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謹賀新年

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2021年賀状.jpg
あけましておめでとうございます。
今年の年賀状は、GoTo先の屋久島は宮之浦岳山頂での360度写真です。

昨年は、横浜からバンクーバーへ太平洋横断片道クルーズをしようと、一昨年末から散々検討していたのですが、COVID-19のためにクルーズがキャンセルされてしまいました。途中でロシアを経由し、2週間でバンクーバーへ到着するこのクルーズ、プレミアム客船で当然に食事もショーも込みで、安い内側船室なら一人400ドル程度にまで値下がりします。ずっと値動きを追っていましたが、全て徒労に終わりました。

カジノツーリズムは諦め、仕事も無いので、ほぼ箱根に引き籠るようになりました。ヤフオクで安いプロジェクターを落札すると、延々とFallout76オープンワールドを大画面で旅する毎日。その合間、たまに最寄りのスーパーまで食料補給で片道7・8km歩けば、鹿と猪に遭遇。感染症より猪が怖いという生活でした。

■オンラインとか映画祭とか
そういった中でも、様々なイベントがオンライン開催となったお陰で、通常なら参加が困難な映画祭やイベントにオンラインで参加出来たというのは、とても有難かった。アヌシー国際アニメーション映画祭も、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭も、そして何よりバーニングマンも、オンラインで堪能しました。特に、VRを活用するバーニングマンは凄かった。通常なら、現地に行かなければ参加できなかったし、そもそもバーニングマンなどチケット入手すら大変なわけで、COVID-19のお陰でローコストにこれらへ参加出来たというのは、リアルとはまた違った価値ある体験となりました。

対照的に残念だったのは、広島国際アニメーションフェスティバルです。
https://hiroanim.org/
なんと、その存在価値を理解できない広島市の方針転換で、昨年が最後の開催でした。他の映画祭のようなオンライン対応がほとんど出来ず、世界中から寄せられた作品を審査員がオンライン会議で検討し、受賞作品名等がホームページに公表されるだけでした。歴史も重みもある映画祭が、こんな終わり方になるとは、本当に残念でした。
以前は理解があり、広島市長も舞台に上がって流暢な英語でながーい挨拶されてたのに感銘を受けたこともあったので、この方針転換は本当に驚きです。)
https://cgworld.jp/interview/202010-hranm18th.html

自分は学生の頃から行きはじめ、CG制作会社に入社してからは会社の部活動として、同僚と共に参加させてもらっていました。フレームインという、事前審査も何もなく持込上映させてもらえる枠があり、そこにまだプロ・アマの垣根もなかった頃、自社の仕事をVHSで持参し上映させてもらい、その場で批評を受けたり、叱られたり、全ては良い思い出です。行きの飛行機で、当時審査委員だった海外の著名なアニメーション作家と親しくなり、会場でその人の特集プログラムに参加し、自社のデモリールを手渡ししたことも。映画祭は色々行きますが、そんなことが容易に実現する権威ある映画祭、他に国内に無いですよ。

国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)公認で、アヌシー、オタワ、ザグレブと並ぶ世界4大アニメーションフェスティバルの1つだった訳ですが、それがどうやって成立してきたのか現在の広島市は理解していないのではないでしょうか。博報堂や中国新聞と組んで、名声を掠め取るような後続イベントを計画しているとか。米国アカデミー賞公認でもあり、広島のグランプリ作品はアカデミー賞ノミネート候補にもなっていたわけですが、ASIFAを足蹴にしてそんな真似は不可能。そういった意味で、価値のない後続の商業主義イベントを、さも歴史も権威もある以前の映画祭と関係があるかと世界に誤解させて作品を集めるような恥ずべき行為だけは、やめてもらいたいものです。
https://www.cartoonbrew.com/events/hiroshima-city-says-it-plans-to-hold-animation-festival-in-2022-asifa-protests-198499.html

ASIFAは、まだ広島市に再考を促そうとしています。
http://asifa.net/news/petition-to-save-hiroshima-festival

Change.orgで署名も集めています。
https://www.change.org/p/mayor-of-hiroshima-keep-the-hiroshima-international-animation-festival-going

一度決めたことは、どんなに間違いでも殆ど変更できないこの国ですから、それが恥ずべき行為でも、広島市が再考することは無いだろうとは思います。が、自分も一応署名しました。長年広島に通ってきたのに、もう広島に行く理由が無くなってしまったのは、非常に残念です。とうか、こんな不義理をやらかす広島市には、行きたくなくなってしまいました。

昨年は、GoToと併用できる各地方自治体の助成制度が色々とあり、それらを活用して旅しましたが、広島も大変安く旅行できる制度がありました。しかし、全く広島には興味が湧きませんでした。商業主義に踊らされる広島市の今後は、期待しないで生暖かく見守ります。

■その他GoToとか
世間では、GoToで豪華な宿をお得に、みたいなのばかりが話題でしたが、自分の場合は3泊で1万円くらいの格安ゲストハウスに使ったり、せいぜい1泊1万円程度のホテルでよく利用しました。じゃらん等の予約サイトでは、各地方自治体が助成する観光促進のための割引きクーポンが多数配布され、GoToとこれを併用するというのがお得でした。10,000円以上の宿泊費に対し5,000円助成される地域だと、GoToで3,500円引かれ、支払い1,500円に対して地域共通クーポンが2,000円もらえるというケースもザラ。こんなことに税金ばらまくなんて酷い国だと思いながら、活用しました(苦笑)
鹿児島県の屋久島や種子島、山梨県の富士吉田、静岡県は下田や熱海、東京だと伊豆大島等を長めに回りました。カジノの無い国内旅行は久々。種子島なんて、筑波宇宙センターに勤務していた頃だって行ってないのですが、南種子町の助成金が素晴らしく、初めて種子島宇宙センターも見学できました。屋久島は、感染症対策で山小屋(避難小屋)での宿泊はなるべく避けるようアナウンスがされてたので、テント持参で山中泊(ここにGoToは関係無いですが)。3泊4日かけて宮之浦岳等縦走しました。
様々な地域を回ると、感染症対策の温度差のようなものも実感でき、非常に興味深かったです。例えば箱根では、温泉にサウナが併設されていても、感染症対策を理由に使用中止が当たり前。これが、鹿児島の某砂風呂施設の温泉にあるサウナでは、入れる人数を減らしただけで、かなり密で使用させていて驚きました。狭いサウナ内は向かい合う席の配置で、流石に正面は空席にされてますが、ひな壇でその1段上がった位置は使用しており、そこのおじさんの荒い鼻息が丁度自分に当たってるんじゃねーかと気付いた時は、サウナなのに寒気が(苦笑)
また別のサウナでは、敷いてあるタオルがそのままなのに、そこに直に座らせるというのはどうかと思いました。誰かが座ったタオルの上にそのまま裸で座るとか、以前はそれほど気にしなかったと覆いますが、今となっては軽くホラーです。(サウナの温度でウィルス死ぬんだよと笑い話にする人もいましたが、もちろんそうとは限りません。)
マシな施設だと、一人一人入口で消毒したシートを持ってサウナに入り、座布団のように敷いて座り、出る時に持って出て消毒して返却とかさせていて、利用する側としても安心でした。(そういえば、以前ドイツのバーデンバーデンのスパに行った時は、サウナは自分用のシーツみたいのを敷いて座るのがマナーで、気付かずに直に座ったら、他のお客から静かに指摘されました。感染症対策云々じゃなくても、それがサウナの正解な気はしますね。)
その他、宿のチェックイン時の検温と身分証の確認とかは、もう本当にバラバラ。ちゃんとやっている施設が多いですが、感染症対策と称して無人チェックインを実施してますなんて宿もあり、宿泊中一度もスタッフに会わずにチェックアウトしたこともありました。そんなところは、検温やってないわけです。チェックイン時、書類に健康状態を自己申告で書いて、レセプションのポストに投函するだけ。そこに体温計があるわけでもなく、測りもせずに「37.5度以上はありません」とチェックするだけ。こんなの、いくらでも嘘ついて泊まれます。この宿は都内でしたが、年末に東京に久々に戻って実感したのは、東京は感染症対策杜撰なところ多いなということ。新宿のそれなりの商業施設でもエレベーターの人数制限をしておらず、人が沢山乗ってたりする光景、GoToで行った他所の県では見なかったので、ゾッとしました。ここに戻ってしまった以上、安易に他所の県には行けないと思いました。まあ、この年明け早々、某ワクチンの治験に参加予定で、しばらく待機せざるを得ないとうのもあります。初回健診で対象外と言われたら終わりですが、1年後まで通院予定が決まってたり、色々面倒ですし、プラセボだったりするかもしれません...が、どんな1年になるのやら。

中身のあるブログ更新何年ぶりだよという感じだが、過去にここで注目していた事案のその後についての話。


「日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー 経産官僚の暴走と歪められる公文書管理」を読み終えた。本書は、かつて産業革新機構からの出資による官製映画会社と言われた株式会社All Nippon Entertainment Works(以下「ANEW」とする。)にまつわる不審な公金の行方や、実績とされた映画化案件に実体が存在しなかったこと等を暴きつつ、クールジャパン政策の数々の問題点を具体的な事例を元に指摘する。この問題を長年追及してきた著者には、本当に敬意を表したい。
しかし、それだけに留まらず、著者も属する映画産業の発展に本当に必要な支援とは何か、海外の成功事例を豊富に紹介しつつ論じている。映画や広く映像産業に関わる人は、この本を読むべきかもしれない。自分のように、既に部外者となって久しい人間には、もったいない内容だった。
純粋に、アメリカ等海外と映画製作する際の流儀というか、コスト管理や契約締結に必要な実務的な知識、不合理な契約を押し付けられないためのメルクマールのオンパレードという側面も、ある意味貴重だった。というのも、著者が訴える経産省やANEWの問題点を読者が理解する前提として、ハリウッド等アメリカの映画製作実務の知識が必須な為、その解説に多くのページが割かれているからだ。目から鱗と感じる関係者もいるかもしれない。普通なら、それだけでもお金払う価値がある。

ANEWについては、設立当初から自分も興味を持ってこのブログで取り上げていたけれど、いつになってもガイキングは完成せず、あの会社どうなってんの?と思ってきた。しかし、著者のように情報公開請求したり、関係者の発言や発表を時系列で追ってその矛盾を発見したりすることは無かった。ジャーナリストでもない著者が、このような不正義を長年追及してきたのは、ご自身が映画産業関係者であり、国の無策に苦々しい思いをさせられてきたからだろう。しかも、無策なだけじゃなく、クールジャパンと称して税金を私物化している連中がいる。許せないという気持ちに違いない。自分は以前CG制作会社で働き、映画制作を受注する現場側として興味を持ったのが最初なので、著者にはとても共感しながら読ませてもらった。

ただし、ANEWのような官製映画会社が作られた経緯について、本書で触れられていないことがある。著者はご存じ無いのかもしれない。本書巻末のANEW年表は、経産省が産業革新機構に対しANEW設立を打診した2010年前半から始まっているのだが、実はこの前がある。

■ANEW設立の前段階
2010年初頭、民主党政権下の経産省は、民間から誰もが自由に国策等を提案できるアイデアボックスというサイトを運営していた。ここで多くの支持を得た「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」という映画制作現場からの意見があり、自分はこれが、ANEWを正当化する民意として経産省に利用されたと、現在では理解している。

経済産業省アイディアボックス
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」
https://web.archive.org/web/20100523203033/http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/

この直後の2010年4月、「経済産業省は5日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の産業競争力部会に「文化産業大国戦略」案を提示した。」として、「映画などのコンテンツを海外で販売するのに不可欠な資金を提供する官民出資の「コンテンツ海外展開ファンド」を創設する。」と毎日新聞が記事にしていた。

アイデアボックスに意見を投じたご本人は、コンテンツ海外展開ファンドの創設を前進と評価されていたが、
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/04/blog-post.html

自分は意見が歪められたと感じていた。
「クール・ジャパンのマヌケ」
http://maruko.to/2010/04/post-83.html

それでも、2011年にANEWの設立がニュースとなった頃は、
「国策会社とクール・ジャパン」
http://maruko.to/2011/11/post-123.html
「ハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢」に変わったと感じ、「単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。」と考えていた。

しかし、そもそも2009年の麻生政権下で、産業革新機構から資金調達して「コンテンツ海外展開ファンド」を創設するという話は、既にニュースになっていた。
「国産比率と法令遵守を条件に」
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
2009年5月4日の時事通信の記事では、「国内の制作会社や作家からコンテンツの海外ライセンス(使用許諾)を取得するとともに、海外の制作会社に出資し、国際展開を後押しする。」と説明されており、正に、後のANEWそのものと言える。産業革新機構とコンテンツ海外展開ファンドを駆使した税金私物化の不正の概要は、自民党政権時代に出来上がっていたのだ。

■政権交代の影響
2009年当時の自分は、制作現場が潤わない新たな利権を生むだけの麻生政権の愚策に批判的だったのだが、政権交代と2010年のアイデアボックスを経て、多少はマシになったのではないかと、期待してしまっていた。民主党政権とは、はてブにオープンガバメント推進ブログを経産省が作っていた、そういう時代だった。
https://ideaboxfu.hatenadiary.org/entry/20100527/1274919221

けれど、野田政権の最後にANEWがガイキングについて発表したのを最後に、クールジャパンはブラックボックス化してしまう。
「民主党政権の残したクール・ジャパン」
http://maruko.to/2012/12/post-135.html
オープンガバメントな手法を駆使し、親しみすら感じていた経産省が、自民党への政権復帰と共に、遠い存在に戻ったという気がした。

著者は、様々な情報公開請求、不誠実な経産省の対応で苦労されるわけだが、これは単に経産省が悪いというより、それを許すようになった現政権に最大の問題があるのではないかと思う。公文書管理や情報公開への姿勢に問題があるというのは、経産省というよりも、現政権の顕著な特徴なのだから。現政権の不正のオンパレードの中に、本件は埋もれてしまったという気がする。

まあ、ガイキングにしてもいかなる契約も存在していなかったというのだから、民主党政権下で自分が「多少はマシになった」と当時思ったのも、ただの虚構だったのかもしれないが。

■当時における官製映画会社の必要性
第4章「官製映画会社構想のそもそもの過ち」には、「国による「ANEW設立の打診」には、産業政策上の「事実」に当てはまらない致命的な思い違いが、大きく分けて2つ存在します。1つは個人レベルで解決できる課題に焦点を当てていたこと、もう1つは「ビロー・ザ・ライン」へ支援が向いていなかったことです。」とある。自分は、後者には賛成で、アイデアボックスの議論の後に骨抜きにされたのが、正にこの部分だと感じている。しかし、前者については異論がある。
著者はここで、「リング」が契約に失敗し、ハリウッドリメイクから配当を得られなかった事例について、プロデューサーら個人の問題と捉えている。そして、「映画化権の交渉における契約法務に長けた弁護士やエージェントなどを利用するという、簡単な手段で解決できます。」と。リメイクを通じてハリウッドのノウハウを蓄積し還元するような官製映画会社は、前提とした必要性がそもそも無かったと。
しかし、映画化権のハリウッドとの交渉に長けた弁護士にアクセスすることは、この国で本当にそんな簡単なことだろうか。著者は、ANEWが支援したのが東映アニメーションや日本テレビという資金力のある大企業であったことから、そのような会社が国の支援がないとリスクをとることが難しいわけがないと論じている。しかし、その様な大企業のみを支援するのが、ANEW設立の前提だったわけでもないだろう。

第1章「株式会社ANEWと消えた22億円」では、「官製会社の民業圧迫行為」と題し、漫画「銃夢」がハリウッド映画化された「アリータ:バトル・エンジェル」の契約法務の事例を引き合いにしている。「銃夢」のように、日本の法律事務所が代理人としてハリウッドと交渉した事例があるではないかと。ANEWのような官製映画会社が無くとも民間で対応できるのに、対価を求めずに同様のサービスをANEWが提供することは、民業圧迫だったと。しかし、原作者のインタビュー記事を読むと、「アリータ:バトル・エンジェル」こそが契約法務に不備があったと疑われても仕方のない問題ケースだと思えてくる。

「銃夢」の作者・木城ゆきと氏にインタビュー、「アリータ:バトル・エンジェル」映画化の経緯から「銃夢」の奇想天外なストーリーの秘訣まで聞いてきました - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190221-alita-battle-angel-yukito-kishiro-interview/
「当時集英社でも前例がまったくありませんでしたから。きちんとマネジメントをしてくれる代理人契約を電通さんと結んで、ちゃんとした体制でこっちも向かわないといけないという風になりました。」と原作者の木城氏が語っており、そもそも弁護士に直接アクセスしていないことが分かる。加えて、最も問題があると考えるべきなのは、次の部分だ。
「タフな交渉だったので2年ぐらいは色々ともめたんですが、最終的に2000年の暮れごろに僕が契約書にサインして、契約が成立しました。」
「2016年になってプロデューサーのジョン・ランドーが来日して、「『アリータ』を作ることになりました。監督はロバート・ロドリゲスが担当します」と。」
つまり、契約から16年もの間、「銃夢」の映画化は動かなかった。元々、他にも映画化を交渉していた競合プロデューサーが存在したような人気コンテンツで、2年も交渉して締結した契約が、そこから更に16年も塩漬けにされることが許されるような内容だったことになる。
本書では、「海外映画化権の契約では、製作を実現できないプロデューサーの元に映画化権が半永久的にとどまることで知的財産が活用できなくなるのを防ぐために、条項を取り決めることもできます。」として、「権利の復帰条項」(Reversion)が解説されている。にもかかわらず「アリータ」を引き合いに出されると、こういった条項が欠けていた事例に思え、むしろ民間にハリウッドとの契約法務のノウハウが無かったことの証拠に思えてくる。電通経由で、どこの法律事務所が関係したのかは知らないし、実際にどのような契約が締結されたのかは確認しようがないが、確認しようがない失敗のノウハウは、共有されることもない。

そんな状況で、国策として海外へコンテンツを売り込もうというなら、(その国策自体の是非は別にしても、)国がサポートするというのは、そんなにおかしなことだとは思わない。ただし、結果として何の役にも立たないANEWが作られ、投入された税金が雲散霧消したことは、まったく酷い話だと著者に同意する。

自分の経験で言うと、映像制作の現場に法的知識のある人間が必要という観点から、かつて弁護士を目指しロースクールに通った。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの理事などの弁護士から、直接学んだ。しかし、実務家(弁護士)が映像制作現場の状況を理解しているとは思えなかった。それから10年経ち、今なら状況が変わっているのだろうが。

■驚いた話
ANEWの件は長年興味のあった問題であり、著者のSNS等の情報発信をフォローしていた身なので、ほとんどの内容は想定内ではあった。しかし、第4章の「労働搾取を推奨する日本の代表」はぶったまげた。2012年の東京国際映画祭に併設されていたTIFFCOM(テレビ、映画の見本市)にて開催された「日本のインセンティブの未来を考える」というセミナーでのこと。「ジャパン・フィルムコミッションの副理事で、その後2019年10月まで理事長を務めた」人物が、海外の映画製作者に向け、「日本のロケ誘致のインセンティブとなる特典要素」として次のような発言をしていたという。
 ・外国と違い、日本で撮影を行う場合、日本のクルーは週末、深夜、長時間労働に対応が可能
 ・日本のクルーは残業代がかからない
 ・エキストラを無償で用意することができるところもある
著者は、このセミナー以前から、複数の映画産業関係者より、ジャパン・フィルムコミッションがロサンゼルス等海外でのプロモーション事業においても無償残業の提供を吹聴していると聞いていたそうで、それを自分の耳で確認することになり、怒りを覚えたという。この人物は現在、内閣府知的財産戦略本部が組織した映画産業振興のためのタスクフォースや、「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」のメンバーだそうだ。
ぶっちゃければ、確かにそういうこともあるかもしれないが、少なくともそれは悪しき慣行であり、ロケ誘致のインセンティブとして宣伝材料になるような要素ではない。海外の映画製作者が、違法な労働力の提供を魅力に感じると思っている点でアホだし、それを公の場で公言してしまう感覚も理解できない。本書で紹介されている、世界各国がどのようなインセンティブ政策でロケ地やプロダクションの誘致に成功しているかの事例と比較し、驚きを通り越して悲しくなった。

皮肉なことに、「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」が公開している2018年4月の中間取りまとめの報告書には、真逆の記述がある。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/location_renrakukaigi/pdf/h3004_houkoku.pdf
ロケ撮影を巡る現状認識等について、関係団体・企業の委員から、次のような指摘が出たというのだ。
「制作部のスタッフの多くはフリーだが、昨今人材そのものが減少。制作現場としてもコンプライアンス遵守や、働き方改革を意識していかないといけないが、一方で、その皺寄せがフリーのスタッフに行かないよう業界全体として考えていく必要がある。米国やフランスのようなユニオンのような仕組も含め、映像産業全体として、魅力的・理想的な体制を目指すべき。」
「ロケ現場におけるコンプライアンスの確立と強化が重要。日本の製作現場においてコンプライアンスが確立されれば、すなわちそれが海外作品誘致のアピールにもつながる。」

このコンプライアンスの重要性に関する今更の指摘は、同年3月の第3回会議において出たものだ。同会議には、2012年に労働搾取をインセンティブとして海外にアピールしていた件のジャパン・フィルムコミッション理事長も出席している。自らの過去の問題発言の重大性を自覚してくれたと期待するしかない。

■プロダクションインセンティブとか
著者は2017年、知的財産戦略本部へ「日本におけるプロダクションインセンティブ制度設置についての提言」を提出している。
https://hiromasudanet.wordpress.com/2017/02/19/production_incentive_for_japan/
この内容は、本書とも重なるのだが、この後に設置された「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」では、プロダクションインセンティブについての検討がされた。そして昨年、実証調査事業としての「外国映像作品ロケ誘致プロジェクト」を映像産業振興機構(VIPO)が運営事務局となり、支援対象の募集がされた。
https://www.vipo.or.jp/project/locationuchi/
採択案件2作品については、今年1月に公表された。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/location/20200110.html
この重大性について、期待する声も業界にはあるようだ。
https://cinefil.tokyo/_ct/17357929
しかし、これについても本書は、具体的根拠を示して厳しい指摘をしている。

ただ、自分が気になった点は別で、VIPOの示していた当該事業の事業期間は「受給資格通知日から2020年1月31日」とされ、事業終了報告書の提出期限も1月31日とされていたのに、「G.I.ジョー: 漆黒のスネークアイズ」の日本での撮影が終わったのは、2月に入ってからのようなのだ。
https://theriver.jp/snake-eyes-wrapped/
大丈夫か?

尚、今年の募集については、新型コロナの影響で受付開始時期が未定だが、事業期間は2021年2月1日までとされており、もう無理だろうと思わざるを得ない。
https://www.vipo.or.jp/project/location-project/

■蛇足
本書の扱うクールジャパン絡みの問題は範囲が広い上に、映画に関しては特に専門的であり、読み物として面白いわけではない。しかし、最近も新型コロナを大義名分として、何故かクールジャパンに巨額の予算が計上される事案も発生しており、これらの動向を継続的に検証するメディアの必要性が増しているように思う。本書のような問題意識は、もっと共有されるべきだと思う。しかし、こういう本がバカ売れするはずもなく、なんとも難しいですね。

http://gigazine.net/news/20130710-little-witch-academia-2/
この成功は素晴らしい。
で、政府のクール・ジャパン推進とは、どんな関係があるのだろうか。

というのは、こういうのがクラウドファンディングで成功するなら、政府のクール・ジャパン推進機構による金銭的支援なんて要らないというツイートを見かけたからだ。

まあ、確かにそういう側面があるのだけど、じゃあ国の支援なんて全く要らないかというと短絡的過ぎで、そもそもこの作品が、文化庁の支援で作られたという経緯がもっと理解されるべきだろうと感じた。
http://animemirai.jp/about.php

アニメミライのプロジェクトが始動した2010年の前、どんな状況だったか、覚えているだろうか。
前年の2009年、麻生内閣は、「アニメの殿堂」とか「漫画の殿堂」、「国営漫画喫茶」と揶揄された117億円の箱モノをお台場に作ろうとして、大きな批判を受けた。このブログでも批判した。
http://maruko.to/2009/04/post-25.html
-->
まだ、117億で、5・6本でも継続して作品に投資してくれた方がマシだ。
コンペは、代理店抜きなら10本作っても十分おつりくるぜ?
受注条件は、制作会社を国内に限定し、海外への下請けや外注は、極力制限しても良い。あと、制作過程でコンプライアンスを遵守させることは、必須条件だ。経産省とも連携すれば、
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20390487,00.htm?tag=nl
これのガイドラインを生かした成功例にさせても良い。
<--

その後、国立メディア芸術総合センターという仮称を得たのだけど、当時はmixiのコミュなんぞでも色々議論されていた。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43952487&comm_id=111198&page=all

そして7月、設立準備備委員会に日本アニメーター・演出家協会(JAniCA)が出席し、人材育成の必要性を訴えた。
http://www.janica.jp/press/mediacenter.html
国立メディア芸術総合センターを作るなら人材育成に使わせろと。

経産省も「アニメ産業コア人材育成事業」が動いていて、日本動画協会が随意契約してJAniCAが再委託していた。
http://www.meti.go.jp/information/data/c90728aj.html

で、9月に麻生内閣が終わり、民主党政権が始まった。

当時の「コンクリートからヒトへ」という大きな流れは、まだ誰もが覚えているだろう。
国立メディア芸術総合センターの話は消えたが、JAniCAによる人材育成の必要性の訴えが通じ、2010年、文化庁委託事業として「若手アニメーター育成プロジェクト」(後のアニメミライ)が始まった。

当初は、作品制作団体選定に関連してJAniCA内部でちょっとしたイザコザがあったり、心配な時期もあったが、今から考えれば大成功だったと言えるのだろう。
http://www.janica.jp/press/janicatimes_001.pdf
http://www.janica.jp/press/janicatimes_002.pdf

そうして、アニメミライ2013で制作されたのが、リトルウィッチアカデミアだったわけだ。
http://www.animemirai.jp/c2.php

「俺たちクールとか言ってる場合じゃねーよ。絶滅危惧種なんだよ!」と言ったかどうかは知らないが、アニメミライとは、「コンクリートからヒトへ」の民主党政権が、とても上手く機能した例だったのかもしれない。政権が自民党に戻って、経産省のクール・ジャパンがまたヘンテコな方向に進んでいても、
http://www.huffingtonpost.jp/social/Hiroshi_Koga/story_n_3438220_260977327.html
文化庁のアニメミライは健在(縦割りのお陰?(苦笑))であり、
http://www.animeanime.biz/all/136295/
http://www.kickstarter.com/projects/1311401276/little-witch-academia-2
こんな成功につながっているのだ。

こういう支援こそ、クールだと思う。

と、ここまで書いてから検索したら、
http://ure.pia.co.jp/articles/-/12761
丁度いい記事もあった(^^;

■Kick-Heart
前回のクラウドファンディング続きってわけではないけれど、最近これにちょこっとお金を出した話を。
http://www.kickstarter.com/projects/production-ig/masaaki-yuasas-kick-heart
IG湯浅監督の、約10分の短編アニメプロジェクト、Kick-Heartだ。

今日見たら、丁度10万ドルを超えていた。
でも、あと残り2週間で、もう5万ドルって達成できるのかな。ちょっと心配。
(10月30日までに15万ドルに達しないと、課金が発生しないシステムなので、正確にはまだ出資したとも言えない。)

湯浅監督といえば、マインド・ゲームが衝撃的で、劇場公開時も会社の同僚と一緒に観に行ったし、DVDも買って持っている。凄いのだけど、あまり広く一般に売れるというより、マニアじゃないと凄さが分からないタイプの監督かもしれない。(まあ、マインド・ゲームはロビン西氏の原作漫画も衝撃的に凄いのだけど。)

そんな監督が、クラウドファンディングで新作の資金を集めているというのだから、応援したくもなる。
http://animeanime.jp/article/2012/10/02/11614.html
http://animestyle.jp/news/2012/10/05/2663/

でも、それだけじゃない。

■ダウンロード
金額によって特典に差があるけれど、自分は15ドルを選んだ。まあ、今は節約生活してるからというのもあるけれど、高額な選択肢は、Blu-rayとかメディアももらえることになっていて、それが嫌だったからだ。

これが9月までなら、コピー防止されたメディアからのリッピングも私的使用なら合法だったから、プラスチックの円盤にもリッピング元として意味があった。でも、この10月から、著作権法の改悪でその手のリッピングが違法となったので、リッピングしちゃいけないプラスチックの円盤をもらっても、狭い部屋が保管場所として一層狭くなるだけになってしまった。

まあ、こんな話をしても、普段からDVD等を大量に買っていない、年に数えるほどしか有体物でコンテンツを買わない人には意味が理解できないかもしれないので、ちょっと説明したい。

自分は、一番DVDを買っていた頃は、年100枚以上買っていたヘビーユーザーで、全部で何枚保有するのかは、途中で数えるのをやめた過去がある。ま、エクセルで一覧作って管理はしているのだけど、全部はカウントしきれていない。(一覧作って管理する前は、忘れて同じ作品のDVDをダブって買ってしまったりしていた(自爆))
そして、当然の結果として、実家の自室は、それらDVDのパッケージが山積されている。東日本大震災の時は、それが倒壊して大変だった(苦笑)

さて。

今回のリッピング違法化が正しいと思っている人の中で、自分で購入した大量のコンテンツのパッケージの山から、ある作品を見たいと思って捜索を開始し、何時間も探し続けるという徒労を経験したことがある人は、一体どれほどいるだろうか?

お金がジャブジャブあれば、メディア保管庫でも作ってレンタルビデオ店のように整然と並べておけるだろうが、そうはいかない。うちは、大量のマンガはかなり整然と並べているが、DVDはBOXなど箱の形が様々なので、雑然と積み重ねてしまっており、後になって、奥に入ってしまった作品を引っ張り出すのは容易でない。30分の作品だろうと、2時間の作品だろうと、尺に関係なく場所を取るし、久しぶりに見たいと思った作品を探す苦労は、並大抵ではない。

箱からディスクのみ取り出して、別途ファイリングもしたりしているけれど、一冊に100枚くらい入るいくつものフォルダから、目的の1枚を探すのは、やっぱり大変なのだ。結局、観たい作品をいつでも骨を折らずに観られるようにするには、買った作品を片っ端からリッピングして、大容量なHDDに私的使用目的で整理して複製しておくというのが、9月までの至って合理的な問題解決方法だった。決して、複製したデータをネットに送信可能化しようとか、他人に渡そうなどというつもりは一切なく、純粋に私的使用のために、リッピング行為は合理的に必要だった。

別にプラスチックの円盤や無駄に豪華なパッケージを集めたいのではなく、純粋に観たい作品を観る方法としてDVDを買ってきただけなので、DVDなしに自由に鑑賞できるなら、そもそもDVDなんて欲しくない。(そういう意味では、収集マニアではないので、観賞用と保管用を別に買うなんてマニアの気持ちは理解できないが、レンタルしてリッピングするほど子供でもない。正直、25年くらい前は、著作権の存在すら知らず、悪意なしにレンタルビデオをダビングしていたが(遠い目)、大人になってから可能な限りDVD等で買い直した。)

だから、リッピングできず、観たい時に観るのが困難になるなら、もうこれ以上、邪魔になる円盤など増やしたくない。以前は軽い気持ちでDVDを購入していたが、今後は、どうしても買わなければならない特段の事情でもなければ、原則として買わないと決めた。しかし、ネットのオンデマンドサービスに満足しているわけでもないので、困ったなぁとは思っていた。(なんか、観たいのに買わないって本末転倒気味だけど、観たい時に自由に観られない前提なら、もう諦めるのを基本にしようと。つまり、ヘビーユーザーを意識的に引退することにしたわけだ。やっと普通の人に?)

そういうところだったので、クラウドファンディングで湯浅監督の作品を支援できるというだけでなく、ダウンロードで本編がデータでもらえるということが、とても素晴らしいと感じたわけだ。

しかも、Kick-Heartのクラウドファンディングのページには、以下のような説明もあった。

Our digital downloads will be DRM free and our Blu-ray and DVD's will be region free.

分かってらっしゃる!

ダウンロードしたら、タブレット端末にコピーして、寝転がりながら鑑賞させてもらうかもしれない。

ということで、Kick-Heartのクラウドファンディングは、デジタル著作権管理をしないファイルを配布してしまうという点でも、是非とも成功して欲しいと思ったわけだ。

■デジャブ
クラウドファンディングにお金を出すということは、それまで一般消費者にしかなれなかった人が、スポンサーになれるということだ。なんか、OVAの創世記に似たような話が...と思ったら、以下のインタビューを聞きなおして納得。

石川氏が25年前を振り返り、今はマーケットを意識するとエッジの効いた作品が作れないという話をしている。マスには受けないけど、たまには作りたい作品を作ることも必要で、そのためにクラウドファンディングは有用だと考えたわけだ。

1980年代、似たような理由でできた市場が、OVAだった。
その辺については、以前触れたので、興味のある人は以下をどうぞ。
http://maruko.to/2010/11/post-96.html

マス向けの作品と、エッジの効いた作りたい作品の、両方が必要という話も、とてもよく分かる。すると、DRM freeな本編データがダウンロードできるという方法も、マス向けには適用する気はないのかもしれない。けれど、リッピングが違法化されてしまった現在、マス向けでも何かしらのユーザー目線での対応は、検討して欲しいなぁ...

■蛇足
丁度、リッピング違法化について、マイナビがアンケートをやって公開した。
「DVDリッピングの違法化でDVDの売上は変わる? 「伸びると思う」は4.6%」
http://news.mynavi.jp/articles/2012/10/13/dvd/

そりゃそうだ、という結果。
このアンケート、自分も答えた記憶があるなと思ってたら、掲載されてる「年間100枚以上DVDを購入していたが、リッピングの違法化はまるで犯罪者扱いされているようで、怒りを感じる」という反対意見が、正に自分が答えたものだった(笑)

まあ、「法の支配」を尊重する我が国なので、きっと「法治主義」ではないので、悪法には従う必要がないという人もいるだろうけど...(ry

ちょっと気になる話題だったので、更新。

「政府、ハリウッドにアニメ・玩具セールス 国策会社設立」asahi.com:2011年11月3日3時7分
http://www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
-->
日本のアニメや玩具などのコンテンツをハリウッドで映画化するプロジェクトが、今月スタートする。政府が9割を出資するファンド「産業革新機構」が60億円を出資して10月に設立した新会社が日本に利益をもたらすため、ハリウッドに素材を売り込む。
<--

朝日新聞デジタルに加入してないので、記事の続きは見てないけれど、この国策会社とは
http://maruko.to/2010/04/post-83.html
この時に「コンテンツ海外展開ファンド」と言われていたやつだろう。

「株式会社 All Nippon Entertainment Works」の設立については、アニメ!アニメ!ビズでも、3ヶ月前に書かれていた。
http://www.animeanime.biz/all/118161/

産業革新機構のホームページを見てみよう。
http://www.incj.co.jp/investment/deal_022.html
以下のPDFの4ページ目参照
http://www.incj.co.jp/PDF/1313377374.01.pdf
-->
【案件の意義(投資インパクト)】
●本邦コンテンツをグローバルに展開、結果としてグローバル市場からの収益を最大化した上で国内に還元し、グローバル市場で大きな収益を上げる革新的事例を創出し、文化産業からの次世代の国富獲得に貢献する
●国内コンテンツ業界の人材を育成し、グローバル市場における事業化ノウハウを蓄積。また、関連する各種ビジネスを日本勢が獲得することにより、国内産業のグローバル水準でのオペレーション能力を育成、日本の人材及びコンテンツ業界がグローバルビジネスの一角を占めることをめざし、全体のエコシステムを進化させる
<--

これ自体は、特に悪い事業とは思わない。
何故なら、昨年「クール・ジャパンのマヌケ」で書いた「コンテンツ海外展開ファンド」への苦言に、一部応えてくれたような内容だったからだ。

前提として、日本のコンテンツ業界が、グローバル展開に力不足であることを認めている点は重要だ。リメイクを通じた人材育成で、ハリウッドの流儀を身に付けるというのは、つまりは産業育成だ。これが成功した先に、初めて、オリジナル作品の自力でのグローバル展開なんて可能性が開けるのではないか。

記事が浅いから、誤解するだろうが、短絡的に否定しても何も始まらない。
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1320260613/
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/culture/update/1103/TKY201111020748.html
http://ceron.jp/url/www.asahi.com/showbiz/manga/TKY201111020748.html

そら、政権批判とか、誰でも簡単にできる上に共感も得やすいから、楽だろうけどさ。

実は、産業革新機構使ってコンテンツ海外展開ファンド創設するって酷い話は、麻生政権時代にできている。(「クール・ジャパンのマヌケ」書いた時、忘れてたけどね(自爆))
http://maruko.to/2009/05/post-31.html
前提として、俺たちクールだから、販路拡大のファンド作って海外の制作会社に出資すりゃ売れるとか大きな勘違いをしていたので、この頃のスキームだったら、日本のコンテンツ産業は空洞化して終わり。

それが、リメイクの過程でハリウッドのノウハウを学ぼうという姿勢になったのだから、同じ産業革新機構経由でも、単なる資金提供目的のファンドとは全然違う。人材育成を明確に目的にしただけでも、大きな進歩。一見残念なのは、制作する現場への支援が見えない点だけど、この辺に関しては別の事業がいくつか存在するので、分けて考えているのかもしれない。まあ、分けられると、制作現場としてはガッカリなんだけど。

それから、朝日の記事でもう一つ誤解されている部分がある。
-->
まず、映画化を目指す日本の素材の権利を取得したうえで、米国のプロデューサーらと脚本作りや監督、俳優の選定などを進める。当初3年で権利10件、30億円の投資を見込んでいる。
<--

素材の権利を、何故All Nippon Entertainment Worksが取得するのか。
(この部分も、自民党時代と同じ。)

答えは、日本のコンテンツ特有の欠点の一つが、製作委員会方式で権利者がウジャウジャいることだからだろう。こんな面倒なことは、ハリウッドではやっていない。それが、この会社を通せば一社で権利処理できることで、あらゆる展開がスムーズに進められるようになるわけだ。この辺は、エンタメ系の弁護士あたりが思いつきそうな話だ。

今までは、リメイクしたくても、交渉せにゃならん会社が沢山あって、誰の許諾を得れば良いのか分からない場合などもあった。法律にはないが、窓口権というのを製作委員会のメンバー各社が持っていて、誰もがリメイクに協力的とは限らない。その一部が倒産したり、担当者が退職して引継ぎされてなかったりすると最悪で、後からどんな問題が生じるのか恐くて手が出せないとか。まあ、とにかく、ハードルが高いわけだ。リメイクの話なのだから、ある程度古い作品が対象だろうが、もっと古い作品だと、そもそも著作権の帰属レベルで、国内でも裁判だらけだったりするしね(苦笑)

それに、All Nippon Entertainment Worksが「権利を取得」すると言っても、条件付きの使用許諾の類ではないだろうか。オリジナルの権利者が、自らに不利な条件を簡単に飲むはずないので、単純に権利を失うような契約を前提にしているとは考え難い。ということで、そんなに目くじらたてる問題ではないだろう。


ところで、それにしても出資の仕方が迂遠ではないかと思うかもしれない。
実は、経産省のクール・ジャパン戦略推進事業には、北米向けにコンテンツ系のものが存在しない。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/overseas_projects.htm
流石に、俺たちクールとか言いながら、ノウハウ教えてくださいとは言えない。
でも、経産省がやるとしたら、確実にクール・ジャパン戦略推進事業の枠組みになってしまう。

クール・ジャパンと距離を置いて推進すべきという意味で、こういうアプローチをすること自体は、ありでしょ。望ましいとも言える。だから、あんまり国策会社とか強調しない方が良い。それこそ、こっそりやるべき事柄だ。

そんなわけで、All Nippon Entertainment Worksを頭から否定はしないのだけど、できればお願いしたいことがある。

そのリメイク作品のVFX、日本のCG制作会社とか絡ませて欲しい。
どのみち、将来日本に制作の仕事が回ってこないような話なら、意味ないしね。
間違っても、違法でも安価だからと、アジアのどっかの国にばかり仕事ふるようなスタイルは、学ばなくて良いから。
国産比率と法令遵守を条件に...とまではいかずとも、ハリウッドのVFX仕事の下請けでも、参加できるようにしてもらえませんかね?(^^;

まあ、All Nippon Entertainment Worksが天下りの隠れ蓑だったりしたら、最悪だけどね(苦笑)
目的は良くても、手段が杜撰でろくな結果が出なけりゃ、ちゃんと批判しよう。
怪しけりゃ、河野太郎とかが叩いてくれることに期待しつつ(笑)

■クールXXX
テレビ等の韓流過多を嫌うのは、自分も同じ。
だけど、嫌いなら見なけりゃ良いだけと思っていた。ネットと同じ。
なんせ、嫌いな番組なんて、韓流以外にも沢山あって、やらせだってなんだって沢山ある。
しかも、やらせだからと悪いわけじゃないしね。
川口浩探検隊とか、昔は大好きだった。子供心を、何度裏切られたことか(自爆)

なので、最近のフジテレビへのデモとか、みんな、どんだけTV大好きっ子なんだよ?と驚きつつニュースに接した。


遡れば、クール・ブリタニアなわけだ。
ブレア政権当時、来日してクラブシーンを盛り上げていた英国のDJなんか、実は英国の国家ブランド戦略の一環だったりした。
そんな国家戦略とは知らずに、若者は英国に慣れ親しんだ。
そしてもちろん、興味のない人は、保守による反対運動だの嫌英とか言わなかった。

もっと遡れば、ハリウッドへの憧れ、アメリカへの憧れは、反米と直結しなかった。
日本のTVじゃ、韓流に負けないくらい、アメリカのドラマも流されてきたと思うのだけど、アメリカの陰謀とか工作とは言わない。
ハリウッドの俳優をどんなにヨイショしたって、それも当たり前と、既に刷り込まれてる。
「全米が泣いた」と宣伝され、何度騙されても、それを「デマだ」とは騒がない(笑)
宣伝に見えないような番組で、ハリウッド映画を絶賛されたって、違和感を感じない。

だって、それがテレビだからね。
そんなの、みんな知ってることだ。

何故、欧米は許されて、韓国のソレは許せないのか。単にやり過ぎという問題ではない気がする。自分も、上に韓流過多を嫌うと書いた通り、受け入れられないという感情がどこかにあるので、自分自身にどう説明できるか考えてみたりしたのだけど、そういうことを考えるのはちょっと面白い。

ステルスマーケティングが酷いとか言う話もあるけれど、それなら消費者庁の出番かもしれない。しかし、どっかの消費者団体が問題視してるという話も聞かない。
まあ、民放からステルスマーケティングを完全排除できるなんて到底思えないけれど、それは「韓流に限らない問題」として、十分に議論すべき課題だと思う。

個人的には、フジテレビはノイタミナ流してくれてるだけで、十分ですけど(自爆)


しかし、忘れてはならないのは、我が国は、クール・ジャパンを国家戦略にしてることだ。そして、韓流のアレも、「COOL KOREA」な国家戦略なわけ。
http://www.apalog.com/kurita/archive/937
日本の場合、ステルスし忘れて自分からクールですからと言っちゃって支持されると思ってるのが、むしろマヌケだろというのは、過去にも書いてきた。同じく英国を手本にした国家戦略を遂行する国同士として、むしろ韓国の手法は、参考にすべきと思っていたくらいの話だ。


■コンテンツ規制
ところが、韓国では日本の番組が規制されてきたし、中国だって国産アニメ振興で外国番組比率を決めており、かつてのように日本のアニメが中国で大量に放映されていた時代は終わった。中国が日本の影響を排除しようと、国産番組比率を定めた時は、少なくとも自分は彼らを非難した側だった。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060830/108901/
http://www.toho-shoten.co.jp/beijing/bj200608.html

そして日本は現在、韓国や中国に対し、コンテンツ規制の緩和・撤廃を要請している立場。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/2011/dai2/gijisidai.html
【資料3】参照
ここで韓流を安易に排斥してしまったら、我が国がクール・ジャパンを海外に押し売りする戦略自体の正当性が失われてしまう(苦笑)

台湾が、国産番組比率を20%から40%に引き上げることになって、それを韓流排除だと喜んでる日本人に至っては、正気を疑う。
http://hamusoku.com/archives/5459259.html
今は日本の番組が少ないから被害が少ない?
永遠に負けてる前提かよ(^^;

パイが縮小すれば、韓流番組が減るのと同様、将来日本の番組が放送される可能性も確実に減る。コンテンツや文化の海外輸出拡大を国策としている以上、我が国にとって、大きいパイのままの方が良いに決まっている。これに逆行する動きに賛同するとは、それこそどこの国の回し者だ(苦笑)

韓流過多なテレビ局やそのスポンサーを、反日、非国民のように非難している人々は、クール・ジャパンをどう見ているのだろう。今、シェアで押されているからと、相手を排斥できるようなルール変更を喜んでいては、将来逆転を狙う手段が奪われる。

韓流排除のために、日本も他国のように外国番組規制をすべきなんて聞くと、何でそっち方面だけ中国や韓国の真似をしたがるのか、本当に不思議に感じる。


かつてフランスは、日本のアニメを「文化侵略を行う敵」と定義した。
http://www.hh.iij4u.or.jp/~iwakami/anime1.htm
韓流に反発してデモする人々は、この頃に日本が言われていたことを知っているのだろうか。

フィリピンでボルテスVが放送禁止された経緯も、忘れてはいけない。
http://www.nx.sakura.ne.jp/~haituu/nhktv.htm

日本のアニメは、国内で利益回収した後、安価に輸出され、粗悪なコンテンツとされていた。ディズニーのフルアニメが本物で、日本のリミテッドアニメは偽物と。安価だからと、粗悪なコンテンツによって文化侵略を許すな、と言われてきたわけだ。

しかしこれが、クール・ジャパンの源流にあることは、誰も否定できない。
今のフランスのアニヲタを見るに、少しは侵略成功という気もしないではない(笑)
日本のコンテンツも、もっと海外で排斥されるべきだったのかね?

(ちなみに、日本のアニメは残虐で、教育上相応しくないと海外で言われだした頃、子供に相応しいと言われたディズニーのアニメも、日本で作ってたりしたんだけどね(爆)
目に見える部分を排除しても、ハッピーにならんのよね。まあ、日本で外国のコンテンツを制限するような法律を作ろうとしたら、アメリカ様が黙っておるまいが。)


今回の騒動をよく理解できないのは、例えばこういう声。
http://www.j-cast.com/2011/08/07103785.html?p=all
>行列に加わっていた女性は、フジの韓流偏重に「不快感」を感じていたと話し、
>「SNSを通じて巻き起こった、エジプトの革命のようなことが日本でも起これば面白いなって」

エジプト人に謝れ(苦笑)

まあ、色んな意見の参加者がいるとは思うけど、一見右翼的主張を左翼的行動原理で実現しようとする、自称保守な、その実は排外主義者にも見えるのだけど、なんとなくファシストと呼ぶのが適当かもしれない。

彼らをネトウヨと呼ぶ人もいるみたいだけど、右翼というよりファシストな気がする。
しかも、革命が起これば面白いって、外山恒一か(笑)

まあ、大した根拠はないけど、外山恒一は嫌いじゃないけどね。
デルクイは面白かったw)


面白いのは、職を奪われるとか生命を脅かされるとか、生存に直結する訴えではなく、テレビが自分の好みでないという、世界にも稀な恵まれた欲求でデモをしている点にある。

自分は、右翼も左翼も、それぞれ一定の正しさを認める部分があると思っているし、ファシストにも一定の理解が可能とは思っているが、どうも今回のはダメだ。

そりゃ、昼間TVつけたら、テレ東以外の民放が全部、韓流かショップチャンネルしか流してなかったりすると、心底ゲンナリする。フジテレビだけじゃないだろう。

でも、TV消すだけで十分なんだよな。(悪態くらいつくけどねw)

ネットで、ファビョッてるサイト見るのと、感想は同じ。公共性云々言う人は、まだテレビを過大評価してるのだろうけど、もうテレビなんてどうでも良いじゃん。
NHKとテレ東とMXテレビがあれば(ry


もちろん、彼らのような(相対的な意味での)第三者ではなく、実際に自らの仕事が侵されていると感じた当事者たる俳優などが抗議するのは、ある程度理解できる。しかしそれも、文句があるならハリウッドみたいに、自分らの職を守るための協定を結ぶように、労働組合運動すべきでしょ。

古今東西資本主義国家では、資本家に対抗するための手段なんて、限られてるわけ。ハリウッドなら全米映画俳優協会。だけど、今の日本人て、そういうのサヨクっぽくてかっこ悪いとか、偏見で自己防衛手段を放棄してないかい?
日本俳優協会なんかは、この一連の問題に対して、何かアクションしてるとは聞かない。


かつて我々がエコノミックアニマルと呼ばれ、経済摩擦の厳しかった頃、アメリカなどで日本製品のボイコットや破壊が行われ、その過激な映像がTVを賑わせていた。過激に日本製品の排斥運動をする外国人の映像をニュースで見る都度、子供心に「そんなにうちらの製品が優秀なのが羨ましいか」と内心ニヤニヤ、「あいつら馬鹿だなぁ」と思っていた。もちろん、日本製品が叩かれたのは、決してステルスマーケティングだからじゃなかったけどね。

ま、アメリカ人が日本車を破壊して、自国メーカーの車に乗ろうと気勢を上げていた頃、そのパーツの多くは日本製だったというオチはともかく、日本人なら、絶対にあんな馬鹿げた方法で抗議しないと思っていた。が、今起こっていることは、なんかそれを思い起こさせる。違いは、対象が無体物ってこと。破壊が難しい(^^;

通常、海外製品が安価に日本に売られることで、日本の事業者が損害を被るなら、ダンピングとしてWTO提訴するとか、公正取引委員会の出番ではないか。

しかし、不勉強で分からんけど、コンテンツに対してダンピングて概念あるのかね?
同等製品が存在しない前提というか、同じものなら著作権侵害の問題かな。
だけど、同等の市場を争う同種のコンテンツは、確実に存在するわけ。
しかも、著作物って、無限にコピーできる概念だから、安価に複製することは非難対象じゃないんだよね。

そういう意味で考えると、構造的には、ネットで違法に映画を無料配信されちゃって著作権者自らが怒るのと、安価な韓流ドラマに押されて市場を荒らされたと感じて俳優とかが怒るのと、ちょっと似てるかもしれない。

非常に難しいとは思うけど、仮にダンピングと定義できたとしても、やはり国内の同業者が声を上げなければ意味がない。国内の番組製作会社とか周辺は、韓流ドラマをどう考えているのか。市場を荒らされていると感じているのかね。

まあ、TPPに反対する農家みたいになったら、そもそもその業界はヤバイと思うけどね。
コンテンツ分野は、元来輸入過多だけど、だからこそ、輸出を伸ばすべき成長分野と目されているわけで、保護対象になんてされたら、もう自称クールなんて恥ずかしくて二度と言えないと思うのだが。

だからこそ、自国ではコンテンツ保護してるような韓流も、クールには見えない。
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022401000298.html
韓国での日本大衆文化の流入制限とか、いい加減にしてくれ。

早く完全に同じ土俵に立たせろやゴラァ!(笑)
話はそれからだ。

http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20101204ddlk13010267000c.html
>石原慎太郎知事は「子供だけじゃなくて、テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になり過ぎている。使命感を持ってやります」と応じた。


上記だけでもスゴイ発言だと思ったのだけど、同じ日の別の会見の発言も興味深い。

http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/kako22.htm
12月3日の会見の7分あたりで、条例改正案について記者から質問されて答えてる内容なんだけど...
「こういった出版物がほとんどフリーリーに展示されてる国って先進国でありますかね。例えばね、ヨーロッパに限らず、イスラム教の宗教圏、ユダヤ教もそうでしょ。一神教の普遍してる国家社会ってのはね、日本で考えてるよりこういった問題に対する戒律や規律が厳しいんですよ。北欧なんかいくと、大人を対象にした性関係、セックスの関係の出版物・映像は驚くほど開放的だけども、不思議なことに我々が対象にしている子供を対象にした、未成年を対象にしたね、ある意味じゃ変態的なね、性欲ってものを表示ってものは、これはありえないこととされてますね。これもやっぱり私たちね、考えたり、何も私たち西洋の真似するわけじゃないけど、したいと思わないけど、日本てのは宗教があってないようなものだからね、一種の汎神論の国ですから、こういった問題に対する宗教家の姿勢ってのがさっぱり見えてこない。


と、いうことで、支離滅裂な都知事の言いたいことをまとめると...

日本は汎神論で、一神教の国のように宗教によって社会が規律されてないから、変態的だ。姿勢が見えない宗教家に代わって、東京都が条例改正で都民を正しい宗教観に導いてやるぜ。

ということだろうか?


大きなお世話だ!

それなら、唯一神又吉イエスに都知事になってもらった方が遥かにマシだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090725/plc0907251801007-n1.htm
唯一神は、意外と良いお爺さんなんだよw


それにしても、一神教の国が戒律や規律が守られていてベストと思ってるとは、一体全体、都知事はどうしちまったんだ。そろそろ、老害じゃすまないぞ。

まさか、一神教の戒律の厳しい国は、日本より児童の性的虐待が少ないとか、誤解してる?
それとも、描写を規制するためなら、リアルな被害者が多いことには目をつむる覚悟?

同性愛者だって、イスラームの戒律の厳しい国じゃ死刑だったりするから、日本に助けを求めて難民申請してくるのだけど、都知事は死刑をお望みか?


大体にして、今度の改正案は、上記会見で言ってるような、子供をの描写を規制対象にする内容になってない。大人の描写も規制対象だ。都知事は、都の改正案も理解してないということだ。

不思議なことが多すぎる。


さて、日弁連も反対声明出した。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/101203_2.html
そそ、フィルタリングサービスの件も、保護者への義務の負担が酷い内容なんだよ。


こういう地方紙が、都の条例改正に苦言を呈するのは、珍しい気がする。
http://kumanichi.com/syatei/201012/20101202001.shtml
「漫画やアニメの監視に目を光らせるくらいなら、その視線を現実の子どもたちに注ぐ方が、どう考えても合理的だ。地域の人たちが取り組む地道な活動こそ、子どもたちを守り育む要であることを再確認しておきたい。」

まったくもって正論なご指摘。

■近親相姦

>22日に発表された改正案では、規制する対象を「強姦や近親相姦(そうかん)など、刑法と民法に違反する性行為を不当に賛美して描写する漫画やアニメなど」と定義し、18歳未満への販売を規制するとしている。

え?
近親相姦は、刑法でも民法でも禁じられてないっしょ。
本当にそんな誤った定義を掲げてるなら、大問題だと思うが。
(日テレさん、ソースはどこ?)

近親婚はできないけど(民法734~736条)、合意の上の近親相姦はもちろん、子供生んだって違法じゃないぞ。近親婚の禁止だって三親等内の話であって、いとこ同士なら結婚もできる。

そういう根本的な勘違いで、単なる社会倫理規範を条例(法規範)に織り込んじゃってるなら、唖然とする。こういう思い込みが、差別につながったりする。


そてにしても、今度と前回の改正案の条文の一部を比較すると、「非実在青少年」という言葉は消えたけど、規制範囲が拡大しているってのが更に驚きだ。

都条例改正案比較が、こちらにアップされている。
http://tsukurukari.blog3.fc2.com/blog-entry-34.html

「図書類等の販売及び興行の自主規制」についての7条と、「表示図書類の販売等の制限について」についての9条の2は、以前はそれぞれ「非実在青少年」についての性描写を制限していた。

ところが今回は、「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」という表現になった。

最早、描写の対象が(非実在)青少年に限定されず、(非実在)成人でも規制対象になったことになる。

まあ、非実在青少年なんて被害者を妄想ででっち上げず、単純に性描写を規制するという意味では、少しはマシになったと言えなくもない。しかし、それならそもそも、条例改正の必要はなく、現行条例で対応できるという批判がより正しくなる。

現行条例の7条1項で、「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがある」内容なら、既に規制されているのだ。

今度の改正案がどうしても必要だとするなら、今までと違う意味を意識的に解釈する必要があるだろう。特に、刑罰法規に抵触する行為と別個に、「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」について、なぜ特に描写を規制する必要があるのか、ピンとこない。

具体的に近親相姦をわざわざ明記したということは、単に過激な性表現や、性犯罪の描写から青少年を保護する意図ではない。少数とはいえ、社会的に一定の割合で起こり得る愛の形で、多数者からはタブー視されていても、決して違法でない特定の性行為を、社会規範に反するという理由で描写すら排斥しようとしている。それ、差別の一種では?

性的虐待などなら、刑罰法規に抵触する性交類似行為の方に入るわけで、改正案の近親相姦には含まれない。合意の上の近親相姦など違法でないのに、それの描写を規制対象として明記するには、それが社会的な差別の根拠とされないような、説得力のある理由が必要だろう。

世の中、法律婚ができずとも、近親者で事実婚状態の夫婦なんて珍しくないのだ。近所じゃ夫婦と思われてるけど、実は兄妹とかね。同性愛のカップルが、婚姻の代わりに養子縁組するって話もあるが、異性でも、先に性的関係があってから親子になる、妾を養子にするパターンもある。性的関係があっても親子になれるってのが、我が国の判例の一般的な立場だ。

ところが、冒頭の記事によると東京都は、近親相姦を違法行為だと勘違いしていることになる...誤報?メディアは気付いてない?


■社会規範
前回の改正案では、社会規範に関する記述があり、今回の改正案でもその部分は残っている。

「不健全な図書類等の指定」についての8条で、「知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。」として掲げる2号で、「第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交または性交類似行為」という表現がある。

7条9条の2の書き方であれば、強姦は「刑罰法規に触れる性交」のはずで、「著しく社会規範に反する性交」と言い換えるのは、整合性がない。

すると、「強姦等」の「等」が言うところの「著しく社会規範に反する性交または性交類似行為」には、刑罰法規に抵触しない、合意の上の「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」が含まれる、と考えて良いだろう。

立法者の考えるところの、著しく社会規範に反する性交行為に、適法行為が含まれるというのは、かなり危ない発想だろう。立法者の偏見が滲み出ている。

もしかすると、多様性を認めない立法者のような発想の人からすると、同性の近親相姦は最悪に社会規範に反すると考えているかもしれない。

確かに、近親相姦が一般的にタブーだと言うのは同意する。しかし、そもそも違法ではなく、加えて同性なら、遺伝学的に問題視される出産の可能性がないのだから、実は異性の場合より客観的な問題が少ない。これをタブー視する場合、残るは、単に主観的な偏見しかないということを、強調しておこう。

他国と比べて近親相姦に寛容なのが、我が国の法律の特徴とも言えるのだけど、日本は昔から性に寛容な国である、ということを忘れて、社会規範を振り回してはいけない。


ということで、同性愛者の場合を含め、どうして違法でない行為の描写を規制することが正当化できるのか、かなり非常識な論理の飛躍があると感じる。議論をすっ飛ばして簡単に受け入れられる話ではない。

自分はそっち系ではないから、そういう人々の意見を代弁することはできないが、この改正案が成立した場合に、社会的な差別が助長されないことを祈る。

ま、近親相姦が違法行為だと誤解するほど、行政がバカなはずがない。むしろ、規制派の人々の様々な発言からすれば、違法でない行為を違法行為だとの誤解を広める意図の、確信犯という解釈が適切なのだろう。


ニセ科学としての規制推進
ところで、規制派の言い分は、まるで「ニセ科学」(エセ科学、擬似科学)みたいだと思っている。規制派急先鋒の東京都小学校PTA協議会(以下、都小P)会長の新谷氏は最近、失言の多いインタビュー記事を削除させたことで話題だが、「幼い頃から二次元児童ポルノ漫画に触れることで、子どもの発達は歪んでしまいます。」と言っている。しかし、条例による規制の必要性を裏付けるデータがあるのかと問われれば、「ない」そうだ。

『データはあるのか』と言われること自体ありえない」そうで、それくらい自明と思い込んでいるらしい。規制反対派の人々は、単に表現の自由を訴えているだけでなく、色々と客観的なデータを示して、論理的に反対しているのに、規制派はそれを否定することもなく、聞く耳を持たない。

wiki:擬似科学とは、科学的方法に基づく、あるいは科学的に正しいと認められている知見であると主張されているが、実際にはそうではない方法論、信条や研究を指す


ま、規制推進派が皆、近親相姦が違法だと思ってるくらいの世間知らずなら、ニセ科学レベルにも達してないかもしれないけど、「幼い頃から二次元児童ポルノ漫画に触れることで、子どもの発達は歪んでしまいます。」という根拠のない知見を前提に、イデオロギーを法規範にして、嫌いな表現を消し去ろうというのはルイセンコ事件みたいなものだ。
(追記:このような、児童のキャラに限定して敵視する合理的理由がないから、今回の改正案では、成人キャラも対象になったのだろうというというのが、「少しはマシになった」と上に書いたポイント。しかし、規制派が言うほど出版界の自主規制は杜撰ではないというのが、出版界の言い分。規制派が、出版界の自主規制の仕組みを理解していないために生じている議論の食い違いは、何故かたった2回で終わってしまっている青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会の議事録を読めばよく分かる。)

ルイセンコは、スターリンに取り入って、メンデル遺伝学などの研究者を排斥したそうだが、都知事がスターリンの立場か...似合い過ぎ(苦笑)


■蛇足
都条例とは直接は関係ないが、児童ポルノ問題で規制強化の運動に参加している、元高知県知事の橋本大二郎氏は、とてもまともだ。

橋本氏は、規制推進派がおかしいと感じたから、規制運動に参加した(中を参照)というのが面白い。

上:『母の代から続く、日本ユニセフ協会との縁』
http://www.cyzo.com/2010/11/post_5863.html
中:『「単純所持」議論を任せてはいけない人たちがいる』
http://www.cyzo.com/2010/11/post_5870.html
下:『里中満智子さんとアグネス・チャンさんが対談すればいい』
http://www.cyzo.com/2010/11/post_5871.html

橋本氏は、ある報告会での都小P会長の新谷氏の発言等を聞いて、「とてもついてはいけないと思った。一言でいえば、価値観の多様性がまったくない。それで、子どもを守る金科玉条を言っている。でも、被害救済については何もやっていないのではないでしょうか。」と感じたと言うのだから、問題の本質を理解されている。

「(財)インターネット協会も、話していることはおかしくはないけど、要は警察庁の守備範囲を広げたいと思ってやっている。それは、子どもの人権を守る問題とは相当違います」

その通りです。

えっと、うちのスターリン都知事と交代してもらえませんか?(^^;


・その他、ニセ科学と社会規範や、ルイセンコ事件について
http://www.cml-office.org/archive/?logid=366
http://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili/keitou/gokai02.html


■追記:青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会
この議事録は、発言者個人が特定できないようにされているが、発言内容を見れば、こういう発言をするのが誰だか分かってしまう部分がある。

第1回の34ページの保護者の発言で、近親相姦を描いたらしい漫画について「こういったものを描いた本人、あるいはこういうものを出版した会社が社会的に軽蔑されて、切り捨てられていく、そういった社会になっていくのが理想だろうと思います。」というのがあり、漫画家関係者からの「子どもに見せない努力ということですよね。こういう作品が存在してはいけないというような観点のお話ですか。」という問いに、「あってほしくない」と答えている。青少年の健全な育成が目的ではなく、個人的に嫌いな表現を排斥したいと言ってる保護者といえば、あの人だろう。保護者として都小Pが出席していることは、36ページで分かる。

第2回の15ページの下の方には、本屋でアルバイトしてる大学生から聞いたという話が出てくる。これは、例の失言の多いインタビューの1ページ目にも出てくる。ということで、この保護者は都小P会長の新谷氏だ。他、30ページの下の方で、「今日お見えのPTAの方は都小Pの方と○○県の方で」という出版関係者の発言から、他県のPTAも保護者として参加していることが分かるが、この二人の発言を見分けることは、容易だろう。

なお、33ページからの、出版関係者が自主規制について説明している部分は大変興味深い。38ページで、都が、出版界の自主規制について、「その基準というのが、対外的にしっかり外には出ていないと思うんです。」という辺りから以下、出版界が公開している自主規制の基準を、都が把握すらしていないことが分かる。これ、前回の改正案の後の、8月の会合なんだが...

■廉価版DVD
今更という話ではあるけど、アニメのDVDの価格設定が面白い。旧作の廉価版DVDが大量に出始めて、コアなヲタクでなくても衝動買いできるようになってきている。

去年からのバンダイビジュアルのEMOTION the Bestというシリーズの登場がきっかけの一つのようだけど、ジェネオンのRONDO ROBE SELECTIONも、11月末までの期間限定の廉価版という形で販売していて、廉価版がちょっとしたブームになっている。こういう場合の期間限定という言葉の使い方は、購買意欲をくすぐる(笑)

以前、DVDのセル市場の価格設定について触れた、
http://maruko.to/2009/01/post-5.html
上記の第7項にも書いたけど、この市場には、ヘビーユーザー層(年間購入金額3万円以上)と、それ以外のライトユーザーというか、いわゆる一般消費者層が存在し、売上げの大半は少数のヘビーユーザーによって成立している。

ところが廉価版DVDは、売上げに寄与してこなかった一般消費者層を開拓しようとするもので、画質にこだわるヘビーユーザー層は高額でもブルーレイを買うという棲み分けが成立した時代ならではの、ダブルスタンダード戦略だろう。ちょっと、昔を思い出しながら、廉価版の背景を想像してみる。


■昔のOVA
そもそも、OVAが登場した1980年代、ヘビーユーザーというか、まだ規模の小さなヲタク第一世代を対象に市場が形成されたため、価格は高いのが当たり前で、ビデオ作品を買うことへのハードルは、今とは比べ物にならない程高かった。まだ、大きなお友達が今ほど多くなく、大人がアニメを見るのもはばかられる時代に、平気で1万円以上の価格設定がされていたという状況の特殊性は、当時を知らないと理解し難い。最近だって、アニメはブルーレイが高い高いと言われているわけだが、約25年前はもっと高かったのに、ファンはそれが仕方ないと理解していた。日陰者の嗜好品というと語弊があるが、TV化が無理な作品をマイナー市場向けに製作するのだから、高いのが当たり前で、しかも買うというより、良作の作品作りにダイレクトに出資しているような感覚に近かったかもしれない。買い支える感覚だ。

丁度、当時のOVAの値段について、面白いツイートがある。
http://togetter.com/li/18577

皆でお金を出し合って買って観たなんてツイートもあるけれど、個人でいくつも買えるシロモノではなく、買ったら皆で貸し合うことに、著作権侵害だなんて誰も言わない時代だ。

当時、お金のないアニメファンがOVAを見る手段の第一は、アニメ専門誌(アニメージュアニメディア、ジ・アニメ、遅れて登場したニュータイプ、OVAのためのアニメV、他にも、アニメックファンロード月間アウトとか)のイベント告知のページで試写会情報をゲットし、せっせとハガキで応募することだった。(主要都市でしか開催されないので、地方在住のアニメファンは、さぞかし苦労しただろう。)

試写会会場では、普通の映画の試写会と異なり、アニメ本編の試写の前に、主題歌のライブコンサートなんてものも定番だった。というのも、会場ロビーではOVAの予約受付や、サントラのレコード販売が行われており、試写会と言いながらも即売場を兼ねていたからだ。

声優や監督の裏話やコンサートの合間に、必ず物品販売の告知が入り、「本日この会場でビデオの予約をされた方には、サイン入りポスターを差し上げます!」とか、「予約者は、イベント最後に、セル画や関係者のサイン色紙が当たる大抽選会に参加できます!最後に声優さんと握手も!」とか、「本日、まだ予約が少なくて、是非皆さんのご協力が必要です。続編につなげるためにも、是非!」みたいな、泣き落としもあった。

あ、当日既に販売会社の解散が決まっていて、この作品で最後ですから買ってください、なんて試写会も思い出したw

まあとにかく、未成年が大量に含まれる会場で、コンサートやイベントで昂揚させて判断能力を低下させ、その場でグッズ購入やOVAの予約をしなければ損だという印象を植えつけ、高額商品を売りつけ...というと、一歩間違えばマルチ商法の勧誘のようだが、別に悪質なわけではなく、レコードやビデオは、値引き無しの定価販売が当たり前の時代でもあって、特典がもらえるならと、こぞって予約の列ができていた。

それを羨ましく眺めつつ、OVAを買う金がないので、仕方なくサントラのレコードを買っていたのを思い出すが、LPレコードは大きいので、ジャケットの大きな絵をゲットできてちょっとお得に感じていたような気もするし、レコードでも、買えば当日の抽選会に参加できたり、関係者と握手できたり...って、やはり冷静な判断力を失っていたかな(自爆)

で、レンタルビデオを待つのが、第二の手段だ。いつからOVAがレンタルされるようになったのか定かでないが、OVAが置いてあるレンタル屋を見つけるのに、店を転々としたファンも多かろう。で、借りたら当たり前に、VHSのデッキを2台つないでアナログ劣化コピーして、よく分からない満足を得ていた。コピーガードなんて施されていない時代のお話(苦笑)


■価格破壊と市場拡大
今の感覚だと高いと感じるかもしれないが、一話4800円という価格破壊をもたらしたパトレイバーが、自分が初めてシリーズもので買い揃えられた作品だった(後に、演出してた澤井さんと職場が一緒になった時は、実はかなりブッたまげた)。その後、ウィークリービデオ(隔週で二話づつビデオを送ってくる)と称して一話2500円計算で全26話を予約者のみに限定販売した銀河英雄伝説、それらにつられて安く価格設定されたレア・ガルフォースなども、頑張って買ったw

今のアニメからは想像がつかないだろうが、パトレイバーも銀河英雄伝説も、途中のアイキャッチで、TVのようにCMが入っていた。ビデオ販売作品なのに、企業CM入れてコスト削減し、更には、いつかTVで放映できる日に備えていたのだ。

こうして、低価格化(当時として)、一般向けに市場拡大を目指す流れができた結果、予算をかけて自由に創った作品を少数者に売る市場としての、OVA本来の存在意義が、変化を始めた。マンガ連載との相乗効果を狙う、メディアミックス路線の作品が増えたのもこの頃からだろう。

OVA+マンガから始まったパトレイバーが、劇場版、TV放映へとつながっていく様は、サクセスストーリーそのものだったのではないだろうか。シリーズを買い支えたファンは、作品の成功そのものに歓喜したと言っても、言い過ぎではない。


■メジャー化の代償
パトレイバーを中高生で体験したヲタク第二世代は、第二次ベビーブーム世代でもあり、角川のメディアミックス路線や、攻殻機動隊、エヴァも体験しつつ、1990年代後半には大きなお友達へと成長し、高額作品でも買い支えられるようになった。すると、価格を気にせずクオリティにこだわるようになる。

しかし、深夜アニメの登場や、エヴァが社会現象となっていくにつれ、ビジネスとしてのヲタク市場の拡大は、ヲタクそのものが一般化していく過程と重なる。拡大した市場における一般化したヲタクは、最早本来のヲタクではないのと同様に、OVAも本来のOVAではなくなった。そこに残ったのは、単なる商品とその消費者、という関係に見えた。

かつては見る機会すら限られていたような作品が、衛生や地上波で放送されるような時代になったが、それをVHSで録画しても、最早満足しない。丁度、VHS+LDでの販売スタイルから、DVDへのメディアチェンジのタイミングで、劣化しないデジタルメディアで作品を保有したいという欲望が、TV放映そのものを作品の宣伝媒体と捉えるビジネスモデルを支えた。もちろん、旧作のVHSからDVDへの買い直し需要も生じた。

ヲタクの支払い意欲額の限界に挑戦するかの販売手法が登場する一方、低価格化で市場拡大を目指す必要性が薄れたのか、ガイナックス商法など、焼畑農業に躊躇がなくなった(苦笑)

それでも、好んで焼かれるファンとの蜜月が続き、市場が成立していた頃は良かった。しかし、理由は様々あろうが、ついにパイが縮小し始めたことで、ほころびが生じてきた。

第二次ベビーブーム世代の大きなお友達も既婚者が増えたろうし、そもそもデフレだし、昔と異なり携帯などの通信費が毎月生じる現在、どの世代も趣味に使える金が減っているのだろう。最近のヲタクにとって、映像作品の購入は必須でなくなり、ヲタク的なサービスやファッションその他、ライフスタイル全般におけるヲタク的消費の一部という位置付けとなり、マイナー市場を買い支えるという認識が希薄化したのだろうとも思う。かつてのOVAのような、稀少価値のある嗜好品ではなくなったのだから、そりゃ支払い意欲額も低下する。しかしそれは、そういうビジネスモデルを選択した結果でもある。ま、ジャパニメーションだのクールジャパンだの自画自賛したことの帰結とも言える。シビアな財布で選択と集中の結果、選択に漏れる作品が出たとしても、最早パトロンでもない消費者に文句は言えない。

そういう意味で、ネットの違法配信の影響云々言うのは、これが80年代の稀少価値がある時代のOVAなら理解できるが、90年代以降の、TV放送を前提としたビジネスモデルからすれば、売上げに悪影響が出る要因とは言えないはずで、何とも間が抜けた言い訳に聞こえる。初めから、放送の録画で満足して完結しない人々に向けて、その先の展開で利益を出す計算なのだから、ネット配信で満足してしまうような人は相手にしていなかったはずだ。

だから、
http://maruko.to/2010/07/post-90.html
こういう話になる。

メジャー化し、稀少価値が薄れた現在、消費者の支払い意欲額を引き上げるために、再度の囲い込みを狙うというのは、何とも後ろ向き過ぎる。囲っては焼き払い、囲っては焼き払いでは、いつしかペンペン草も生えなくなる。

あれ?
なんだか話が違う方向に進みすぎた(苦笑)

まあ、そんなこんなで、囲い込みではない、耕作面積拡大のための廉価版販売というのは、大いに賛成だ。

■廉価版の恩恵
減少しているとはいえ、依然としてヘビーユーザーは大事だ。ブルーレイに特典付けて高額にしても、ヘビーユーザー需要はまだ存在する。しかし、それ以外の一般消費者に対する働きかけの必要性も増している。単に、ブルーレイよりDVDが少し安い程度では、一般消費者にはそれでも高すぎる。双方に両立する有効な売り方は...

ということで、旧作DVDの廉価版販売という戦略が、流行りだしたのではなかろうか。ヘビーユーザーが高額で買う時、同時発売で極端な廉価版を出すわけにはいかないし、特典で差を付けるにも限界がある。そこで、時は金なり。旧作扱いなら、廉価版を出しても文句はなかろう。しかも、今更ヘビーユーザーは、DVDなんぞ欲しがらないから悔しくない。

ブルーレイへの過渡期だからこそ可能な、ヘビーユーザーの気分を害さない形での廉価版での需要創出というバンダイビジュアルの手法が継続し、各社も同様の戦略に出ている今、これは買う側にとってもチャンスだろう。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1011/11/news025.html
これのせいで今後は、廉価版を物理的なメディアで売るという販売手法自体が消える可能性すらある。そういう意味でも、一応メディアとして保有したい人には、今が本当の最後のチャンスかもしれない。

え?
メディアで保有したいって発想自体が、とっくに少数派?
すみません、元ヘビーユーザーだったもんで、やっぱ形が欲しくて(苦笑)


以下、一応自分向けメモとして、気になるのを貼っておこう。


って、気になりすぎる!!(自爆)


■蛇足
今頃、自分が最後にサポートした仕事が、やっと発売するのを見つけた(笑)

廉価版じゃないのにこの価格なのは、お子様向け作品だからだろう。
まぁ、記念に自分用に買っておくかな。

当たり前の話
先日、以下の記事を読んで、何をアホな話をしているのかと、ある意味驚いた。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1007/26/news010.html

先祖帰りとか、何言ってんの?

「それならば、作品に関連したおもちゃを買ってもらう代わりに映像はタダですよ、で僕はいいと思っています。」って、それ当たり前の話ではないか。

アートアニメじゃあるまいし、マーチャンダイジングとセットでビジネスを考えるのは、商業アニメとして何も珍しい話じゃない。

今までそれが当然と思っていなかったなら、根本的に、権利をクリエイトするという発想が抜けてる、典型例だろ。


で、ネット社会の弊害?
ジブリのやり方に付いていく?
10人程度の会社で?

言ってることが滅茶苦茶。

ネットの力に屈して作画クオリティを上げて失敗したとか、この人が言うとギャグみたいだが、クオリティを諦めてブランド力を上げるとか、何の夢物語だろう?


ヲタク市場
確かに、ヲタク市場のパイの奪い合いには限界がある。

そもそも、DVD のセル市場は、少数のヘビーユーザー(年間購入金額3万円以上)によって買い支えられてきた。5年前の日本映像ソフト協会の調査では、国民(16~69歳対象)の6%のヘビーユーザーの購入金額が、セル市場全体の77.7%を占めていたが、昨年の調査では、ヘビーユーザーが5.1%に減り、金額はセル市場の57.5%に減少した。5年前のセル市場は、3,124億円で、昨年は2,674億円だ。

敢えて言うなら、DVD、ブルーレイのヲタク市場そのものが縮小してるのだ。

だから、ヲタク市場の外へ、ブランド力を上げて打って出ようという考え自体は正しい。内輪受けビジネスには限界があって当然で、そんなことは何年も前から、言われていたことだけどね。

だけど、その手法がまた、「浮動票みたいなところで争うのではなくて、組織票でがっちり固めてしまうという。」のはどうか?

また囲い込みかいな(苦笑)
逆に、浮動票の広大な市場を相手にすべきなんじゃないの?


■「Cat Shit One」
そんなことを思っていたら、市場拡大を具体的に目指している、とある作品に出会った。インターネットをネガティブに捉えず、本編全て(22分)をYouTubeで無料配信(公開期間:2010年7月17日~9月20日)している、「Cat Shit One」だ。
http://www.catshitone.jp/

そして、そのプロデューサーが、大変良いことを話している動画を見つけた。

こういう手法を選択したプロデューサーが、どんな考え方なのか興味があったのだけれど、 元ビルドアップの岡部氏で、いつの間にか円谷プロを辞職して、新会社を作っていたようだ。時期的に考えれば、円谷がパチンコメーカーのフィールズの子会社になる直前だから、それを嫌っての辞職なのかもしれない。まあ、想像の域をでないが。

以下、面白い発言を抜粋してみる。
-->
オンラインで映像を輸出することがテーマにある。
日本の市場が冷え込んでる。お子様が減ってますから。
だから、やっぱりコンテンツは、海外に対して売っていかなきゃいけない。色んなところで唱えてるけど、ほとんどシカトされてるんですけど。

そういうところでインターネットのインフラを使えば、まずは単純に売れる。
じゃあそのお金どうするのというところがあるはある。
僕から言わせれば、海外と、じゃあパートナーシップどっかと契約して、どっかの放送局とやってどうこうやる形よりは、自分たちで海外に向けて発信して売っていく方が、最終的には利益がデカイだろうと。

あとは、ジャパンなんとかクールとかおっしゃってるけど、あれはでも、なんでしょうねぇ。例えば、アメリカのアニメエキスポとかコンベンションで、そういう人が取材にきて、ほらアメリカではこんなに凄い、日本のコンテンツがウケてるんですよと、そこだけ切り取って全米とか見ちゃうのヤバいでしょうと、僕5年住んでたから分かるんですよ。そんなにはウケてないんで。

自分たちで売っていくってところで、インターネットをフル活用して動いていけば、僕はもう活路が出ると。

なんでハリウッド映画が、凄く巨額のお金をかけるかとすれば、それはマーケットが広いからであって、だからマーケットを広げるってところを、僕らも模索していかない限りは、いくらクリエイティブで凝ったモン作るとか、もっと愛情がどうこうとか、そんなもの、全然お金って裏付けがなければ表現できませんから。

それをじゃあ、僕は実はずっと、そういう座布団を用意してくれるプロデューサーが現れると思っていたんです。作っていたから。
だけど、そんな人一生現れない。僕は40過ぎた時に分かったんです。ああ、もうない。そんな人現れないから、じゃもう自分でやろうと。
<--以上、抜粋終わり


なんつーか、成功して欲しいですな。

通常、短編作品を単館上映しても、赤字。でも、劇場公開で認知度上げて、DVDとか売る。今回は、赤字の劇場公開の部分が、YouTubeに置き換わった。

今のところ、国内のアドレスからのアクセスしか、YouTubeは見られない設定だそうな。

今後、DVDとブルーレイに加え、Amazonでフィギュア売って、そういうマーチャンダイジングを全部、製作元で仕切るそうな。(日本て、製作委員会で権利を細分化するから、ダメなんだよね。)

あと、3D版も作ってるとか。


ということで、公開されてる本編。(追記:既に公開は終了しており、見られません。)


感想としては、よくできてると思うけど、原作がベトナムなのに、現代風に中東を舞台にしてしまったのは、どうなんだろう?という気がする。

アメリカを中心とする中東での戦争の不正義が叫ばれてる昨今、砂漠で駱駝を殺しまくるって、世界的にはKYかも(^^;

可愛いウサギがリアルなことをするギャップが、効果的な演出なのは分かる。しかし、普通に見たら、中東に悪意のある作品てことになるだろう。これが、サウスパークみたいな意図が明確な作品ならまだしも、これは多分そうじゃないだろうな。 単に、配慮が足りない感じがする。

(もし、サムライの格好したサルが悪役で、殺されまくるアニメがあったら、日本人としては素直に見られないだろうと思うと、中東の人々に謝りたいくらい下品だ。)

平和な国のミリタリーマニアは、これでOKな感想なのだろうか?

作品としては成功して欲しいけど、中東向けには絶対に配信しないで欲しい。
うちのブログは、中東関係のエントリーも多いので分かると思うが、冗談じゃなくてね。


蛇足
ところで、エンディングに「Contents Cloud Creation Society for Producing "Cool Japan"」というのが出てきて、デジハリやボーンデジタル、HPなんかの企業名が出てくる。(IBMの名前がないのにIBMの園田氏の名前だけ出てくるのは謎。まさか、またHPに出戻りました?)

恐らく、ソフトとハード各社をデジハリで協力させ、クラウドのレンダーファームを試験運用でもしたのだろう。

かつて、ある劇場作品のレンダリングでIBMの世話になったが、あれで苦労した成果が、こういう作品に少しでも生かされてるなら、ちょっと嬉しい。

しかし、ジャパンなんとかクールを疑ってるプロデューサーが、Cool Japanと冠するレンダーファームの世話になっているとしたら、ちょっと皮肉だ。

まあ、Cool Japanは、僕もヤバイと思ってるので、話は合いそうだけど。
クール・ジャパンのマヌケ

■追記
http://www.ida-shop.com/category/12.html
注文した。微力ながら支援。

最近、非実在青少年関連のエントリーが増え、某所では犯罪関連のブログに分類されるようになり、著作権法系に分類されていたのが遠い昔のように思える今日この頃。

「常にマイナー目線から、世間様につっこみを入れる」ないし「世界の端っこで、『王様の耳はロバの耳』と叫ぶ」的な、そんな初心を忘れずに、客観的・中立的な、常にフラットでありたい今日この頃。

しかしながら、またしても非実在系なのであります(苦笑)


先日、NHK教育の「視点論点」という短い番組に、アグネス・チャン氏が登場(2010/06/07:22:50~23:00)し、冒頭で一応、今回は二次元(マンガ等の創作物)規制の話ではない、という趣旨の断りを入れて、児童ポルノ規制強化の話をされていた。で、その内容が余りにも酷く、客観的におかしいので、生まれて初めて、NHKとBPO(放送倫理・番組向上機構)に意見を送ってしまった(自爆)
(その内容は、一番最後を参照のこと)


一見、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が激増していると読めてしまう、あのグラフを持ち出して、規制強化の必要性を訴えるアグネス氏の主張は、酷い演出で、グラフに隠された事実を知らなければ信じてしまう人もいるだろうに...と眉をしかめながら見てました。

が、あのグラフがアグネス氏の言うような事実を示すものではないことは、既にこのブログでは指摘済み
http://maruko.to/2010/03/post-82.html
なので、今回はもう一つ別の話を。

アグネス氏が述べていた、国民の9割以上が児童ポルノの単純所持禁止に賛成したという、世論調査のトンデモ実態について。


この世論調査は、やはり規制強化推進の急先鋒である後藤啓二弁護士も多用する、創作物表現規制派の伝家の宝刀の一つ。

http://www.law-goto.com/0302/016/
「2007年の世論調査では大多数の国民が児童ポルノの単純所持の禁止(90.9%)及びCG・漫画も規制の対象にすること(86.5%)に賛成しています。」


つまり、単純所持禁止も、創作物への表現規制も、民意なのだから、立法府は規制立法を早く成立させろ、という圧力に使われている。議員は、こういう数字に弱い(^^;

しかし、この世論調査が実は、調査対象たった3000人のうち、有効回収数が更にたった1767人の、調査員による個別面接聴取というとんでもない調査方法で行われた結果であることは、あまり知られていないのではないか?

当時は、やらせタウンミーティングで世論操作をしていたのが前年にバレたばかりの、安倍首相の時代だ。内閣府が、どんな手を使ってこの回答に誘導したか、ちゃんと知っておかなければならない。

http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h19/h19-yugai.pdf

内閣府の世論調査は、住民基本台帳の情報を元に、委託された民間の調査会社が自宅にやってきて、直接面接して質問する。素晴らしすぎて、泣けてくる。(個人情報が民間にダダ漏れ?)

そんな、自分の情報を一方的に握っている民間の質問者に、わいせつだの児童ポルノだの面と向かって聞かれたら、仮に表現の自由を尊重したいと思っていたって、反対なんて言える人がどれだけいるだろうか?

PDFの6枚目(表記はページ5)からが調査資料だが、「資料5を提示して、対象者によく読んでもらってから質問する」という資料5は、内容が恣意的すぎるて泣ける。

・罰則が弱い
・各都道府県により規制がばらばら
・業界団体に属していない業者は規制の対象外
・有害情報に携帯電話等でアクセスして被害にあうケースも増えています

と、いきなり客観性の欠ける表現(「弱い」、「増えてる」)で、一方的な情報を回答者に植えつけている。

罰則が具体的にどうなのか、規制がバラバラで何か問題なのか、業界団体に属していない業者がどれほど存在するのか、被害にあうケースが増えているってのは何件くらい、何%くらい実際に増えているのか、全て隠して、一方的な印象を与えるメッセージになっている。

この情報を前提に答えろと言われたら、読解力のある日本人なら、誰だって「国として規制強化すべき」って結論が出るわなwww

Q2 〔回答票17〕、Q3 〔回答票18〕、Q4 〔回答票19〕の3連コンボも秀逸。


そして、後藤氏やアグネス氏が連呼する、単純所持禁止90.9%賛成の根拠となる、Q6 〔回答票21〕がやってくる。もちろんその前に、資料6で恣意的に誘導してからの回答だが(苦笑)

(ア)規制すべきである(69.6)+(イ)どちらかといえば規制すべきである(21.3)=規制賛成90.9%

資料6では、規制反対意見の理由は、「個人が持つだけであれば他に害を及ぼさないため現行のままで問題はない」しか示されていないのだ。もっと他に、「過去に適法に販売されたアイドルの写真集を所持していることが犯罪とされる危険性」など、色々と重要な反対理由は存在するだろうに、見事にスルーだ。


そしてラスボスのQ7がやってくる。CGや漫画も規制対象に86.5%賛成と後藤氏らが言う根拠だ。

(ア)対象とすべきである(58.9)+(イ)どちらかといえば対象とすべきである(27.6)=規制賛成86.5%

それ以前に提示された資料や質問が、全てこの最後の質問で創作物表現規制に賛成させるための、完璧な誘導だったのですね!わかります!!www

これにて、Q6とQ7を組み合わせると、自分用に門外不出のエロマンガを描くだけで、タイホというのが民意ということになる。

なんというか、ロリコンに同情するとか、そういうレベルじゃないですね(^^;

自分も小中学生の頃、アニメやマンガの好きなヒロインキャラを、ついエロく描いてしまったことがありますが、間違いなくタイホですね!もちろん、恥ずかしくて誰にも見せてませんが!!(なんだこのカミングアウトは!!!(自爆))

9割もの国民の皆さんは、さぞかし健全にお育ちになられたのですね!(苦笑)


...んなわけあるかゴラァ!!


ちなみにこの頃、内閣府の別の世論調査を受けたことがあるという人の話を某所で見たのですが、調査員に、特定の答えを選ぶように誘導されたそうだ。

また、見ず知らずの調査員に自宅に来られるという状況から、早く帰って欲しいという気持ちが強くなり、適当に答えたくなったそうだ。そりゃそうだろう。

ま、直接じゃないし、真偽は確認してませんが、上記PDFを見る限り、否定は難しそうですな。


でも、9割って数字は大きいよね...で、何人だっけ?

回答したのが1767人だから...え?たった約1600人の民意??

あれれれ?
後藤氏は、日経ビジネスオンラインで民主党を批判するのに、民主主義における民意の盲点として以下を指摘してますよね?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100511/214348/
「先の衆議院選挙の投票率は69.28%です(小選挙区、以下同)。そして、民主党の得票率は47.4%です。かけ算をすると、約33%。国民の3割ちょっとが民主党を支持しただけとも言えるのです。 」
「圧勝したはずの政権党を支持しなかった国民も多いのです。また、投票をした人もすべてを委ねたわけではないですよね。ですから、すべてを多数決で解決しようとすると、政権党を支持しない国民はもちろん、その他の人も含めて、多くの権利や利益を不当に害する恐れがあります。」

その論理を、是否この世論調査にも類推適用してみたらいかがで?

え?選挙と調査は違う?
それはそれ、これはこれですか。ダブルスタンダードって、美味しいですよね。

ま、規制推進派の人って、大体そういう感じですよねー


とりあえず僕は、こんな恣意的誘導の圧迫面接みたいな調査で、規制強化に反対した約1割の人々に、敬意を表します。


まあ、仮に2007年の世論調査に価値があるというなら、それよりも最近の調査はもっと価値があるはず。前のエントリーでも追記で紹介したけど、色々なアンケートがあるのですから、他も参考にしてくださいよ。>規制推進派な方々

「日本PTA全国協議会の調べによると、小中学生の親たちはマンガが子供に与える悪影響について大して心配していないし、条例などによる規制も望んでいない」
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.htm
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/17_mediahoukoku.pdf
「漫画児童ポルノ規制」 条例へ否定的意見が9割
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/100520/sty1005202250004-n1.htm
こんな感じですから。


ところで、民主党批判が目立ったのか、後藤氏はみんなの党から立候補することになってしまった。
http://www.your-party.jp/members/kounin/gotoukeiji.html

ショックだ...

自分は、みんなの党の結党当時からの支持者だったりする。
http://maruko.to/2009/08/post-63.html
一般党員だし、党に個人献金もしている。

みんなの党は、党としてのアジェンダだけが重要で、それ以外の各議員の個人的政策の不一致は問わないことも理解している。

だから、後藤氏の個人的な政策は、党の政策ではないということも理解している。創作物表現規制に反対している候補者の存在も、知っている。

しかしだ...それを理解した上でも、後藤氏の政策実現に少しでも加担することは、自らの良心の呵責に耐えられない。恣意的な調査結果で民主政の根本を歪めるような行為は、許容範囲の外だ。

これは表現の自由(憲法21条1項)だけでなく、先に示したカミングアウトのような、誰にも見せる予定もなく、自ら絵を描いて所持するだけという場合、限りなく思想・良心の自由が保障する絶対的な内心の自由(憲法19条)の問題だからだ。描画するという行為があっても、門外不出の場合まで、表現の自由の問題にすることは間違いだ。

思想・良心の自由は、あらゆる精神的自由の根幹として絶対的に侵害されないことを、特に我が国の戦前の反省から、憲法に規定したものだ。諸外国では、信教の自由はあっても、思想・良心の自由を独立して保障している憲法は珍しいそうだ。だからこそ、容易に創作物の単純所持すら処罰するようなことが有り得るのだろう。何故なら、信教の自由にカテゴライズされなければ、表現の自由で判断するしかなく、表現の自由は公共の福祉による制約が可能だからだ。

しかし我が国では、内心の領域にとどまる限り、国家との関係では絶対的に自由とする憲法が、歴史的な反省に基づいて存在するのだ。諸外国とは、思想弾圧の歴史的背景が全く異なる。思想弾圧の歴史への反省がない諸外国の憲法との違いを考慮せず、G8の国々では多数が規制しているのだから我が国も規制すべし、などという論理は、到底受け入れられない。党の経済政策等には賛成するが、それは上記権利を絶対的に保障する大前提があっての話だ。

まあそもそも後藤氏は、みんなの党のアジェンダに一致しているとも思えないのだが...

一応先週、党に対して、以下の意見を送った。
-->
参院選比例代表に後藤啓二氏を擁立するとの報道を見て、非常に落胆しております。
非実在青少年問題など、創作物表現規制反対運動が盛り上がっている今、何故このような、表現の自由を軽視する悪評高い人物を擁立するのか、理解に苦しみます。
そもそも、氏のこれまでの活動からすれば、みんなの党のアジェンダに、反する人物です。
現在、Googleで「後藤 みんなの党」と検索すれば分かりますが、みんなの党を支持していた人々が、落胆、批判の声を上げております。そして、みんなの党を非難する大きな材料とされております。
仮に、みんなの党としてのアジェンダには、表現規制が含まれないとしても、党を支持して後藤氏が当選してしまえば、氏の掲げる政策の実現に加担してしまうことになるので、私は一般党員ですが、最早党を支持できません。
後藤氏の個人的政策に、党としても賛同しているのであれば、尚更です。
擁立の撤回、もしくは、児童ポルノ対策を根拠にした過度のパターナリズムによる安易な表現規制に反対する立場を明確にするなどして、党のアジェンダに含まれない後藤氏の個人的な政策の実現に党は加担しない、と宣言できないものでしょうか。
私は、氏が元警察官僚だから批判しているのではありません。小野氏のような人物なら構わないのですが、後藤氏は許容できません。
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.html
後藤氏の掲げる規制強化は、子を抱える親たちの大半が望まないものです。
このまま党がアクションを起こさないのであれば、私は一般党員であることに嫌悪感を感じますので、除名していただきたいと思います。除名の手続きがあれば、教えてください。
<--

丸一週間経過したが、ノーリアクションだ。
みんなの党規約第4条1項によれば、離党手続は組織規則に定められているそうだ。
http://www.your-party.jp/about/rule.html
しかし、その組織規則が見つからない。

これから、離党手続について質問しようと思う。本当に悲しいよ(涙)


蛇足:「視点論点」についてNHKへ送った意見
 昨今大変大きな議論の対立がある問題にも関わらず、規制推進派のアグネス氏のみが、一方的に伝聞口調で誤った情報と情緒的な意見をしゃべり続けるという放送内容に驚いた。日本放送協会国内番組基準の第5項1号に、明らかに違反していた。
 また、用いられた児童ポルノ事件増加のグラフは、客観的な論拠から、事件増加を単純に示すものではないと言 われているものだ。犯罪社会学的に、アグネス氏の説明は非常に不適切で、誤解を招くものであった。
 「視点論点」は、もっと多角的な視点を提供し、視聴者に判断材料を与える番組だと思っていた。意見が対立している公共の問題について、アグネス氏のような一方的なプロパガンダ放送が許されるなら、規制強化反対の立場の論者にも登場させ、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱うべきである。


追記:6/16
後藤氏は、最新のブログでも、問題の内閣府の世論調査の数字を使っています。
http://www.law-goto.com/blog/archives/13
「内閣府の世論調査によると90%の国民は単純所持を禁止する考えに賛成しています。」
しかし、CG・漫画の規制の話に触れなくなった。理由は、選挙対策しか思いつかない。

恐らく、みんな党も、単純所持規制と創作物規制をセットで主張する後藤氏の危なさ、不人気さを理解したのでしょう。しかし、単純所持規制のみにしたからと、それが党のアジェンダである「生活重視」につながるというのは、流石に無理なコジツケだ。いくら他に、党のアジェンダと一致する主張が、後藤氏に一切ないとはいえ、苦しすぎる。
http://www.law-goto.com/
「生活重視」って、今までそういう意味じゃなかったじゃないか。

しかも、ブログのタイトルの「児童ポルノを楽しむことは自由だという民主党政権に国を任せて大丈夫か」というのは、酷過ぎる。いくら民主党だって、そんなことは言ってないだろうに、こんな三流の煽り方、恥ずかしくないのだろうか。常識的な判断力があれば、元々余程の反民主な人でなければ、こんなタイトルのブログを書く人に、共感できまい。つまり、何も支持拡大につながらないブログだ。

みんなの党は、自らのアジェンダのみを主張していれば良いのであって、その他大勢と一緒になって反民主ばかり唱えてたら、自ら存在意義を失う。初心にかえって欲しいものだ。

そんな中、みんなの党の山田太郎候補が、規制強化反対の姿勢を明確にしている。
http://www.yamadataro.jp/blog/534
7日にブログが更新されていたことを今知ったのだけど、自分も、後藤氏の擁立が決まった5日に、山田氏に直接、twitterで意見を伝えていた。そういった意見に答えていただけたのだと思う。やはり、党としての姿勢は、固まっていないということだ。すると、後藤氏が落選して、山田氏が当選すると、個人的には嬉しいw

ということで、党の支持とは関係なく、比例区は山田氏の個人名での投票をするか、考え中。

山田氏は、かかった選挙費用をHPで毎日更新して公開してるのが面白い(^^;
http://www.yamadataro.jp/

あと、やっと、非実在青少年の都条例改正案が否決された!
http://togetter.com/li/29598
これ、Twitterがなかったらと思うとゾッとする。Twitterが民主主義を実現させたと言っても良いのではないだろうか?

しかしこれは、終わりではなく、まだ始まりなんだろう。

さて、新司法試験への1回目のチャレンジが終わった。とりあえず、来年へ向けて、もう一度ガンバロウと思う(苦笑)

ということで、試験後最初のエントリーは、非実在青少年絡みだ。決して、試験の逆恨みとかで、大御所批判するのではないことを断って、本題に入ろう。


僕は全く好きになれないけれど、司法試験の世界じゃ、刑法の前田と言えば超有名。大御所。多くの学生が、氏の基本書で勉強しているのは事実。

でも最近、前田というと、非実在青少年の都条例を無理やり推進する、とんでもない刑法学者として、受験生以外に悪名が轟いてる。吃驚するくらい、前田氏自身の乱暴な発言が、一般の人々から叩かれてる。

昨日は、都議会総務委員会で、非実在青少年の例の条例の件で、賛成派と反対派の意見聴取みたいのがあって、前田氏も呼ばれてた。
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010051801001071.html

で、委員会を傍聴した方が、発言を伝えてくれているので見てみると、かなりヒドイ
http://togetter.com/li/22016

ついでに、前田氏同様の規制賛成派の赤枝発言も、結構スゴイ。上で抜けてる発言について以下参照。
http://twitter.com/himagine_no9/status/14230469964
http://twitter.com/sugahiyo/status/14231736740


ちょっと前田発言を拾って、つっ込み入れてみよう。

-->
>日本語なんで不明確なものはあるんです

条例改正案の規定が不明確だと、自覚してるんですね?

>非実在青少年という言葉は不当なものだと思わない

不明確だけど不当じゃない、と?

>科学的な根拠はなくても規制は出来る

規制の根拠は無い、ということでヨロシイか?

>健全育成のために誤った男女観とか、幼稚園児が犯されるものは排除するべき

「誤った男女観」て...あなたの主観で言うところの不健全な価値観を排除したいんですね(苦笑)

>早く中身を変えずに成立させて、マンガ家たちも納得できるガイドラインをつくるべき

「中身を変えずに」って(^^;
修正する気は全然ないのですねwww

>法律はどんなに厳格につくっても悪用出来る。今回の改正案が不明確で悪用されるものとは思わない

厳格につくっても悪用されるのに、不明確だけど不当じゃないから悪用されないって?
スゴイですね。そちらのロースクールじゃ、そんな答案書いても点数もらえるのですか?
合憲限定解釈でもするので?
そちらのローの、憲法の教授のご意見を、是非うかがいたいですね。

>裁量の余地のない法律なんか作れない。だから私ら飯が食える

裁量の余地のない法律が「作れない」のと、「作らない」のとでは、全然意味が違う。
あなたを食わせるために、不明確で裁量の余地のある法律をあなた自身が作るって、どんなマッチポンプですか?

流石、新派的と言われるだけあって、罪刑法定主義を重視しないんですね。

>東京都も最初は規制の強化をしたりしないよ

「最初は」て...徐々に規制強化するつもりなんですね、わかります。
<--


とまあ、つっ込みどころ満載なんだな。

ところで、前田氏といえば、一応結果無価値だ。

結果無価値だけど、社会防衛的発想という意味では新派的とか言われる。
結果無価値を前提に、国民の規範意識で処罰に値する程度の法益侵害、というモノサシで、違法性を考える。実質的犯罪論というやつだ。

すると今回、「科学的な根拠はなくても」、氏の言うところの「健全育成のために誤った男女観」は、国民の規範意識に従って違法性が認められる、と言いたいのかもしれない。


えーとね、現代の国民の規範意識はですね、あなたの理解しているものと、全然違いますよ。あなたのその価値観、非常識で、めちゃくちゃ少数派ですよ。

>パブコメなど踏まえて条例案は絞った

とか言ってるけど、規制賛成派はたった1%らしいから、もう一度、国民の声に耳をかたむけてくれませんか?
http://www.mangaronsoh.com/archives/2642543.html

それとも、昔からライフワークだから、耳なんて貸せませんか?
http://www2.gol.com/users/mct/GTmaeda/sankou.htm#sankou4

申し訳ないけれど、これじゃ全てが、マッチポンプにしか見えないですよ。


あと、もう面倒だから、行為無価値に鞍替えされてはいかがで?


蛇足:非実在青少年関係で、こんな本が出るらしいので、読んでみたい。

追記:5/25
前田氏の発言が、もっと詳細にまとめられたので、リンク。
http://d.hatena.ne.jp/cuervo/20100525/p1
酷すぎ(苦笑)
この人、同じことを、同業の法学者に対しても堂々と言えるのだろうか?
相手が素人とだと思って、馬鹿にしすぎじゃないか。
都は、少なくとも憲法学者を呼ぶべきだし、刑法学者にしても、前田氏と異なる意見の学者の方がむしろ多いと思うから、他の学者も呼ぶべきだ。

ついでに、社団法人日本PTA全国協議会から、面白い調査結果が公表された。
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.htm
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/17_mediahoukoku.pdf
親たちは、条例等による自治体の規制や有害図書の範囲の拡大は、望んでいないそうな。

これが、現実の「国民の規範意識」ですね。

「立法事実」でも「立法せざるを得ない社会的事実」でも構わないけど、どっちも、欠片もないみたいです。非実在立法事実でしょうか?(苦笑)

なお、上記調査結果は、携帯などのフィルタリングについても、色々と面白い結果が書かれてるので、時間がある人は是非ご覧あれ。

例えば、子供の携帯等のフィルタリングは、そういった制度が充実すること自体は望んでる親が多いけれど、約4割の親は、フィルタリングを導入せず、又は導入後に解約している。そのうち、サービスを知らない親は2割にも届かず、半数以上が、「子供を信頼しているので」意識的にフィルタリングを導入していない。

都は、フィルタリングの導入率が低いからと、その強化を狙っているわけだけど、親が子を信頼することって、そんなに悪いことなの?

追記:5/27
山口弁護士が、「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案に反対する請願署名」を始めたとのこと。
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2010/05/post-6e5c.html
今まで、こういう署名とかやったことなかったけど、今回は初めて、署名するよ。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20100406k0000m020077000c.html?inb=fe
-->
経済産業省は5日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の産業競争力部会に「文化産業大国戦略」案を提示した。「クール・ジャパン」と呼ばれ、海外で人気のアニメやゲーム、ファッションなどの輸出テコ入れを官民一体で進めるのが狙い。政府が6月にまとめる新成長戦略に反映させる方針だ。

日本のアニメやファッションなどは海外での評価は高いが、輸出比率が低く、戦略案でも「海外で稼げていない」と指摘。そのうえで、映画などのコンテンツを海外で販売するのに不可欠な資金を提供する官民出資の「コンテンツ海外展開ファンド」を創設する。
<--

だそうで...

経産省は、何のためにアイディアボックスやったのさ?
アイディアボックスで、賛成が最多で最も盛り上がった意見が、無視されてるじゃないか。
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/

映像を制作している現場は、日本はハリウッドと比べてノウハウが足りないから、ハリウッドの下請けをしてでも質の向上を目指すべきだ、という切実な提案をした。もちろん、この意見には賛否両論あるだろうが、少なくともアイディアボックスでは、多数の支持を得た。しかし、それを受けた産業構造審議会は、「日本の作品はクールで優れてるけど、海外への売り込みに失敗してるだけだ」という真逆の戦略を打ち出したわけだ。

これが、大本営発表ってやつか?
前線の兵士は、圧倒的な火力の差を実感して現実的な戦略を提案したのに、大本営から「我々は優れているのだ!」「あとは神風が吹けば勝てる!」と言われて、「突撃命令」待ちだろうか?

産業構造審議会で、アイディアボックスの意見が無視された理由は、産業構造審議会情報経済分科会で配布された資料を見れば分かる。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100402aj.html
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の意見については、以下の資料の20ページ目で触れられている。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100402a062j.pdf
-->
日本は、CGに関する優れた技術・人材を有するものの高い人件費のため、ハリウッドなどの海外からのVFX等の映画製作の受注が行われていない。海外からの受注を呼び込むため、政府が税優遇措置、助成金、ハリウッド・プロダクション誘致等の支援を行うもの。
実際にCG業界等で活躍される方々を中心に、映画業界などの現状と課題などを踏まえ、活発な議論が行われ、アイディアボックスで最も多くの投票数を獲得した。

<--

1文目から、提案の大前提の理解を、間違って紹介している。

「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者は、日本は潜在的能力はあるが、「クオリティが低い」から、ハリウッドから受注して、仕事を通じてノウハウを学ぶ機会が必要だ、と主張していた。そして、ハリウッド作品に関わる中で、VFXだけでなく、ハリウッド映画の製作手法全体を学ぼうと。

ところが、それをまとめた上記資料では、「日本は、CGに関する優れた技術・人材を有する」という、真逆の前提で、提案の説明がされているのだ。

資料まとめた官僚さんは、日本語力に問題があるのですか?
誰かに「クール・ジャパン」のバイアスをかけられて、冷静さを失っているのですか?
もっとクールに考えてくださいよ。

まあ、提案されたご本人は、この結果でも前進と、前向きに受け止めておられるようなのが、唯一の救いだろうか。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/04/blog-post.html


そもそも、クール・ジャパンは、クール・ブリタニアのパクリみたいなものだ。

かつてイギリスは、国家そのものをブランドとして海外に売り込む政策をとり、その中心には、1997年に出版された「登録商標ブリテン」というレポートが存在する。どういうことがなされたかの詳細は、以下をどうぞ。
http://www.mskj.or.jp/getsurei/ninoyu0201.html

こういう話は以前から、高城剛氏が政府の審議会や書籍などで何度も紹介し、真似るべきだと絶賛していた。まったくその通り、流石トリックスターだと、自分も思っていた。そして、外務省は以前から、ポップカルチャー外交を唱えていた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/h18_sokai/05hokoku.html

ポップカルチャーと言うより、サブカルじゃん?という疑問はおいといて、まだこの頃は、クール・ジャパンを自称する程の驕りはなかったし、その手法が「登録商標ブリテン」からのパクリであることが、認識可能だった。外務省は頑張って、各国で日本文化を紹介するイベントを開催したりしてきたし、そこには経産省も関わってきた部分があったはずだ。

すると、クール・ジャパンとやらは、外務省のポップカルチャー外交の成果なのだろうか?

残念ながら、否である。

ダグラス・マッグレイが、「Japan's Gross National Cool」と論文を発表したのが2002年。

フランスのジャパンエキスポは、1999年から始まっているが、Cool Japanというキーワードがル・モンド紙に出たのは2003年だろうか。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C394170269/E382880148/index.html

日本では、「COOL JAPAN THE EXPLODING JAPANESE CONTEMPORARY ARTS」が出版されたのが2004年。

米国でのクール・ジャパンの仕掛け人の一人、アレクサンドラ・モンローが、グッゲンハイムのアジア担当シニア・キュレーターに就任したのが2006年。


つまり、このキーワードは古く、今更言い出す奴は時代遅れで、かなりクールじゃない。
クール・ジャパンの前は、ジャパニメーションとか言ってたのも似たようなものだ。

しかも、このキーワードが通じた国々は、既にこれから成長の見込めない、欧米である点に留意すべきだ。

経産省が昨年まとめた報告書でも、今後の国際展開先としてはアジアに注目していた。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/movie.pdf

上記報告書では、アメリカ市場への進出に失敗する最大の理由として、人材不足を挙げていた。アメリカ市場へ進出するための日本映画業界に必要な人材の要件として以下を示し、そういった人材は育成するには時間がかかるから、諦めてアジアを開拓しようという悲しい論理だが、しかしまだ冷静だった。
-->
 【専門知識】
・英語力(脚本や契約書の読解力)
・知的財産権の知識
・映画業界特有の会計の知識
・制作に関する知識(アメリカの大学、大学院での履修経験。しかも業界内での評価から、映画関連大学は、トップクラス校である必要性)

 【教養、素養面】
・業界特有の慣習、文化の把握力
・業界への同化力
・歴史、文化やトレンドなどの知識
・配偶者の社交性
・交渉における機転やジョークのノウハウ
<--

どうしてそれが今年になって、「コンテンツ海外展開ファンド」を創設すれば海外で稼げる、なんて無謀な戦略につながる?
俺たちクールだから?

寝言は寝てる時に言ってくれ。


アジアでは、哈日族(ハーリー族)はいるから、彼らを増やすような戦略は重要だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%88%E6%97%A5%E6%97%8F
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1694

しかし、既に哈日族な人々には、クール・ジャパンなどと言う必要は今更ない。

この点、以下のブログ(この方も経産省ですが必読)の「クールジャパンはインナーシンキングだ」という意見に、自分も賛成する。
http://d.hatena.ne.jp/masays/20100406
アニメージュの読者なら30年前から知ってる、という意見も同感(苦笑)

これから成長市場のアジアを主戦場とし、そこでまだ哈日族でない人々に訴えるには、クール・ジャパンなんて自画自賛が漏れ伝わるのはマズイ。

しかも、どうして「コンテンツ海外展開ファンド」なんだ?
どうせコピーするなら、クール・ブリタニアをもっと精巧に分析して、本家以上にしてくれ。なんで、劣化コピー以下の粗悪品な政策になってるのさ?
「登録商標ブリテン」をちゃんと分析したかい?

冷静な情報分析ができず、俺たちはスゴイ的な誤信に基づいて宣戦布告みたいな、いつか来た道と同じではないか。

アバターと竹槍で戦えと?


今、CG制作現場で使われている主要ツールで、国産のものなどないに等しい。
AutodeskAdobeの2社の製品抜きでは、何も作れないと言っても言い過ぎではない。
実際、国産ツールなんて、竹槍程度のものしかないのだ。

にもかかわらず、何でこんなに自信を持っているのか、さっぱり理解できない。


もちろん、制作現場の人間は、負けてることをよく理解している。
だからこそ、ハリウッドの下請けでもやってみたいという意見に、賛成が集まる。

フルCGで映画を作る時、最初に検討するのは、どのソフトウェアを使うかだ。
高いけど、PixarからRenderManを買うか?とか、とっても悩むのだ。

しかし、その選択肢に国産ツールなど、一つもない。選択したツールに深刻なバグがあって、制作に支障が生じても、海外のメーカーはほとんど対応してくれないと分かっていても、それを買うしかない。

道具を海外依存しておいて、ファンドがあれば勝てると思うような妄想は、制作現場で苦労してる人間からは、出てこないだろう。かなりマヌケだ。

その辺の詳細は以前、以下に書いたので繰り返さないが...日本の映像制作は、映画産業以外の仕事で食いつないでる点を理解して、効果のある産業支援を検討して欲しい。
http://maruko.to/2010/03/post-81.html

先月、円谷プロダクションデジタル・フロンティアフィールズに買収されたのも、必然の流れだ。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=201189
http://www.p-world.co.jp/news2/2010/3/29/news3894.htm


ところで、これから開拓すべき市場は、本当にアジアなのだろうか?

日本作品に好意的でありながら、ハリウッド作品を素直に受け入れられない、資金の豊富な国々と言えば、中東のイスラームな国々だ。経産省の資料等では、中東に関しては一言程度しか触れられていないが、民間のアニメ・CG制作会社は、既に中東へ関わり始めている。
http://animeanime.jp/biz/archives/2009/04/cg_4.html

上記サウジアラビアでのプロジェクトは、最近やっと動き始めたが、自分も在職中に見積もりに少し関わったこともあり、今後に注目している。なお当時、社長から冗談半分に「サウジ行く?」と聞かれたが、退職したのはそのせいではない(苦笑)

http://riyadh.exblog.jp/13433802/
いやはや、デッサンから始めてるとは、頭が下がります。

冗談抜きで、石油依存から脱却しようとしている中東諸国への文化的な関わり方というのは、今後の日本にとっても重要だろう。

例えば、日本の家電は、既に韓国等に負けており、挽回の兆しはない。今まで、アジア市場で負けているのは、安価な製品じゃないと売れないからで、日本製品は性能が上だけど高いから売れない、と説明されてきた。しかし、ドバイでも日本の家電が韓国製品に負けているそうで、値段は問題じゃないことが分かる。
http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428/31697357.html
(上記ブログのコメント欄で日本擁護してる人が、正に自称クール・ジャパンと同じニオイがする(苦笑))

今後、技術分野での優位は、益々失われると考えるのが順当だ。そういう意味でも、クール・ジャパンなんて今頃言ってるのは、かなり恥ずかしい。
サウジじゃまだ、一応尊敬を得られている日本人というブランドは、今後は何によって維持できるだろうか。

かつて中東諸国では、ポケモンがハラームだと、ファトワーが出た。イスラームの教えに反するとして、サウジでも禁止になった。逆に言えば、それほど大人気で、社会問題になっていたのだろう。
http://www.cafeglobe.com/news/dailynews/dn20010424-02.html

しかし、それでも日本のアニメは、今も受け入れられている。なんという素晴らしいお得意様だろう。イスラーム圏での日本のアニメの人気は、単なるブームではなさそうだ。中東から先進国を眺めた時、日本だけ違って見えるのかもしれない。

そんな中、超保守なサウジで日本人がCGを教えるということは、広く中東地域の将来の文化に、確実に影響を与えるだろう。

そのうち、サウジで一定規模のCG制作が可能となれば、オイルマネーで日本に下請け仕事、くれるかもよ...え?違う!?(苦笑)

蛇足:
ついに某試験まで1ヶ月を切り、ブログ書いてる暇がなくなるので、試験後に確実に失っているであろう気力を回復するまで、しばらくこのブログの新規エントリは控えます。

追記:5/24
「あなたが思う"クール・ジャパン"コンテンツは?」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1005/18/news098.html
うーむ、酷い調査&記事だ。
「最近、注目されるようになっている」とか、2行目から嘘ではないか。
一体、この記者の考える「最近」とは、何十年前までを含むのだろうか?
しかも、ドラゴンボールやドラえもんがクールとは、東京工芸大学はどんな質問したんだ?
質問する前提として、「クール」の意味を定義しないで、質問したんじゃあるまいな?
2ページ目に載ってる「宮崎駿映画で世界の子どもたちに見せてあげたいと思う作品」なんて質問自体、押し売りクール・ジャパンそのもの。
せめて、「見てもらいたい作品」というなら、まだ分かる。何で、質問からして上から目線なんだよ。


ところで最近、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会の報告書が出た。
http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006.html

産業構造審議会情報経済分科会みたいには、クールジャパンを盲信せず、ちゃんと日本が負けてることを真摯に受け止めてるところから考えてるのは、素晴らしいと思う。

でもやっぱり、パチ産業は無視してるけど(苦笑)

http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006-3.pdf
上記報告書の、表記上のP16にある
「② 大規模CG映像製作分野への参入」に出てくる
「アジア域内でのCGアニメ共同制作のためのインフラ構築構想(Creative Asian Pipeline 構想)」ってのが気になる。

概念的な話なのか、物理的にインターネット経由で共同作業とかいう無謀な話だろうか?

海外と仕事って、結局先方の国のインターネット普及状況に左右されてしまう。ヨーロッパにしろアジアにしろ帯域が狭くて、どこも光回線は皆無だから、連番画像とか大きいデータは、結局HDDをDHLで直送ってのが、まだまだ現実なんだよね。

追記:5/25
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者さんのブログで、「コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会」の報告書についてのフォローがされてましたので、リンクしておきます。(このエントリーにリンクしていただいていることに、遅ればせながら今気づきました。)
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx_20.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx3.html
先週、今回の報告書を読んだ時、アイディアボックスを反映しているのかな?とは思ったのですが、審議会と研究会の関係に詳しくないので、ぬか喜びしたエントリーは控えようと思っていました。しかし、上記3つめのエントリーによると、やはり意見が反映された報告書なのだということです。あとは、6月の新成長戦略にどうつながるか、注視したいです。

なお、上記を読んで、経産省のイメージの話がありましたので、このエントリーでも批判的に書いているため、念のため付言しておきます。

私の在籍したロースクールは、社会人のための夜間ローでしたから、クラスメイトは皆、仕事と二足のわらじでした。そして、様々な職種の様々な年齢層のクラスメイトの中に、経産省の現役官僚もおりました。共に勉強するうちに、職場の苦労話も自然と耳に入ってきましたから、その大変さも少しは理解しているつもりです。

また、今までもアニメ業界の下請け問題等の健全化のため、経産省が様々な取り組みをしていることも理解しており、私の中では、「経産省GJ!」と思うことも多いです。そういう、ある種の期待の高い役所でもあり、アイディアボックスを始めたことも、私は高評価しておりました。

それだけに、当初の産業構造審議会にガッカリしたのです。

そして、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会が、アイディアボックスの意見を反映しているのであれば、その報告書を公開した時点で、
http://twitter.com/openmeti
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/
これらで報告してくれても良いではないか、と思うのです。
せっかくTwitterやブログがあるのにアナウンスされなかったので、「アイディアボックスと無関係なのだろうか?」と、迷いました。私が報告書の公開を知ったのは、偶然他人のツイートからです。

そんなこんなで、経産省そのものをダメだとか言う気は全くなく、個々の人々が頑張ってることも知ってますが、問題点は問題点として指摘する、というスタンスです。

と、追記が長くなってしまいましたが、今年の新司法試験が終了ということで、今週は上記経産省のクラスメイトとも久々に飲むので、「メディアコンテンツ課」ってどうよ?とか聞いてみようかなw

追記:5/30
と、上の追記をしたところ、5/27にアナウンスされました。
http://twitter.com/openmeti/status/14798079247
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/20100527/1274919221
書いてみるものです。
って、単なる偶然か、ここを見ていただけているのかは、分かりませんが(^^;

ちなみに飲み会は、諸事情で急遽中止に。残念!

追記:6/10
「経済産業省にクール・ジャパン室設置」
http://www.animeanime.biz/all/2010060803/
言葉を失った...
今からでも遅くないから、「実はソレ、温暖化対策室の間違いでした」と言ってくれ!

少し先送りになった、東京都の非実在青少年についての条例改正案について、東京都小学校PTA協議会が、こんなことを書いてる。
http://ptatokyo.jugem.jp/?day=20100316
-->
報道によれば、昨年の児童ポルノ事件は全国で前年比約4割増の935件と
過去最多であり、小学生以下の被害者も約7割増の65人となるなどの
状況にあり、保護者の不安はこれまでになく高まっています。

<--

書いてあることのうち、上記部分だけが、唯一の客観的な事実かな。

-->
また、漫画やアニメであっても、幼い子どもが自分から性交を求め、
快楽を得ているかのようなもの、親子や姉弟・兄妹間の激しい性交が
愛情表現の一環であるかのように片付けられているものなど、
大人ですら良識のあるものなら目をふさぎたくなるようなものが、
何ら規制されることなく書店の店頭に置かれています。

<--

ここは、実際は現行の条例で規制されてるので、事実ではない。
というか、ゾーンニングもしない書店があるなら、そこに文句言った方が良い。


さて、PTAさんが書いてる、児童ポルノ事件の数字は、以下の警察庁の資料に書いてある。

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/syonenhikou_h21.pdf

上記資料のP12(実際はP20)からの、「5 少年の犯罪被害」から以下より一部抜粋(一部余分な部分を短縮したりして表を修正)してみる。
少年の犯罪被害の推移_s.jpg

少年の性犯罪被害の推移_s.jpg

少年の刑法犯被害の推移_s.jpg

小学生の犯罪被害の推移_s.jpg

少年犯罪被害の推移_s.jpg

13歳未満の少年の犯罪被害の推移_s.jpg

つくづく思う。日本の青少年は、犯罪被害が年々減っていて、素晴らしいね。こんな国、他にあるのかな。

あれ?すると、PTAが言ってる数字は?

ということで、以下の表の赤で囲った部分。

児童買春・児童ポルノ禁止法違反の送致状況_s.jpg

なななんですと!
児童ポルノだけ平成17年(2005年)から激増している!

などと驚いてはいけない。以下のサイトのグラフ参照。

http://toriaezumitekitayo.blog88.fc2.com/blog-entry-35.html

児童買春・児童ポルノ禁止法の2004年改正で、処罰範囲が拡大されたから、それまで処罰されなかった行為が、2005年から処罰されるようになっただけ。社会状況が悪化したわけではない。

そういう意味では、1999年の桶川ストーカー事件での警察怠慢後の、2000年の通達以後から、認知件数が激増したのと似たようなもんだ。


つまり、2005年からの児童ポルノ事件数の激増は、それまで処罰されなかった行為が、とても有効に処罰できるようになったことを意味しており、改正された法(現行法)が、とても有効に機能している何よりの証拠に過ぎない。

PTAさんは、もしかするとTVに毒されていて、センセーショナルに事件を取り上げる番組を見て、犯罪が増加しているとか、物凄い大きな事実誤認をしているかもしれないけれど、自分の印象としては、5年前から社会が急激に悪化したなどとは、実感したことがない。

犯罪社会学を勉強したり、ちゃんと犯罪白書を見れば、我が国の悪質な犯罪は、記録史上最低と言えるほど減少しており、かつてない程安全な社会になっていることは、客観的に明白なので、少年の犯罪被害が減少するのも当然だろう。

それでもPTAさんは、もしかしたら「そ、それでも、小学生以下の被害者が昨年比約7割増の65人なんて異常だ!今、過去最高に社会が悪化しているんだ!」とかおっしゃいたいかもしれない。

ははは...

児童ポルノ事件被害児童構成_s.jpg

小学生に限定するとだね、今から10年前の方が被害者多かったから、むしろ減ってますな。

PTAさんの言い分は、客観的な資料や証拠を読めない、子供のような発想ですね。

でもまあ、同じ警察庁の資料に基づくのに、こんな過激なグラフを見せられたり
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_tyosa-jikenchildren20100218j-01-w330
こんな恣意的に2004年以前を削ったグラフを見せられたりしたら、
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100218k0000e040060000c.html
マスコミの思う壺に、犯罪が激増してると、誤解しちゃうのも仕方ないか。

PTAさんは、情報リテラシーに欠けるようなので、お子さんの手本となるためにも、親御さんのためのお勉強の場所を作るとよろしいですよ。


さて、この手の警察資料では、突発的な数値の変動があった場合で、社会に大きな変化がない場合、警察が特定の犯罪の検挙に重点を置いたり、法律が変わったりするパターンであると解するのが、犯罪社会学的には順当なところだ。だけど、特に要因もなく、なだらかに変化するカーブは、現実の犯罪発生数の変化を反映していると解する信憑性が高いだろう。

すると、性犯罪含め、少年の被害は減少傾向と見るべきだ。それが、社会的傾向とすると、これに逆行する児童ポルノの突出が、尚更怪しい。

児童買春すら増えたと言うほどでなく、むしろ減少傾向で、特に出会い系サイト経由の児童買春は大きく減っている。これは、各インターネットや携帯事業者等の自主的な対策の効果もあるだろう。

なのに、児童ポルノの増加分は、ほとんどネット利用のケースの増加分そのものだ。

しかも、増減率99.6%って、いきなり倍に増えてるじゃんか。
平成20年と21年で、ネット上に児童ポルノが倍に氾濫した?

常識ある大人なら、1年で児童ポルノ事件が倍に増えたなどと言われれば、社会不安に陥る前に、その数字を疑うだろう。実際、日常的にネットを利用していれば、犯罪が倍に増加したなんて印象は受けないのだから。

あ、でも、ちょっと思い出すと、昨年は児童ポルノ関連で、それまではあんまり聞いたことなかったような事件が話題になっていた。

例えば、海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲示板に掲載した人物と、それが掲載された掲示板を開設していた大学生が逮捕された。
ニュースを見た時、リンクしただけとか、リンクが掲載されただけの掲示板開設者が逮捕されるとか、驚いたよ。
http://www.yomiuri.co.jp/net/security/s-news/20090708-OYT8T00330.htm
法や社会状況と関係なく、捜査機関側の判断基準が厳しくなったのかもしれない。

あと、母親が2歳の自分の娘の裸の写真を撮って逮捕されたのに続いて、母親が我が子の写真を売りまくる事件が続いた。正に昨年から急増した事件だ。
http://www.so-net.ne.jp/security/news/library/2073.html

金のために写真を売るってのは、単純に考えれば経済状況が悪化した影響も考慮すべきだろ。去年と一昨年で大きく変わったのは、つまり、リーマン・ショックの影響か?

昔は子供そのものを売り飛ばしてたのに比べれば、マシ?なわけない(苦笑)

あと、見た目が未成年に見える成人女性を撮影した猥褻ビデオで、擬似児童ポルノで逮捕とか話題になってたな。え?流石にこれは児童ポルノにはカウントされてないか(笑)


まあ、どっちにしても、今までの児童ポルノって、全部実在の被害の話だから、非実在青少年を規制すべきかどうかとは、全然関係ない話にしか聞こえない。PTAさんの書いてることは、論理的関連性がない無関係の事実を根拠に、アニメや漫画を規制しようっていうのだから、さっぱり分からん。実在児童のポルノの規制と、非実在青少年規制を関連付けるには、何かもう一つ客観的な根拠が必要であり、それがなければ論理の飛躍に過ぎない

でも、他に示されてる根拠って

-->
また、こうした漫画等の蔓延によって、青少年の判断能力や常識、価値観が
幼いときから歪められてしまう危機感を強く感じています。

<--

これだけ。
単に、抽象的な危険を想像しているだけではないか。

すると、やはり危険が具体化していないという意味で、表現の自由が失われる危険を訴える条例改正案反対派と、何も変わらない。

共に抽象的な危険を想定して対立するなら、まだ、憲法に根拠がある条例改正案反対派の方が、正当性があると感じる。

特に気持ち悪いと感じた文章はここだ。
-->
子どもを守るため、子どもが健やかに育つために、児童ポルノを根絶すること、
子どもを性的対象にする図書が青少年の目に触れないようにすること。
たったこれだけの願いであるにもかかわらず、一部には、えん罪や
表現の自由の規制を理由に、この条例改正案に反対している人がいると
聞きます。

<--

実在児童のポルノを根絶することに反対してる条例改正案反対派の意見なんて、聞いたことないぞ?

で、青少年の目に触れないようにするのは、ゾーニングでOKな話だ。
これも、反対している条例改正案反対派なんて、聞いたことない。

しかも、最後は伝聞だしw
誰か周囲に、妄想や嘘を吹き込む人々が集まってるのだろうか。

妄想でないなら、対立勢力を貶めようとする、意図的な印象操作ということになろう。

キモイですよ!


そもそも、今の条例だってちゃんと機能している。
児童買春・児童ポルノ禁止法だって、昨年国会で不必要に改悪されそうになったけど、今だってちゃんと機能してる。だからこそ、逮捕者が出るのだ。
新たに非実在青少年を規制したって、実在児童ポルノを根絶することとはリンクしないということが、どうして理解できないのだろ。

どこか、類似の規制を行っている国で、児童ポルノ根絶できた国があったら、是非教えて欲しい。

別に、児童ポルノを好むような奴を擁護する気は全くないが、18歳未満の性行為や性交類似行為を肯定的に描いてはいけないなんて条例改正案は、どう常識的に考えてもやり過ぎだろ。民法731条で、女性は16歳で結婚できてしまうのに、18歳未満の性行為は、肯定されてはいけない行為なのですか?

改正案を読めば、まともな国語力がある日本人なら、その危険性が理解できるはずだ。

PTAさんが、高校生の性行為は、全て根絶すべきと思ってる人々なら、言い分としては理解できるのだけど...まさかね。


現実は、我が国は少年の性犯罪被害がどんどん減ってる社会なのは上記資料の通りだから、アニメや漫画がガス抜きになって、犯罪抑制に寄与しているという漫画家たちの主張の方が、まだ説得力を感じる。

おまけに、昨年児童ポルノ事件が急増したというなら、尚更、それ以前から蔓延している過激なアニメや漫画の影響があると主張するのは、因果関係を無視しすぎだろう。相関関係すら認められない。

更に言うと、日本の少年は、犯罪被害が減少しているだけでなく、少年が犯罪を犯した側となる、刑法犯少年も減少している。

刑法犯少年の推移_s.jpg

凶悪犯の推移_s.jpg

ただし、凶悪犯の減少っぷりは凄いけど、実は知能犯が増えてる。

知能犯の推移_s.jpg

子供を持つ親御さん方は、こういう現実を把握してますか?

更に、触法少年にも触れておこう。触法少年とは、刑法41条で処罰対象から除外される、14歳未満の刑事未成年で、刑罰法令に触れる行為をした子供のことだ。

触法少年の推移_s.jpg

これも、別に問題ないとしか読めない。
すると、やはり少年犯罪の減少が大きいことを重視すべきだ。今の子供は、高校入学前くらいから、ちゃんと分別をわきまえる率が向上しているということだろう。

未成年人口の減少率を計算に入れて比較もしてみたが、有意に少年犯罪率が減少している。(もっとも、人口が減少すれば犯罪数が減少するのが当然という考え自体、物事を単純化し過ぎだが。)

一部の知能犯の増加を考慮しても、犯罪に走る未成年が減少傾向にあることは、正当に評価されるべき事実だろう。


し・か・し、PTAさんが、本当に注目すべき問題が、以下の表にある。

特別法犯少年の送致人員_s.jpg

触法少年の行為別補導人員_s.jpg

理由不明だが、軽犯罪法違反の事件だけ、激増している。
人口が減少したって、増える犯罪は増える。

軽犯罪法とは、PTAの皆さんが、漫画やアニメで心配しているような性表現の問題とは、全く別次元の問題だ。

軽犯罪法(Wikipedia)

ところが警察庁は、こういうことにはロクに説明してくれない。
だから、マスコミも取り上げない。
そういう問題こそ、PTAさんが問題視すべきなんじゃないですかね。


さて、以上なんですが...

PTAさんは、もう少し健全な発想で、少年の犯罪被害がどんどん減ってい我が国が、他国と違う点を考えてみるべきじゃないか?

具体的に、表現規制の厳しい国の犯罪率と、表現が比較的自由な我が国の犯罪率を比較してみるとか。

マスコミに騙されずに、頭冷やして客観的に考察しないと、子供を危険にさらそうとしているのは、条例改正に加担しているPTAさんだった...なんて結果になりかねないですよ。

こう説明すると、犯罪被害減少の現状を、規制強化の成果だと勘違いする人もいるみたいですが、そういう人には、児童ポルノ事件が平成20~21年で倍に増えたことになってる数字についての認識を、是非聞いてみたいところ。なんせ、改正案に賛成な人は、事件が「増えた」ことを前提にしているので。

信じるかは別にしても、こういう話もありますから。
「児童ポルノ規制による性犯罪の増加」
http://www42.tok2.com/home/seekseek/53.html

また、少年の人口減少を犯罪減少の原因だと信じてる人には、加害者人口と被害者人口を混同して考えていないのか、聞いてみたい。少年人口の減少は、少年が加害者になる事件の減少を説明する一因にはできるが、少年が被害者となる事件の減少を説明するには、無理がある。成人の加害者が、高齢化で引退でもしたのですかね?

まあ、実はある年に生まれた、異常に加害者率の高い大人の年代があるのは事実で、そういうのも比較すると、もっと面白い考察は可能かもしれませんが(苦笑)

他に、自らを正当化できる理由をご存知でしたら、是非教えてくださいな、PTAさん!


追記
なんとまー、事実誤認で暴走してるのはPTAだけじゃなくて、東京都青少年・治安対策本部すら、警察庁の発表と真逆の、虚偽の事実を前提に、無用の条例改正を急いでるとは驚いた。流石にこんな簡単な事実関係を誤って条例作るって、常識的に考えられないんじゃないだろうか。呆れたの通り越して、本当に怖くなってきたのですが...
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2010/03/317-5bb0.html

おまけに、東京都小学校PTA協議会も、保護者の声を代表してないそうだ。いよいよおかしな話になってきた。
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2010/03/post_86fe.html

あと、冒頭に「先送り」と書いたけど、現状では明日(3/19)決まってしまう可能性が、まだまだ高いそうだ。
都議会総務委員会傍聴してるMIAU事務局長さんのつぶやきを見るに、条例改正案をどうこうしようってレベルじゃなくて、日本全体をどうにかしようとしてる都議会総務委員会の雰囲気が伝わってきて、ドン引き。
http://twitter.com/himagine_no9/status/10659303702

もの凄い多くの反対意見が表明されてるのに、聞く耳持たずに、客観的な事実誤認(もしくは恣意的な曲解)に基づいて、こんな稚拙な条例改正案を通したい人って、どんな人たちなんだろう?

日本で戦後の民主主義教育受けているなら、手続きを尊重することこそが、民主主義の正当性を担保する唯一の方法だと、知ってて然るべきだろうに。

こんないい加減な不正義が、まかり通ってしまいそうだなんて、何か夢を見ているようだ。


追記2
5月10日に、このエントリーのファイルが壊れてテキストの最後の方が消失してしまっていたことに気づいたのですが、バックアップが見当たらず、思い出して少し書き直していました。

そうしましたところ、ご親切にコメント欄にて、壊れる前のテキストをご提供してくださる方がおり、5月21日に無事、元の内容に修復できました。

あーる様、お陰さまで無事修復でき、大変助かりました。
誠にありがとうございますm(_ _)m

最近、いくつかの場所で、映像制作やコンテンツ産業の在り方みたいな議論を目にしたので、自分も思うところを述べておきたいと思う。まとまりもなく、とりとめもない話をつらつらと...


■パチ仕事と映画、アニメ仕事
日本のアニメ、CG業界の特徴の1つに、パチンコ・パチスロ産業への依存というのがある。これは、旧作品の権利を持つ会社が、パチメーカーにその利用許諾を与えるという意味での受け身な話ではなく、パチンコ・パチスロ化する際に発生する映像制作案件を受注するという形での、純粋な映像制作仕事としての能動的・発展的関係の話だ。パチスロ台の液晶画面で流れる映像も、CG制作会社の立派な仕事なのだ。パチメーカーは、CG制作会社に、とてもまともな対価を支払う、お得意さんである。

対して、公知の事実として、日本のアニメの現場の貧しさについては、今更説明を要しないだろう。これは、実写系でも映像制作現場一般の話として、ある程度共通する部分もあるかもしれない。CG制作会社は、アニメだろうと実写だろうとゲームだろうとCMだろうと、コンピュータで作る映像なら、何でも受注できる会社が少なくない。しかし、アニメや映画仕事を受注する場合、元請けでもなけりゃ、まともにやって黒字にするのはかなり困難。その手の仕事の発注元は、映像制作にまともな金を払う気がないことが少なくないが、同時に、赤字で受注する制作会社も後を絶たない。需要と供給が、制作コスト割れしたポイントでバランスが保たれている。

この差が生じる理由は簡単だ。かつて、多くのCGデザイナーやプログラマは、パチ仕事をヨゴレだと思って避けていたが、映画仕事に参加するのはステータスなんで、若い頃はタダでも働きたい仕事だった。著名な劇場作品でも、学生上がりの未経験者を、インターンシップと称してただ働きさせているケースは後を絶たない。映画仕事を受注した会社は、学生の夢を食い物にしてでも活用しないと、赤字が拡大してしまう。

ある程度の規模の制作会社になると、有名な劇場作品に参加するのは、求人のために必須となる。同時に、劇場作品への参加を夢見て入社してきた社員たちの、モチベーションを維持する必要もある。だから、会社の宣伝、イメージアップのため、劇場作品を一定数受注し続ける。

すると、優秀な人材を確保するための赤字映画仕事と、会社経営を維持するための黒字パチ仕事とのバランスが、とても重要となる。黒字にしたいなら、パチ仕事ばかりやれば良いと思うかもれいないが、イメージの悪い会社に人材は集まらないので、両立させなければならない。特にデザイナーは、転職が頻繁で、フリーランスになってしまう人も多いので、一定規模で能力の高いデザイナーを雇用し続けるには、会社が魅力的でなければならない。更にパチ仕事は、ノウハウも必要で、守秘義務の厳しさもあり、映画仕事のように安易に学生を使うこともできない。

これが10年前なら、映画の赤字を埋めるのはゲーム仕事だった。アニメ業界からゲーム業界への人材流出も、当時のトレンドだった。しかし、ゲーム機の性能が向上し、リアルタイムの描画能力が高まった結果、ゲーム向けの映像制作仕事が激減した。憧れの仕事と収益の上がる仕事が合致していた時代は、ゲーム機の性能向上によって終わり、ゲーム仕事に代わって黒字仕事の柱となったのが、ヨゴレのパチ仕事だったわけだ。(念のため言っておくが、自分自身は、パチ仕事をヨゴレとは思ってない。十分に、素晴らしいと思ってるが、その理由は後で。)

みんなが憧れる映画仕事は、ヨゴレのパチ仕事によって、一部支えられてきた。
そしてやっと、パチ仕事のイメージが改善してきたのは、ごく最近の話だ。


■ダメな仕事
と・こ・ろ・が、パチ産業は、いわゆるコンテンツ産業の市場規模が計算される場面などでは、何故か除外されている。政府の発表する資料などでも、パチ業界は存在しない前提で、コンテンツ産業が語られる。20兆円産業のパチを無視して、それより遥かに小さな残余の業界をまとめて、コンテンツ市場の在り方が議論されている。そんな議論の価値が低いのは、言うまでもないだろう。

しかし、映画業界の権利者な方々は、自分たちのコンテンツが、実はパチのおこぼれで作られてる部分があることを知らないかもしれない。そんな人々にいくらヒアリングして資料が作られても、現実を全く反映しないのは当然だ。(対してパチ業界は、映画やゲームで培われた映像制作のノウハウの恩恵にあずかっている。)

各業界の権利者団体は、別個独立で、他業界を知らないかもしれない。しかし、映像制作現場のレイヤーで実際に様々な業界からの映像仕事を受注している各CG制作会社は、実は共通なので、複数の別個独立の業界のリスクが、映像制作現場のレイヤーで担保されてるのだ。逆に言うと、担保できてしまっているから、いつになってもダメな業界はダメなまま、なのかもしれない。

--追記
パチンコ業界は、警察庁が監督官庁であり、コンテンツ振興を扱う経産省からは手を出せないのかもしれない。
--

ダメな業界の仕事というのは、単に金がないだけではなく、コンテンツ制作過程が非合法だったりもする。映画仕事では、著名な監督が、ごく当たり前に、著作権侵害や制作に必要なソフトウェアの不正コピーを現場に指示する。例えば、各社に散らばった100名程度のスタッフで、監督のイメージする映像を共通認識して完成を目指すには、コンテだけじゃ足りないので、監督のイメージに近い既存の映画作品から、シーンやカット毎にリッピングして、関係スタッフに配られたりする。何十人もに違法DVDコピーで配られることもあれば、主要な制作会社のサーバーにリッピングした作品が蓄積されたり、海外の外注先に配布されたりする。(もちろん昔は、VHSの大量コピーだった。)

スタッフは、必要に応じてPCで参考作品の映像を見て、監督のイメージを共有しようと努力しながら、自分たちの作品を制作する。スタッフの人数分、何十作品ものDVDを買うなんて真面目なことは、誰も考えない。何しろ予算の少ない仕事だ。他人の作品を参考にする事自体は合法でも、参考にする手段が非合法なのに、それに文句を言う映画制作関係者は、ほとんど存在しない。リスペクトしてれば良いと思ってる。

劇中で表示される文字などに至っては、どこかからフォントを違法コピーしてCD-Rに焼いてきて、ポンと渡され、「この文字でよろしく」みたいなこともある。

自分がかつて在籍したCG制作会社では、そういう非合法な制作手法を排除するのが、自分の仕事の一つでもあった。受注仕事では、違法行為を指示してくるのがクライアントであり、これと衝突することは極力避けなければならない。現場にウルサイと思われつつも、自分たちの仕事を合法とするため、いつも苦労した。

CG業界とアニメ業界の垣根が崩れ、旧態依然としたアニメ制作会社と共同作業するようになると、本当に最悪な場面に出くわした。アニメの会社は、ソフトウェアを買うものだと考えていないところが大半だ。金の無い業界の常識とは、そういうものだ。それでも、一緒に仕事をする以上、不正ソフトを使わないでくれと、相手の会社の責任者と話をしたりもした。「そんなことしてると、メーカーの監査が入りますよ」と脅しても、「そんなのは追い返すから大丈夫だ」と、まるで気にするのが馬鹿みたいに言われる業界だった。

不正を排除しようという意識を持たない会社が大半だが、そうして違法に作られた自分らの作品の権利だけは、絶対に守られるべきだと信じて疑わない、不思議な業界。それが、映画やアニメの業界だ。極論ではなく、一般論として、日本のアニメ等で、その制作過程全体において完全に合法性が担保されている作品は、皆無と言って良いだろう。中には、「うちの会社に不法行為はない!」と言いたい会社もあるだろうが、下請けや、人件費が安価だからと仕事を投げる、アジア各国の外注先の制作会社が何をしているかは、見て見ぬふりだ。フリーランスのデザイナーに発注する場合も、その個人が、自宅でどんなソフトをしっかりと買い揃えているか、クラックされた不正ソフトを使用していないかなど、発注側は誰も気にしない。結局、安く受注する会社や個人を便利に使うことで、不法行為を押し付けている。


■パチの良さ
対してパチは、完全に合法的な仕事を求められる。発注元が、何度も納品物をチェックする。高い金を出すだけでなく、合法的なコンテンツの制作にこだわる会社が多い。例えば、CGではテクスチャー画像をいくつも使用するが、パチ仕事では、作中で使用した全テクスチャーの著作権チェックがされる。テクスチャー一覧を提出すると、先方の法務部がチェックしたりする。テクスチャー画像は、ロイヤリティフリーの素材集などを買って利用することが多いが、素材集の発売元の会社が無くなっていると、テクスチャー差し替えの指示を出されたり...

そんなことは、かつてのゲーム仕事でも、要求されなかった。


フォントも、遊技機で合法的に使用できる、業務用フォントの契約を求められる。一度、先方がフォントの種類決定を後回しにして、仮のフォントで納品することを現場レベルで合意し、後に先方が差し替える話になっていたのに、先方の法務部に伝わっておらず、「不正なフォントで納品し、損害を与えた」と、損害賠償に発展しそうな時もあった。本当に、合法的なコンテンツにこだわる業界だ。(様々な著作権関係の裁判経験から、パチ業界は学んでいるのかもしれない。)

そういう仕事をしつつ、一方で、自堕落な映画やアニメの関係者に接すると、合法的なパチの仕事を受注できる会社というのが、とても誇らしいと感じるようになったのを覚えている。

しかしながら、パチに代替する黒字仕事が登場する前に、もしもパチ仕事が激減すると、経営が傾くCG制作会社も少なくないだろう。パチ業界は、最近持ち直したような話も聞くが、ちょっと前は市場規模が縮小傾向で、先行きに不安があった。そこで待ち望まれてきたのが、カジノ解禁だ。


■需要創出としてのカジノへの期待
カジノに期待するというと、どうやら、カジノのゲームマシンの仕事に期待をしているのではないかと、大きな誤解をしている人がいる。それは、あまりにもカジノを知らなすぎる。

もちろん、既存のパチメーカーは、海外のギャンブルマシンの供給も行っているので、既存のパチメーカーとの関係の延長で、カジノ向けのマシンの仕事も、期待が大きい部分ではある。CG制作会社から、パチメーカーへ転職し、海外カジノ向けの機種に関わってるなんて人もいる。

しかし、十数年前、自分がまだデジハリの学生だった頃から、SIGGRAPHとラスベガス旅行はセットだった。カジノとは、エンターテインメントの総合産業であり、当時からデジハリの杉山校長は、本場を見ろと学生に教えていた。

ラスベガスは、いたるところにコンテンツが溢れ、輝いていた。遊園地でもないのに、スタートレックのライドものや、ショー、シアターがホテル毎に存在し、どこもかしこも映像仕事の宝の山に見えた。街中の巨大スクリーンが、無数の映像を消費していた。

カジノを解禁するとは、単にギャンブルを解禁することではなく、ギャンブルを中心とした一大エンターテインメント都市を構築し、街中のいたるところにコンテンツ需要が生まれるということだ。合法化の暁には、これらの仕事を、国内の会社が受注できる制度を担保することは、必須だろう。その際、受注した仕事を海外に下請けに出すようなことを一定数制限すると、更に良いかもしれない。

これを、ゲーム、アニメ、映画などと、コンテンツの下流の権利者レイヤーの縦割りでしか業界を評価していないと、上流の制作現場レイヤーの重複に気がつかないので、カジノの魅力が理解できない。

CG制作会社に、「あなたの会社は、アニメ業界ですか?映画業界ですか?ゲーム業界ですか?それともCM業界?」と質問するのが、どれだけ愚問か分かるだろう。1つの会社で、実写合成だって、アニメだって、博物館の展示映像だって、何でもやってたりするのだ(もちろん、それぞれの専業の会社もあるが、そういうところは業界と運命を共にするしかない。)。だから、カジノ解禁で需要が創出されると、パチ依存の現状の偏りを緩和する方向に作用するだろう。それが、間接的に映画やアニメを支えることにつながる。


■制作サイドの改善
もちろん、個々の業界がそれぞれ健全化を目指すのは大事だ。しかし、日本のアニメ系の会社は、プログラマはゲーム会社にいるものだと、勘違いしてる感じがある。アニメの制作会社で、プログラマを重視して雇用している会社は、ほとんど無いのではないか。それが、Pixarに永遠に追いつけない原因だ。道具は、自分たちで作るものだという認識が、文科系アニメ制作会社には抜け落ちてる。なんせ、ソフトウェアは不正入手するのが当たり前だと思ってるのは前記の通りなんで、それを作るのに人件費をかけるという発想がないのかもしれない。プログラマが雇えないのか、雇う気がないのかは別にしても、そういう会社が淘汰されるのは、ある程度仕方のない話だ。

不正を行わずに、プログラマも雇わず、道具をひたすら真面目に買う側にいる会社もあるだろう。プラグイン一つ自給せず、必要なら買えば良いと。それはそれで、黒字を維持できるなら良いのだけれど、かなり非効率なので、小規模な会社でしか無理ではないかな。

理科系CG制作会社は、まだ、映像制作におけるプログラマーの重要性は、理解している。デジハリ時代のクラスメイトなども、インハウスのツールで海外に対抗しようと、ゲーム会社の出資でCG映画専門の大規模な制作会社を立ち上げた奴もいる。そういう会社が成功するよう、心から声援を送りたい。でも、映画ばっかじゃ飽きないの?とは思う。

専門化せず、つまみ食い的に、多様な業界の映像需要に応えられる会社というのが、時代の変化にも生き残れ、社員も飽きずに在職し続けられる、ノウハウのある楽しい職場なんじゃないかなと、個人的に思っている。

ノウハウがなければ生き残れないし、生き残った会社にしかノウハウは残らない。
焼畑農業みたいな業務スタイルの会社は、どうぞご自由にご退場ください。
...とか言ってみるテスト。


■風が吹けば桶屋が儲かる的なナニカ
このブログは、観光立国に関わるものを時々書くけれど、それは、観光立国にはカジノが必須だと考えており、カジノが認められればコンテンツ産業が潤うと考えているからだ。そして、JALを批判するのは、観光立国をインフラ面で妨げているのがJALだからだ。

航空行政が健全化し、LCC+地方空港による安価な観光インフラが整備され、普天間基地跡地だろうと、夕張だろうと、お台場だろうと、カジノが解禁され、観光立国となることが、日本のコンテンツ産業の活性化と合法化(カジノにまつわる仕事は、非合法であってはならないので、不正を厭わない旧態依然とした制作会社は受注できない仕組みも必要)につながる可能性というのに、大いに期待してる。


そして自分は、そういう時代に法律分野で貢献できたらという思いで、職を辞して法科大学院にいる。今回の日弁連の会長選にはガッカリしたし、今年はどうあがいても合格できそうにないけど、新司法試験は三振するまでチャレンジする所存。ギャンブル人生ですわ(涙)


■蛇足1
みんなの党の柿沢議員は、都議時代にお台場カジノ構想に深く関わり、カジノ推進に積極的だし、ショートショートフィルムフェスティバルにも関わってて、映像産業に興味も持ってる。かつ、みんなの党は観光立国も重視している。こういう話に興味持ってくれないだろうか?

■蛇足2
経産省が、コンテンツ振興策についての意見募集をしているので、またちょっと違う話を書いてみた。
「レンダリングサービス等におけるテンポラリライセンス」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00786/

■蛇足3
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」で、このエントリを紹介。
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/
関連して、こちらにも紹介されてます。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/02/vfx_9898.html

みんな、なんとかしたいんだよね。

クリエイティブ・コモンズが、文化庁の審議会への報告向けに、フェアユースに関するアンケートを行っています。ご意見のある方は、是非回答を。

http://creativecommons.jp/news/2009/07/19/fairuse_enquete.php

何故こういう質問になっているかは、文化庁の著作権分科会法制問題小委員会の前回の議論が関係していると思われます。著作権法には、民法の信義則のような一般条項が無く、フェアユースを一般条項として規定すべきという中山氏の意見と、その真意を曲げて理解し、民法の信義則があるならフェアユースは要らないという松田氏の意見が対立しているようです。

まだ、議事録が公式には公開されてないのですが、
http://twitter.com/tsuda
これを先月24日の午後1時くらいまで遡れば、大体理解できます。
ちなみにこれが、本物の「tsudaる」ですw


自分の回答は、包括的にフェアユースを導入することが、現在既に行われているコンテンツ制作の現場の違法行為を合法化するために必要、という感じで。フェアユースに反対する著作権者は、自ら著作物を創作していないから理解していないのだろうが、制作現場では、既に他者の著作権を侵害しながらアニメ等が制作されていることからすれば、反対すればするほど自らの首を絞めることを理解すべきだと。二次的利用という意味ではなく、アニメやCG等の映画の著作物の制作「過程」は、著作権侵害無しに成立しないのであって、それらを唯一合法化できるのが、フェアユースだと。


http://wiredvision.jp/blog/takamori/200907/200907141700.html

細田監督だから、ハズレは無いのだろうけど、予告見た感じ、昔の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」を思い出させるね。デジモンが、アバターに代わった?

パソコンや携帯とかデジタルデバイス使って、子供が、家の中から世界を救うってパターン、もしかして同じなんじゃない?
(本編見てないので、分からんけど)

上記記事には、ブロードバンド衛星通信回線とか書かれてるけど、デジモンの時は、ISDNに衛星携帯だった。
当時、通信インフラが絶たれた状況で、子供が家からネットにつなげて世界を救うには、どうしたら良い?と聞かれて、イリジウムとか、衛星携帯しか無いのではないか?と答えたら、やっぱりそーかーと、他に手段は無いかと、監督は悩まれてた。そんな10年前の、高田馬場の裏路地のオープンカフェでの会話を思い出した。

デジモンの時は、大人の知らないところで、子供だけで世界を救った(このパターンは、ドラえもんでも何でも、アニメの黄金パターンというか、子供心が燃えるんだよねw)けど、今度はそこが違うみたいだね。

なんか、今度は大家族で子供を支える感じなのかな?
子供世界で閉じないところが、ヒキコモリ→リア充 な感じの、主人公の成長を感じる(笑)
まあ、それだけネットが、リアルな存在になったからこそ、今作れる作品なのかも。で、逆に現代、大家族なんて存在はリアルじゃないわけで、そこが観客にとっての、映画の世界だけの架空な「お話」として、楽しめる部分なのかも。お話を作る上で、リアルとヴァーチャルの逆転現象が起きてる感じ。

サマーウォーズ観る人は、先に、ぼくらのウォーゲーム!から観ておくのも、面白いかも。


とかいって、全然違う作品になってたら、ゴメンなさい(自爆)

総務省の、放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン第2版が策定された。

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu04_000015.html
本文
http://www.soumu.go.jp/main_content/000030633.pdf

関係する方々は、自社の立場が、どういう権利・義務を有するのか、知らなければ確認した方が良いので、ご参考に。

アニメの製作(このガイドラインでは、製作と制作をあえて統一し、製作と表記している)に関する部分もあったりします。

いつの間にか公式サイトがオープンしてた。
http://yonapen.jp/

来週あたり、IMAGICAで公式スタッフ試写とか。

法科大学院の授業で行けませんが...公開されたら、劇場行きますんで。

河野太郎GJ

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「殿堂」という箱モノ
国産比率と法令遵守を条件に
レンタル倉庫でも借りろ

↑今まで何度も取り上げてきた、例の「殿堂」という文化庁天下り国営マンガ喫茶の件、河野太郎氏が反対してくれた。

http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1066
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1067
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1070

素晴らしい。前に、国籍法改正の時も、一番正しく理解して改正に賛成していたが故に、無知なネトウヨ酷士様から総攻撃を食らってたけど、今回も一番よく理解して反対したが故に、賛成派の文化を創ってない人々からの反論が、氏のmixiの日記版に連なってる模様。

間違いなく、河野さん、あなた正しいですよ。
アニメ、CGの制作側の人間として、応援します。
自分らの仕事が、文化庁の役人の天下りのネタに利用されるなんて、真っ平です。

文化庁は、作った箱に、誰が作品を提供するのか、考えてないでしょ。
117億円には、作品を買い取る金は含まれず、当然に徴収でもできると思っているのだ。そうなら、応じる作家や作品のリストでも見せてみろ。

例えば、手塚作品なら手塚治虫記念館、長谷川町子なら長谷川町子記念館と、既に著名な漫画家は、それぞれ記念館があり、町おこし的な要素もある。にもかかわらず、殿堂に著名作家の目玉作品を集められるとは思えない。

運営は民間に委託を想定してるそうだけど、どこの会社?信用できるの?

しかも、映画が殿堂の対象から除外されている以上、日本の有名な劇場アニメなどは、所蔵されない。映画抜きのメディア芸術なんて、詐欺みたいなものだ。


今、観光庁が、ポップカルチャー戦略の外務省と、産業育成側の経産省と連携して、パリでこんなことをやってる。
http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=41245
縦割りの壁を越えての連携は、素晴らしい。

で、何で文化庁の名前が無いの?
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000021.html

観光立国を目指す日本にとって、地方の観光資源は重要だ。地方都市に漫画家等の記念館が点在することは、外国人観光客の足を運ばせるネタになる。しかし、お台場に殿堂を作れば、逆効果でしょ。

ヲタクな外人は、そんなものが無くとも、アキバ目当てに東京には来る。
なので、殿堂を地方に作るなら、まだ国家戦略として一貫性を感じる。
一貫性が無いのは、文化庁だけ縦割り維持してるから?と聞きたくなる。

外国人へのアピールなら、見るべき観光資源を近くに集めてはならない。一度の来日で、観光資源を消化させないことが重要だ。また日本へ行きたい、次はあっちの地方都市へ行ってみよう、と思わせることができるかどうかだ。

お台場なんて、呼ばなくたってヲタク外人はコミケで来るって...orz

写真素材のピクスタ

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