どうなんだろう?という気がする。

アメリカを中心とする中東での戦争の不正義が叫ばれてる昨今、砂漠で駱駝を殺しまくるって、世界的にはKYかも(^^;

可愛いウサギがリアルなことをするギャップが、効果的な演出なのは分かる。しかし、普通に見たら、中東に悪意のある作品てことになるだろう。これが、サウスパークみたいな意図が明確な作品ならまだしも、これは多分そうじゃないだろうな。 単に、配慮が足りない感じがする。

(もし、サムライの格好したサルが悪役で、殺されまくるアニメがあったら、日本人としては素直に見られないだろうと思うと、中東の人々に謝りたいくらい下品だ。)

平和な国のミリタリーマニアは、これでOKな感想なのだろうか?

作品としては成功して欲しいけど、中東向けには絶対に配信しないで欲しい。
うちのブログは、中東関係のエントリーも多いので分かると思うが、冗談じゃなくてね。


蛇足
ところで、エンディングに「Contents Cloud Creation Society for Producing "Cool Japan"」というのが出てきて、デジハリやボーンデジタル、HPなんかの企業名が出てくる。(IBMの名前がないのにIBMの園田氏の名前だけ出てくるのは謎。まさか、またHPに出戻りました?)

恐らく、ソフトとハード各社をデジハリで協力させ、クラウドのレンダーファームを試験運用でもしたのだろう。

かつて、ある劇場作品のレンダリングでIBMの世話になったが、あれで苦労した成果が、こういう作品に少しでも生かされてるなら、ちょっと嬉しい。

しかし、ジャパンなんとかクールを疑ってるプロデューサーが、Cool Japanと冠するレンダーファームの世話になっているとしたら、ちょっと皮肉だ。

まあ、Cool Japanは、僕もヤバイと思ってるので、話は合いそうだけど。
クール・ジャパンのマヌケ

■追記
http://www.ida-shop.com/category/12.html
注文した。微力ながら支援。

最近、いくつかの場所で、映像制作やコンテンツ産業の在り方みたいな議論を目にしたので、自分も思うところを述べておきたいと思う。まとまりもなく、とりとめもない話をつらつらと...


■パチ仕事と映画、アニメ仕事
日本のアニメ、CG業界の特徴の1つに、パチンコ・パチスロ産業への依存というのがある。これは、旧作品の権利を持つ会社が、パチメーカーにその利用許諾を与えるという意味での受け身な話ではなく、パチンコ・パチスロ化する際に発生する映像制作案件を受注するという形での、純粋な映像制作仕事としての能動的・発展的関係の話だ。パチスロ台の液晶画面で流れる映像も、CG制作会社の立派な仕事なのだ。パチメーカーは、CG制作会社に、とてもまともな対価を支払う、お得意さんである。

対して、公知の事実として、日本のアニメの現場の貧しさについては、今更説明を要しないだろう。これは、実写系でも映像制作現場一般の話として、ある程度共通する部分もあるかもしれない。CG制作会社は、アニメだろうと実写だろうとゲームだろうとCMだろうと、コンピュータで作る映像なら、何でも受注できる会社が少なくない。しかし、アニメや映画仕事を受注する場合、元請けでもなけりゃ、まともにやって黒字にするのはかなり困難。その手の仕事の発注元は、映像制作にまともな金を払う気がないことが少なくないが、同時に、赤字で受注する制作会社も後を絶たない。需要と供給が、制作コスト割れしたポイントでバランスが保たれている。

この差が生じる理由は簡単だ。かつて、多くのCGデザイナーやプログラマは、パチ仕事をヨゴレだと思って避けていたが、映画仕事に参加するのはステータスなんで、若い頃はタダでも働きたい仕事だった。著名な劇場作品でも、学生上がりの未経験者を、インターンシップと称してただ働きさせているケースは後を絶たない。映画仕事を受注した会社は、学生の夢を食い物にしてでも活用しないと、赤字が拡大してしまう。

ある程度の規模の制作会社になると、有名な劇場作品に参加するのは、求人のために必須となる。同時に、劇場作品への参加を夢見て入社してきた社員たちの、モチベーションを維持する必要もある。だから、会社の宣伝、イメージアップのため、劇場作品を一定数受注し続ける。

すると、優秀な人材を確保するための赤字映画仕事と、会社経営を維持するための黒字パチ仕事とのバランスが、とても重要となる。黒字にしたいなら、パチ仕事ばかりやれば良いと思うかもれいないが、イメージの悪い会社に人材は集まらないので、両立させなければならない。特にデザイナーは、転職が頻繁で、フリーランスになってしまう人も多いので、一定規模で能力の高いデザイナーを雇用し続けるには、会社が魅力的でなければならない。更にパチ仕事は、ノウハウも必要で、守秘義務の厳しさもあり、映画仕事のように安易に学生を使うこともできない。

これが10年前なら、映画の赤字を埋めるのはゲーム仕事だった。アニメ業界からゲーム業界への人材流出も、当時のトレンドだった。しかし、ゲーム機の性能が向上し、リアルタイムの描画能力が高まった結果、ゲーム向けの映像制作仕事が激減した。憧れの仕事と収益の上がる仕事が合致していた時代は、ゲーム機の性能向上によって終わり、ゲーム仕事に代わって黒字仕事の柱となったのが、ヨゴレのパチ仕事だったわけだ。(念のため言っておくが、自分自身は、パチ仕事をヨゴレとは思ってない。十分に、素晴らしいと思ってるが、その理由は後で。)

みんなが憧れる映画仕事は、ヨゴレのパチ仕事によって、一部支えられてきた。
そしてやっと、パチ仕事のイメージが改善してきたのは、ごく最近の話だ。


■ダメな仕事
と・こ・ろ・が、パチ産業は、いわゆるコンテンツ産業の市場規模が計算される場面などでは、何故か除外されている。政府の発表する資料などでも、パチ業界は存在しない前提で、コンテンツ産業が語られる。20兆円産業のパチを無視して、それより遥かに小さな残余の業界をまとめて、コンテンツ市場の在り方が議論されている。そんな議論の価値が低いのは、言うまでもないだろう。

しかし、映画業界の権利者な方々は、自分たちのコンテンツが、実はパチのおこぼれで作られてる部分があることを知らないかもしれない。そんな人々にいくらヒアリングして資料が作られても、現実を全く反映しないのは当然だ。(対してパチ業界は、映画やゲームで培われた映像制作のノウハウの恩恵にあずかっている。)

各業界の権利者団体は、別個独立で、他業界を知らないかもしれない。しかし、映像制作現場のレイヤーで実際に様々な業界からの映像仕事を受注している各CG制作会社は、実は共通なので、複数の別個独立の業界のリスクが、映像制作現場のレイヤーで担保されてるのだ。逆に言うと、担保できてしまっているから、いつになってもダメな業界はダメなまま、なのかもしれない。

--追記
パチンコ業界は、警察庁が監督官庁であり、コンテンツ振興を扱う経産省からは手を出せないのかもしれない。
--

ダメな業界の仕事というのは、単に金がないだけではなく、コンテンツ制作過程が非合法だったりもする。映画仕事では、著名な監督が、ごく当たり前に、著作権侵害や制作に必要なソフトウェアの不正コピーを現場に指示する。例えば、各社に散らばった100名程度のスタッフで、監督のイメージする映像を共通認識して完成を目指すには、コンテだけじゃ足りないので、監督のイメージに近い既存の映画作品から、シーンやカット毎にリッピングして、関係スタッフに配られたりする。何十人もに違法DVDコピーで配られることもあれば、主要な制作会社のサーバーにリッピングした作品が蓄積されたり、海外の外注先に配布されたりする。(もちろん昔は、VHSの大量コピーだった。)

スタッフは、必要に応じてPCで参考作品の映像を見て、監督のイメージを共有しようと努力しながら、自分たちの作品を制作する。スタッフの人数分、何十作品ものDVDを買うなんて真面目なことは、誰も考えない。何しろ予算の少ない仕事だ。他人の作品を参考にする事自体は合法でも、参考にする手段が非合法なのに、それに文句を言う映画制作関係者は、ほとんど存在しない。リスペクトしてれば良いと思ってる。

劇中で表示される文字などに至っては、どこかからフォントを違法コピーしてCD-Rに焼いてきて、ポンと渡され、「この文字でよろしく」みたいなこともある。

自分がかつて在籍したCG制作会社では、そういう非合法な制作手法を排除するのが、自分の仕事の一つでもあった。受注仕事では、違法行為を指示してくるのがクライアントであり、これと衝突することは極力避けなければならない。現場にウルサイと思われつつも、自分たちの仕事を合法とするため、いつも苦労した。

CG業界とアニメ業界の垣根が崩れ、旧態依然としたアニメ制作会社と共同作業するようになると、本当に最悪な場面に出くわした。アニメの会社は、ソフトウェアを買うものだと考えていないところが大半だ。金の無い業界の常識とは、そういうものだ。それでも、一緒に仕事をする以上、不正ソフトを使わないでくれと、相手の会社の責任者と話をしたりもした。「そんなことしてると、メーカーの監査が入りますよ」と脅しても、「そんなのは追い返すから大丈夫だ」と、まるで気にするのが馬鹿みたいに言われる業界だった。

不正を排除しようという意識を持たない会社が大半だが、そうして違法に作られた自分らの作品の権利だけは、絶対に守られるべきだと信じて疑わない、不思議な業界。それが、映画やアニメの業界だ。極論ではなく、一般論として、日本のアニメ等で、その制作過程全体において完全に合法性が担保されている作品は、皆無と言って良いだろう。中には、「うちの会社に不法行為はない!」と言いたい会社もあるだろうが、下請けや、人件費が安価だからと仕事を投げる、アジア各国の外注先の制作会社が何をしているかは、見て見ぬふりだ。フリーランスのデザイナーに発注する場合も、その個人が、自宅でどんなソフトをしっかりと買い揃えているか、クラックされた不正ソフトを使用していないかなど、発注側は誰も気にしない。結局、安く受注する会社や個人を便利に使うことで、不法行為を押し付けている。


■パチの良さ
対してパチは、完全に合法的な仕事を求められる。発注元が、何度も納品物をチェックする。高い金を出すだけでなく、合法的なコンテンツの制作にこだわる会社が多い。例えば、CGではテクスチャー画像をいくつも使用するが、パチ仕事では、作中で使用した全テクスチャーの著作権チェックがされる。テクスチャー一覧を提出すると、先方の法務部がチェックしたりする。テクスチャー画像は、ロイヤリティフリーの素材集などを買って利用することが多いが、素材集の発売元の会社が無くなっていると、テクスチャー差し替えの指示を出されたり...

そんなことは、かつてのゲーム仕事でも、要求されなかった。


フォントも、遊技機で合法的に使用できる、業務用フォントの契約を求められる。一度、先方がフォントの種類決定を後回しにして、仮のフォントで納品することを現場レベルで合意し、後に先方が差し替える話になっていたのに、先方の法務部に伝わっておらず、「不正なフォントで納品し、損害を与えた」と、損害賠償に発展しそうな時もあった。本当に、合法的なコンテンツにこだわる業界だ。(様々な著作権関係の裁判経験から、パチ業界は学んでいるのかもしれない。)

そういう仕事をしつつ、一方で、自堕落な映画やアニメの関係者に接すると、合法的なパチの仕事を受注できる会社というのが、とても誇らしいと感じるようになったのを覚えている。

しかしながら、パチに代替する黒字仕事が登場する前に、もしもパチ仕事が激減すると、経営が傾くCG制作会社も少なくないだろう。パチ業界は、最近持ち直したような話も聞くが、ちょっと前は市場規模が縮小傾向で、先行きに不安があった。そこで待ち望まれてきたのが、カジノ解禁だ。


■需要創出としてのカジノへの期待
カジノに期待するというと、どうやら、カジノのゲームマシンの仕事に期待をしているのではないかと、大きな誤解をしている人がいる。それは、あまりにもカジノを知らなすぎる。

もちろん、既存のパチメーカーは、海外のギャンブルマシンの供給も行っているので、既存のパチメーカーとの関係の延長で、カジノ向けのマシンの仕事も、期待が大きい部分ではある。CG制作会社から、パチメーカーへ転職し、海外カジノ向けの機種に関わってるなんて人もいる。

しかし、十数年前、自分がまだデジハリの学生だった頃から、SIGGRAPHとラスベガス旅行はセットだった。カジノとは、エンターテインメントの総合産業であり、当時からデジハリの杉山校長は、本場を見ろと学生に教えていた。

ラスベガスは、いたるところにコンテンツが溢れ、輝いていた。遊園地でもないのに、スタートレックのライドものや、ショー、シアターがホテル毎に存在し、どこもかしこも映像仕事の宝の山に見えた。街中の巨大スクリーンが、無数の映像を消費していた。

カジノを解禁するとは、単にギャンブルを解禁することではなく、ギャンブルを中心とした一大エンターテインメント都市を構築し、街中のいたるところにコンテンツ需要が生まれるということだ。合法化の暁には、これらの仕事を、国内の会社が受注できる制度を担保することは、必須だろう。その際、受注した仕事を海外に下請けに出すようなことを一定数制限すると、更に良いかもしれない。

これを、ゲーム、アニメ、映画などと、コンテンツの下流の権利者レイヤーの縦割りでしか業界を評価していないと、上流の制作現場レイヤーの重複に気がつかないので、カジノの魅力が理解できない。

CG制作会社に、「あなたの会社は、アニメ業界ですか?映画業界ですか?ゲーム業界ですか?それともCM業界?」と質問するのが、どれだけ愚問か分かるだろう。1つの会社で、実写合成だって、アニメだって、博物館の展示映像だって、何でもやってたりするのだ(もちろん、それぞれの専業の会社もあるが、そういうところは業界と運命を共にするしかない。)。だから、カジノ解禁で需要が創出されると、パチ依存の現状の偏りを緩和する方向に作用するだろう。それが、間接的に映画やアニメを支えることにつながる。


■制作サイドの改善
もちろん、個々の業界がそれぞれ健全化を目指すのは大事だ。しかし、日本のアニメ系の会社は、プログラマはゲーム会社にいるものだと、勘違いしてる感じがある。アニメの制作会社で、プログラマを重視して雇用している会社は、ほとんど無いのではないか。それが、Pixarに永遠に追いつけない原因だ。道具は、自分たちで作るものだという認識が、文科系アニメ制作会社には抜け落ちてる。なんせ、ソフトウェアは不正入手するのが当たり前だと思ってるのは前記の通りなんで、それを作るのに人件費をかけるという発想がないのかもしれない。プログラマが雇えないのか、雇う気がないのかは別にしても、そういう会社が淘汰されるのは、ある程度仕方のない話だ。

不正を行わずに、プログラマも雇わず、道具をひたすら真面目に買う側にいる会社もあるだろう。プラグイン一つ自給せず、必要なら買えば良いと。それはそれで、黒字を維持できるなら良いのだけれど、かなり非効率なので、小規模な会社でしか無理ではないかな。

理科系CG制作会社は、まだ、映像制作におけるプログラマーの重要性は、理解している。デジハリ時代のクラスメイトなども、インハウスのツールで海外に対抗しようと、ゲーム会社の出資でCG映画専門の大規模な制作会社を立ち上げた奴もいる。そういう会社が成功するよう、心から声援を送りたい。でも、映画ばっかじゃ飽きないの?とは思う。

専門化せず、つまみ食い的に、多様な業界の映像需要に応えられる会社というのが、時代の変化にも生き残れ、社員も飽きずに在職し続けられる、ノウハウのある楽しい職場なんじゃないかなと、個人的に思っている。

ノウハウがなければ生き残れないし、生き残った会社にしかノウハウは残らない。
焼畑農業みたいな業務スタイルの会社は、どうぞご自由にご退場ください。
...とか言ってみるテスト。


■風が吹けば桶屋が儲かる的なナニカ
このブログは、観光立国に関わるものを時々書くけれど、それは、観光立国にはカジノが必須だと考えており、カジノが認められればコンテンツ産業が潤うと考えているからだ。そして、JALを批判するのは、観光立国をインフラ面で妨げているのがJALだからだ。

航空行政が健全化し、LCC+地方空港による安価な観光インフラが整備され、普天間基地跡地だろうと、夕張だろうと、お台場だろうと、カジノが解禁され、観光立国となることが、日本のコンテンツ産業の活性化と合法化(カジノにまつわる仕事は、非合法であってはならないので、不正を厭わない旧態依然とした制作会社は受注できない仕組みも必要)につながる可能性というのに、大いに期待してる。


そして自分は、そういう時代に法律分野で貢献できたらという思いで、職を辞して法科大学院にいる。今回の日弁連の会長選にはガッカリしたし、今年はどうあがいても合格できそうにないけど、新司法試験は三振するまでチャレンジする所存。ギャンブル人生ですわ(涙)


■蛇足1
みんなの党の柿沢議員は、都議時代にお台場カジノ構想に深く関わり、カジノ推進に積極的だし、ショートショートフィルムフェスティバルにも関わってて、映像産業に興味も持ってる。かつ、みんなの党は観光立国も重視している。こういう話に興味持ってくれないだろうか?

■蛇足2
経産省が、コンテンツ振興策についての意見募集をしているので、またちょっと違う話を書いてみた。
「レンダリングサービス等におけるテンポラリライセンス」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00786/

■蛇足3
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」で、このエントリを紹介。
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/
関連して、こちらにも紹介されてます。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/02/vfx_9898.html

みんな、なんとかしたいんだよね。

アドビが、アップグレード版の購入に使えない、世代の古い旧バージョンのままのユーザーに対して、下取りキャンペーンを始めた。
http://www.adobe.com/jp/joc/store/eco/

でもアドビは、ライセンスの利用許諾をしているだけで、ソフトウェアの所有権は譲渡してないのに、下取りって言い方、おかしくない?

-->
本キャンペーンにご応募いただくには、お持ちの旧製品のメディア本体と、「エコキャンペーンお申し込み兼ソフトウェア廃棄に関する誓約書」(以下「申込書兼廃棄誓約書」)をアドビにご提出いただく必要があります。
<--

というので「申込書兼廃棄誓約書」を見てみると...

-->
【 ソフトウェア廃棄に関する誓約書 】
本状は、エコキャンペーンのお申込みと同時にお客様の旧アドビ製品をアドビへご返却されたことを条件に、お客様の旧アドビ製品に対する使用権が直ちに終了および取り消されることを確認するのもです。お客様は当該旧アドビ製品をご利用のコンピュータより速やかに削除し、当該旧アドビ製品から作成した複製物をすべて廃棄しなければなりません。当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。お客様が本状に署名し、本状と当該アドビ製品をアドビへ返却し、アドビがそれを受領後、アドビは当該旧アドビ製品とシリアル番号の「廃棄」を行います。お客様がアドビ製品のエンドユーザー使用許諾契約書に基づき当該アドビ製品を使用する権利は、お客様が本状に署名し、本状と当該旧アドビ製品をアドビへの送付を完了した時点で終了します。
<--

なんだ、やっぱり使用権の終了・取消しと書いてある。
で、PCからアンインストールしろと。

そんなの守るユーザーが、現実に何割いるのだろうか。

それに

>当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。

これって、下取りと関係なく、そもそも利用許諾だけなんだから、最初から禁止してるはずではないか。下取りに出さなけりゃ、転売することが許されてるかの解釈が可能な書き方は、ちょっとオカシイ。

更にFAQを見ると、驚き。

-->
Q3. 対象バージョンのPhotoshopやIllustratorを所有していましたが、すでにCS2などにアップグレード済みです。このキャンペーンに応募できますか?

A3. 旧バージョンからアップグレードを継続いただいているお客さまへの感謝の気持ちを込め、上記お手続きまたは製品登録内容を確認した上で、ご応募を可能とさせていただきます。なお、アップグレード版をご購入いただくのが一番お得な選択となりますので、まずは上記価格をご参照ください。ご不明な点はアドビストアコールセンターまでご連絡ください。
<--

既に旧バージョンをアップグレード元として、新バージョンを安価に購入していても、同じ旧バージョンを下取りに出せて、もう1本新バージョンが買えると...

これが意味することを考えてみる。


まずアドビは、アップグレードで新バージョンを入手しているユーザーもが、今でも旧バージョンを活用しているという事実を認識しているということだ。

以前は、アップグレード版をインストールしたら、旧バージョンと併存を禁じて、旧バージョンを使いたいボリュームライセンスユーザーは、インストールの都度アドビに申請しろという無茶な利用許諾条件を押し付けていた会社であることを考えると、感慨深い。

しかし、どうして旧バージョンが活用されているのか、どうして新バージョンが受け入れられないのかという、ユーザー側の理由に耳を傾けるのではなく、どうにかして旧バージョンを捨てさせたいわけだ。


そもそも、旧バージョンから新バージョンにアップグレードしているユーザーが、どのシリアルの旧バージョンからアップグレードしているか、アドビは把握していない。

アドビはかつて、シリアルナンバーなどユーザー情報のデータベースに不具合が生じたことがあったが、いつのまにか、アップグレード版購入者のユーザー登録に、旧バージョンの購入者であることの証明を要求しなくなった。インストールの段階で、旧バージョンのシリアルが要求されるが、それがアドビに管理されているわけではない。

もっと言えば、ユーザー登録を必須とせず、登録したい人は任意に登録すれば?という態度に変わった。旧バージョンをユーザー登録せずとも、新バージョンへのアップグレードが可能な、吃驚するほどルーズなユーザー管理姿勢に移行した。

膨大なシリアル情報のデータベースの管理を放棄したのか、管理コストを削減したのか知らないが、アドビが正規ユーザーを軽視する姿勢だけは、昔から一環している。

だから、上記FAQの答えは、別にアドビが寛容なのではなく、そもそも制限できない、というのが実際のところだろう。


では、どうしてアドビが、こんな必死のキャンペーンまでしなければならなくなったのか、売上げのプレスリリースを見たら分かったので、グラフにしてみた。(昨年もグラフにしているので、手直ししただけだが。)

adobe2009_4.jpg

2009年第4四半期、なんと純利益がマイナスに転じた。

adobe2009s.jpg

もちろん、通年なら真っ黒に黒字だ。しかし、四半期とはいえ赤字というのは、営業部門が必死になるには十分な理由だろう。

ただし、この時期アドビは、Omnitureを買収している。この点を考慮すれば、不振は一時的なものかもしれない。かつてのマクロメディア買収前後の売上げに比べれば、遥かに上だからだ。

ところが、当時より純利益は遥かに下回る。最近のアドビは、利益率が極端に下がっている点が興味深い。

もしかするとCS4は、アップグレードユーザーばかりで、利益率の高い新規ユーザーが、ほとんど開拓できなかったのかもしれない。

不況の影響もあるだろうが、独占したプロユース市場が飽和気味で、新規ユーザー増加が見込めないのか?とか、色々想像してしまう。

そういうタイミングで、あえて年末にOmnitureを買収し、新規市場開拓に出たというなら、戦略としては納得だ。今まで散々蓄えてきたろうし、2008年末には、事実無根の「売上げ不振」を理由とした、600人のリストラを発表している。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20384723,00.htm
2009年の不振は、2008年末時点で予測済みだったわけだ。
(「事実無根」というのは、2008年末はまだ、過去最高の売上げだったからだ。)

自らは先にスリム化し、不況のタイミングで他社を買収して事業拡大。
上手い。上手すぎる...


しかし、ユーザー側から言わせてもらうと、事業拡大してまで余計な機能は要らんから、軽くてバグの少ない安定したソフトを希望したい...
http://www.omniture.com/jp/company/adobe_faq
-->
アドビ システムズがOmnitureを買収した理由は。
アドビ システムズの事業目標は、あらゆるユーザーの、アイデアや情報の関わり方に変革をもたらすというものです。アドビ システムズのコンテンツ制作ツールやユビキタスクライアントと、Omnitureのウェブ解析、計測、最適化テクノロジーを組み合わせることにより、すべてのデジタルコンテンツプラットフォームおよびデバイスを通じて、魅力的な体験やEコマースの未来を変革することのできるソリューションを提供することが可能になります。
<--




てへ!
今後も、現場が要望しない機能テンコ盛りな予感。

天下のアドビ様が、ユーザー目線に立ってくれることなんて、あり得ない話でしたねーーー
ちゃんちゃん!

蛇足:
>アドビはこのキャンペーンを通じて発生した利益の1%を、植林や里山保全に関する人材育成を行っているNPO団体に寄付します。
>ご購入の際にはパッケージやメディア不要で資源を節約でき、かつ送料無料で価格もお得なダウンロード版をぜひご活用ください。

価格がお得なのは、送料分の630円分だけだそうで...普通、節約したメディアやパッケージ分、ダウンロード版は販売価格を安くするものだろ?
何で販売価格は同じで、送料なんて当たり前の部分削れてるからって、お得とか言ってるの?
ユーザー側の資源節約が、丸々アドビの利益になるのに、何がエコだよ。

CS4の発売前後くらいからの販売方針とか、物凄くエグイ売り方をする会社になったと感じている正規ユーザーは、多いはずだ。時期的に考えると、クレイグ・ティーゲルが日本法人の代表取締役社長になったせいか?

追記:
やっぱ皆さんご不満のようで。
http://d.hatena.ne.jp/seuzo/20100207/1265518232

http://jp.techcrunch.com/archives/20090720youtube-experimenting-with-3d-web-videos/
http://japanese.engadget.com/2009/07/22/youtube-3d/

ちょっと話題になってる。

HD立体もOK
http://www.youtube.com/watch?v=UTOwV5IJq48&fmt=22
ここに動画を埋め込むと分からないので、リンク先の動画の下を見て欲しい。
3Dの表示方式を選べるようになった。

Googleの「20%の自由時間」を利用して開発したというのが、面白い。

今後は、3Dシアター向けのCG作品をYouTubeでプロモーションするのは、ありかもしれない時代だ。

なお、一般人に3Dの需要があるかといえば、実はYouTubeに限らず、こんなWebCamも存在する。

http://wiredvision.jp/blog/takamori/200907/200907281520.html

ちょっと高いかな...

日本なら、こんなウォーリーみたいなカメラじゃなくて、せっかく目が2つあるのだから、「萌えキャラ」や「ゆるキャラ」の大きめなフィギュアにでもして、PCの上にキャラが座っているように見える製品でも作った方が、売れる気がするw

いつの間にか公式サイトがオープンしてた。
http://yonapen.jp/

来週あたり、IMAGICAで公式スタッフ試写とか。

法科大学院の授業で行けませんが...公開されたら、劇場行きますんで。

かっちょいー

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スゴイ計算されてるね

現場で見たい

時々前を電車のパンタグラフのようなものが通り過ぎるのが、またいいw

こういう一瞬の、固定して展示や保存ができない作品というのは、ライブの貴重さを教えてくれる。ネット経由じゃ、本当に凄さの何分の一しか伝わらないのだろう。

そもそも、これを映し出してるプロジェクターとか、画面の反対側でコントロールしている側も、スゴイ気になるけれど(^^;

河野太郎GJ

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「殿堂」という箱モノ
国産比率と法令遵守を条件に
レンタル倉庫でも借りろ

↑今まで何度も取り上げてきた、例の「殿堂」という文化庁天下り国営マンガ喫茶の件、河野太郎氏が反対してくれた。

http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1066
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1067
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1070

素晴らしい。前に、国籍法改正の時も、一番正しく理解して改正に賛成していたが故に、無知なネトウヨ酷士様から総攻撃を食らってたけど、今回も一番よく理解して反対したが故に、賛成派の文化を創ってない人々からの反論が、氏のmixiの日記版に連なってる模様。

間違いなく、河野さん、あなた正しいですよ。
アニメ、CGの制作側の人間として、応援します。
自分らの仕事が、文化庁の役人の天下りのネタに利用されるなんて、真っ平です。

文化庁は、作った箱に、誰が作品を提供するのか、考えてないでしょ。
117億円には、作品を買い取る金は含まれず、当然に徴収でもできると思っているのだ。そうなら、応じる作家や作品のリストでも見せてみろ。

例えば、手塚作品なら手塚治虫記念館、長谷川町子なら長谷川町子記念館と、既に著名な漫画家は、それぞれ記念館があり、町おこし的な要素もある。にもかかわらず、殿堂に著名作家の目玉作品を集められるとは思えない。

運営は民間に委託を想定してるそうだけど、どこの会社?信用できるの?

しかも、映画が殿堂の対象から除外されている以上、日本の有名な劇場アニメなどは、所蔵されない。映画抜きのメディア芸術なんて、詐欺みたいなものだ。


今、観光庁が、ポップカルチャー戦略の外務省と、産業育成側の経産省と連携して、パリでこんなことをやってる。
http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=41245
縦割りの壁を越えての連携は、素晴らしい。

で、何で文化庁の名前が無いの?
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000021.html

観光立国を目指す日本にとって、地方の観光資源は重要だ。地方都市に漫画家等の記念館が点在することは、外国人観光客の足を運ばせるネタになる。しかし、お台場に殿堂を作れば、逆効果でしょ。

ヲタクな外人は、そんなものが無くとも、アキバ目当てに東京には来る。
なので、殿堂を地方に作るなら、まだ国家戦略として一貫性を感じる。
一貫性が無いのは、文化庁だけ縦割り維持してるから?と聞きたくなる。

外国人へのアピールなら、見るべき観光資源を近くに集めてはならない。一度の来日で、観光資源を消化させないことが重要だ。また日本へ行きたい、次はあっちの地方都市へ行ってみよう、と思わせることができるかどうかだ。

お台場なんて、呼ばなくたってヲタク外人はコミケで来るって...orz

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