予定が少し遅れたが、9月1日から運営開始となったWeb版フォーサイト。
http://www.fsight.jp/

自分としては、
http://maruko.to/2009/12/foresight.html
http://maruko.to/2010/02/web.html
こういう経緯で、まずはとても嬉しい。

まだまだ新しい記事は少なく(雑誌時代含め過去の記事は見られる)、月額800円がペイするかは1ヶ月にどれくらい記事が賑わうか次第だろうか。

とは言っても個人的には、中東研究の池内氏の連載の続きが見られただけで、既にペイしていると言ってもいい。しかも、なんと驚いたことに、1日2日と連続で連載がアップされてる!

休刊の間の欠落した情報を補完するがごとしだ。
また、Web版の即時性をも実感させる内容だ。

でも、この喜びを他者と共有したいにも、まだ有料会員は多くないだろうし、会員でないと見られない記事にリンクして言及しても...

また、本来合法な、記事の一部引用すら事前承諾を要すると読める会員利用規約17条1項の以下の文言も、ブログで取り上げることを激しく躊躇させていた。
--
会員は、本サービスにより提 供されるコンテンツの全部または一部を、当社または当該コンテンツの提供元の事前の承諾なしに、転載、複製、出版、放送、公衆送信等その他著作権等を侵害 する行為を、自ら行うことはできず、また第三者に行わせることはできません。
--
この点は、追々編集部に質問してみたい。


ところが、昨日の池内氏の記事は有料会員向けだったが、2日のは無料公開に設定されていた!(だからと言って、有料会員の価値が損なわれるものではない)

これなら外部でリンクして話題にできる。
岐路に差し掛かる米・イスラエルの「特別な関係」
http://fsight.jp/article/5694

とりあえず、フォーサイトを知らない人は、上記記事を一読すれば、有料情報の価値というものを少しは理解できるかもしれない。記事を鵜呑みするかは別にして、これを知っているかどうかで、TVや新聞の見方すら、大きく変わるだろう。


ということで、記事の前に、まずはイスラエルについて自分が最後に触れた過去のものを...
http://maruko.to/2009/01/post-2.html
この時に言及した選挙で、中道政党カディマは、世俗的右派のリクードに1議席差に迫られた結果、リクードのネタニヤフが右派をまとめ(極右の「イスラエル我が家」、右派・宗教政党の集合体「国家統一党」等がネタニヤフ支持)、ネタニヤフが首相に返り咲いてしまった。結局、支持率がジリ貧の汚職まみれのオルメルトでは、戦争をしてもカディマは政権を維持できなかったのだ(一応第一党ではあるけど)。

やはり、あの国は、元軍人でなければ首相が務まらないらしい(苦笑)
その後の状況は、言わずもがな。パレスチナとの関係が改善するはずはない。

フォーサイトの記事に出てくる、米バイデン副大統領がイスラエルを訪問した際の「侮辱」事件が起こってしまった背景とは、極右や宗教政党に支えられたネタニヤフ政権の危うさそのものを理解できる出来事だろう。

成功したはずの会談の晩餐会で、会談相手から非難されるような失態を自ら招くとは考えられないので、ネタニヤフも極右に手を焼いているのではないかと、想像できる。

更に記事によれば、オバマ大統領との6月の会談の訪米前日に、あの事件が起こって、訪米をキャンセルしたというのだから、増々想像に真実味がわく。

あの事件とは、ガザ地区に向かっていた支援船団をイスラエル軍が急襲し、9人の死者を出した事件だ。

オバマのアメリカと距離を置きたがっている極右の連中に、ネタニヤフは足を引っ張られているように見える。

ついでに時系列で整理するなら、NPT再検討会議でイスラエルのNPT加盟を求め、中東非核化構想の国際会議開催が記された最終文書にアメリカが賛成したのが、事件の2日前だ。いやはや...分かりやすい(苦笑)


2006年に、志半ばで脳卒中に倒れたシャロンは、意識不明のままだそうで...

かつての軍事的英雄が、指導者となってから和平を望むという千載一遇のチャンスが、ラビン、シャロンと失われたことの損失を噛みしめつつ、また新たな暗殺や病変が起こらないことを祈るしかないのだけど、オバマの手腕に僅かな期待を抱かずにはいられない、そんな池内氏の記事だった。


ということで、そんな想像を掻き立てる記事が読めるWeb版フォーサイトには、是非とも成功して欲しいのであーる。

以前、中国(上海)に帰国できずに成田で篭城生活して話題になった、馮正虎氏のツイートは、時々日本語に訳されていて面白い。

http://twitter.com/fzhenghu/status/21126110686
http://twitter.com/fzhenghu/status/21126135718
http://twitter.com/fzhenghu/status/21126147827
http://twitter.com/fzhenghu/status/21126176477

今なんか、自宅に軟禁状態なんだけど、この物腰の柔らかいツイートときたら(^^;

http://twitter.com/fzhenghu/status/21075144163
http://twitter.com/fzhenghu/status/21075172980

暑い日には、自分を軟禁してる警察官らに、ウーロン茶配ってねぎらいまでw

馮正虎氏曰く、中央政府はまともなのに、法を無視して馬鹿をやってるのは上海のトップで、警察の下っ端は上司の命令に従わざるを得ない、馮正虎氏同様の被害者、という流れ。

ある意味、上海閥v.s.共青団(江沢民v.s.胡錦濤)という分かりやすい構図。

パソコン買っては上海警察に押収されてる馮正虎氏は、PayPal経由で支援を得ているのだけど
http://twitter.com/fzhenghu/status/21075075345
http://twitter.com/fzhenghu/status/21045248984
変な感じ(^^;

http://twitter.com/fzhenghu/status/21045191128

この調子で頑張ってくださいw
もう、ある種の人徳です。

TVや新聞は取り上げないだろうけど、ネットが使える自分としては、馮正虎氏の日々のつぶやきに興味を持ち続けたい。


蛇足:全く関係ないけどおもしろ動画


当たり前の話
先日、以下の記事を読んで、何をアホな話をしているのかと、ある意味驚いた。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1007/26/news010.html

先祖帰りとか、何言ってんの?

「それならば、作品に関連したおもちゃを買ってもらう代わりに映像はタダですよ、で僕はいいと思っています。」って、それ当たり前の話ではないか。

アートアニメじゃあるまいし、マーチャンダイジングとセットでビジネスを考えるのは、商業アニメとして何も珍しい話じゃない。

今までそれが当然と思っていなかったなら、根本的に、権利をクリエイトするという発想が抜けてる、典型例だろ。


で、ネット社会の弊害?
ジブリのやり方に付いていく?
10人程度の会社で?

言ってることが滅茶苦茶。

ネットの力に屈して作画クオリティを上げて失敗したとか、この人が言うとギャグみたいだが、クオリティを諦めてブランド力を上げるとか、何の夢物語だろう?


ヲタク市場
確かに、ヲタク市場のパイの奪い合いには限界がある。

そもそも、DVD のセル市場は、少数のヘビーユーザー(年間購入金額3万円以上)によって買い支えられてきた。5年前の日本映像ソフト協会の調査では、国民(16~69歳対象)の6%のヘビーユーザーの購入金額が、セル市場全体の77.7%を占めていたが、昨年の調査では、ヘビーユーザーが5.1%に減り、金額はセル市場の57.5%に減少した。5年前のセル市場は、3,124億円で、昨年は2,674億円だ。

敢えて言うなら、DVD、ブルーレイのヲタク市場そのものが縮小してるのだ。

だから、ヲタク市場の外へ、ブランド力を上げて打って出ようという考え自体は正しい。内輪受けビジネスには限界があって当然で、そんなことは何年も前から、言われていたことだけどね。

だけど、その手法がまた、「浮動票みたいなところで争うのではなくて、組織票でがっちり固めてしまうという。」のはどうか?

また囲い込みかいな(苦笑)
逆に、浮動票の広大な市場を相手にすべきなんじゃないの?


■「Cat Shit One」
そんなことを思っていたら、市場拡大を具体的に目指している、とある作品に出会った。インターネットをネガティブに捉えず、本編全て(22分)をYouTubeで無料配信(公開期間:2010年7月17日~9月20日)している、「Cat Shit One」だ。
http://www.catshitone.jp/

そして、そのプロデューサーが、大変良いことを話している動画を見つけた。

こういう手法を選択したプロデューサーが、どんな考え方なのか興味があったのだけれど、 元ビルドアップの岡部氏で、いつの間にか円谷プロを辞職して、新会社を作っていたようだ。時期的に考えれば、円谷がパチンコメーカーのフィールズの子会社になる直前だから、それを嫌っての辞職なのかもしれない。まあ、想像の域をでないが。

以下、面白い発言を抜粋してみる。
-->
オンラインで映像を輸出することがテーマにある。
日本の市場が冷え込んでる。お子様が減ってますから。
だから、やっぱりコンテンツは、海外に対して売っていかなきゃいけない。色んなところで唱えてるけど、ほとんどシカトされてるんですけど。

そういうところでインターネットのインフラを使えば、まずは単純に売れる。
じゃあそのお金どうするのというところがあるはある。
僕から言わせれば、海外と、じゃあパートナーシップどっかと契約して、どっかの放送局とやってどうこうやる形よりは、自分たちで海外に向けて発信して売っていく方が、最終的には利益がデカイだろうと。

あとは、ジャパンなんとかクールとかおっしゃってるけど、あれはでも、なんでしょうねぇ。例えば、アメリカのアニメエキスポとかコンベンションで、そういう人が取材にきて、ほらアメリカではこんなに凄い、日本のコンテンツがウケてるんですよと、そこだけ切り取って全米とか見ちゃうのヤバいでしょうと、僕5年住んでたから分かるんですよ。そんなにはウケてないんで。

自分たちで売っていくってところで、インターネットをフル活用して動いていけば、僕はもう活路が出ると。

なんでハリウッド映画が、凄く巨額のお金をかけるかとすれば、それはマーケットが広いからであって、だからマーケットを広げるってところを、僕らも模索していかない限りは、いくらクリエイティブで凝ったモン作るとか、もっと愛情がどうこうとか、そんなもの、全然お金って裏付けがなければ表現できませんから。

それをじゃあ、僕は実はずっと、そういう座布団を用意してくれるプロデューサーが現れると思っていたんです。作っていたから。
だけど、そんな人一生現れない。僕は40過ぎた時に分かったんです。ああ、もうない。そんな人現れないから、じゃもう自分でやろうと。
<--以上、抜粋終わり


なんつーか、成功して欲しいですな。

通常、短編作品を単館上映しても、赤字。でも、劇場公開で認知度上げて、DVDとか売る。今回は、赤字の劇場公開の部分が、YouTubeに置き換わった。

今のところ、国内のアドレスからのアクセスしか、YouTubeは見られない設定だそうな。

今後、DVDとブルーレイに加え、Amazonでフィギュア売って、そういうマーチャンダイジングを全部、製作元で仕切るそうな。(日本て、製作委員会で権利を細分化するから、ダメなんだよね。)

あと、3D版も作ってるとか。


ということで、公開されてる本編。


感想としては、よくできてると思うけど、原作がベトナムなのに、現代風に中東を舞台にしてしまったのは、どうなんだろう?という気がする。

アメリカを中心とする中東での戦争の不正義が叫ばれてる昨今、砂漠で駱駝を殺しまくるって、世界的にはKYかも(^^;

可愛いウサギがリアルなことをするギャップが、効果的な演出なのは分かる。しかし、普通に見たら、中東に悪意のある作品てことになるだろう。これが、サウスパークみたいな意図が明確な作品ならまだしも、これは多分そうじゃないだろうな。 単に、配慮が足りない感じがする。

(もし、サムライの格好したサルが悪役で、殺されまくるアニメがあったら、日本人としては素直に見られないだろうと思うと、中東の人々に謝りたいくらい下品だ。)

平和な国のミリタリーマニアは、これでOKな感想なのだろうか?

作品としては成功して欲しいけど、中東向けには絶対に配信しないで欲しい。
うちのブログは、中東関係のエントリーも多いので分かると思うが、冗談じゃなくてね。


蛇足
ところで、エンディングに「Contents Cloud Creation Society for Producing "Cool Japan"」というのが出てきて、デジハリやボーンデジタル、HPなんかの企業名が出てくる。(IBMの名前がないのにIBMの園田氏の名前だけ出てくるのは謎。まさか、またHPに出戻りました?)

恐らく、ソフトとハード各社をデジハリで協力させ、クラウドのレンダーファームを試験運用でもしたのだろう。

かつて、ある劇場作品のレンダリングでIBMの世話になったが、あれで苦労した成果が、こういう作品に少しでも生かされてるなら、ちょっと嬉しい。

しかし、ジャパンなんとかクールを疑ってるプロデューサーが、Cool Japanと冠するレンダーファームの世話になっているとしたら、ちょっと皮肉だ。

まあ、Cool Japanは、僕もヤバイと思ってるので、話は合いそうだけど。
クール・ジャパンのマヌケ


■参院選終了
自分は現在無党派で、特定の政党を支持はしていないが、山田太郎氏のダダ漏れ動画を見てから、氏を支持してきた。
http://maruko.to/2010/06/post-86.html

しかし、残念ながら、落選となった。
みんなの党の比例は7議席で、7位の得票は37,191票であったが、山田氏は10位で30,663票であった。出馬を決めた5月末の時点では、比例はもっと議席数が取れるという算段で、3万票で当選できるだろうという話だったのが、首相の辞任で予定が狂ったようだ。みんなの党は、5月末まで四十七士作戦などと銘打って、比例だけで二桁いけると考えていたようなので、山田氏の3万票は、立候補を決意した時点で課された条件はクリアーしたことになる。しかし、計算通りにはいかなかったということだ。

考えてみると、衆院選が比例+小選挙区の重複立候補制であることに比べ、どちらかしか立候補できない参院選は厳しい。
加えて、昨年の衆院選で、比例区の名簿に名前を載せただけで当選できてしまった民主党の磯谷議員のような、棚ボタ当選の可能性もゼロに近い。名簿式比例代表制衆院選と異なり、参院選非拘束名簿式比例代表制は、自力で票を獲得しなければ、同じ党の他の比例候補者に負けてしまう。だから、全国比例の候補者同士は、同じ党内でも競争相手であり、互いに選挙協力もままならないという矛盾が生じる。比例代表制は、政策本位・政党本位の選挙制度のはずなのに、だ。

■その矛盾が顕著に出たのが、みんなの党
みんなの党は、金銭的な支援や、支持団体などがある他党と異なり、各候補者が自力で手探りで選挙活動をしているということが、山田氏のダダ漏れ会議から見て取れる。良い意味でも悪い意味でも、吃驚するくらいアマチュアリズムそのもの。しかし、全国比例に立候補した候補者が、有名人でもないのに自力で全国に名前を売るなんて困難だ。その証拠に、比例における党名・個人名の得票率で、党名得票率が他党と比べ物にならないくらい高い。そして、個人名得票数は、トップ当選者ですら、他党では落選レベルなのだ。

比例の総得票数がほぼ同じだが、組織力のある公明党と比較すると面白い。公明党の比例で、次点で落選した候補者の1/5しか、みんなの党のトップ当選者は得票していない。しかし、比例での獲得議席数は、みんなの党が1議席多いのだ。

また、今回は単なる有名人候補が多数落ちたとも言われているが、あれは単に、不人気な政党から立候補したからに過ぎない。有名人が大量の票を獲得していることに違いはない。例えば、比例で落選した元野球選手の中畑や堀内の得票数は、みんなの党のトップ当選者よりもずっと上だ。江本だって、みんなの党なら余裕で当選できる得票数だが、国民新党だから落ちたのだ。(まあ、みんなの党は、そんなスポーツ選手なんぞ擁立しないからこそ、支持を集めているのだろうが。)

これこそが、比例代表制が、政策本位・政党本位の選挙制度と言われる所以だ。単なる人気者では当選できず、党の政策が支持されれば、知名度が低い候補者でも当選できる。

ところが、非拘束名簿式である結果、党内の比例候補者同士が競争相手となり、組織力が弱いみんなの党の候補者は、連携すら困難だったようだ。それでも山田氏は、経済5レンジャーと題して、経済人候補者の連携による政策提言で相乗効果を狙った。しかし、記者会見を1度開いただけで終わってしまったし、その記者会見ですら、経済5レンジャーのメンバーのうち比例選出の藤巻氏は現れなかった。これがもし、衆院選の比例区のように、同じ党の候補者同士の競争が生じない制度だったら、党として結束するような選挙協力がもっと可能だったろう。

もっとも、党の拘束が緩いこと自体、みんなの党の面白いところではあるし、統率が取れないのに候補者を立て過ぎのだろうと言われても仕方ない。党がどこまで統率するか(というか、当然に統率していると誤解してる人が多いのでは?)だろうが、無党派層メインの政党であるため、振り分けるような票田も、支援組織もほとんど存在せず、「各自の才覚でガンバレ!」というのが実状だったようだ。当たり前だが、仮に自分が比例の候補者で、地元票で足固めしようと考えていれば、同じ党の他の比例候補者が地元に演説に来るのは、とても迷惑だから断るに決まっている(苦笑)

結果、みんなの党の比例は、PHP総合研究所元社長の江口氏を除けば、昨年の衆院選候補者で数年活動していたり、元国会議員、元県知事、元県議会議員、二世...と、既に特定の地域で知名度のある候補者が、その地域の得票によって上位を独占した。これは、みんなの党の大半の支持者の人々には、さぞ不本意な結果のはずだ。「みんなの党」と書けば、きっと山田氏や藤巻氏のような実業家・経済人が当選できると誤解していた、選挙制度に詳しくない人々だ。

どの地域から何票の得票があったか分かっているそうだが、山田氏は、全国的に均等に得票した(正に全国比例の趣旨に合致)結果の3万票だったそうだ。氏が毎晩ニコ生やustでダダ漏れ動画配信をやっていて、視聴者がどこに住んでいるのか質問すると、全国(+在外邦人まで)の地名が画面に次々と流れたのが印象的だったが、それが選挙結果にも反映されたのだろう。つまり、ネットを活用した結果とも言えるのではないか。全国区の比例代表選挙の制度趣旨に合致した選挙活動方法が、ネット利用なのだとも言えるだろう。しかしそれでも、非拘束名簿式の結果、党内の「地盤・看板・鞄」な候補者に及ばなかった。一応、山田氏は製造業に関する政策が中心だったので、大田区を中心に活動していたが、地盤と言えるほどには固められなかったようだ。(大田区の小学生の間では、山田太郎と言えば超有名らしいw)

この選挙制度は、確かに政党本位だが、党内ではタレントや地盤を持つ候補者に有利で、結局は個々人の候補者の政策が軽視される仕組みになっている。個人的な意見としては、参院選の全国区こそ、全国から政策で支持される候補者が当選すべきと思う。将来、公選法が改正され、公示後のネット選挙活動が解禁されたら、政策本位の候補者が当選できるように、多少は変わるだろうか?

まあ、個々の選挙制度設計は、立法府に広い裁量が認められ、過去の裁判でも最高裁は違憲とは言わないできたのだが、衆院選と参院選を比較することで、非拘束名簿式比例代表制の不合理さが明らかとなったと思っている。

良識の府」の参議院が、衆議院よりも、一層人気投票になっているのはおかしい。衆議院は名簿に名前を書くだけでも当選できて、参議院はタレントや特定の地盤を持つ候補者しか当選できないって...制度設計のバランスが逆ではないか。だから、ろくに知らずに、参議院が不要だなんて極論を言う人が出てくる。


■落選ダダ漏れ
さて、落選の翌日の昨晩、多少は失意から立ち直った山田氏が、選挙戦を振り返って、「ラストダダ漏れ」と題してニコ生+ust配信をした。

これまた、後藤弁護士が立候補した時のショックとか、凄く本音をダダ漏れていたw
山田氏が創作物表現規制に反対の立場を明確にしていたのに、規制推進派の後藤氏を、党が比例で擁立してしまい、みんなの党プロパーであるはずの規制反対の支持者が離れてしまった件だ。一時期、「後藤 みんなの党」と検索すると、ネット上にみんなの党批判が溢れていた。
(実際自分も、ガチガチの規制推進派の後藤氏擁立を知って、みんなの党の支持をやめた身なので、あれで失った比例票がさぞかし多かったろうと、想像している。これは、みんなの党がアジェンダの党たる所以で、アジェンダに書かれてない創作物表現規制については、党のスタンスはフリーで、各候補者の自由だったために生じた矛盾であり、同時にこの党の面白いところでもある。しかし、この件に関しては、明らかにマイナス効果が大きかった。13,122票しか獲得できなかった後藤氏のために、党のイメージがどれだけ悪化し、どれだけ票を失ったのか、人選ミスを呪うしかあるまい。後藤氏が落選したのは良いが、当選した中に規制賛成な人物がいるので、みんなの党が今後どうなってしまうのか、心配ではある。)

他、今まで報告を続けてきた、山田氏の総選挙費用の報告もダダ漏れた。なんと、供託金(600万円)を除き、総選挙費用は21,514,543円かかったそうな!
みんなの党からの資金援助はゼロで、献金もゼロの山田氏は、これが全部自腹なのだ(^^;;;;

資金力のある他所の党が、当選の厳しい候補者に何千万円も支援するのと、全然違う選挙戦をしてきたことが、これだけでも明らかだろう。

約2100万円で、獲得したのが約3万票ということは、単純計算で700円/票ということになるが、他の候補者で選挙費用を明らかにしている例を見たことがないので、コストパフォーマンスの比較のしようがない。しかし、ネットよりも人海戦術で当選するような人々が、山田氏の何倍もつぎ込んでいることは、想像に難くない。

そんな山田氏にとって、公選法の改正が先送りにされ、公示後のネット活動が極端に制限されたことの痛手も、上記ダダ漏れのスタッフの発言でも明らかだ。Twitterも使えなくなった結果、公示後、演説会などの告知をする術を失い、途方にくれたそうだ。少数のスタッフで、組織的な支援もなく、ネット無しに聴衆を集めることなど、誰が考えても不可能だ。つまり、現行の公選法は、金と組織を持つ候補者に有利になるように、そもそも作られているということを、思い知らされたようだ。

実は、上記の選挙後のダダ漏れも、完全にセーフかというと、判断の難しいところもある。公選法178条は、選挙期日後のあいさつ行為を制限している。「自筆の信書及び当選又は落選に関する祝辞、見舞等の答礼のためにする信書を除くほか文書図画を頒布し又は掲示すること。」(178条2号)は、禁止行為なのだ。(だから、ダダ漏れの途中で「感謝しちゃいけない」という会話があるw)

落選しても、文書図画を頒布、掲示してネットで御礼してはいけないなんて法律はアホ過ぎだが、ネット選挙解禁のために178条はネットには不適用とすべきだとは、マジメに議論されている。

公選法の限界に挑戦してネットを活用してきた山田氏には、是非とも当選して法改正をして欲しかったが、この点の議論に詳しい民主党の藤末氏が再選したことが、せめてもの救いではある。

山田氏が今後どうするのか分からないが、あの党が変な方向に進まないために、今後も政策に関わって欲しい。

山田太郎s.jpg

とりあえず、お疲れ様です。ノシ

■その他
ということで、みんなの党の獲得議席数は、世間的には大躍進と言われているが、党内では恐らく、当初の予定を大幅に下回ったと考えているはずだ。10議席獲得というのは、参院で1議席で待っていた川田氏にとって、法案提出に絶対必要な最低ラインでしかなかった。

「川田龍平がみんなの党に入った訳(=民主党を蹴った訳)」
http://maruko.to/2009/12/post-75.html

今から読み返すと、川田氏の読みが当たったとは言える。ほぼ同じ頃、参議院で自民党を離党し話題を呼んだ田村氏が、その後民主党に入って今回落選してしまったことを考えると、意味深い。


「知る権利」

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「ゆうパック」遅配なお続く 累計32万個に』:日本経済新聞 電子版 7/5 20:52
-->
宅配便「ゆうパック」の配達が遅れている問題で、日本郵政グループの郵便事業会社(日本郵便)は5日、1日からの累計で32万個程度の遅配が発生していることを明らかにした。5日は6万個程度の荷物が配達時間に間に合わなかったもよう。総務省は6日に日本郵便に対して正式に報告を要求。その内容を見極めたうえで、業務改善命令などの行政処分が必要かどうかを判断する。
<--


ゆうパックの遅延問題が話題になってから、郵政の元社外取締役の松原氏のツイートも話題になっていて、やっとトゥギャられて、郵政民営化委員会メンバーの野村氏とのやり取りと相まって、とても興味深い話になっている。

http://togetter.com/li/33701

1年以上も、郵政民営化委員会が開かれず
http://twitter.com/NomuraShuya/status/17778313757
こんな状況とは、正直驚きだ。

ところがマスメディアでは、上記でつぶやかれているような問題の詳細に、踏み込んだ報道が見当たらない。これをまともに取り上げたら、どう差し引いても、民営化を逆行させた現政権への批判になってしまうからだろうか。

選挙期間中の報道は、公平さに十分に配慮しなければならないというのは分かるが、この時期だからこそ国民としては、「知る権利」だって主張したいところだ。

当事者は、そりゃ逃げたいだろうさ。
http://twitter.com/matsubara_s/status/17790409087

官営化への逆戻りを批判してきた人々にとっては、逆に良いタイミングで問題が露呈した、とも言える。
http://twitter.com/matsubara_s/status/17836330511

思うに、現経営陣の就任時、天下りだけど優秀だからOKと説明した人々は、その人選が実は、常識的な判断能力すら持ち合わせていない人々だったという現実から、逃げてはいけない。

そして、ゆうパックで被害を被った人は、配達員などを責めることはせず、怒りの矛先は、選挙の投票で示すべきだ。

逆に、これが選挙に影響しないなら、この国の民主主義は機能していないということだ。


最近、Twitterでしか「知る権利」を享受できていないと感じる事柄が多すぎる。

>追記
引き続き松原氏は、理路整然と質問に答えている。
http://twitter.com/matsubara_s/status/17918291317
http://twitter.com/matsubara_s/status/17918365772
http://twitter.com/matsubara_s/status/17918441750
http://twitter.com/matsubara_s/status/17918541804
http://twitter.com/matsubara_s/status/17918647461

思うに、ネット選挙が解禁されていれば、公示後に露呈したこの政府の失策は、大きく叩かれたことだろう。公選法の改正の必要性を、より実感させられる出来事ではないだろうか。


ここで、各党のマニュフェストの一部が比較されているのを見て、あることに気付いた。
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-382b.html

知財分野の比較だ。(とは言っても、知財的に意味のないことばかりというのは、ブログ主さんのご指摘の通り)

ほとんどの党が、基本的にアニメやマンガ業界へのリップサービス以上でも以下でもないのだけど、みんなの党だけ実はかなり違うことを言っている。

「日本文化産業」のところで、以下の部分だ。

--
 メディアコンテンツ、ファッション、食、観光などの領域は、新たな輸出産業として大きなポテンシャルを有する。ただし現状では、担い手である企業の殆どに世界市場を積極的に攻めるマインド、経営スキル、企業体力が欠如。また、関連する諸産業に横串を通し、日本の文化価値を総合的に訴求・展開する国家戦略も欠如。これらを大きな産業群に育てるためには、
カテゴリー横断的な、日本文化産業全体のブランドコンセプトの創出(例:英国の"Cool Britannia"戦略、韓国の"Cool Korea"戦略)
・カテゴリー×エリア軸での重点が明確で、かつ統合的な戦略の策定
・重点地域市場における現地支援プラットホームの設立(市場調査、現地パートナーの紹介・交渉、共同流通網の構築などシェアードサービス的機能を提供)
・関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成(例:多数の高級ブランドを束ねる持株会社LVMH)、これを可能とするファンド機能とマネジメントチームの組成などが必要。
--


★この括りで、コンテンツと観光をリンクさせる重要性に気づいている点
★甘い話よりも、企業側の問題点を痛烈に指摘をしている点
★縦割り自称クール・ジャパンではなく、本家のCool Britanniaを参考にもっと大きな国家ブランド戦略を意識し、業界横断的な横串の必要性に触れている点

これらは、このブログでずっと訴えてきたことの重要なポイントを濃縮したようなものだ。
http://maruko.to/cat9/cat12/
まあ、参考にされたわけじゃないだろうが(笑)


つまり、少なくともこの部分について、自分は大賛成だ。対して、民主と自民の書いてることは、話にならない。一般には、見分けがつかないかもしれないが。


一般に見分けがつかないようなところで、みんなの党は、"企業のマインド・スキル・体力が欠如"なんていう痛烈な批判をかまして、誰得なのかも疑問だが、正直だw

この部分は、党内で誰が担当してるのか、とても気になる。


つくづく、後藤弁護士擁立で、党としては支持できなくなったことが残念だ。(山田太郎氏は例外だけど)


さて、後藤弁護士擁立問題で、みんなの党の支持はやめた(前のエントリー参照)のだけど、後藤氏と真逆の主張をする、同じみんなの党の参院選比例の候補者がいて、その人が面白いもんで、個人を応援することにした。その名も、「山田太郎」である(悪いが、つっこまざるをえまいw)

参院選の比例は全国区だから、投票する側としても、非常に都合が良い。全国どこに住んでいようと住所に関係なく、比例の投票用紙に候補者名を書けば良い。すると、非拘束名簿式だから、同じ党で落としたい、あの比例候補者は、党内での順位が下がって落選する可能性も増したり増さなかったり?w


山田氏は、連日夜になると、ニコ生とUstで、ダダ漏れ会議を始める。
そして、毎日最後に、その日までの累積した選挙費用と、体重を発表している。
つい数日前、ついに出費が一千万円を超え、イタイイタイと嘆いていた。
テーマは、政治と金と体重だそうだ(笑)

合計額は、HPのトップにも掲載し、毎日更新している。
http://www.yamadataro.jp/

献金は一切受け付けていない(素人には公選法がややこしくて、献金のもらい方を間違えて公選法違反になるくらいなら、もらわない方が良いとか)そうで、党からの支援金もなく、丸々自腹出費とのこと。公認と言っても、かなり放任されてるようだ。

http://www.yamadataro.jp/profile/career
経歴を見れば、当初は外資系ばかりに勤めている。アメリカのCADの会社で副社長までなったが、モノ作りサポートと言いつつ、何で外資をこんなに儲けさせるんだと、外人に心を売ってるような気がしたそうだ...俺は日本人だ、と。

で、自ら会社設立に至る。

出費が一千万超えの驚きの瞬間:01:17:00

この日は、政策ではなく、幼馴染が山田氏の人柄を引き出そうというダダ漏れらしいが、こんな内容で良いのか心配になるほど、ぶっちゃけトークをする。しかし、そういうのを生で流して、修正がきかない状況を、意識的に作っているそうだ。

そもそも、自分が山田氏に興味を持ったのは、創作物表現規制に反対の立場を明確にしたからだ。
http://www.yamadataro.jp/blog/534

しかしまだ、↓この辺までは、内職っぷりに大丈夫だろうか?という思いもあった。

ダダ漏れ戦略会議6月18日 :ラベル貼りしながらダダ漏れ


印象が変わったのは19日のダダ漏れ。再度児童ポルノと表現の自由規制問題を取り上げた(13分あたりから)のだけど、加えてこの日は、知財、コンテンツ、ギャンブル、電子マネーの話と、自分的に、どストライクであった(^^;
当たり前の感覚で、当たり前のことを言ってくれる。後藤氏と議論しても良いともw

とにかくこの日は、面白すぎた(自爆)

ダダ漏れ戦略会議スペシャル6月19日


山田氏は、表現の自由問題に詳しいわけではないが、まともな人権のバランス感覚がある、製造業やロジスティックスに軸足を置いた経済人なのだ。しかも、とにかく自らの意見をはっきり述べる。しゃべりすぎというくらい、時々止まらないw

加えて重要なことに、語ることが、とても分かりやすい。

昨日も、↓12分あたりからの、公務員改革と道州制、クラスタの見直しの話とか、なんというか、話が具体的で政治家っぽくないのが良い。

ダダ漏れ戦略会議6月20日

ニコ生ユーザーからの、厄介な問いかけにも、タブー無く答える。
経済政策が売りなのだから、南京問題なんて質問はスルーしても良さそうだが、躊躇なく答える。
実は、守備範囲が広いのだ。

世界50カ国、地球3周回って、紛争、虐殺、飢餓地域を見てきて、意見がいっぱいあるけれど、今の日本にとっては経済が最大の問題だから、経済問題をメインにしているのだそうだ。ろくな経済政策を語らずに、外国人参政権問題などを情緒的に訴えてばかりの他の候補者とは、雲泥の差かもしれない。


面白かったので、過去のダダ漏れも少し見てみた。
環境問題を、リサイクルとロジスティックスで論じるのも面白かった。

時間があったら、他の過去動画もチェックしたい。


さて、比例の投票用紙は、「ドカベン」て書けば良いのかな?(チゲー)


山田太郎公認発表記者会見:5分くらいから


>追記

製造業と品質管理:8分~
江戸時代の藩主による産業育成から、クラスター、中国進出まで、話が熱いw
製造業はもうダメかと思ってたけど、山田氏の話を聞いていると、何がネックで、どうすると良いのか、具体的に分かってくる。精密機械工学科出身でありながら、製造業には進まなかった自分には面白い。こういう話をする政治家は、見たことない。

経済5レンジャー記者会見:14分くらいから、山田太郎オンステージ(笑)

しかし、オヤジギャグなネーミングセンスはどうにかならんのか...


>追記6/23
HP更新可能最終日になって、ダダ漏れ内容を題名にして、過去動画が見やすく並べかえられた。なんかね、毎週楽しみなラジオ番組みたいだ。
http://www.yamadataro.jp/schedule


最近、非実在青少年関連のエントリーが増え、某所では犯罪関連のブログに分類されるようになり、著作権法系に分類されていたのが遠い昔のように思える今日この頃。

「常にマイナー目線から、世間様につっこみを入れる」ないし「世界の端っこで、『王様の耳はロバの耳』と叫ぶ」的な、そんな初心を忘れずに、客観的・中立的な、常にフラットでありたい今日この頃。

しかしながら、またしても非実在系なのであります(苦笑)


先日、NHK教育の「視点論点」という短い番組に、アグネス・チャン氏が登場(2010/06/07:22:50~23:00)し、冒頭で一応、今回は二次元(マンガ等の創作物)規制の話ではない、という趣旨の断りを入れて、児童ポルノ規制強化の話をされていた。で、その内容が余りにも酷く、客観的におかしいので、生まれて初めて、NHKとBPO(放送倫理・番組向上機構)に意見を送ってしまった(自爆)
(その内容は、一番最後を参照のこと)


一見、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が激増していると読めてしまう、あのグラフを持ち出して、規制強化の必要性を訴えるアグネス氏の主張は、酷い演出で、グラフに隠された事実を知らなければ信じてしまう人もいるだろうに...と眉をしかめながら見てました。

が、あのグラフがアグネス氏の言うような事実を示すものではないことは、既にこのブログでは指摘済み
http://maruko.to/2010/03/post-82.html
なので、今回はもう一つ別の話を。

アグネス氏が述べていた、国民の9割以上が児童ポルノの単純所持禁止に賛成したという、世論調査のトンデモ実態について。


この世論調査は、やはり規制強化推進の急先鋒である後藤啓二弁護士も多用する、創作物表現規制派の伝家の宝刀の一つ。

http://www.law-goto.com/0302/016/
「2007年の世論調査では大多数の国民が児童ポルノの単純所持の禁止(90.9%)及びCG・漫画も規制の対象にすること(86.5%)に賛成しています。」


つまり、単純所持禁止も、創作物への表現規制も、民意なのだから、立法府は規制立法を早く成立させろ、という圧力に使われている。議員は、こういう数字に弱い(^^;

しかし、この世論調査が実は、調査対象たった3000人のうち、有効回収数が更にたった1767人の、調査員による個別面接聴取というとんでもない調査方法で行われた結果であることは、あまり知られていないのではないか?

当時は、やらせタウンミーティングで世論操作をしていたのが前年にバレたばかりの、安倍首相の時代だ。内閣府が、どんな手を使ってこの回答に誘導したか、ちゃんと知っておかなければならない。

http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h19/h19-yugai.pdf

内閣府の世論調査は、住民基本台帳の情報を元に、委託された民間の調査会社が自宅にやってきて、直接面接して質問する。素晴らしすぎて、泣けてくる。(個人情報が民間にダダ漏れ?)

そんな、自分の情報を一方的に握っている民間の質問者に、わいせつだの児童ポルノだの面と向かって聞かれたら、仮に表現の自由を尊重したいと思っていたって、反対なんて言える人がどれだけいるだろうか?

PDFの6枚目(表記はページ5)からが調査資料だが、「資料5を提示して、対象者によく読んでもらってから質問する」という資料5は、内容が恣意的すぎるて泣ける。

・罰則が弱い
・各都道府県により規制がばらばら
・業界団体に属していない業者は規制の対象外
・有害情報に携帯電話等でアクセスして被害にあうケースも増えています

と、いきなり客観性の欠ける表現(「弱い」、「増えてる」)で、一方的な情報を回答者に植えつけている。

罰則が具体的にどうなのか、規制がバラバラで何か問題なのか、業界団体に属していない業者がどれほど存在するのか、被害にあうケースが増えているってのは何件くらい、何%くらい実際に増えているのか、全て隠して、一方的な印象を与えるメッセージになっている。

この情報を前提に答えろと言われたら、読解力のある日本人なら、誰だって「国として規制強化すべき」って結論が出るわなwww

Q2 〔回答票17〕、Q3 〔回答票18〕、Q4 〔回答票19〕の3連コンボも秀逸。


そして、後藤氏やアグネス氏が連呼する、単純所持禁止90.9%賛成の根拠となる、Q6 〔回答票21〕がやってくる。もちろんその前に、資料6で恣意的に誘導してからの回答だが(苦笑)

(ア)規制すべきである(69.6)+(イ)どちらかといえば規制すべきである(21.3)=規制賛成90.9%

資料6では、規制反対意見の理由は、「個人が持つだけであれば他に害を及ぼさないため現行のままで問題はない」しか示されていないのだ。もっと他に、「過去に適法に販売されたアイドルの写真集を所持していることが犯罪とされる危険性」など、色々と重要な反対理由は存在するだろうに、見事にスルーだ。


そしてラスボスのQ7がやってくる。CGや漫画も規制対象に86.5%賛成と後藤氏らが言う根拠だ。

(ア)対象とすべきである(58.9)+(イ)どちらかといえば対象とすべきである(27.6)=規制賛成86.5%

それ以前に提示された資料や質問が、全てこの最後の質問で創作物表現規制に賛成させるための、完璧な誘導だったのですね!わかります!!www

これにて、Q6とQ7を組み合わせると、自分用に門外不出のエロマンガを描くだけで、タイホというのが民意ということになる。

なんというか、ロリコンに同情するとか、そういうレベルじゃないですね(^^;

自分も小中学生の頃、アニメやマンガの好きなヒロインキャラを、ついエロく描いてしまったことがありますが、間違いなくタイホですね!もちろん、恥ずかしくて誰にも見せてませんが!!(なんだこのカミングアウトは!!!(自爆))

9割もの国民の皆さんは、さぞかし健全にお育ちになられたのですね!(苦笑)


...んなわけあるかゴラァ!!


ちなみにこの頃、内閣府の別の世論調査を受けたことがあるという人の話を某所で見たのですが、調査員に、特定の答えを選ぶように誘導されたそうだ。

また、見ず知らずの調査員に自宅に来られるという状況から、早く帰って欲しいという気持ちが強くなり、適当に答えたくなったそうだ。そりゃそうだろう。

ま、直接じゃないし、真偽は確認してませんが、上記PDFを見る限り、否定は難しそうですな。


でも、9割って数字は大きいよね...で、何人だっけ?

回答したのが1767人だから...え?たった約1600人の民意??

あれれれ?
後藤氏は、日経ビジネスオンラインで民主党を批判するのに、民主主義における民意の盲点として以下を指摘してますよね?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100511/214348/
「先の衆議院選挙の投票率は69.28%です(小選挙区、以下同)。そして、民主党の得票率は47.4%です。かけ算をすると、約33%。国民の3割ちょっとが民主党を支持しただけとも言えるのです。 」
「圧勝したはずの政権党を支持しなかった国民も多いのです。また、投票をした人もすべてを委ねたわけではないですよね。ですから、すべてを多数決で解決しようとすると、政権党を支持しない国民はもちろん、その他の人も含めて、多くの権利や利益を不当に害する恐れがあります。」

その論理を、是否この世論調査にも類推適用してみたらいかがで?

え?選挙と調査は違う?
それはそれ、これはこれですか。ダブルスタンダードって、美味しいですよね。

ま、規制推進派の人って、大体そういう感じですよねー


とりあえず僕は、こんな恣意的誘導の圧迫面接みたいな調査で、規制強化に反対した約1割の人々に、敬意を表します。


まあ、仮に2007年の世論調査に価値があるというなら、それよりも最近の調査はもっと価値があるはず。前のエントリーでも追記で紹介したけど、色々なアンケートがあるのですから、他も参考にしてくださいよ。>規制推進派な方々

「日本PTA全国協議会の調べによると、小中学生の親たちはマンガが子供に与える悪影響について大して心配していないし、条例などによる規制も望んでいない」
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.htm
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/17_mediahoukoku.pdf
「漫画児童ポルノ規制」 条例へ否定的意見が9割
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/100520/sty1005202250004-n1.htm
こんな感じですから。


ところで、民主党批判が目立ったのか、後藤氏はみんなの党から立候補することになってしまった。
http://www.your-party.jp/members/kounin/gotoukeiji.html

ショックだ...

自分は、みんなの党の結党当時からの支持者だったりする。
http://maruko.to/2009/08/post-63.html
一般党員だし、党に個人献金もしている。

みんなの党は、党としてのアジェンダだけが重要で、それ以外の各議員の個人的政策の不一致は問わないことも理解している。

だから、後藤氏の個人的な政策は、党の政策ではないということも理解している。創作物表現規制に反対している候補者の存在も、知っている。

しかしだ...それを理解した上でも、後藤氏の政策実現に少しでも加担することは、自らの良心の呵責に耐えられない。恣意的な調査結果で民主政の根本を歪めるような行為は、許容範囲の外だ。

これは表現の自由(憲法21条1項)だけでなく、先に示したカミングアウトのような、誰にも見せる予定もなく、自ら絵を描いて所持するだけという場合、限りなく思想・良心の自由が保障する絶対的な内心の自由(憲法19条)の問題だからだ。描画するという行為があっても、門外不出の場合まで、表現の自由の問題にすることは間違いだ。

思想・良心の自由は、あらゆる精神的自由の根幹として絶対的に侵害されないことを、特に我が国の戦前の反省から、憲法に規定したものだ。諸外国では、信教の自由はあっても、思想・良心の自由を独立して保障している憲法は珍しいそうだ。だからこそ、容易に創作物の単純所持すら処罰するようなことが有り得るのだろう。何故なら、信教の自由にカテゴライズされなければ、表現の自由で判断するしかなく、表現の自由は公共の福祉による制約が可能だからだ。

しかし我が国では、内心の領域にとどまる限り、国家との関係では絶対的に自由とする憲法が、歴史的な反省に基づいて存在するのだ。諸外国とは、思想弾圧の歴史的背景が全く異なる。思想弾圧の歴史への反省がない諸外国の憲法との違いを考慮せず、G8の国々では多数が規制しているのだから我が国も規制すべし、などという論理は、到底受け入れられない。党の経済政策等には賛成するが、それは上記権利を絶対的に保障する大前提があっての話だ。

まあそもそも後藤氏は、みんなの党のアジェンダに一致しているとも思えないのだが...

一応先週、党に対して、以下の意見を送った。
-->
参院選比例代表に後藤啓二氏を擁立するとの報道を見て、非常に落胆しております。
非実在青少年問題など、創作物表現規制反対運動が盛り上がっている今、何故このような、表現の自由を軽視する悪評高い人物を擁立するのか、理解に苦しみます。
そもそも、氏のこれまでの活動からすれば、みんなの党のアジェンダに、反する人物です。
現在、Googleで「後藤 みんなの党」と検索すれば分かりますが、みんなの党を支持していた人々が、落胆、批判の声を上げております。そして、みんなの党を非難する大きな材料とされております。
仮に、みんなの党としてのアジェンダには、表現規制が含まれないとしても、党を支持して後藤氏が当選してしまえば、氏の掲げる政策の実現に加担してしまうことになるので、私は一般党員ですが、最早党を支持できません。
後藤氏の個人的政策に、党としても賛同しているのであれば、尚更です。
擁立の撤回、もしくは、児童ポルノ対策を根拠にした過度のパターナリズムによる安易な表現規制に反対する立場を明確にするなどして、党のアジェンダに含まれない後藤氏の個人的な政策の実現に党は加担しない、と宣言できないものでしょうか。
私は、氏が元警察官僚だから批判しているのではありません。小野氏のような人物なら構わないのですが、後藤氏は許容できません。
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.html
後藤氏の掲げる規制強化は、子を抱える親たちの大半が望まないものです。
このまま党がアクションを起こさないのであれば、私は一般党員であることに嫌悪感を感じますので、除名していただきたいと思います。除名の手続きがあれば、教えてください。
<--

丸一週間経過したが、ノーリアクションだ。
みんなの党規約第4条1項によれば、離党手続は組織規則に定められているそうだ。
http://www.your-party.jp/about/rule.html
しかし、その組織規則が見つからない。

これから、離党手続について質問しようと思う。本当に悲しいよ(涙)


蛇足:「視点論点」についてNHKへ送った意見
 昨今大変大きな議論の対立がある問題にも関わらず、規制推進派のアグネス氏のみが、一方的に伝聞口調で誤った情報と情緒的な意見をしゃべり続けるという放送内容に驚いた。日本放送協会国内番組基準の第5項1号に、明らかに違反していた。
 また、用いられた児童ポルノ事件増加のグラフは、客観的な論拠から、事件増加を単純に示すものではないと言 われているものだ。犯罪社会学的に、アグネス氏の説明は非常に不適切で、誤解を招くものであった。
 「視点論点」は、もっと多角的な視点を提供し、視聴者に判断材料を与える番組だと思っていた。意見が対立している公共の問題について、アグネス氏のような一方的なプロパガンダ放送が許されるなら、規制強化反対の立場の論者にも登場させ、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱うべきである。


追記:6/16
後藤氏は、最新のブログでも、問題の内閣府の世論調査の数字を使っています。
http://www.law-goto.com/blog/archives/13
「内閣府の世論調査によると90%の国民は単純所持を禁止する考えに賛成しています。」
しかし、CG・漫画の規制の話に触れなくなった。理由は、選挙対策しか思いつかない。

恐らく、みんな党も、単純所持規制と創作物規制をセットで主張する後藤氏の危なさ、不人気さを理解したのでしょう。しかし、単純所持規制のみにしたからと、それが党のアジェンダである「生活重視」につながるというのは、流石に無理なコジツケだ。いくら他に、党のアジェンダと一致する主張が、後藤氏に一切ないとはいえ、苦しすぎる。
http://www.law-goto.com/
「生活重視」って、今までそういう意味じゃなかったじゃないか。

しかも、ブログのタイトルの「児童ポルノを楽しむことは自由だという民主党政権に国を任せて大丈夫か」というのは、酷過ぎる。いくら民主党だって、そんなことは言ってないだろうに、こんな三流の煽り方、恥ずかしくないのだろうか。常識的な判断力があれば、元々余程の反民主な人でなければ、こんなタイトルのブログを書く人に、共感できまい。つまり、何も支持拡大につながらないブログだ。

みんなの党は、自らのアジェンダのみを主張していれば良いのであって、その他大勢と一緒になって反民主ばかり唱えてたら、自ら存在意義を失う。初心にかえって欲しいものだ。

そんな中、みんなの党の山田太郎候補が、規制強化反対の姿勢を明確にしている。
http://www.yamadataro.jp/blog/534
7日にブログが更新されていたことを今知ったのだけど、自分も、後藤氏の擁立が決まった5日に、山田氏に直接、twitterで意見を伝えていた。そういった意見に答えていただけたのだと思う。やはり、党としての姿勢は、固まっていないということだ。すると、後藤氏が落選して、山田氏が当選すると、個人的には嬉しいw

ということで、党の支持とは関係なく、比例区は山田氏の個人名での投票をするか、考え中。

山田氏は、かかった選挙費用をHPで毎日更新して公開してるのが面白い(^^;
http://www.yamadataro.jp/

あと、やっと、非実在青少年の都条例改正案が否決された!
http://togetter.com/li/29598
これ、Twitterがなかったらと思うとゾッとする。Twitterが民主主義を実現させたと言っても良いのではないだろうか?

しかしこれは、終わりではなく、まだ始まりなんだろう。


さて、新司法試験への1回目のチャレンジが終わった。とりあえず、来年へ向けて、もう一度ガンバロウと思う(苦笑)

ということで、試験後最初のエントリーは、非実在青少年絡みだ。決して、試験の逆恨みとかで、大御所批判するのではないことを断って、本題に入ろう。


僕は全く好きになれないけれど、司法試験の世界じゃ、刑法の前田と言えば超有名。大御所。多くの学生が、氏の基本書で勉強しているのは事実。

でも最近、前田というと、非実在青少年の都条例を無理やり推進する、とんでもない刑法学者として、受験生以外に悪名が轟いてる。吃驚するくらい、前田氏自身の乱暴な発言が、一般の人々から叩かれてる。

昨日は、都議会総務委員会で、非実在青少年の例の条例の件で、賛成派と反対派の意見聴取みたいのがあって、前田氏も呼ばれてた。
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010051801001071.html

で、委員会を傍聴した方が、発言を伝えてくれているので見てみると、かなりヒドイ
http://togetter.com/li/22016

ついでに、前田氏同様の規制賛成派の赤枝発言も、結構スゴイ。上で抜けてる発言について以下参照。
http://twitter.com/himagine_no9/status/14230469964
http://twitter.com/sugahiyo/status/14231736740


ちょっと前田発言を拾って、つっ込み入れてみよう。

-->
>日本語なんで不明確なものはあるんです

条例改正案の規定が不明確だと、自覚してるんですね?

>非実在青少年という言葉は不当なものだと思わない

不明確だけど不当じゃない、と?

>科学的な根拠はなくても規制は出来る

規制の根拠は無い、ということでヨロシイか?

>健全育成のために誤った男女観とか、幼稚園児が犯されるものは排除するべき

「誤った男女観」て...あなたの主観で言うところの不健全な価値観を排除したいんですね(苦笑)

>早く中身を変えずに成立させて、マンガ家たちも納得できるガイドラインをつくるべき

「中身を変えずに」って(^^;
修正する気は全然ないのですねwww

>法律はどんなに厳格につくっても悪用出来る。今回の改正案が不明確で悪用されるものとは思わない

厳格につくっても悪用されるのに、不明確だけど不当じゃないから悪用されないって?
スゴイですね。そちらのロースクールじゃ、そんな答案書いても点数もらえるのですか?
合憲限定解釈でもするので?
そちらのローの、憲法の教授のご意見を、是非うかがいたいですね。

>裁量の余地のない法律なんか作れない。だから私ら飯が食える

裁量の余地のない法律が「作れない」のと、「作らない」のとでは、全然意味が違う。
あなたを食わせるために、不明確で裁量の余地のある法律をあなた自身が作るって、どんなマッチポンプですか?

流石、新派的と言われるだけあって、罪刑法定主義を重視しないんですね。

>東京都も最初は規制の強化をしたりしないよ

「最初は」て...徐々に規制強化するつもりなんですね、わかります。
<--


とまあ、つっ込みどころ満載なんだな。

ところで、前田氏といえば、一応結果無価値だ。

結果無価値だけど、社会防衛的発想という意味では新派的とか言われる。
結果無価値を前提に、国民の規範意識で処罰に値する程度の法益侵害、というモノサシで、違法性を考える。実質的犯罪論というやつだ。

すると今回、「科学的な根拠はなくても」、氏の言うところの「健全育成のために誤った男女観」は、国民の規範意識に従って違法性が認められる、と言いたいのかもしれない。


えーとね、現代の国民の規範意識はですね、あなたの理解しているものと、全然違いますよ。あなあのその価値観、非常識で、めちゃくちゃ少数派ですよ。

>パブコメなど踏まえて条例案は絞った

とか言ってるけど、規制賛成派はたった1%らしいから、もう一度、国民の声に耳をかたむけてくれませんか?
http://www.mangaronsoh.com/archives/2642543.html

それとも、昔からライフワークだから、耳なんて貸せませんか?
http://www2.gol.com/users/mct/GTmaeda/sankou.htm#sankou4

申し訳ないけれど、これじゃ全てが、マッチポンプにしか見えないですよ。


あと、もう面倒だから、行為無価値に鞍替えされてはいかがで?


蛇足:非実在青少年関係で、こんな本が出るらしいので、読んでみたい。

追記:5/25
前田氏の発言が、もっと詳細にまとめられたので、リンク。
http://d.hatena.ne.jp/cuervo/20100525/p1
酷すぎ(苦笑)
この人、同じことを、同業の法学者に対しても堂々と言えるのだろうか?
相手が素人とだと思って、馬鹿にしすぎじゃないか。
都は、少なくとも憲法学者を呼ぶべきだし、刑法学者にしても、前田氏と異なる意見の学者の方がむしろ多いと思うから、他の学者も呼ぶべきだ。

ついでに、社団法人日本PTA全国協議会から、面白い調査結果が公表された。
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.htm
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/17_mediahoukoku.pdf
親たちは、条例等による自治体の規制や有害図書の範囲の拡大は、望んでいないそうな。

これが、現実の「国民の規範意識」ですね。

「立法事実」でも「立法せざるを得ない社会的事実」でも構わないけど、どっちも、欠片もないみたいです。非実在立法事実でしょうか?(苦笑)

なお、上記調査結果は、携帯などのフィルタリングについても、色々と面白い結果が書かれてるので、時間がある人は是非ご覧あれ。

例えば、子供の携帯等のフィルタリングは、そういった制度が充実すること自体は望んでる親が多いけれど、約4割の親は、フィルタリングを導入せず、又は導入後に解約している。そのうち、サービスを知らない親は2割にも届かず、半数以上が、「子供を信頼しているので」意識的にフィルタリングを導入していない。

都は、フィルタリングの導入率が低いからと、その強化を狙っているわけだけど、親が子を信頼することって、そんなに悪いことなの?

追記:5/27
山口弁護士が、「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案に反対する請願署名」を始めたとのこと。
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2010/05/post-6e5c.html
今まで、こういう署名とかやったことなかったけど、今回は初めて、署名するよ。


http://mainichi.jp/select/biz/news/20100406k0000m020077000c.html?inb=fe
-->
経済産業省は5日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の産業競争力部会に「文化産業大国戦略」案を提示した。「クール・ジャパン」と呼ばれ、海外で人気のアニメやゲーム、ファッションなどの輸出テコ入れを官民一体で進めるのが狙い。政府が6月にまとめる新成長戦略に反映させる方針だ。
<--

だそうで...

経産省は、何のためにアイディアボックスやったのさ?
アイディアボックスで、賛成が最多で最も盛り上がった意見が、無視されてるじゃないか。
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/

映像を制作している現場は、日本はハリウッドと比べてノウハウが足りないから、ハリウッドの下請けをしてでも質の向上を目指すべきだ、という切実な提案をした。もちろん、この意見には賛否両論あるだろうが、少なくともアイディアボックスでは、多数の支持を得た。しかし、それを受けた産業構造審議会は、「日本の作品はクールで優れてるけど、海外への売り込みに失敗してるだけだ」という真逆の戦略を打ち出したわけだ。

これが、大本営発表ってやつか?
前線の兵士は、圧倒的な火力の差を実感して現実的な戦略を提案したのに、大本営から「我々は優れているのだ!」「あとは神風が吹けば勝てる!」と言われて、「突撃命令」待ちだろうか?

産業構造審議会で、アイディアボックスの意見が無視された理由は、産業構造審議会情報経済分科会で配布された資料を見れば分かる。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100402aj.html
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の意見については、以下の資料の20ページ目で触れられている。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100402a062j.pdf
-->
日本は、CGに関する優れた技術・人材を有するものの高い人件費のため、ハリウッドなどの海外からのVFX等の映画製作の受注が行われていない。海外からの受注を呼び込むため、政府が税優遇措置、助成金、ハリウッド・プロダクション誘致等の支援を行うもの。
実際にCG業界等で活躍される方々を中心に、映画業界などの現状と課題などを踏まえ、活発な議論が行われ、アイディアボックスで最も多くの投票数を獲得した。

<--

1文目から、提案の大前提の理解を、間違って紹介している。

「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者は、日本は潜在的能力はあるが、「クオリティが低い」から、ハリウッドから受注して、仕事を通じてノウハウを学ぶ機会が必要だ、と主張していた。そして、ハリウッド作品に関わる中で、VFXだけでなく、ハリウッド映画の製作手法全体を学ぼうと。

ところが、それをまとめた上記資料では、「日本は、CGに関する優れた技術・人材を有する」という、真逆の前提で、提案の説明がされているのだ。

資料まとめた官僚さんは、日本語力に問題があるのですか?
誰かに「クール・ジャパン」のバイアスをかけられて、冷静さを失っているのですか?
もっとクールに考えてくださいよ。

まあ、提案されたご本人は、この結果でも前進と、前向きに受け止めておられるようなのが、唯一の救いだろうか。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/04/blog-post.html


そもそも、クール・ジャパンは、クール・ブリタニアのパクリみたいなものだ。

かつてイギリスは、国家そのものをブランドとして海外に売り込む政策をとり、その中心には、1997年に出版された「登録商標ブリテン」というレポートが存在する。どういうことがなされたかの詳細は、以下をどうぞ。
http://www.mskj.or.jp/getsurei/ninoyu0201.html

こういう話は以前から、高城剛氏が政府の審議会や書籍などで何度も紹介し、真似るべきだと絶賛していた。まったくその通り、流石トリックスターだと、自分も思っていた。そして、外務省は以前から、ポップカルチャー外交を唱えていた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/h18_sokai/05hokoku.html

ポップカルチャーと言うより、サブカルじゃん?という疑問はおいといて、まだこの頃は、クール・ジャパンを自称する程の驕りはなかったし、その手法が「登録商標ブリテン」からのパクリであることが、認識可能だった。外務省は頑張って、各国で日本文化を紹介するイベントを開催したりしてきたし、そこには経産省も関わってきた部分があったはずだ。

すると、クール・ジャパンとやらは、外務省のポップカルチャー外交の成果なのだろうか?

残念ながら、否である。

ダグラス・マッグレイが、「Japan's Gross National Cool」と論文を発表したのが2002年。

フランスのジャパンエキスポは、1999年から始まっているが、Cool Japanというキーワードがル・モンド紙に出たのは2003年だろうか。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C394170269/E382880148/index.html

日本では、「COOL JAPAN THE EXPLODING JAPANESE CONTEMPORARY ARTS」が出版されたのが2004年。

米国でのクール・ジャパンの仕掛け人の一人、アレクサンドラ・モンローが、グッゲンハイムのアジア担当シニア・キュレーターに就任したのが2006年。


つまり、このキーワードは古く、今更言い出す奴は時代遅れで、かなりクールじゃない。
クール・ジャパンの前は、ジャパニメーションとか言ってたのも似たようなものだ。

しかも、このキーワードが通じた国々は、既にこれから成長の見込めない、欧米である点に留意すべきだ。

経産省が昨年まとめた報告書でも、今後の国際展開先としてはアジアに注目していた。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/movie.pdf

上記報告書では、アメリカ市場への進出に失敗する最大の理由として、人材不足を挙げていた。アメリカ市場へ進出するための日本映画業界に必要な人材の要件として以下を示し、そういった人材は育成するには時間がかかるから、諦めてアジアを開拓しようという悲しい論理だが、しかしまだ冷静だった。
-->
 【専門知識】
・英語力(脚本や契約書の読解力)
・知的財産権の知識
・映画業界特有の会計の知識
・制作に関する知識(アメリカの大学、大学院での履修経験。しかも業界内での評価から、映画関連大学は、トップクラス校である必要性)

 【教養、素養面】
・業界特有の慣習、文化の把握力
・業界への同化力
・歴史、文化やトレンドなどの知識
・配偶者の社交性
・交渉における機転やジョークのノウハウ
<--

どうしてそれが今年になって、「コンテンツ海外展開ファンド」を創設すれば海外で稼げる、なんて無謀な戦略につながる?
俺たちクールだから?

寝言は寝てる時に言ってくれ。


アジアでは、哈日族(ハーリー族)はいるから、彼らを増やすような戦略は重要だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%88%E6%97%A5%E6%97%8F
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1694

しかし、既に哈日族な人々には、クール・ジャパンなどと言う必要は今更ない。

この点、以下のブログ(この方も経産省ですが必読)の「クールジャパンはインナーシンキングだ」という意見に、自分も賛成する。
http://d.hatena.ne.jp/masays/20100406
アニメージュの読者なら30年前から知ってる、という意見も同感(苦笑)

これから成長市場のアジアを主戦場とし、そこでまだ哈日族でない人々に訴えるには、クール・ジャパンなんて自画自賛が漏れ伝わるのはマズイ。

しかも、どうして「コンテンツ海外展開ファンド」なんだ?
どうせコピーするなら、クール・ブリタニアをもっと精巧に分析して、本家以上にしてくれ。なんで、劣化コピー以下の粗悪品な政策になってるのさ?
「登録商標ブリテン」をちゃんと分析したかい?

冷静な情報分析ができず、俺たちはスゴイ的な誤信に基づいて宣戦布告みたいな、いつか来た道と同じではないか。

アバターと竹槍で戦えと?


今、CG制作現場で使われている主要ツールで、国産のものなどないに等しい。
AutodeskAdobeの2社の製品抜きでは、何も作れないと言っても言い過ぎではない。
実際、国産ツールなんて、竹槍程度のものしかないのだ。

にもかかわらず、何でこんなに自信を持っているのか、さっぱり理解できない。


もちろん、制作現場の人間は、負けてることをよく理解している。
だからこそ、ハリウッドの下請けでもやってみたいという意見に、賛成が集まる。

フルCGで映画を作る時、最初に検討するのは、どのソフトウェアを使うかだ。
高いけど、PixarからRenderManを買うか?とか、とっても悩むのだ。

しかし、その選択肢に国産ツールなど、一つもない。選択したツールに深刻なバグがあって、制作に支障が生じても、海外のメーカーはほとんど対応してくれないと分かっていても、それを買うしかない。

道具を海外依存しておいて、ファンドがあれば勝てると思うような妄想は、制作現場で苦労してる人間からは、出てこないだろう。かなりマヌケだ。

その辺の詳細は以前、以下に書いたので繰り返さないが...日本の映像制作は、映画産業以外の仕事で食いつないでる点を理解して、効果のある産業支援を検討して欲しい。
http://maruko.to/2010/03/post-81.html

先月、円谷プロダクションデジタル・フロンティアフィールズに買収されたのも、必然の流れだ。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=201189
http://www.p-world.co.jp/news2/2010/3/29/news3894.htm


ところで、これから開拓すべき市場は、本当にアジアなのだろうか?

日本作品に好意的でありながら、ハリウッド作品を素直に受け入れられない、資金の豊富な国々と言えば、中東のイスラームな国々だ。経産省の資料等では、中東に関しては一言程度しか触れられていないが、民間のアニメ・CG制作会社は、既に中東へ関わり始めている。
http://animeanime.jp/biz/archives/2009/04/cg_4.html

上記サウジアラビアでのプロジェクトは、最近やっと動き始めたが、自分も在職中に見積もりに少し関わったこともあり、今後に注目している。なお当時、社長から冗談半分に「サウジ行く?」と聞かれたが、退職したのはそのせいではない(苦笑)

http://riyadh.exblog.jp/13433802/
いやはや、デッサンから始めてるとは、頭が下がります。
--5/16訂正
上記リンク先は、某国のお国事情を心配した人物からの指摘で、記事が非公開となったそうで、現在読めません。何が問題だったのか分かりませんが、単に、サウジでCG教える前にデッサン教えようと見本描いたという話だったのですが...仕方ないので、移動先から他のエントリー見て、あちらの雰囲気を味わってください。
--

冗談抜きで、石油依存から脱却しようとしている中東諸国への文化的な関わり方というのは、今後の日本にとっても重要だろう。

例えば、日本の家電は、既に韓国等に負けており、挽回の兆しはない。今まで、アジア市場で負けているのは、安価な製品じゃないと売れないからで、日本製品は性能が上だけど高いから売れない、と説明されてきた。しかし、ドバイでも日本の家電が韓国製品に負けているそうで、値段は問題じゃないことが分かる。
http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428/31697357.html
(上記ブログのコメント欄で日本擁護してる人が、正に自称クール・ジャパンと同じニオイがする(苦笑))

今後、技術分野での優位は、益々失われると考えるのが順当だ。そういう意味でも、クール・ジャパンなんて今頃言ってるのは、かなり恥ずかしい。
サウジじゃまだ、一応尊敬を得られている日本人というブランドは、今後は何によって維持できるだろうか。

かつて中東諸国では、ポケモンがハラームだと、ファトワーが出た。イスラームの教えに反するとして、サウジでも禁止になった。逆に言えば、それほど大人気で、社会問題になっていたのだろう。
http://www.cafeglobe.com/news/dailynews/dn20010424-02.html

しかし、それでも日本のアニメは、今も受け入れられている。なんという素晴らしいお得意様だろう。イスラーム圏での日本のアニメの人気は、単なるブームではなさそうだ。中東から先進国を眺めた時、日本だけ違って見えるのかもしれない。

そんな中、超保守なサウジで日本人がCGを教えるということは、広く中東地域の将来の文化に、確実に影響を与えるだろう。

そのうち、サウジで一定規模のCG制作が可能となれば、オイルマネーで日本に下請け仕事、くれるかもよ...え?違う!?(苦笑)

蛇足:
ついに某試験まで1ヶ月を切り、ブログ書いてる暇がなくなるので、試験後に確実に失っているであろう気力を回復するまで、しばらくこのブログの新規エントリは控えます。

追記:5/24
「あなたが思う"クール・ジャパン"コンテンツは?」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1005/18/news098.html
うーむ、酷い調査&記事だ。
「最近、注目されるようになっている」とか、2行目から嘘ではないか。
一体、この記者の考える「最近」とは、何十年前までを含むのだろうか?
しかも、ドラゴンボールやドラえもんがクールとは、東京工芸大学はどんな質問したんだ?
質問する前提として、「クール」の意味を定義しないで、質問したんじゃあるまいな?
2ページ目に載ってる「宮崎駿映画で世界の子どもたちに見せてあげたいと思う作品」なんて質問自体、押し売りクール・ジャパンそのもの。
せめて、「見てもらいたい作品」というなら、まだ分かる。何で、質問からして上から目線なんだよ。


ところで最近、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会の報告書が出た。
http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006.html

産業構造審議会情報経済分科会みたいには、クールジャパンを盲信せず、ちゃんと日本が負けてることを真摯に受け止めてるところから考えてるのは、素晴らしいと思う。

でもやっぱり、パチ産業は無視してるけど(苦笑)

http://www.meti.go.jp/press/20100514006/20100514006-3.pdf
上記報告書の、表記上のP16にある
「② 大規模CG映像製作分野への参入」に出てくる
「アジア域内でのCGアニメ共同制作のためのインフラ構築構想(Creative Asian Pipeline 構想)」ってのが気になる。

概念的な話なのか、物理的にインターネット経由で共同作業とかいう無謀な話だろうか?

海外と仕事って、結局先方の国のインターネット普及状況に左右されてしまう。ヨーロッパにしろアジアにしろ帯域が狭くて、どこも光回線は皆無だから、連番画像とか大きいデータは、結局HDDをDHLで直送ってのが、まだまだ現実なんだよね。

追記:5/25
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」の提案者さんのブログで、「コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会」の報告書についてのフォローがされてましたので、リンクしておきます。(このエントリーにリンクしていただいていることに、遅ればせながら今気づきました。)
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx_20.html
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/05/vfx3.html
先週、今回の報告書を読んだ時、アイディアボックスを反映しているのかな?とは思ったのですが、審議会と研究会の関係に詳しくないので、ぬか喜びしたエントリーは控えようと思っていました。しかし、上記3つめのエントリーによると、やはり意見が反映された報告書なのだということです。あとは、6月の新成長戦略にどうつながるか、注視したいです。

なお、上記を読んで、経産省のイメージの話がありましたので、このエントリーでも批判的に書いているため、念のため付言しておきます。

私の在籍したロースクールは、社会人のための夜間ローでしたから、クラスメイトは皆、仕事と二足のわらじでした。そして、様々な職種の様々な年齢層のクラスメイトの中に、経産省の現役官僚もおりました。共に勉強するうちに、職場の苦労話も自然と耳に入ってきましたから、その大変さも少しは理解しているつもりです。

また、今までもアニメ業界の下請け問題等の健全化のため、経産省が様々な取り組みをしていることも理解しており、私の中では、「経産省GJ!」と思うことも多いです。そういう、ある種の期待の高い役所でもあり、アイディアボックスを始めたことも、私は高評価しておりました。

それだけに、当初の産業構造審議会にガッカリしたのです。

そして、コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会が、アイディアボックスの意見を反映しているのであれば、その報告書を公開した時点で、
http://twitter.com/openmeti
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/
これらで報告してくれても良いではないか、と思うのです。
せっかくTwitterやブログがあるのにアナウンスされなかったので、「アイディアボックスと無関係なのだろうか?」と、迷いました。私が報告書の公開を知ったのは、偶然他人のツイートからです。

そんなこんなで、経産省そのものをダメだとか言う気は全くなく、個々の人々が頑張ってることも知ってますが、問題点は問題点として指摘する、というスタンスです。

と、追記が長くなってしまいましたが、今年の新司法試験が終了ということで、今週は上記経産省のクラスメイトとも久々に飲むので、「メディアコンテンツ課」ってどうよ?とか聞いてみようかなw

追記:5/30
と、上の追記をしたところ、5/27にアナウンスされました。
http://twitter.com/openmeti/status/14798079247
http://d.hatena.ne.jp/ideaboxFU/20100527/1274919221
書いてみるものです。
って、単なる偶然か、ここを見ていただけているのかは、分かりませんが(^^;

ちなみに飲み会は、諸事情で急遽中止に。残念!

追記:6/10
「経済産業省にクール・ジャパン室設置」
http://www.animeanime.biz/all/2010060803/
言葉を失った...
今からでも遅くないから、「実はソレ、温暖化対策室の間違いでした」と言ってくれ!


少し先送りになった、東京都の非実在青少年についての条例改正案について、東京都小学校PTA協議会が、こんなことを書いてる。
http://ptatokyo.jugem.jp/?day=20100316
-->
報道によれば、昨年の児童ポルノ事件は全国で前年比約4割増の935件と
過去最多であり、小学生以下の被害者も約7割増の65人となるなどの
状況にあり、保護者の不安はこれまでになく高まっています。

<--

書いてあることのうち、上記部分だけが、唯一の客観的な事実かな。

-->
また、漫画やアニメであっても、幼い子どもが自分から性交を求め、
快楽を得ているかのようなもの、親子や姉弟・兄妹間の激しい性交が
愛情表現の一環であるかのように片付けられているものなど、
大人ですら良識のあるものなら目をふさぎたくなるようなものが、
何ら規制されることなく書店の店頭に置かれています。

<--

ここは、実際は現行の条例で規制されてるので、事実ではない。
というか、ゾーンニングもしない書店があるなら、そこに文句言った方が良い。


さて、PTAさんが書いてる、児童ポルノ事件の数字は、以下の警察庁の資料に書いてある。

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/syonenhikou_h21.pdf

上記資料のP12(実際はP20)からの、「5 少年の犯罪被害」から以下より一部抜粋(一部余分な部分を短縮したりして表を修正)してみる。
少年の犯罪被害の推移_s.jpg

少年の性犯罪被害の推移_s.jpg

少年の刑法犯被害の推移_s.jpg

小学生の犯罪被害の推移_s.jpg

少年犯罪被害の推移_s.jpg

13歳未満の少年の犯罪被害の推移_s.jpg

つくづく思う。日本の青少年は、犯罪被害が年々減っていて、素晴らしいね。こんな国、他にあるのかな。

あれ?すると、PTAが言ってる数字は?

ということで、以下の表の赤で囲った部分。

児童買春・児童ポルノ禁止法違反の送致状況_s.jpg

なななんですと!
児童ポルノだけ平成17年(2005年)から激増している!

などと驚いてはいけない。以下のサイトのグラフ参照。

http://toriaezumitekitayo.blog88.fc2.com/blog-entry-35.html

児童買春・児童ポルノ禁止法の2004年改正で、処罰範囲が拡大されたから、それまで処罰されなかった行為が、2005年から処罰されるようになっただけ。社会状況が悪化したわけではない。

そういう意味では、1999年の桶川ストーカー事件での警察怠慢後の、2000年の通達以後から、認知件数が激増したのと似たようなもんだ。


つまり、2005年からの児童ポルノ事件数の激増は、それまで処罰されなかった行為が、とても有効に処罰できるようになったことを意味しており、改正された法(現行法)が、とても有効に機能している何よりの証拠に過ぎない。

PTAさんは、もしかするとTVに毒されていて、センセーショナルに事件を取り上げる番組を見て、犯罪が増加しているとか、物凄い大きな事実誤認をしているかもしれないけれど、自分の印象としては、5年前から社会が急激に悪化したなどとは、実感したことがない。

犯罪社会学を勉強したり、ちゃんと犯罪白書を見れば、我が国の悪質な犯罪は、記録史上最低と言えるほど減少しており、かつてない程安全な社会になっていることは、客観的に明白なので、少年の犯罪被害が減少するのも当然だろう。

それでもPTAさんは、もしかしたら「そ、それでも、小学生以下の被害者が昨年比約7割増の65人なんて異常だ!今、過去最高に社会が悪化しているんだ!」とかおっしゃいたいかもしれない。

ははは...

児童ポルノ事件被害児童構成_s.jpg

小学生に限定するとだね、今から10年前の方が被害者多かったから、むしろ減ってますな。

PTAさんの言い分は、客観的な資料や証拠を読めない、子供のような発想ですね。

でもまあ、同じ警察庁の資料に基づくのに、こんな過激なグラフを見せられたり
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_tyosa-jikenchildren20100218j-01-w330
こんな恣意的に2004年以前を削ったグラフを見せられたりしたら、
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100218k0000e040060000c.html
マスコミの思う壺に、犯罪が激増してると、誤解しちゃうのも仕方ないか。

PTAさんは、情報リテラシーに欠けるようなので、お子さんの手本となるためにも、親御さんのためのお勉強の場所を作るとよろしいですよ。


さて、この手の警察資料では、突発的な数値の変動があった場合で、社会に大きな変化がない場合、警察が特定の犯罪の検挙に重点を置いたり、法律が変わったりするパターンであると解するのが、犯罪社会学的には順当なところだ。だけど、特に要因もなく、なだらかに変化するカーブは、現実の犯罪発生数の変化を反映していると解する信憑性が高いだろう。

すると、性犯罪含め、少年の被害は減少傾向と見るべきだ。それが、社会的傾向とすると、これに逆行する児童ポルノの突出が、尚更怪しい。

児童買春すら増えたと言うほどでなく、むしろ減少傾向で、特に出会い系サイト経由の児童買春は大きく減っている。これは、各インターネットや携帯事業者等の自主的な対策の効果もあるだろう。

なのに、児童ポルノの増加分は、ほとんどネット利用のケースの増加分そのものだ。

しかも、増減率99.6%って、いきなり倍に増えてるじゃんか。
平成20年と21年で、ネット上に児童ポルノが倍に氾濫した?

常識ある大人なら、1年で児童ポルノ事件が倍に増えたなどと言われれば、社会不安に陥る前に、その数字を疑うだろう。実際、日常的にネットを利用していれば、犯罪が倍に増加したなんて印象は受けないのだから。

あ、でも、ちょっと思い出すと、昨年は児童ポルノ関連で、それまではあんまり聞いたことなかったような事件が話題になっていた。

例えば、海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲示板に掲載した人物と、それが掲載された掲示板を開設していた大学生が逮捕された。
ニュースを見た時、リンクしただけとか、リンクが掲載されただけの掲示板開設者が逮捕されるとか、驚いたよ。
http://www.yomiuri.co.jp/net/security/s-news/20090708-OYT8T00330.htm
法や社会状況と関係なく、捜査機関側の判断基準が厳しくなったのかもしれない。

あと、母親が2歳の自分の娘の裸の写真を撮って逮捕されたのに続いて、母親が我が子の写真を売りまくる事件が続いた。正に昨年から急増した事件だ。
http://www.so-net.ne.jp/security/news/library/2073.html

金のために写真を売るってのは、単純に考えれば経済状況が悪化した影響も考慮すべきだろ。去年と一昨年で大きく変わったのは、つまり、リーマン・ショックの影響か?

昔は子供そのものを売り飛ばしてたのに比べれば、マシ?なわけない(苦笑)

あと、見た目が未成年に見える成人女性を撮影した猥褻ビデオで、擬似児童ポルノで逮捕とか話題になってたな。え?流石にこれは児童ポルノにはカウントされてないか(笑)


まあ、どっちにしても、今までの児童ポルノって、全部実在の被害の話だから、非実在青少年を規制すべきかどうかとは、全然関係ない話にしか聞こえない。PTAさんの書いてることは、論理的関連性がない無関係の事実を根拠に、アニメや漫画を規制しようっていうのだから、さっぱり分からん。実在児童のポルノの規制と、非実在青少年規制を関連付けるには、何かもう一つ客観的な根拠が必要であり、それがなければ論理の飛躍に過ぎない

でも、他に示されてる根拠って

-->
また、こうした漫画等の蔓延によって、青少年の判断能力や常識、価値観が
幼いときから歪められてしまう危機感を強く感じています。

<--

これだけ。
単に、抽象的な危険を想像しているだけではないか。

すると、やはり危険が具体化していないという意味で、表現の自由が失われる危険を訴える条例改正案反対派と、何も変わらない。

共に抽象的な危険を想定して対立するなら、まだ、憲法に根拠がある条例改正案反対派の方が、正当性があると感じる。

特に気持ち悪いと感じた文章はここだ。
-->
子どもを守るため、子どもが健やかに育つために、児童ポルノを根絶すること、
子どもを性的対象にする図書が青少年の目に触れないようにすること。
たったこれだけの願いであるにもかかわらず、一部には、えん罪や
表現の自由の規制を理由に、この条例改正案に反対している人がいると
聞きます。

<--

実在児童のポルノを根絶することに反対してる条例改正案反対派の意見なんて、聞いたことないぞ?

で、青少年の目に触れないようにするのは、ゾーニングでOKな話だ。
これも、反対している条例改正案反対派なんて、聞いたことない。

しかも、最後は伝聞だしw
誰か周囲に、妄想や嘘を吹き込む人々が集まってるのだろうか。

妄想でないなら、対立勢力を貶めようとする、意図的な印象操作ということになろう。

キモイですよ!


そもそも、今の条例だってちゃんと機能している。
児童買春・児童ポルノ禁止法だって、昨年国会で不必要に改悪されそうになったけど、今だってちゃんと機能してる。だからこそ、逮捕者が出るのだ。
新たに非実在青少年を規制したって、実在児童ポルノを根絶することとはリンクしないということが、どうして理解できないのだろ。

どこか、類似の規制を行っている国で、児童ポルノ根絶できた国があったら、是非教えて欲しい。

別に、児童ポルノを好むような奴を擁護する気は全くないが、18歳未満の性行為や性交類似行為を肯定的に描いてはいけないなんて条例改正案は、どう常識的に考えてもやり過ぎだろ。民法731条で、女性は16歳で結婚できてしまうのに、18歳未満の性行為は、肯定されてはいけない行為なのですか?

改正案を読めば、まともな国語力がある日本人なら、その危険性が理解できるはずだ。

PTAさんが、高校生の性行為は、全て根絶すべきと思ってる人々なら、言い分としては理解できるのだけど...まさかね。


現実は、我が国は少年の性犯罪被害がどんどん減ってる社会なのは上記資料の通りだから、アニメや漫画がガス抜きになって、犯罪抑制に寄与しているという漫画家たちの主張の方が、まだ説得力を感じる。

おまけに、昨年児童ポルノ事件が急増したというなら、尚更、それ以前から蔓延している過激なアニメや漫画の影響があると主張するのは、因果関係を無視しすぎだろう。相関関係すら認められない。

更に言うと、日本の少年は、犯罪被害が減少しているだけでなく、少年が犯罪を犯した側となる、刑法犯少年も減少している。

刑法犯少年の推移_s.jpg

凶悪犯の推移_s.jpg

ただし、凶悪犯の減少っぷりは凄いけど、実は知能犯が増えてる。

知能犯の推移_s.jpg

子供を持つ親御さん方は、こういう現実を把握してますか?

更に、触法少年にも触れておこう。触法少年とは、刑法41条で処罰対象から除外される、14歳未満の刑事未成年で、刑罰法令に触れる行為をした子供のことだ。

触法少年の推移_s.jpg

これも、別に問題ないとしか読めない。
すると、やはり少年犯罪の減少が大きいことを重視すべきだ。今の子供は、高校入学前くらいから、ちゃんと分別をわきまえる率が向上しているということだろう。

未成年人口の減少率を計算に入れて比較もしてみたが、有意に少年犯罪率が減少している。(もっとも、人口が減少すれば犯罪数が減少するのが当然という考え自体、物事を単純化し過ぎだが。)

一部の知能犯の増加を考慮しても、犯罪に走る未成年が減少傾向にあることは、正当に評価されるべき事実だろう。


し・か・し、PTAさんが、本当に注目すべき問題が、以下の表にある。

特別法犯少年の送致人員_s.jpg

触法少年の行為別補導人員_s.jpg

理由不明だが、軽犯罪法違反の事件だけ、激増している。
人口が減少したって、増える犯罪は増える。

軽犯罪法とは、PTAの皆さんが、漫画やアニメで心配しているような性表現の問題とは、全く別次元の問題だ。

軽犯罪法(Wikipedia)

ところが警察庁は、こういうことにはロクに説明してくれない。
だから、マスコミも取り上げない。
そういう問題こそ、PTAさんが問題視すべきなんじゃないですかね。


さて、以上なんですが...

PTAさんは、もう少し健全な発想で、少年の犯罪被害がどんどん減ってい我が国が、他国と違う点を考えてみるべきじゃないか?

具体的に、表現規制の厳しい国の犯罪率と、表現が比較的自由な我が国の犯罪率を比較してみるとか。

マスコミに騙されずに、頭冷やして客観的に考察しないと、子供を危険にさらそうとしているのは、条例改正に加担しているPTAさんだった...なんて結果になりかねないですよ。

こう説明すると、犯罪被害減少の現状を、規制強化の成果だと勘違いする人もいるみたいですが、そういう人には、児童ポルノ事件が平成20~21年で倍に増えたことになってる数字についての認識を、是非聞いてみたいところ。なんせ、改正案に賛成な人は、事件が「増えた」ことを前提にしているので。

信じるかは別にしても、こういう話もありますから。
「児童ポルノ規制による性犯罪の増加」
http://like700.hp.infoseek.co.jp/53.html

また、少年の人口減少を犯罪減少の原因だと信じてる人には、加害者人口と被害者人口を混同して考えていないのか、聞いてみたい。少年人口の減少は、少年が加害者になる事件の減少を説明する一因にはできるが、少年が被害者となる事件の減少を説明するには、無理がある。成人の加害者が、高齢化で引退でもしたのですかね?

まあ、実はある年に生まれた、異常に加害者率の高い大人の年代があるのは事実で、そういうのも比較すると、もっと面白い考察は可能かもしれませんが(苦笑)

他に、自らを正当化できる理由をご存知でしたら、是非教えてくださいな、PTAさん!


追記
なんとまー、事実誤認で暴走してるのはPTAだけじゃなくて、東京都青少年・治安対策本部すら、警察庁の発表と真逆の、虚偽の事実を前提に、無用の条例改正を急いでるとは驚いた。流石にこんな簡単な事実関係を誤って条例作るって、常識的に考えられないんじゃないだろうか。呆れたの通り越して、本当に怖くなってきたのですが...
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2010/03/317-5bb0.html

おまけに、東京都小学校PTA協議会も、保護者の声を代表してないそうだ。いよいよおかしな話になってきた。
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2010/03/post_86fe.html

あと、冒頭に「先送り」と書いたけど、現状では明日(3/19)決まってしまう可能性が、まだまだ高いそうだ。
都議会総務委員会傍聴してるMIAU事務局長さんのつぶやきを見るに、条例改正案をどうこうしようってレベルじゃなくて、日本全体をどうにかしようとしてる都議会総務委員会の雰囲気が伝わってきて、ドン引き。
http://twitter.com/himagine_no9/status/10659303702

もの凄い多くの反対意見が表明されてるのに、聞く耳持たずに、客観的な事実誤認(もしくは恣意的な曲解)に基づいて、こんな稚拙な条例改正案を通したい人って、どんな人たちなんだろう?

日本で戦後の民主主義教育受けているなら、手続きを尊重することこそが、民主主義の正当性を担保する唯一の方法だと、知ってて然るべきだろうに。

こんないい加減な不正義が、まかり通ってしまいそうだなんて、何か夢を見ているようだ。


追記2
5月10日に、このエントリーのファイルが壊れてテキストの最後の方が消失してしまっていたことに気づいたのですが、バックアップが見当たらず、思い出して少し書き直していました。

そうしましたところ、ご親切にコメント欄にて、壊れる前のテキストをご提供してくださる方がおり、5月21日に無事、元の内容に修復できました。

あーる様、お陰さまで無事修復でき、大変助かりました。
誠にありがとうございますm(_ _)m


最近、いくつかの場所で、映像制作やコンテンツ産業の在り方みたいな議論を目にしたので、自分も思うところを述べておきたいと思う。まとまりもなく、とりとめもない話をつらつらと...


■パチ仕事と映画、アニメ仕事
日本のアニメ、CG業界の特徴の1つに、パチンコ・パチスロ産業への依存というのがある。これは、旧作品の権利を持つ会社が、パチメーカーにその利用許諾を与えるという意味での受け身な話ではなく、パチンコ・パチスロ化する際に発生する映像制作案件を受注するという形での、純粋な映像制作仕事としての能動的・発展的関係の話だ。パチスロ台の液晶画面で流れる映像も、CG制作会社の立派な仕事なのだ。パチメーカーは、CG制作会社に、とてもまともな対価を支払う、お得意さんである。

対して、公知の事実として、日本のアニメの現場の貧しさについては、今更説明を要しないだろう。これは、実写系でも映像制作現場一般の話として、ある程度共通する部分もあるかもしれない。CG制作会社は、アニメだろうと実写だろうとゲームだろうとCMだろうと、コンピュータで作る映像なら、何でも受注できる会社が少なくない。しかし、アニメや映画仕事を受注する場合、元請けでもなけりゃ、まともにやって黒字にするのはかなり困難。その手の仕事の発注元は、映像制作にまともな金を払う気がないことが少なくないが、同時に、赤字で受注する制作会社も後を絶たない。需要と供給が、制作コスト割れしたポイントでバランスが保たれている。

この差が生じる理由は簡単だ。かつて、多くのCGデザイナーやプログラマは、パチ仕事をヨゴレだと思って避けていたが、映画仕事に参加するのはステータスなんで、若い頃はタダでも働きたい仕事だった。著名な劇場作品でも、学生上がりの未経験者を、インターンシップと称してただ働きさせているケースは後を絶たない。映画仕事を受注した会社は、学生の夢を食い物にしてでも活用しないと、赤字が拡大してしまう。

ある程度の規模の制作会社になると、有名な劇場作品に参加するのは、求人のために必須となる。同時に、劇場作品への参加を夢見て入社してきた社員たちの、モチベーションを維持する必要もある。だから、会社の宣伝、イメージアップのため、劇場作品を一定数受注し続ける。

すると、優秀な人材を確保するための赤字映画仕事と、会社経営を維持するための黒字パチ仕事とのバランスが、とても重要となる。黒字にしたいなら、パチ仕事ばかりやれば良いと思うかもれいないが、イメージの悪い会社に人材は集まらないので、両立させなければならない。特にデザイナーは、転職が頻繁で、フリーランスになってしまう人も多いので、一定規模で能力の高いデザイナーを雇用し続けるには、会社が魅力的でなければならない。更にパチ仕事は、ノウハウも必要で、守秘義務の厳しさもあり、映画仕事のように安易に学生を使うこともできない。

これが10年前なら、映画の赤字を埋めるのはゲーム仕事だった。アニメ業界からゲーム業界への人材流出も、当時のトレンドだった。しかし、ゲーム機の性能が向上し、リアルタイムの描画能力が高まった結果、ゲーム向けの映像制作仕事が激減した。憧れの仕事と収益の上がる仕事が合致していた時代は、ゲーム機の性能向上によって終わり、ゲーム仕事に代わって黒字仕事の柱となったのが、ヨゴレのパチ仕事だったわけだ。(念のため言っておくが、自分自身は、パチ仕事をヨゴレとは思ってない。十分に、素晴らしいと思ってるが、その理由は後で。)

みんなが憧れる映画仕事は、ヨゴレのパチ仕事によって、一部支えられてきた。
そしてやっと、パチ仕事のイメージが改善してきたのは、ごく最近の話だ。


■ダメな仕事
と・こ・ろ・が、パチ産業は、いわゆるコンテンツ産業の市場規模が計算される場面などでは、何故か除外されている。政府の発表する資料などでも、パチ業界は存在しない前提で、コンテンツ産業が語られる。20兆円産業のパチを無視して、それより遥かに小さな残余の業界をまとめて、コンテンツ市場の在り方が議論されている。そんな議論の価値が低いのは、言うまでもないだろう。

しかし、映画業界の権利者な方々は、自分たちのコンテンツが、実はパチのおこぼれで作られてる部分があることを知らないかもしれない。そんな人々にいくらヒアリングして資料が作られても、現実を全く反映しないのは当然だ。(対してパチ業界は、映画やゲームで培われた映像制作のノウハウの恩恵にあずかっている。)

各業界の権利者団体は、別個独立で、他業界を知らないかもしれない。しかし、映像制作現場のレイヤーで実際に様々な業界からの映像仕事を受注している各CG制作会社は、実は共通なので、複数の別個独立の業界のリスクが、映像制作現場のレイヤーで担保されてるのだ。逆に言うと、担保できてしまっているから、いつになってもダメな業界はダメなまま、なのかもしれない。

--追記
パチンコ業界は、警察庁が監督官庁であり、コンテンツ振興を扱う経産省からは手を出せないのかもしれない。
--

ダメな業界の仕事というのは、単に金がないだけではなく、コンテンツ制作過程が非合法だったりもする。映画仕事では、著名な監督が、ごく当たり前に、著作権侵害や制作に必要なソフトウェアの不正コピーを現場に指示する。例えば、各社に散らばった100名程度のスタッフで、監督のイメージする映像を共通認識して完成を目指すには、コンテだけじゃ足りないので、監督のイメージに近い既存の映画作品から、シーンやカット毎にリッピングして、関係スタッフに配られたりする。何十人もに違法DVDコピーで配られることもあれば、主要な制作会社のサーバーにリッピングした作品が蓄積されたり、海外の外注先に配布されたりする。(もちろん昔は、VHSの大量コピーだった。)

スタッフは、必要に応じてPCで参考作品の映像を見て、監督のイメージを共有しようと努力しながら、自分たちの作品を制作する。スタッフの人数分、何十作品ものDVDを買うなんて真面目なことは、誰も考えない。何しろ予算の少ない仕事だ。他人の作品を参考にする事自体は合法でも、参考にする手段が非合法なのに、それに文句を言う映画制作関係者は、ほとんど存在しない。リスペクトしてれば良いと思ってる。

劇中で表示される文字などに至っては、どこかからフォントを違法コピーしてCD-Rに焼いてきて、ポンと渡され、「この文字でよろしく」みたいなこともある。

自分がかつて在籍したCG制作会社では、そういう非合法な制作手法を排除するのが、自分の仕事の一つでもあった。受注仕事では、違法行為を指示してくるのがクライアントであり、これと衝突することは極力避けなければならない。現場にウルサイと思われつつも、自分たちの仕事を合法とするため、いつも苦労した。

CG業界とアニメ業界の垣根が崩れ、旧態依然としたアニメ制作会社と共同作業するようになると、本当に最悪な場面に出くわした。アニメの会社は、ソフトウェアを買うものだと考えていないところが大半だ。金の無い業界の常識とは、そういうものだ。それでも、一緒に仕事をする以上、不正ソフトを使わないでくれと、相手の会社の責任者と話をしたりもした。「そんなことしてると、メーカーの監査が入りますよ」と脅しても、「そんなのは追い返すから大丈夫だ」と、まるで気にするのが馬鹿みたいに言われる業界だった。

不正を排除しようという意識を持たない会社が大半だが、そうして違法に作られた自分らの作品の権利だけは、絶対に守られるべきだと信じて疑わない、不思議な業界。それが、映画やアニメの業界だ。極論ではなく、一般論として、日本のアニメ等で、その制作過程全体において完全に合法性が担保されている作品は、皆無と言って良いだろう。中には、「うちの会社に不法行為はない!」と言いたい会社もあるだろうが、下請けや、人件費が安価だからと仕事を投げる、アジア各国の外注先の制作会社が何をしているかは、見て見ぬふりだ。フリーランスのデザイナーに発注する場合も、その個人が、自宅でどんなソフトをしっかりと買い揃えているか、クラックされた不正ソフトを使用していないかなど、発注側は誰も気にしない。結局、安く受注する会社や個人を便利に使うことで、不法行為を押し付けている。


■パチの良さ
対してパチは、完全に合法的な仕事を求められる。発注元が、何度も納品物をチェックする。高い金を出すだけでなく、合法的なコンテンツの制作にこだわる会社が多い。例えば、CGではテクスチャー画像をいくつも使用するが、パチ仕事では、作中で使用した全テクスチャーの著作権チェックがされる。テクスチャー一覧を提出すると、先方の法務部がチェックしたりする。テクスチャー画像は、ロイヤリティフリーの素材集などを買って利用することが多いが、素材集の発売元の会社が無くなっていると、テクスチャー差し替えの指示を出されたり...

そんなことは、かつてのゲーム仕事でも、要求されなかった。


フォントも、遊技機で合法的に使用できる、業務用フォントの契約を求められる。一度、先方がフォントの種類決定を後回しにして、仮のフォントで納品することを現場レベルで合意し、後に先方が差し替える話になっていたのに、先方の法務部に伝わっておらず、「不正なフォントで納品し、損害を与えた」と、損害賠償に発展しそうな時もあった。本当に、合法的なコンテンツにこだわる業界だ。(様々な著作権関係の裁判経験から、パチ業界は学んでいるのかもしれない。)

そういう仕事をしつつ、一方で、自堕落な映画やアニメの関係者に接すると、合法的なパチの仕事を受注できる会社というのが、とても誇らしいと感じるようになったのを覚えている。

しかしながら、パチに代替する黒字仕事が登場する前に、もしもパチ仕事が激減すると、経営が傾くCG制作会社も少なくないだろう。パチ業界は、最近持ち直したような話も聞くが、ちょっと前は市場規模が縮小傾向で、先行きに不安があった。そこで待ち望まれてきたのが、カジノ解禁だ。


■需要創出としてのカジノへの期待
カジノに期待するというと、どうやら、カジノのゲームマシンの仕事に期待をしているのではないかと、大きな誤解をしている人がいる。それは、あまりにもカジノを知らなすぎる。

もちろん、既存のパチメーカーは、海外のギャンブルマシンの供給も行っているので、既存のパチメーカーとの関係の延長で、カジノ向けのマシンの仕事も、期待が大きい部分ではある。CG制作会社から、パチメーカーへ転職し、海外カジノ向けの機種に関わってるなんて人もいる。

しかし、十数年前、自分がまだデジハリの学生だった頃から、SIGGRAPHとラスベガス旅行はセットだった。カジノとは、エンターテインメントの総合産業であり、当時からデジハリの杉山校長は、本場を見ろと学生に教えていた。

ラスベガスは、いたるところにコンテンツが溢れ、輝いていた。遊園地でもないのに、スタートレックのライドものや、ショー、シアターがホテル毎に存在し、どこもかしこも映像仕事の宝の山に見えた。街中の巨大スクリーンが、無数の映像を消費していた。

カジノを解禁するとは、単にギャンブルを解禁することではなく、ギャンブルを中心とした一大エンターテインメント都市を構築し、街中のいたるところにコンテンツ需要が生まれるということだ。合法化の暁には、これらの仕事を、国内の会社が受注できる制度を担保することは、必須だろう。その際、受注した仕事を海外に下請けに出すようなことを一定数制限すると、更に良いかもしれない。

これを、ゲーム、アニメ、映画などと、コンテンツの下流の権利者レイヤーの縦割りでしか業界を評価していないと、上流の制作現場レイヤーの重複に気がつかないので、カジノの魅力が理解できない。

CG制作会社に、「あなたの会社は、アニメ業界ですか?映画業界ですか?ゲーム業界ですか?それともCM業界?」と質問するのが、どれだけ愚問か分かるだろう。1つの会社で、実写合成だって、アニメだって、博物館の展示映像だって、何でもやってたりするのだ(もちろん、それぞれの専業の会社もあるが、そういうところは業界と運命を共にするしかない。)。だから、カジノ解禁で需要が創出されると、パチ依存の現状の偏りを緩和する方向に作用するだろう。それが、間接的に映画やアニメを支えることにつながる。


■制作サイドの改善
もちろん、個々の業界がそれぞれ健全化を目指すのは大事だ。しかし、日本のアニメ系の会社は、プログラマはゲーム会社にいるものだと、勘違いしてる感じがある。アニメの制作会社で、プログラマを重視して雇用している会社は、ほとんど無いのではないか。それが、Pixarに永遠に追いつけない原因だ。道具は、自分たちで作るものだという認識が、文科系アニメ制作会社には抜け落ちてる。なんせ、ソフトウェアは不正入手するのが当たり前だと思ってるのは前記の通りなんで、それを作るのに人件費をかけるという発想がないのかもしれない。プログラマが雇えないのか、雇う気がないのかは別にしても、そういう会社が淘汰されるのは、ある程度仕方のない話だ。

不正を行わずに、プログラマも雇わず、道具をひたすら真面目に買う側にいる会社もあるだろう。プラグイン一つ自給せず、必要なら買えば良いと。それはそれで、黒字を維持できるなら良いのだけれど、かなり非効率なので、小規模な会社でしか無理ではないかな。

理科系CG制作会社は、まだ、映像制作におけるプログラマーの重要性は、理解している。デジハリ時代のクラスメイトなども、インハウスのツールで海外に対抗しようと、ゲーム会社の出資でCG映画専門の大規模な制作会社を立ち上げた奴もいる。そういう会社が成功するよう、心から声援を送りたい。でも、映画ばっかじゃ飽きないの?とは思う。

専門化せず、つまみ食い的に、多様な業界の映像需要に応えられる会社というのが、時代の変化にも生き残れ、社員も飽きずに在職し続けられる、ノウハウのある楽しい職場なんじゃないかなと、個人的に思っている。

ノウハウがなければ生き残れないし、生き残った会社にしかノウハウは残らない。
焼畑農業みたいな業務スタイルの会社は、どうぞご自由にご退場ください。
...とか言ってみるテスト。


■風が吹けば桶屋が儲かる的なナニカ
このブログは、観光立国に関わるものを時々書くけれど、それは、観光立国にはカジノが必須だと考えており、カジノが認められればコンテンツ産業が潤うと考えているからだ。そして、JALを批判するのは、観光立国をインフラ面で妨げているのがJALだからだ。

航空行政が健全化し、LCC+地方空港による安価な観光インフラが整備され、普天間基地跡地だろうと、夕張だろうと、お台場だろうと、カジノが解禁され、観光立国となることが、日本のコンテンツ産業の活性化と合法化(カジノにまつわる仕事は、非合法であってはならないので、不正を厭わない旧態依然とした制作会社は受注できない仕組みも必要)につながる可能性というのに、大いに期待してる。


そして自分は、そういう時代に法律分野で貢献できたらという思いで、職を辞して法科大学院にいる。今回の日弁連の会長選にはガッカリしたし、今年はどうあがいても合格できそうにないけど、新司法試験は三振するまでチャレンジする所存。ギャンブル人生ですわ(涙)


■蛇足1
みんなの党の柿沢議員は、都議時代にお台場カジノ構想に深く関わり、カジノ推進に積極的だし、ショートショートフィルムフェスティバルにも関わってて、映像産業に興味も持ってる。かつ、みんなの党は観光立国も重視している。こういう話に興味持ってくれないだろうか?

■蛇足2
経産省が、コンテンツ振興策についての意見募集をしているので、またちょっと違う話を書いてみた。
「レンダリングサービス等におけるテンポラリライセンス」
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00786/

■蛇足3
「ハリウッドVFXの仕事を日本で受注するための支援」で、このエントリを紹介。
http://201002.after-ideabox.net/ja/idea/00131/
関連して、こちらにも紹介されてます。
http://shikatanaku.blogspot.com/2010/02/vfx_9898.html

みんな、なんとかしたいんだよね。

フォーサイト3月号が届いた。気になったのは、「危機に瀕する日本の知的発信力」という中東研究で有名な池内恵氏の記事で、相次ぐ外交・国際政治分野の雑誌の休刊が、研究者の発表の場を奪い、研究機関の水準が保てなくなり、国際的な発言力を維持できなくなる、という趣旨の問題提起をしていた。権威の高い雑誌を作り上げ維持していくことの大変さと重要さを訴えていた。

外交フォーラム」は外務省が一定部数を買い上げて採算を取っていたが、「事業仕分け」で予算が打ち切られ、3月号で終刊。

アジア経済研究所の学術誌「現代の中東」も1月号で停刊。

日本国際研究所の学術誌「国際問題」も予算カットで紙版の発行を止め、賛助会員だけのWeb版に。(ただしこれは、印刷製本版配本サービスが始まるようだ。)

そして、「フォーサイト」も4月号で休刊。

これだけ立て続けに、外交・国際政治分野の雑誌が消えれば、そりゃ心配になるのは当たり前だ。

しかし、紙媒体にこだわらずに、紙媒体以上の発表の場として、Web化を模索することは、最早避けられない話だろうと、読みながら思った。


そしたら、何とその3月号に、4月号で休刊が決まっていたフォーサイトが、夏からWeb版でスタートすることが決定したとのお知らせが!

http://www.shinchosha.co.jp/info/emergency/foresight2.html
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/201003/monthly.html

超ウレシイですw

散々嘆いた甲斐があったか?
http://maruko.to/2009/12/foresight.html

Web版についてのアンケートが始まったので、早速答えた。
http://www.shinchosha.co.jp/ssl/foresight/enquete/

-->
Q13. ウェブ版「フォーサイト」にどんな機能・サービスを期待しますか?
  PCでWeb上で記事を見る分には、過去記事検索は当然に必須だろう。しかし、単に過去記事を検索できるというより、異なる号同士、異なる筆者の記事でも、関連性のある記事をジャンル・時系列で体系的に表示して欲しい。単なる検索では、Googleでキーワードで検索するのと同じになってしまう。記事の体系的な見せ方こそ、雑誌の編集の視点であり、それは過去記事の見せ方にも必要な視点だと思う。
 号単位の編集ではなく、サイト全体で過去記事も時系列で編集し、その視点を読者に提供するようなイメージだ。フォーサイトで提供される記事を受け身で読むことと、Googleで検索して情報を能動的に探して読むことは、情報に対する接し方が全く異なる。
 例えば「中東」の情報を得たいという場合に、Googleで自分の見識の範囲で思いつくキーワードで検索し、たどり着けるサイトというのは、自分の能力に依存した限られた結果であり、自分の興味の範囲内の情報しか得られない。それに対し、フォーサイトで「中東」のページを見る場合に期待するのは、フォーサイトの視点で提供された情報に受け身で接する機会を得ることであり、自分の検索能力では辿り着けない記事を読めることに、金銭的価値を見出す。
 ただし、一度契約したら、それ以前からのユーザーと全て等しく記事に接することができるのは、継続的に契約する意欲を失わせる。そこで、そういったサイトの利便性は共通に確保するとしても、継続的に契約する者へのインセンティブとして、少なくとも読者契約期間内の記事に関しては、 eBookJapan等の専用ソフト上でも良いので、ダウンロード保存可能にして欲しい。

 また、やはり継続的契約のインセンティブとして、フォーサイトクラブセミナーの在り方を考え直して欲しい。契約中の読者のみ、セミナー会場からの Ustream生中継を見れるようにし、Twitterでハッシュタグを使い、セミナーを同時に遠隔地から見ている読者同士のつぶやきを共有できると面白い。
 読者のつぶやきをフォローしている、読者でないTwitter利用者は、何の中継を見ているのか興味を持つだろうから、フォーサイトの宣伝にもつながるだろう。
 類似のサービスとして、記事もしくはジャンル毎に、ハッシュタグを決め、契約者からしか見えていない記事に関するTwitter上での読者同士のつぶやきを推奨すると面白い。つぶやきに興味を持った人が、元記事を読みたくて読者契約するかもしれない。読者同士としても、他人がどう感じているか知ることも、また、関連した情報を持つ読者のつぶやきから新しい情報に接する機会を得ることも、面白い。

 携帯や電子書籍端末への対応は、特定の端末に限定せず、広くやって欲しいが、端末によって選択的に価格設定をしても良いのではないか。

 なお、有料サイトとして、ある程度の閲覧制限は必要だろうが、完全制限ではなく、個人の外部ブログ等から、記事の一部引用、トラックバックを可能にしてもらえると、ブロガーとしては有り難いです。
-->

という感じで。

期待してます!!

アドビが、アップグレード版の購入に使えない、世代の古い旧バージョンのままのユーザーに対して、下取りキャンペーンを始めた。
http://www.adobe.com/jp/joc/store/eco/

でもアドビは、ライセンスの利用許諾をしているだけで、ソフトウェアの所有権は譲渡してないのに、下取りって言い方、おかしくない?

-->
本キャンペーンにご応募いただくには、お持ちの旧製品のメディア本体と、「エコキャンペーンお申し込み兼ソフトウェア廃棄に関する誓約書」(以下「申込書兼廃棄誓約書」)をアドビにご提出いただく必要があります。
<--

というので「申込書兼廃棄誓約書」を見てみると...

-->
【 ソフトウェア廃棄に関する誓約書 】
本状は、エコキャンペーンのお申込みと同時にお客様の旧アドビ製品をアドビへご返却されたことを条件に、お客様の旧アドビ製品に対する使用権が直ちに終了および取り消されることを確認するのもです。お客様は当該旧アドビ製品をご利用のコンピュータより速やかに削除し、当該旧アドビ製品から作成した複製物をすべて廃棄しなければなりません。当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。お客様が本状に署名し、本状と当該アドビ製品をアドビへ返却し、アドビがそれを受領後、アドビは当該旧アドビ製品とシリアル番号の「廃棄」を行います。お客様がアドビ製品のエンドユーザー使用許諾契約書に基づき当該アドビ製品を使用する権利は、お客様が本状に署名し、本状と当該旧アドビ製品をアドビへの送付を完了した時点で終了します。
<--

なんだ、やっぱり使用権の終了・取消しと書いてある。
で、PCからアンインストールしろと。

そんなの守るユーザーが、現実に何割いるのだろうか。

それに

>当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。

これって、下取りと関係なく、そもそも利用許諾だけなんだから、最初から禁止してるはずではないか。下取りに出さなけりゃ、転売することが許されてるかの解釈が可能な書き方は、ちょっとオカシイ。

更にFAQを見ると、驚き。

-->
Q3. 対象バージョンのPhotoshopやIllustratorを所有していましたが、すでにCS2などにアップグレード済みです。このキャンペーンに応募できますか?

A3. 旧バージョンからアップグレードを継続いただいているお客さまへの感謝の気持ちを込め、上記お手続きまたは製品登録内容を確認した上で、ご応募を可能とさせていただきます。なお、アップグレード版をご購入いただくのが一番お得な選択となりますので、まずは上記価格をご参照ください。ご不明な点はアドビストアコールセンターまでご連絡ください。
<--

既に旧バージョンをアップグレード元として、新バージョンを安価に購入していても、同じ旧バージョンを下取りに出せて、もう1本新バージョンが買えると...

これが意味することを考えてみる。


まずアドビは、アップグレードで新バージョンを入手しているユーザーもが、今でも旧バージョンを活用しているという事実を認識しているということだ。

以前は、アップグレード版をインストールしたら、旧バージョンと併存を禁じて、旧バージョンを使いたいボリュームライセンスユーザーは、インストールの都度アドビに申請しろという無茶な利用許諾条件を押し付けていた会社であることを考えると、感慨深い。

しかし、どうして旧バージョンが活用されているのか、どうして新バージョンが受け入れられないのかという、ユーザー側の理由に耳を傾けるのではなく、どうにかして旧バージョンを捨てさせたいわけだ。


そもそも、旧バージョンから新バージョンにアップグレードしているユーザーが、どのシリアルの旧バージョンからアップグレードしているか、アドビは把握していない。

アドビはかつて、シリアルナンバーなどユーザー情報のデータベースに不具合が生じたことがあったが、いつのまにか、アップグレード版購入者のユーザー登録に、旧バージョンの購入者であることの証明を要求しなくなった。インストールの段階で、旧バージョンのシリアルが要求されるが、それがアドビに管理されているわけではない。

もっと言えば、ユーザー登録を必須とせず、登録したい人は任意に登録すれば?という態度に変わった。旧バージョンをユーザー登録せずとも、新バージョンへのアップグレードが可能な、吃驚するほどルーズなユーザー管理姿勢に移行した。

膨大なシリアル情報のデータベースの管理を放棄したのか、管理コストを削減したのか知らないが、アドビが正規ユーザーを軽視する姿勢だけは、昔から一環している。

だから、上記FAQの答えは、別にアドビが寛容なのではなく、そもそも制限できない、というのが実際のところだろう。


では、どうしてアドビが、こんな必死のキャンペーンまでしなければならなくなったのか、売上げのプレスリリースを見たら分かったので、グラフにしてみた。(昨年もグラフにしているので、手直ししただけだが。)

adobe2009_4.jpg

2009年第4四半期、なんと純利益がマイナスに転じた。

adobe2009s.jpg

もちろん、通年なら真っ黒に黒字だ。しかし、四半期とはいえ赤字というのは、営業部門が必死になるには十分な理由だろう。

ただし、この時期アドビは、Omnitureを買収している。この点を考慮すれば、不振は一時的なものかもしれない。かつてのマクロメディア買収前後の売上げに比べれば、遥かに上だからだ。

ところが、当時より純利益は遥かに下回る。最近のアドビは、利益率が極端に下がっている点が興味深い。

もしかするとCS4は、アップグレードユーザーばかりで、利益率の高い新規ユーザーが、ほとんど開拓できなかったのかもしれない。

不況の影響もあるだろうが、独占したプロユース市場が飽和気味で、新規ユーザー増加が見込めないのか?とか、色々想像してしまう。

そういうタイミングで、あえて年末にOmnitureを買収し、新規市場開拓に出たというなら、戦略としては納得だ。今まで散々蓄えてきたろうし、2008年末には、事実無根の「売上げ不振」を理由とした、600人のリストラを発表している。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20384723,00.htm
2009年の不振は、2008年末時点で予測済みだったわけだ。
(「事実無根」というのは、2008年末はまだ、過去最高の売上げだったからだ。)

自らは先にスリム化し、不況のタイミングで他社を買収して事業拡大。
上手い。上手すぎる...


しかし、ユーザー側から言わせてもらうと、事業拡大してまで余計な機能は要らんから、軽くてバグの少ない安定したソフトを希望したい...
http://www.omniture.com/jp/company/adobe_faq
-->
アドビ システムズがOmnitureを買収した理由は。
アドビ システムズの事業目標は、あらゆるユーザーの、アイデアや情報の関わり方に変革をもたらすというものです。アドビ システムズのコンテンツ制作ツールやユビキタスクライアントと、Omnitureのウェブ解析、計測、最適化テクノロジーを組み合わせることにより、すべてのデジタルコンテンツプラットフォームおよびデバイスを通じて、魅力的な体験やEコマースの未来を変革することのできるソリューションを提供することが可能になります。
<--




てへ!
今後も、現場が要望しない機能テンコ盛りな予感。

天下のアドビ様が、ユーザー目線に立ってくれることなんて、あり得ない話でしたねーーー
ちゃんちゃん!

蛇足:
>アドビはこのキャンペーンを通じて発生した利益の1%を、植林や里山保全に関する人材育成を行っているNPO団体に寄付します。
>ご購入の際にはパッケージやメディア不要で資源を節約でき、かつ送料無料で価格もお得なダウンロード版をぜひご活用ください。

価格がお得なのは、送料分の630円分だけだそうで...普通、節約したメディアやパッケージ分、ダウンロード版は販売価格を安くするものだろ?
何で販売価格は同じで、送料なんて当たり前の部分削れてるからって、お得とか言ってるの?
ユーザー側の資源節約が、丸々アドビの利益になるのに、何がエコだよ。

CS4の発売前後くらいからの販売方針とか、物凄くエグイ売り方をする会社になったと感じている正規ユーザーは、多いはずだ。時期的に考えると、クレイグ・ティーゲルが日本法人の代表取締役社長になったせいか?

追記:
やっぱ皆さんご不満のようで。
http://d.hatena.ne.jp/seuzo/20100207/1265518232


最近、小沢問題関連で、検察批判の声が増えてる。

これに関して、数日前にTweetしたけれど、無反応だったので、ちょっとまともに書き起こしてみる(苦笑)

確かに捜査機関の捜査手法には、問題が多い。従来から弁護士会などが問題視している点は、今後も改善を強く働きかけるべきだろう。しかし、全てを「検察権力の暴走」などと単純化して非難する人々は、重要なことを忘れてる。

令状主義の我が国では、逮捕状も勾留状も、発布するのは裁判所である。

例えば、石川議員の逮捕や勾留を非難してる人は、その必要があると認めた裁判所については、どう思ってるのだろう?

本当に、理由らしい理由が無いのに勾留されてるなら、悪いのは、勾留請求などをした検察よりも、それを認めた裁判所だろう。検察がいくら暴走しようと、裁判所がまともなら、根拠なく国民を逮捕・勾留なんてできない仕組みになってるのが、刑事司法のタテマエ。元々、権力は暴走するのが当たり前だから、それを防止する仕組みが制度に埋め込まれているのだ。

弁護人は、逮捕・勾留中の依頼者の釈放のため、勾留理由開示請求や勾留取消のための準抗告を申し立てることができる。しかし、それが認められるかどうかだって裁判所次第だ。


ところが、この国の刑事司法の問題点は、検察と裁判所が仲良しってところにある。
刑事訴訟は99%以上の有罪率。だからこそ、裁判員制度への期待も大きいわけだ。


だから、捜査手法を非難したい人は、検察の暴走を非難するより、暴走させないためにある裁判所の機能不全こそ非難すべきだろう。(ま、今回の件で実際に機能不全なのかは、知らない(^^;)


更に、捜査情報リークの問題に関しては、刑事事件だけの問題じゃない。記者クラブ問題など、マスコミが元々抱える、情報操作一般の問題だ。政治や政策の問題なんかでも、官僚等が意図的に情報リークして、マスコミを操って世論を操作するのは、日常茶飯事ではないか。記者は、提供された情報と異なる記事を書けば、以後締め出され、その会社全体が干されたりする可能性もあるわけだ。

そういう、日本の報道全般の問題を、今回たまたま検察だけ狙い撃ちするのは、「木を見て森を見ず」ではないか?

要はマスコミは、情報戦の一方の道具に成り下がらない手法を確立すべきだ。刑事事件に限らず、政治や政策の話題でも、「関係者」のリーク情報を垂れ流さずに済むように、自己批判すべきだ。


個人的には、多少行き過ぎた世論の力で、今までの刑事司法の問題点の一部(取調べの可視化とか)でも解消できちゃったら、それはそれで望ましいとも思ってる。きっと、刑事訴訟専門の弁護士などは、シメシメと思ってるかもしれないw

しかし、過度の検察不信が裁判員裁判に与える影響なども、気になる。
捜査機関の権威が必要以上に失墜することは、それはそれで望ましくないだろう。

間違っても、今後一切検察が政治家を起訴できなくなるような事態は、非常に困る。検察の高い鼻をへし折るくらいは構わないが、彼らが再起不能になるまで殴り続けてはいけない。権力と権力の均衡は、絶妙なバランス感覚が求められるだろう。


日本の国際緊急援助隊(通称JDR)25名は、ハイチ地震から5日以上たって、やっと現地入りした。阪神淡路から15年の1月17日、TVで特番が流されていた時点では、まだハイチに到着していなかったので、TVを見ると複雑な思いがした。
「緊急」って意味、なんだっけ...

残念過ぎる対応の遅さに、疑問を持つのが当たり前だ。
四川の時は、あんなに対応が速かったじゃないか。

それが、外務省のカリブ室の担当一人の資質が原因なら、残念を通り越して、情けなさ過ぎる。
http://blog.asaikuniomi.com/?day=20100115
上記ブログには驚いた。


しかし、昨日の外務大臣の会見現場からのある記者のTweetによるとこうだ。
http://twitter.com/kamematsu/status/7938044491
つまり、元々PKO部隊が行ってる治安の悪い国だから、武器を持っていけない現行法で丸腰でいきなり救援に行かせられなかったから、ということだ。これは問題だ。

すると、他国の救助隊等は皆、武器を携帯していたのか?

アイスランド外務省の広報官は「我々は日本と同じ地震国で経験がある。財政が厳しくても、助けを求める声に応じるのは当たり前だ。」と言ってるそうだが、今回地震から24時間足らずで現地入りした彼らの救助隊は、武器を携帯していたのだろうか。是非聞いてみたいものだ。

しかもJDRは、ハイチに直行せず、JALのチャーター機でマイアミまで行って、アメリカで訓練中だったとかいう自衛隊機に乗り換えてハイチ入りしている。"偶然"自衛隊機を使えて良かったね。TV的には、良い宣伝になった?

でも、マイアミで時間無駄にしないで、直行便チャーターしなさいな。
出発までに時間かかったのに、まだマイアミで、ハイチでの治安状況、安全確保対策等を確認していたなんて説明、誰が信じますかいな。
あ、例の外務省のカリブ室の一人が、ここでも手際が悪かったのですか?(苦笑)

アイスランドの救助隊を運んだのは、アイスランド航空のチャーター機で、帰りには80人の外国人をパナマに脱出させている。他国は民間機ですよ?

あ、まさか、我が国のナショナル・フラッグ・キャリアは、債務超過でハイチまで飛べませんでしたか?
アイスランドなんて、国全体が債務超過なのに(苦笑)

そりゃJALといえば、かつてイランなどからの在外邦人救出ですら、危険だからとフライトを拒んだ会社として有名だけど...まさか今回も断りましたか?


我が国の外務大臣の発言が問題だと感じるのは、現行法を諸悪の根源にしている点だ。
法律があるから、人命救助できなかったとなれば、法律を改正しろという世論が形成される。では、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」で可能なこととは何だろう。同法3条2項によれば、自衛隊が派遣できるのだが...

JDRには本来、救助チーム、医療チーム、専門家チーム、自衛隊部隊の4構成があり、その役割の違いは、以下のJICAのサイトに説明がある。
http://www.jica.go.jp/jdr/about.html

ところが今回派遣されたのは、現時点でまだ医療チームのみだ。
その医療チームは今、現地でスリランカ軍に護衛してもらっている
http://www.jica.go.jp/information/jdrt/2009/100119.html
スリランカ軍も、護衛なんて頼まれなけりゃ、救援活動手伝えるだろうに...なんだか申し訳ない気持ちになる。

他国の軍隊に護衛を依頼するほど危険なら、そもそも自衛隊部隊も一緒に送りなさいな。たとえ武器が携帯できなくとも、自衛隊部隊がこの場面で無用という第一判断は、どうやって導き出されたのさ。法律を非難する前に、法律で最大限可能な活動を最初からしなさいな。何日も何日も検討時間を費やしたのだろ?


そして、自衛隊部隊派遣の話がやっと出たのは、18日になってのことだ。
「【毎日jp】ハイチ大地震:自衛隊派遣準備を指示 防衛相」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100119k0000m010066000c.html
この対応の遅さは、最早人災。法律のせいにしなさんな。


さて、整理してみよう。

1、異常なまでのJDR派遣の遅れ
2、パフォーマンス的な自衛隊機の使用
3、それに続く自衛隊派遣の決定
4、法律で可能な最大限の選択をせず、武器を携帯できない法律のせいで対応に時間がかかったかの発言をする外務大臣


この状況で逆算的に、迅速な対応を可能とするにはどうしたら良いかと考えれば、「自衛隊に武器を持たせて海外派遣できるようにすべきだ」、ということになる。

なんのことはない。これは、自衛隊法改正の議論だ。まさかこの場面で使われるとはな...

かつては、邦人救出に手間取って政府が批判される場面で、「だから自衛隊法改正を」という世論が形成され、2006年の改正で緊急時の在外邦人輸送が本来の任務になったばかり。対応が遅れた事実+法律が悪い、となると、法改正は楽なのだ。

まさかと思いたいけれど、外国人の人命を政治に使いなさんなよ...


しかし、外務大臣の説明が信用できないのは、訳がある。
http://twitter.com/uesugitakashi/status/7937782751
http://twitter.com/uesugitakashi/status/7937836417
自衛隊派遣を選択した後なのに、外務大臣自身は、駐日ハイチ大使と支援について確認してないってのは...

外務大臣は、自衛隊派遣の前に、駐日ハイチ大使と直に会うことくらい、すべきなのではないか?その必要もないの?

追記:
「【毎日jp】ハイチ大地震:治安の悪さ、自由な救出活動阻む」
http://mainichi.jp/select/today/news/20100121k0000m030039000c.html?inb=fa
他国の救助隊も、PKO部隊の警護を受けていることが分かった。つまり、自衛の手段など、他国の救助隊も準備していなかったということだ。それでも、迅速に現地入りしたのだ。我が国が無駄に時間を浪費している間に、後から治安が悪化したというのが、実際のところだろう。

言うまでもないけれど、現地で頑張ってるJDRの医療チームの方々や、これから派遣される自衛隊部隊の方々も、個人的には何も非難する気は無い。問題は政治。

少数意見

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喪中なんで、新年の挨拶はナシってことで、新年一本目をどう書くべきか迷ったけれど、たまには法科大学院の学生らしいネタの紹介を(自爆)

以前、朝日のGLOBEが良いと書いた。
http://maruko.to/2009/12/globe.html

実は、上記のJALの前の特集が、「日米最高裁 少数意見が社会を変える」だった。
http://globe.asahi.com/feature/091102/

これも、凄く良い特集だったので、取り上げてみる。


ここで言われている「少数意見」とは、最高裁の判決文に、一見オマケのように追記されてる補足意見や反対意見のこと。判決文に反映された多数の裁判官の意見ではなく、採用されなかった少数派の意見。

実は、これの重要性は、法科大学院に入った当初、ほとんど理解していなかった。憲法の授業で先生に重要と言われても、全然ピンとこなかった。「なんで?採用された多数派の判決文だけ読めばいいじゃん。それでも膨大で、読むの大変なんだから...」という感じ。

多分、世間一般の感覚としても、判決に採用されない少数派裁判官の意見の重要性なんて、気にする人はいないだろう。

もっと言うと、民主主義一般における少数派の救済の仕組みなんぞ、考えたこともなないかも。


上記特集の中の誰かのインタビューにも出てくるけれど、民主主義と立憲主義は、時々矛盾する。民主主義だけに任せると、いつの間にか少数者は抹殺される。だから、基本的人権を尊重する立憲主義が必要になる。それが、我が国の採用する立憲民主主義。

ところが、立憲民主主義の要である最高裁だって、裁判官の多数決だ。そこでも採用されないのが、この特集の「少数意見」。これが、社会を変えることがある。つまり、立憲民主主義の要の中の要、というところだ。

何十年前の「少数意見」が、現在の「多数意見」に変わる瞬間が、立憲民主主義が機能した瞬間とも言える。「少数意見」とは、未来のあるべき姿を予見していたりするわけだ。


そういう視点で、この年始に、上記記事を熟読することをオススメする。

なんでかって?

先月、最高裁の裁判官は3人交代した。2人が定年、1人が亡くなったからだ。
あと半年で、更に3人が定年を迎える。
たった15人の最高裁で、短期間に6人もメンバーが交代するわけだ。

今年は、かつての「少数意見」が「多数意見」に変わる瞬間を、目にするかもしれない...

フォーサイトが、20周年の節目となる来年4月号で、休刊が決まった。
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/
編集長が語る今月のフォーサイト
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/201001/monthly.html

とてもショックだ。


(1)厳しい出版状況に直面する中で、全社的な事業の再編、特に雑誌部門の見直しが避けられなくなったこと
(2)二十年間の健闘はあったものの、今後の収支改善の見通しが立たないこと
(3)インターネットの普及で、国際政治経済情報を扱う月刊誌の役割が大きく変化したこと

この3点が、休刊理由だそうだ。
http://www.shinchosha.co.jp/info/emergency/foresight.html

かつて、「ウェブ進化論」の梅田望夫が「シリコンバレーからの手紙」を連載していた雑誌であることを思い起こしても、ひとつの時代が終わるかのように、感慨深い。進化に追いつけなかったわけだ。

我が家では、母親が創刊号からの読者だった。
その影響で、自分も読者になった。

社会人になってから、他に定期購読していた雑誌といえば、「エイビーロード」しかなかった(オイ!)自分にとって、フォーサイトによってもたらされる情報は、常に貴重だった。

一人暮らしを始めてからは、たまに実家に帰った時に目を通す感じだったが、今年は公式の読者ブロガーとなり、毎月献本してもらって、記事をブログで取り上げてきた。しかし、結局読者増加には貢献できなかったわけだ。


どうやら、現在の読者数は約2万2千人程度だとか、某所で目にした。

値上げしてでも存続してほしかった読者も、少なくないだろう。
存続のために必要であったなら、一冊千円が二千円になったって、自分は買っただろう。
店頭販売のない雑誌を定期購読する読者なのだから、普通の雑誌の読者とは思い入れが違ったのではないだろうか。

印刷と配本にコストがかかるなら、PDFでダウンロード販売でも良かった。同じ編集部で、有料でWeb化してくれれば良かったのに...
(ちなみにエイビーロードも、インターネットの普及によって情報の即時性が求められるようになり、月刊誌の存在意義が問われ、無料でWeb化した。)

冗談みたいだが、今月号に「米既存メディアに吹きすさぶ寒風」という記事があった。この2年で、米メディア界では4万7千人が職を失ったという話だ。ここに書かれている、メディアが経営を悪化させた3つの理由は、恐らくフォーサイトの休刊理由の(1)と(3)にも関係する。自戒の念を込めての掲載だろうか?(苦笑)

1、不況による広告収入の激減
2、収入源になっていた求人広告や不動産情報が無料のネットサイトに奪われた
 (既存メディアよりも、広告効果が分かりやすいため重用される)
3、読者の生活習慣の変化

特に「3」が重要だ。
携帯電話などで短いニュースを「見る」ことに慣れた人々は、新聞で深く「読む」ことをしなくなったというのだ。

記事は、その結果として、地方紙の衰退で記者の減った各地の州都で、既に州政府の腐敗が目立つようになったという。そして、権力の監視という、民主主義の存立に必須の伝統的メディアの役割をどう守るか、様々な事例が紹介されていた。


しかし思うに、日本での「3」の変化は、ちょっと違うのではないか?
例えば、政治的なニュースに興味すら示さなかった層が、短くとも、ネットでニュースに「触れる」ようになったとも見える。mixiなど利用していると、興味がなくともニュースが目に入るようにサイトが作られているから、言葉足らずのニュースを鵜呑みしたり誤解したりして日記を書いている人々を多々見かける。そして、2ちゃんであれ、まとめサイトであれ、興味を持った個別の事案について、日本のネット利用者は、「読む」ことを嫌っていない気がする。少なくとも、twitterで政治家と直接つぶやける現在、一方通行の伝統的情報メディアのみの時代より、民主主義が進歩してる気がする。mixiも2ちゃんもtwitterも利用しない人は、既存メディアに依存したままだろうから、「3」は該当しないかもしれない。

問題は、「チラシの裏の落書き」と、「価値ある情報」の違いを、見分けられない人が少なくないだけだ。世の中には、買うべきニュースソースがあることを知らない層が、増えたかもしれない。そういう意味で、日本にも「3」が該当すると思うし、そういう意味で、フォーサイト休刊理由の(3)も正しいとは思うが、解釈は逆だ。インターネットの普及で、国際政治経済情報を扱う月刊誌の役割が大きく変化したが、だからこそ「重要度が増した」と思っている。

インターネットの普及で、有象無象の情報が氾濫している今こそ、フォーサイトの視点で、月刊誌ペースで深みのある情報を提供するメディアが必要だと感じる。しかしそれが、紙媒体である必要は無い。


ちなみに今月号では、アフガニスタン、イラン、イラク、アメリカ、ロシア、中国、北朝鮮といったいつもの記事もさることながら、以下の記事を集めた『「王室」の研究』という特集が良かった。
-->
・女性が担う欧州王室の未来 三井美奈
・2つの民族間で揺れるベルギー王室の挑戦 大野ゆり子
「王制論議」が示すタイ社会の地殻変動 樋泉克夫
・ハシム家とサウド家「2人のアブドラ」 三井美奈
・両陛下カナダご訪問に見る「皇室外交」の意味 西川恵
-->

加えて、歴史作家が連載する「国際人のための日本古代史」では、『遷都1300年「平城京」で起きた聖武天皇と藤原氏の暗闘』だ。

こうして、現代における各国の王室の状況と、皇室外交のあり方を特集しつつ、はるか昔の政治の道具そのものだった天皇に関する史実も読んだ上で、小沢の問題発言についての記事も読める。

いやはや面白すぎる。こんな雑誌が休刊とは、本当に残念だ。

世の中、即時性を要する情報と、そうでない、短絡的では困る情報があるのであって、インターネット時代であろうと、月刊誌のペースで情報発信する媒体の存在意義は、十分にあると思う。ネットは、読者の情報収集能力に依存した情報を得るには適しているが、自ら日常的な興味の範囲外について、多重的かつ多様な情報を吸収するには、信頼できる編集部の視点に一定程度依存できる雑誌は、大変有り難い。Googleの検索結果とは違う。

また、そういう情報は、毎日大量に得られることは望まない。一ヶ月に一度、フォーサイトが届くのは楽しみだったし、届くと興味の有無に関係なく、一気に読破した。ネットでは、毎日情報が氾濫していて、そこから取捨選択し、無駄な情報を排除するのに必死だが、月刊誌に接する場合、情報への自分の接し方は、180度異なる。

民主主義には、両者が必要なんじゃないか?


ところで、フォーサイトの場合がどうだか知らないが、大半の出版社には、「紙」の流通に関する異常なピンハネ構造があって、出版コスト削減を阻んでいる。もしかすると、ピンハネだけではなく、Web化で「紙」が無用となること自体に抵抗してたり...と想像したくなる。

旧態依然とした二重三重の「卸」が、仕入れや納入の実態なくして、利益だけ取っている場合が多いそうだ。出版社は、印刷会社から紙を購入すれば、効率的で安価にできる。ところが、そうしている出版社はごく少数派。大半は、製紙会社から二次三次卸を経由させた紙を、印刷会社に納入して使う。そして卸は、実は出版社自らが設立していたり、何故か出版社毎に特定の「卸」が独占していたりして、そこには出版社の創業者一族が名を連ねていたりする。営業努力なしに常に黒字の、優良企業だ。

どこの世界にも、かつては存在意義があったのに、今は無用な長物と化してしまった既得権益団体のようなものがあるものだ。そういう仕組みの効率化こそ、先に着手されるべきだ。しかし現実は、淘汰されてはならない情報誌から、インターネットの影響を言い訳に、淘汰されてしまう。インターネットは悪くないのに...


さて問題は、今後だ。
読者数の多い雑誌は、買う価値を感じない。
学生時代、サブカル雑誌と化したガロをレジに持っていった時の心理に似ているw

あ...だから、自分の買う雑誌は、軒並み消えていくのか?(自爆)


フォーサイトと多少近い雑誌に、「選択」がある。上記の紙流通の問題は、実家になぜか届けられた、「選択」の試供本に掲載されていた。興味深い雑誌だ。しかし、フォーサイトと違って、各記事の執筆者が無記名なのが気持ち悪い。


困ったな...

12月1日、無所属の参議院議員だった川田龍平が、みんなの党に入った。
これは同時に、民主党からの誘いを断ったことを意味する。

その決断の理由としては、民主党が圧倒的多数の状況で、議員立法を原則禁じたというのが大きいようだ。今まで、超党派で議員立法を呼びかけたりして頑張ってきたけれど、現状それが困難になってしまっている。圧倒的多数の衆院だけでなく、参院だって、あと1議席で民主が過半数だから、そんな大半の議員が議員立法に協力できない状況で、無所属議員のままじゃ、可能な活動が極端に減ってしまったようだ。だからといって、民主党に入ったところで、議員立法が許されないことに変わりはない。せいぜい、いい面の皮にされ、しがらみに雁字搦めにされて終わりだろう。

民主に限らず自民も含め、大政党の医療政策は、医師である議員が中心になって作っていて、当事者である患者の目線を基本とする彼の発想では、常に疑問を感じていたことも理由にあるようだ。

だから彼は、みんなの党に入って、来年の参院選で二桁以上の仲間を当選させるよう頑張って、議員立法など議員として本来の活動が可能となる可能性を選んだのだろう。

これが絵空事でないのは、参院選は、比例代表が全国単位だからだ。みんなの党は、先の衆院選で、資金不足が理由(なんせ癒着してる支援団体とか無いから、金が無いw)で、比例区で当選できたはずの2議席分の票を無駄にし、民主と自民に1議席ずつプレゼントしただけでなく、立候補者を立てられなかった比例区からは、「投票したいのに」という声に応えられなかった。それが、全国単位なら、ちゃんと票を生かせるわけだ。


加えて、彼が無所属の限界を感じたのは、厚生労働系の委員会に参加させてもらえなかったこともあるらしい。HIV感染者として薬害エイズ訴訟を戦った彼だから、当然、厚生労働分野で頑張りたかったけれど、あの手の委員会は、議席の多い政党でないと参加させてもらえないらしい。そういう意味でも、みんなの党として参院選で二桁以上の仲間の当選を目指さなければならない理由がある。


更に彼は、薬害問題の原因の根幹が、政・官・民の癒着構造にあって、天下りなんて正に薬害の原因そのものだと考えている。だからこそ、天下り根絶を含めた「脱官僚」(この言葉は「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りしたが、その受賞者は鳩山由紀夫じゃなくて渡辺喜美)の重要性を具体的に理解し、これに本気のみんなの党の政策に、非常に共感できたのだろう。天下り根絶が大嘘だった民主党では、絶対にダメだったわけだ。


非常に理に適った判断であり、同時に決断力がある行動に思える。

患者目線での厚生労働分野での活動の場を、是非獲得してほしいものだ。



朝日のGLOBEで、JALに関する特集がかなり良くできてる。

実家は朝日を取っていて、ちょっと前に折込版のGLOBEを偶然手にしたのだけれど、そこのJALの特集がよくできていた。そしたら、Webだけの記事もあると書いてあって、紙面からWebに読者を誘導する上手い企画だなと思った。

「第28号 日本航空 再び翔べるか」
http://globe.asahi.com/feature/091123/

紙面の記事と同じものに加え、Webのみのインタビューがいくつもアップされてる。

で、このインタビューの載せ方がまた良い。
色んな立場の専門家に、大体似た質問をぶつけているから、それぞれの答えを比較できる。誰かの意見だけを正論とするのではなく、相互に反対のことを言ってる専門家のインタビューをそのまま掲載している。

これは、限られた紙面ではできない、Webならではのリッチな掲載方法だ。情報を選別せず、素材を列挙し、読者が比較判断できるようになっている。

短絡的になりがちな新聞の欠点を、雑誌的な編集方針をWebで実現することで補っている。(JAL以外の記事は、まだ読んでないけど)

ということで、早速RSSをブックマークしたのだけど...結局これで、Webだけで全部読めちゃう。これじゃ、最終的に新聞の読者拡大にはつながらないように思う。やはり、最終的にはWebを有料化していくための布石だろうか?

まあ正直、これだけの記事なら、金を出しても良いと感じた。


ちなみに、Webだけのインタビュー記事で、自分の意見と完全一致したのはこれ。
『第5回「必要なのは消費者利益に資する航空会社。日本の会社である必要はない」』
(塩谷さやか 桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授)
http://globe.asahi.com/feature/091123/side1/05.html
キレイな人だからじゃありません(自爆)


更に言うと、リンクに関する方針も良い(著作権法的観点を含め)。

現在、「ヨミウリ・オンライン」は、個別記事へのダイレクトリンクを認めていない。
「毎日jp」は、記事の掲載期間が原則1ヶ月しかないから、リンクしても...
「asahi.com」は、リンクは原則自由でも、リンクしたことを連絡しろという無茶振りだった。

しかし、このGLOBEは太っ腹だ。やっと、実情にあったリンクポリシーが示された。

「リンクについて」
http://globe.asahi.com/siteinfo/link.html

これで安心してリンクできるw
「記事見出しから当該記事ページへリンクを設ける場合も同様」ってことで、記事見出しの複製を認めている点は、著作権法的には一応論点だったりする。

あ、そういえば先月、
http://maruko.to/2009/10/hub.html
「読売と朝日で、雁首そろえてこのレベルだ。」と批判してしまったけれど、GLOBEのような報道姿勢もあると知ったので、ちょっと認識を改めます(^^;

北監視を主目的とした偵察衛星「光学3号」が、H2Aロケット16号機で無事打ち上げられた。成功自体は喜ばしい。しかし、偵察衛星の運用に関する説明が、どうもおかしい。

http://mainichi.jp/select/today/news/20091128k0000e040022000c.html(2009年11月28日 毎日)
-->
03年11月にH2A6号機の打ち上げに失敗し1組2基を失ったが、06年9月に光学2号機、07年2月にレーダー2号機の打ち上げに成功。これにより「2組4基」態勢が確立。だが同3月にレーダー1号機でトラブルが発生、現在は「2組3基」の変則態勢で運用している。政府はレーダー3号機を11年度に打ち上げる予定で、成功すれば「2組4基」態勢を回復できる。
<--

2003年3月28日、H2Aの5号機で打ち上げられたのが、「光学1号」と「レーダ1号」だ。そして、2007年3月25日、「レーダー1号」は故障して使えなくなった。

2003年11月29日、指令破壊したH2Aの6号が、「光学2号」と「レーダ2号」を同時に打ち上げようとして失敗したやつで、424億円が一瞬で消えた。今から、丁度6年前の話だ。

しかし、これら偵察衛星の耐用年数は、どれも5年だ。
どうして、最初から1年前には耐用年数を迎えることが分かっていた衛星に関する、打ち上げ失敗や故障を理由に、いまだに運用計画が達成できずにいることの正当化理由につながるのだ?

一切の打ち上げ失敗や衛星故障がなくとも、1年前の2008年11月には、全ての衛星の代替衛星打ち上げが予定されていたのでなければ、この偵察衛星計画は最初から破綻していたことになる。

内閣衛星情報センターは、2003年中に「2組4基」の運用を前提にすることで、天候などに左右されず(昼間は光学衛星夜や曇りならレーダー衛星)、地球上のどの地点でも1日1回撮影できることを目的としていたのだろ?

5年の耐用年数の衛星で。

それが、6年経過した今でも達成できていないなら、計画の杜撰さを現す以外の何者でもない。膨大な税金を投入しておきながら、だ。


実際には、打ち上げ失敗した分の代わりに、2006年9月11日に代替の「光学2号」がH2Aの10号で、2007年2月24日に代替の「レーダー2号」がH2Aの12号で、それぞれ打ち上げられた(後者では、光学3号機実証衛星も同時に)だけだった。

一応これで、2007年2月24日~3月25日の約1ヶ月は、「2組4基」態勢が確立したとされているが、実際には打ち上げから軌道調整には時間がかかるので、「2組4基」態勢で運用できたとは信じがたい。官僚は、そういうことは説明しないだろうが。


そして今回、2009年11月28日になって、やっと「光学3号」が打ち上げられたわけだ。2007年3月25日に壊れて「2組4基」態勢を破綻させたのは、レーダー衛星なのに...


何のことは無い。

現在、「2組3基」の変則態勢で運用せざるを得ないのは、打ち上げ失敗や故障の影響ではないわけだ。もし、耐用年数を考慮したまともな計画が立てられていたなら、打ち上げ失敗や故障が一切なくとも、1年前までには第2世代の新規の衛星が「2組4基」打ち上げられていたはずだ。また、耐用年数を超えても衛星を酷使するような馬鹿な計画であったとしても、「2組4基」態勢を目標とするなら、壊れて足りないレーダー衛星を早く打ち上げるべきではないのか?


「2組3基」の変則態勢の内訳は、耐用年数過ぎても運よく生きてる光学1号光学2号レーダー2号(+光学3号機実証衛星の変則4基態勢とも言える)だったのが、今回の打ち上げで、光学2号光学3号レーダー2号で、変則3基態勢になったのだろう。

次の打ち上げ予定は、2011年の(またしても)光学4号(寿命を迎える光学2号の代替)で、同年中に(やっと)レーダー3号が予定されていて、これでやっと2組4基態勢(光学3号光学4号レーダー2号レーダー3号)が確立するという。

2003年の計画から、8年遅れての達成予定だ。

しかし、その時にはレーダー2号が寿命となるわけで、レーダー3号は2号の代替でしかない。またもや耐用年数を無視した計画で、2組4基態勢確立とは片腹痛い(苦笑)

2012年に予定されているレーダー4号が成功して、初めて2組4基態勢が確立するというのが、本当の説明のはずだ。9年遅れました...と。


こんな馬鹿な話があるかと、2001年7月の「宇宙開発委員会 計画・評価部会(第7回)議事録」を見ると...

内藤(内閣衛星情報センター):
現在は、第一世代といたしまして4機の衛星の開発を進めております。第一世代の4機の衛星につきましては、平成14年度冬季及び平成15年度夏季に2機ずつデュアルロンチで打ち上げるという計画でございます。この衛星の設計寿命は5年でございますので、5年後には、この次の世代の衛星を準備する必要がございます。

お、分かってるよね。

安全保障に実用衛星として使う衛星であることから、さまざまなリスク管理に配慮するべきだという御指摘がありまして、次期衛星の中の2機につきまして、次期衛星1と呼んでおりますが、予備機的な性格を持たせて、なるべく短期に開発し、もし万が一第一世代衛星にトラブルがあった場合には、この2機で最低限のバックアップを行おうという構想になっております。

ふむふむ。

次期衛星も全部で4機を予定しておるんですが、次期衛星1で前倒しにした2機を除きます残りの2機につきまして、次期衛星2と呼んでおります。この次期衛星2につきましては来年度から研究を開発いたしまして、第一世代の寿命が尽きると思われます平成20年度の打上げを計画している。

なるほど、平成20年(2008年)度には、第二世代の衛星で「2組4基」態勢が確立する計画だったわけだ。ところが、次期衛星2の内の光学衛星が、今回の打ち上げた3号なわけで、1年遅れたと。

光学衛星につきましては、この衛星を利用する予定になっております各省庁からの要請でありますとか、諸外国の光学衛星の開発動向、さらには、先ほどからお話もありましたが、財政状況等も考慮、費用対効果も考慮いたしまして、次期衛星2では、さらなる高分解能化を目指す必要があるとセンターの方では考えております。

光学衛星は開発に時間がかかるから仕方ない?

なお、レーダ衛星につきましても、同様に諸外国の動向であるとか、費用対効果等も考えた結果、財政動向もありまして、基本的には次期衛星1と同等の性能とすることを考えております。

でも、レーダー衛星は次期衛星1(これが代替のレーダー2号となった)と同等なんだから、時間かからないよね。何でそれが、2011年のレーダー3号まで打ち上げないわけ?

第一世代衛星及び第一世代の予備機的な性格を持ちます次期衛星1につきましては、なるべく短期間で開発をして、実用に供しようということから、非常に短期間の開発で整備を進めておりますが、次期衛星2につきましては、分解能を向上するという目的のために所要の期間をかける必要があろうと思います。先ほどのスケジュール表にもありましたが、6年半は必要であろうと考えています。

へ?
6年半?
この議事録は2001年7月だから、その「来年度から研究を開発」するなら、2002年度から着手で、「6年半」ってことは...2008年11月までの打ち上げなんて、計画通りでも最初からギリギリじゃんか!

何のことは無い。最初からこの計画は、失敗や故障がなく耐用年数通りの運用が成立していても、第二世代が少しでも遅れれば、2008年11月には「2組4基」態勢が破綻する可能性が十分に予測可能だったわけだ。

世間では、そういうの、「無計画」というのでは?(苦笑)


2007年にレーダー1号が故障した時の報道を見た時、
http://www.sankei.co.jp/seiron/wnews/0704/web-news0402-1.html
耐用年数より1年早く故障しただけで、何で「今後約4年間、北朝鮮の軍事基地など「地球上の任意の場所を1日1回以上観測する」構想が実現不可能となった」のか、理解できなかった。計算が合わないじゃんか!と(苦笑)

ところがこの時点で、既に計画は遅れていて、耐用年数通り運用できても2008年~2011年までの3年間は、目標とする2組4基態勢が欠けることが分かっていたわけだ。しかも本当は、それすら耐用年数を超えた運用が前提で、本当に態勢が整うのは2012年というのが事実だった。


もう一度、2001年7月の「宇宙開発委員会 計画・評価部会(第7回)議事録」を見ると、こんなやり取りがある。

八坂特別委員:
次期は2機で運用ですか。」(第二世代のこと)
内藤(内閣衛星情報センター):
次期衛星1と次期衛星2を一応次期ととらえているんですが、この4機で、第一世代と同等な運用が実現できるんではないかと思います。
八坂特別委員 :
だから、ライフが尽きると、また次のを打つとかいう話になって、継続して運用されるんだと思うんですけれども、最終的にはこれは、分解能が伸びるとか、機能的に高くなっていくんでしょうけれども、それに付随して、運用の機数というのは一体どういうふうになるとお考えでしょうか。
内藤(内閣衛星情報センター):
現在、第一世代衛星を打ち上げる段階で、4機という形で進めております。当面はこの4機の枠内でやらざるを得ないんじゃないかと思いますが、さらに先まで行きますと、まだ何も固まっていない状況です

...ということで、初めから計画性ありませんでした(苦笑)


考えてみれば、レーダー1号故障代替レーダー2号の打ち上げが1ヶ月前後していたら、レーダー衛星ゼロの期間が発生していたかもしれないくらい、杜撰な計画だ(^^;;;

これがお咎めなしというのは、本気で国防を考えているとは到底考えられない。
実は、単なる国防利権を食い散らかすのが主目的じゃなかろうな?

頑張ってこれしかできなかったなら、悲しくなる...

予算が足りないなら、その予算でできることを目標とすべきで、実現不可能な「2組4基」態勢を目標に掲げること自体が、計画性がない。

無計画すぎて、当時事業仕分けがあったなら、確実にぶった切られてたのではないか?(苦笑)

参考:
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/pc/090428/keikakuan.pdf
最終ページの「別紙2:9つの主なニーズに対応した人工衛星等の開発利用計画(10年程度を視野)」

蛇足:
事業仕分け自体は、自民党時代から一部の議員が非常に頑張ってやっていたので、民主党の専売特許ではない。要は、いくら事業仕分けを頑張っても、それが無視されてきたことが問題だったので、民主党の事業仕分けも、今後が重要。

先日、以前在籍していた会社のOB会なパーティーがあって、久々にデジハリに行ってみた。

その様子が、杉山校長のブログの最後に、ちょこっと書かれている。外人2人の写真をクリックすると、自分も写っているOB会の集合写真がポップアップで出てくる。

自分はデジハリの3期生(本科ビジュアルサイエンス専攻)で、その設立母体となった研究所というか会社に就職したのだが、なんかは、デジハリでクラスメイトだった。偉くなったなぁ(しみじみ)

しかし、恐らく彼にしても、杉山校長にしても、僕自身については、顔に見覚えがある程度だろう。何故なら当時、秋頃の就職活動の面接で、「VRMLでマルチユーザーでアバターがリアルタイムにインタラクティブに楽しめる仮想空間を作るのに興味があります」と言ったら、「じゃそれを作って持ってこい」と研究所の某所長に言われたからだ。デジハリでは、C言語とPower AnimaterというCGツールを学んだのに、それ以降ひたすら自宅で、VRMLとJavaな日々だった。だから、皆がデジハリに入り浸ってO2で卒業制作していた時間を、ほとんど共有していない。今のデジハリ東京本校が出来た年で、超キレイな教室に引越したのに、その恩恵に預かれなかったのだ。もったいない...

当時、Web3Dなんて言葉はなく、VRML2.0とJava3Dが登場したばかりで、その年の夏のSIGGRAPHでは、Java3Dがケチョンケチョンに言われていた。

Second Lifeなんてまだ無かったが、Diabloにハマり、順調にUltima Onlineにハマった。デジハリと日大理工学部をダブルスクールしていたけれど、大学の研究室のPCでは、これらのオンラインゲームばかりしていた(^^;

そして、その頃の自分は、VRMLとJava3Dはいずれ統合され、マルチユーザーな仮想空間を作る標準言語となるだろうと、無謀にも信じていたのだ。

結果として、独学で就職活動のための作品制作に没頭した。年が明け、研究室の仲間は誰もが就職先が決まっていたが、まだ孤独に作品を作っていた。しかし、何故か不安はなかった気がする。

で、2月か3月かにギリギリ、就職が決まった。その時、完成した作品を見てもらったのが、今度アメリカに移ると書かれている小野さんとの最初の出会いとなった。某所長は、作品を見せた時、「丁度こういうのをやろうと思っていたんだ」と言った。しかしその後、その研究所に就職しても、そんな仕事は発生しなかったのだけど(苦笑)

まあ、色々ありましたが、今は良い思いで...(遠い目)
あの、作品制作への集中力を、今の勉強にも欲しい...(自爆)


蛇足:
ついでなので、もう一つ触れておく。OB会の前日のブログに出てくるIBMの園田さんには、「よなよなペンギン」のレンダリングでお世話になった。というか、お互いに大変だった(^^;;
実験台を兼ねて提供した成果が、少しでもお役に立てていることを祈るばかりだ。

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2666395/4942097
-->
【11月21日 AFP】イエメンの首都サヌア(Sanaa)北東のアルハブ(Arhab)で日本人男性技術者(63)が地元部族民に拉致された事件で、解放交渉にあたっている部族関係者は21日、男性が20日深夜から21日未明にかけて、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の戦闘員に身柄を拘束されたと語った。
<--
http://www.asahi.com/international/update/1122/TKY200911210395.html
-->
イエメンで日本人技師が地元部族民らに拉致・拘束された事件で、AFP通信は21日、部族関係者の話として、技師の身柄が国際テロ組織アルカイダ系武装組織の手に渡ったと報じた。イエメン当局者や在イエメン日本大使館は否定しており、真偽は不明だ。
<--

色々と情報が錯綜している。

そもそも、どうしてイエメンでアルカイダ(アル・カエダと表記した方が良いみたいだけど、アルカイダの方が日本じゃ浸透してるので、ここではアルカイダと表記する)が関係するのか、分からない人も少なくないだろう。

実際は異なる可能性もあるが、しかしながら、アルカイダに身柄を拘束されている可能性が、十分にありえる話であることは事実だ。

フォーサイト12月号が、タリバンやアルカイダ関連の記事が多く、かつそれぞれの記事が異なる視点からのもので、相変わらず面白かった(『次なる火薬庫「イエメン」の現在』、『アフガニスタンに移り始めた外国人テロリスト』、『タリバンとアル・カエダ "主敵"を見極められない米国』等)ので、その辺の浅知恵も交えて書いてみよう。
(今月のフォーサイトは、民主党関係や中国関係、JAL関係...どの記事も外れは無かったのだけど、実は『外交・安保を誤った白村江の戦い  なぜ中大兄皇子は猪突したのか』がオススメ。外交は難しいw)

・なぜイエメンでアルカイダ?
そもそも、イエメンとはどんな国か。
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2378883/2837848
単なるロリコン国家...ではないw
アラビア半島で、唯一共和制をとる立憲国家であり、女性にも参政権が認められ、言論の自由もある(大統領個人への批判を除き(苦笑))。しかし、国民の半数近くが貧困に喘いでおり、豊かではない。だからこそ、JICAの委託で、日本人が教育支援事業に従事していた。そして、テロとの戦いでは、アメリカの同盟国だ。

ところがイエメン政府は、北部のイスラム教シーア派武装組織フーシ派とのサアダ戦争にかかりっきりで、もう5年になり、経済は大打撃を被っている。そんな状況で、政府の管理が及ばない地域で、アルカイダが勢力を拡大しているのだ。(フーシ派とアルカイダは、関係ない。)
昨年9月には、首都サヌアでアメリカ大使館が爆破されたが、今年1月にサウジアラビアとイエメンの組織が合流し、「アラビア半島のアルカイダ」を設立。8月には、サウジ王族の副内相の暗殺未遂事件を起こしている。イエメンが安定しないと、アルカイダが活気付き、アラビア半島全体を不安定にするため、今後の注目地域だ。

そんなところなので、日本人が誘拐されれば、アルカイダが関係している可能性も否定できないわけだ。

・アルカイダってアフガニスタンでは?
でも、アルカイダってのは、アフガニスタンで米軍が戦ってる相手なんじゃないの?という疑問を持つかもしれない。

実は、パキスタン・タリバン運動(TTP)が、アルカイダ系の外国人戦闘員約5千人を抱えており、これを最近もアフガニスタンに送り込み、NATO軍の補給路封鎖に動いていた。そして今、パキスタン軍が、TTPを攻撃している。
http://mainichi.jp/select/world/news/20091119ddm007030069000c.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009111702000079.html
パキスタンとアフガニスタンのタリバンは、一見兄弟関係だが、現状は全然違う。アフガニスタンのタリバンは、パキスタン政府の支援を受けて育ち、決別したとはいえ、今も対立していない。しかしTTPは、パキスタン軍から攻撃されているわけだ。以前は、パキスタン軍もTTPとの対立を避けていたが、最近TTPの過激化が酷く、アメリカの圧力もあったが、ついには掃討作戦に出ることになった。つまり、反米で共通していても、タリバンとて一枚岩ではない。

そして、アルカイダは、タリバンがアフガニスタンの政権を握っていた当時は、その支援を受けていたわけだが、今は特に連携が見られないという。これもTTPとの違いだろう。アフガニスタンでは、タリバンがケシ栽培で資金が豊富なのに対し、アルカイダは資金難で、活動範囲を縮小している。

短絡的に考えるべきではないけれど、アルカイダは、アフガニスタンからイエメンに、活動の場を移しているのかもしれない。まあ、そもそもアルカイダは、組織として明確な団体ではないので、移ったというよりも、アフガニスタンでは廃れ、イエメンで流行しだした、ということかもしれない。だからこそ、TTPの支援で、アフガニスタンに5千人を送り込もうと...
この辺は、想像するしかない。

・アメリカはアフガンで誰と戦ってるの?
すると、テロとの戦いをアフガニスタンで展開する米軍は、誰と戦っているかといえば、アルカイダはメインではない。かつてのアフガニスタン政権を担っていたタリバンが、反政府武装勢力として活発化しているのであり、これを潰すにはゲリラ戦に勝利しなければならない。

ここに、アメリカ政府内でも迷いがあり、アルカイダとの対テロ戦に集中するか、タリバンとの対ゲリラ戦に集中するか、一本化できてない。オバマ大統領は、テロとの戦いと言うが、アフガニスタン駐留米軍司令官が4万人の米軍増派を提案しているのは、ゲリラ戦マニュアルに従った計算だそうだ。テロとゲリラの違いは...(ry

・まとめ
まあ、日本人からすれば、アルカイダだろうがタリバンだろうが、テロリストだろうがゲリラだろうが、そんなの関係ねー!かもしれない。

しかし、イエメンで日本人を拘束しているのが、アルカイダなのか、現地部族民に過ぎないのかは、その結果に大きな差が出そうだ。

仮に、当初は接点が無かったとしても、アルカイダがこれを利用しようとする可能性も否定できない。

犯人側が釈放を求める男は、イラクで対米ゲリラ戦に参加し、イエメンで4年前から裁判を経ずに拘束されている22歳ってことで、何歳で戦闘に参加してたのか興味深い。

日本政府は、テロを根絶する気があるなら、アフガニスタン支援だけではなく、イエメン支援の強化も検討した方が良い。そうじゃなきゃ、単なるモグラ叩きになってしまう。まあ、気がついてないだろうけど(苦笑)

父のこと

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しばらく更新に時間がかかってしまったが、10日に父が他界し、ドタバタしている。

なので、全然つっこみネタではないが、父のことを書いてみようと思う。


父は弁護士だったが、自分が弁護士を目指しているのは、父とは関係ない。法科大学院を受験した時も、父には秘密だったし、そもそも父の仕事振りを見て、あんな仕事は嫌だと思っていたくらいだ。

しかし、社会人経験をつむうちに、法の必要性を実感し、父とは全く異なる弁護士を目指し、勉強を始めたのだ。父から法律の勉強を教えてもらうようなこともなく、死の数日前にも、弁護士に向かないと言われた(^^;

ところが、長期間病室に寝泊りし、看病していると、必然的に父の仕事を目にする機会に恵まれた。何しろ父は、個室の病室で、先月末まで仕事を続けていたのだ。携帯電話があれば、大概の仕事は可能であり、顧問先の方々は、父が入院中であることを最後まで知らないままだった。

痛み止めのモルヒネの多用のせいか、意識が朦朧としている時間が増えても、相手から書類が届くと急にシャキッとして、短時間で顧問先への的確な指示をまとめ、ワープロ打ちの指示をしていた。とても教室事例では出てこないような、登記絡みの複雑な問題でありながら、ほとんど金にならない内容で、「こんなのを受任する弁護士は他にいない」と言っていた。逆に、だからこそ、解決の目途を立てようと、自らの死後も顧問先が相手方に騙されないように、将来の争いの火種を摘もうとしていた。寝言でもその仕事の指示が聞こえた時は、「こりゃ敵わないな」と思った。


考えてみれば、父は以前、永田町で1人で事務所を切り盛りしていた。子供の頃は、全く理解していなかったが、隣の部屋は新自由クラブで、隣のビルは自民党本部という立地で、弁護士1人の事務所を維持していたというのは、恐らく並大抵ではない。(仮に自分が運良く新司法試験に受かっても、そんなところに事務所を開く自信はない(苦笑))

しかし、十数年前に大病を患い、完治したけれど、事務所を維持することに不安を覚えた父は、新規案件を受任せず、十年かけて永田町での仕事を片付け、数年前に実家近所に事務所を移した。弁護士というのは、引退することが大変な職業なのだ。

そして更に昨年、そこも閉め、実家に事務所を移した途端、胃癌が見つかり、引越しの一週間後に胃の全摘手術を受けた。その後順調だったが、癌の転移が確認されたのは、この夏の話だ。余生を楽しむのは、これからだっただろうに。


そんな父は、実は検事希望だったそうだ。ところが、検察修習中に担当させられた殺人事件で、子を殺した母に心底同情し、起訴猶予としてしまう。何度もダメだしを食らいながら、殺人事件を起訴猶予とする起案を繰り返し、ついにそれが認められ、実際に起訴猶予とすることと引き換えに、「お前は検事志望を諦めろ」と言われ、弁護士となったというのだ。

事案の概要を聞いたら、自分も涙が出てしまったが、だからといって、それを起訴猶予にするような説得力のある論述は、今の自分にはとても不可能だ。なんと、何十年前の年下の父にも、自分は敵わないのだ。これは衝撃的だ。


極めつけは葬式だ。弁護士は嘘つきだらけだと、同業者が嫌いな父の意思を汲んで、葬式に弁護士が大挙することを避けるため、弁護士会に死を伝えたのも数日後だった。内々でこじんまりと済ませるはずだった。しかし、それでも多数の方に参列していただいた。どこで聞きつけたのか、かつての依頼者の方々にも駆けつけていただき、有り難いお言葉をいただいた。ある刑事事件を起こした元少年で、父に助けられたという今は立派な大人が、会場のロビーで号泣していた。第三者からの父の評価を知ることで、改めて、今更ながら、父の仕事を理解した。


父よ、ちょっと偉大すぎだろ。
もう少し、不出来な息子に超えられそうな部分を残してくれよ。

え?三振ギリギリでの合格を目指しても、父より早いって?
わかった。ちょっとストップしてたけど、勉強再開するよ(自爆)

どうして、こういう嫌がらせをするのか、理解に苦しむね。

みんなの党を応援するしかねーべ。

http://www.your-party.jp/

-->
10月26日からはじまる臨時国会において、鳩山由紀夫総理大臣の所信表明へのみんな の党の代表質問を「手続きが遅い」という理由で民主党および衆議院議長から認めてもらえませんでした。
先の総選挙において比例獲得票数が961票しかかわらない社民党は15分代表質問の時間が設けられています。いったいこの差はなんなのか。怒り心頭の渡辺喜美代表率いるみんなの党の声です。

<--


フォーサイト11月号に、『民主党が抱え込んだ「JAL再生」という地雷』という記事と、『「ジャンボ機の後輪」北海道経済が示す先』という記事があった。

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/20th/2009/10/0911cont.html

別個の記事なのに、実は関連性があって面白い。

前者の記事は、今月24日から公開の映画「沈まぬ太陽」の話から始まる。
http://shizumanu-taiyo.jp/

原作はフィクション小説なのだが、そこに出てくる国民航空という航空会社はJALそのもので、あからさまにJALの問題だと分かる内容のため、JALが映画化に何度も抗議文を送っているという、いわくつきの映画だ。ナショナルフラッグ・キャリアの腐敗と、日航機墜落事故を主題とした作品が、JAL再生が問われている今、絶妙のタイミングで公開するそうだ。

記事では、今回JALが経営危機に至った構造は、この小説の物語と、よく似ているというのだ。映画を物凄く見たくなったw

で、記事の趣旨としては、JALの再建計画が一蹴される経緯や、前原大臣が設立したタスクフォースの面子、大臣の目指す方向性を論じつつ、その手法に疑問を呈する。

オープンスカイ政策に唯一乗れない先進国となってしまった日本で、ぬくぬくと保護されて腐敗したJALは、資本注入やリストラで復活などしない。年率4.5%の運用利回りを前提とした、JALの企業年金の重みを、市場の実勢に近い水準に引き下げ、給付を減額しなければ、財務内容は改善しないが、OBがこれに反対する。

更に、JALにとっての経済効率を優先した、路線集約、不採算路線の廃止は、民主党のマニュフェストに反し、地域主権の確立とは矛盾する。地方経済の衰退を、食い止めるのではなかったのか?という感じの論調だ。

もっともそれは、数ある自民党政権の尻拭い(地雷)の一つで、その処理と市場の現実のはざまで、これから長いドラマが始まるというまとめ方。読みながら頷いてしまった。

特に、記事中の、「航空会社の収益力の国際比較」という図表は、JALの情けない立ち位置が驚くくらい分かりすぎて良かった。

同じ執筆者の、フォーサイト2007年7月号の記事が、丁度ピックアップされてホームページで公開されてるので、これも必見だ。今読むと感慨深い(^^;
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/20th/2009/10/76.html

で、後者の記事が、見事に前者の記事とリンクする。
後者は、北海道経済が「ジャンボ機の後輪」と揶揄される所以を紹介して始まる。景気が上向いても、北海道が上向くのは最後、景気が下降する時は、全国に先駆けて北海道が着地する。今、その北海道が、景気の底板を踏み抜こうとしており、これに遅れて全国経済のハードランディングがやってくるか?と。

北海道の観光産業の状況を紹介しながら、阿寒湖のとあるホテルの状況に触れる中で、釧路空港からJALが撤退を検討している話が出てくる。
http://www.newakanhotel.co.jp/access.html
阿寒湖への本州からの入口は、釧路空港だが、女満別、帯広の3空港とも、既に関西便が全面運休だと。

この記事自体は、北海道経済の抱える問題点を取り上げる中で、上記に少し触れるだけなのだが、これを前者の記事とリンクすれば、とても興味深いのだ。

地方経済の衰退と、JALの経済効率を優先した路線撤退との関連の、具体例という感じ。

このブログでも、JALの救済は、国交省の観光立国政策と矛盾するということを書いてきたので、上記二つの記事は、大変興味深く読めた。

こういうレベルの記事を読むと、改めて、以下のような新聞の酷さに苦笑せざるをえない。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20091007-OYT8T00359.htm
-->
日本航空の国内151路線のうち約9割が、今年4~7月の平均搭乗率で採算割れの状態にあることが、6日わかった。全体の3分の1を超える52路線が50%を割り込んでいる。経営基盤であるはずの国内線で深刻な赤字体質が明らかになり、日航が路線リストラの上積みを迫られるのは必至だ。空港整備のための特別会計の見直し論議にも拍車がかかりそうだ。
<--

上記読売の記事は、このブログの2つ前の記事でも批判的に取り上げた。ところが今日は、朝日が同様の記事を大々的に取り上げてる。

http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY200910220558.html
-->
日本航空、全日本空輸グループの国内線計274路線のうち、7割超の193路線が損益分岐の目安とされる搭乗率60%を割り込み、「赤字」状態に陥っていることが、4~8月の輸送実績などから分かった。
<--

読売と朝日で、雁首そろえてこのレベルだ。
君らは、新型インフルエンザで観光需要もビジネス需要もズタボロだったこと、知らないのか?
しかも、前年比で何%悪化って、リーマン・ショック前との比較だろ?

この時期を基準に、不採算な事業は撤退すべきというなら、日本の観光産業はみんな店じまいだ。

もし、「JAL再生タスクフォース」とやらが、読売や朝日と同じレベルの思考能力しかなかったら、「観光産業破壊タスクフォース」に改名すべきだが、まさかそんなことはないと、信じている。

やっと生き残っている地方の観光地は、JAL、ANAの安易な撤退を肯定するかの君らの恣意的な記事で、戦々恐々としてることだろう。君らが、JALやANA、国交省とどういう関係か知らんけど、少しは頭使って取材しなさいな、と言いたい。

前原大臣の言う羽田HUB化は、上記2つの記事の言うような基準で路線撤退を認めたら、成立しない。もちろん、同じく前原大臣の言う、観光立国だって無理だ。

観光立国で地方経済を活性化させるには、今、観光産業を苦しめない政策が必要で、安易な路線リストラを避けなければならない。しかし、JALやANAの高コスト体質では、観光立国のインフラは支えられないのだ。このアンビバレンツをどう解消するかという視点からの、まともな考察に基づく記事を書いてみたら?


前原大臣は、韓国の仁川のHUB空港の座を奪いたくて、羽田をHUBにすると言ってるわけだが、成田とWinWinとか言っている。これは、リップサービスでなければ、問題点を理解していない証拠になってしまう。中心軸が二つあるような変形HUBでは、中心軸周辺に住む者にだけ、利便性が増す。スポークの末端である地方からすれば、そんなHUBは不良品だ。

確かに今まで、「成田は要らない子」だった。羽田を活用するのは、正しい。それだけでも大前進とも言える。しかし、仮に現状で、JALやANAに国内の地方空港から羽田に路線を就航させ、HUBの形式が整ったとしても、利用者は仁川経由を好んで使い続けるだろう。

何故なら、問題の根本は路線の存否ではなく、JAL等の国内線運賃が高すぎ点にあり、JALで国内移動するより韓国の航空会社で仁川経由で他国へ旅行した方が安いのなら、結局誰も羽田になど行きたがらない。加えて、一般的な感覚でも分かるだろうが、目的地と違う経由地であっても、外国の空港を短時間でも味わうのは、旅の楽しみでもある。何より、アジア各国の新しい空港は共通して、羽田や成田のような古い空港とは異なり、華やかさ、快適さがある。

つまり、競争相手に勝てるだけの利便性がなければHUBにならないが、JALを生かすなら到底無理な要求なのだ。JALが、LCCとして再建し、安価な運賃を実現するなら話は別だ。しかし、それなら新しいLCCを育成した方が早い。また、成田が国際線で残る以上、地方在住者は、羽田→成田の無駄な移動を強制するのが当たり前と考えていることになる。バスだろうと、高速な鉄道が完備されようと、旅行者の立場なら、その交通費を負担するのもバカバカしいし、旅行の荷物を運ぶ手間は、シャレにならない。HUBにしたいなら、常に旅行者の目線でのサービス構築が必須だが、これが圧倒的に欠けている。

羽田と成田をWinWinにしたいなら、最低限、地方-羽田の空の運賃、羽田-成田の地上の運賃の合計が、地方-仁川より安くなければならない。利便性で負けるのだから、コストくらい勝たなければ話にならない。

JAL救済+羽田HUB化+成田国際線存続=観光立国

ということには、絶対にならない。


ただし、羽田と成田を合わせても、需要を満たさないことは確かだ。というか、それで足りてしまうなら、観光立国にはなれない。将来、茨城空港などの活用は、必須のはずだ。
茨城空港の利活用に関する調査研究

首都圏に空港が複数あること自体は、決して悪ではない。そんな国は、いくらでもあって、成功している例も沢山ある。多少不便でも、安価に利用できれば、十分に需要は喚起される。

ところが、TVなど見ていると、「今」需要が無いなら、地方空港は無駄だと決め付ける、低レベルな情報番組が堂々と朝から放送されていて呆れる。物事を偏った側面からしか見ることができないキャスターたちは、見ていて痛々しい。安易に地方空港が無駄だと報道し、経営努力をせずに怠慢で撤退するJALに有利な情報ばかり流してはいけない。観光立国を目指す日本の「将来」に、本当に必要な空港の重要性を、伝えるべきだ。

この点は、実は前原大臣も分かってないのではないか。HUB AND SPOKE型の路線構築しか知らないのではないかと、最近感じる。HUB化しか選択肢が無いと、誰かに嘘を吹き込まれたのではないか?

LCCの手本といわれるアメリカのサウスウエスト航空は、POINT TO POINT型の航空網で、アメリカの地方空港間を結んで成功している。

日本は、空路などなくとも、鉄道などで東京へインフラが集まっている。だからこそ、鉄道と競合する空路が、存在意義が問われるのだ。対して、地方から地方へのアクセスは最悪で、空路の存在意義はそこにある。つまり、POINT TO POINT型だ。

羽田がHUBになるのは構わないが、POINT TO POINT型のLCCが必要だと、早く気付いた方が良い。地方空港と利用者のWinWinこそ、必須なのだ。


ちなみに蛇足だが、このブログで何度も取り上げてきたカボタージュ問題が、やっと議論に上がってきたのは、興味深い動きだ。

http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=42680

Winny事件についてのブログが、久々に更新されていた。
そしたら、NHK記者による、とんでもない弁護妨害の手紙が公開されていた。

http://danblog.cocolog-nifty.com/attorneyatlaw/2009/10/post-785f.html

手紙の内容の酷さに驚いた。

NHKは、こういう露骨な手法でインタビューに応じさせようとする記者が在籍していることを、組織として把握しているのだろうか?

この記者は、こんな脅し方で、いつもインタビューを得ているのだろうか?

ちょっと、余りに驚いたので、ここで取り上げてしまったが、Winny事件とは別にしても、この種の問題はもっと話題にされるべきだ。

高裁、無罪になって本当によかった。
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2009/10/winny-0ca7.html

全く面識もなく、こんなところから言うのもなんですが、おめでとうございます!


>10/9 追記

そういえば、Winnyといえば、最近こういう状況になってる。

「Lessigが案じた未来がここにあった」
http://maruko.to/2009/09/post-67.html

こういう監視が許されるのかどうかという問題は別にして、Winny利用者は、他者にプライバシーを侵害され、CCIFや捜査機関から監視されている可能性が高いということは、自覚した方が良い。

前原大臣は、国交省の役人から、どんな説明を受けているのだろうか?
どうも、自分が矛盾したことを言わされていることに、気付いてないようだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090927/fnc0909272327003-n1.htm

一県一空港政策のカラクリに気付いた点は、素晴らしいのだが、解決策の方向性がおかしい。

-->
日本航空が地方空港を拠点にした不採算路線の運航を強いられ、それが深刻な業績悪化につながったことを考慮し、空港整備のあり方を改革する。
<--
-->
日本航空も地方空港路線の赤字が経営の足を引っ張る構図となっている。前原国交相はこうした旧空整特会を見直すことで、採算の合わない地方空港の整備を中止する。空港使用料や着陸料の引き下げなどにもつながりそうだ。
<--

なんか、まるで地方空港が悪者みたいな、怪しい風向きの情報操作を感じる。確かに無駄に空港が作られた。だが、地方空港の立場を代弁するとこうだ。
JALじゃなくてもいいんだよ!

飛んでくれそうな航空会社だってあるのに、カボタージュ規制を緩和しようとしないのは、国交省じゃんか!

TVや新聞等の旧メディアの連中は、カボタージュ問題を何故取り上げない?
相変わらず、役人のリークする情報操作をそのまま垂れ流しか?

確かに、JALを基準に考えたら、黒字路線なんてほとんど成立しないだろう。
だけど、LCCが一般化し、バス運賃みたいな航空運賃も珍しくない世界の常識じゃ、JALが赤字という路線でも、黒字にできる可能性大の航空会社はある。LCCで運賃が安くなれば、当然、利用者も増える。

「新幹線や高速道路網の整備などに伴い、国内航空路線の利用者は伸び悩んでいる」とか、平気でそういう無知な記事を書くメディアは、信じてはいけない。伸び悩んでいるのは、JALやANAが高いからだ。そして、世界の航空業界を無視して、高コストな国内の空を守ってきたのが国交省だろ。

東京など、交通機関がHUBのように集中するポイントに生活していると、確かに新幹線や高速道路で、どこにでも行きやすいイメージを持つ。しかし、地方から地方へ移動する場合、一々東京を経由させることを、当たり前だと思ってはいけない。地方分権なんでしょ?

航空路線は、point to pointで地方から地方に移動する時、十分に効率的な交通手段なのだ。少なくとも国交相は、JALの肩を持って、地方空港を赤字の根本のように言うのは、「私は航空政策に無知です」と言ってるようなものだ。そして見事に、JALを守るというのだから、洒落になってない。JALを守るなら、地方にも自由に航空会社を選ばせろ。

7月の記事で、カボタージュの件は触れた。
「JALの件の補足」

その後、
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090202/plc0902021110003-n1.htm
-->
路線の廃止や減便が相次ぐ関西空港を支援するため、国土交通省が海外航空会社に対し、関空発着便に限って国内線の運航を認める方向で検討していることが2日、明らかになった。すでに海外航空各社に打診を開始しており、前向きな姿勢を示す会社もあるという。
具体的には、関空発着の海外航空会社に同じ機材で国内の他の地方へ向かう路線を新設することを認め、国内部分だけ利用することを可能にする。

<--
↑この報道自体が、誤報だったことも、8月の記事に書いた。
「焼け石に水なJALの経営再建方針」

地方の赤字空港を抱える自治体は、国内路線を撤退するJALらの代わりに、海外の航空会社に、国内を経由してもらいたいのだ。例えばこんな感じ。

国内のどこかの空港 → 関空 → 海外

しかし、これをカボタージュ規制が阻む。守るべき日本の航空会社が撤退した路線も、無意味に規制を維持して、海外の航空会社に頼みたい地方の声を無視する。

もちろん、この問題は、国交省だけの問題ではない。以下のブログにも書かれているように、問題は複雑。(上で書いてきたカボタージュとは、正確には以下のブログの「タグエンド・カボタージュ」(シカゴ条約では第8の自由)のこと。)
http://ishikawasanzou.iza.ne.jp/blog/entry/855530/

しかし、JALを守って、日本に本当のLCCが育たないのなら、この先はどうなる?

地方空港は、韓国、中国からの国際線が圧倒的に多い。JALの国内線が撤退した後、例えばその県からアメリカに行こうとしたら、韓国の仁川経由で旅行するのがベストかもしれない。前原大臣は、上海や仁川に、日本の地方空港のHUBになってもらうつもりか?


さて我が国は、小泉政権時代から観光立国を目指すようになり、観光庁を作った。外務省は、ポップカルチャー外交を展開し、海外で日本関連のイベントを展開し、外国人観光客を増やそうと頑張ってきた。2010年に外国人観光客を1000万人、2020年に2000万人に増やそうという目標を掲げてきた。

地方空港が活用され、外国人観光客が地方の観光資源に安価にアクセスできるようになることは、観光立国という政策の観点からも、大大大重要。短期間で高額な金を消費する外国人観光客が地方を訪れることは、地方経済の活性化にダイレクトにつながる。

カボタージュの件で触れた
「JALの件の補足」
にも、その辺のことは書いたけれど、LCCと地方空港がセットになれば、安価な国内旅行の選択肢も増え、安い海外旅行で海外にばかり金をばら撒いてくる日本人の行動様式も変わるかもしれない。小泉政権が、どこまで考えてたのか知らないが、無駄に作られた地方空港は、観光立国では生きてくる。

で、前原大臣は?

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091002k0000m020086000c.html
-->
前原誠司国交相は会見で、2020年に訪日外国人旅行者数2000万人を目指す観光庁の目標について「あまりにもぬるい」と述べ、観光を成長産業の核とするために、旅行者数を上乗せする新たな目標を立てる考えを表明した。
<--

えーとですね、この目標を阻んでることの一因は、JALとかの高コストな航空運賃にあると思いますよ。JALを潰して、日本がLCCの適切な価格競争にさらされる国になれば、海外から安く来られる国になって、きっと観光客増えますよ。高速道路無料にしても、外国人観光客には無意味なの、分かりますよね?

だから、大臣がJALを守ると発表した結果、目標達成は遠のいたのです。
全然、ぬるくない(失笑)

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前原国交相は「パリやローマは年に6000万~7000万人が訪れている。日本には観光地が多いのに寂しい限りだ」と指摘。現在ある観光に関する審議会を改組して今月中にも初会合を開き、他省庁と連携して観光政策をさまざまな角度から再検討する意向を示した。
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外国人観光客受入れ世界最大のフランスを例えに出すなら、LCCと地方空港のセットで地方経済を活性化させた、その国の政策も、勉強して欲しい。フランスは、150空港があって、何割かをLCCに解放している。

また、観光資源を増やすべきという議論の中に、地方のカジノ合法化の議論も存在する。
日本は、外人に魅力的な観光資源が少ないから、目標達成するには、観光資源作って増やさないと!というのが今までの流れ。
あんまり、不勉強のボロが出るような発言は、繰り返さない方が良い。

外人が、どういう場所に魅力を感じるのかから、事実を教えてくれる側近を増やした方が良い。
http://www.tripadvisor.jp/HotSpotsJapan

大臣の想像する観光地は、ランキング上位ですか?

何でもかんでも前政権の政策を批判すれば良いかの姿勢は、野党のクセが抜けてないように見える。公約に掲げてないことまで、よく調べる前に結論を出す必要無いですよ!

http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=42454

マジで、縦割りや過去の常識を崩さないと観光立国無理なんで、小泉政権が嫌いだったろうと関係なく、良い政策は引き継いで伸ばして欲しい。


フォーサイト10月号に、司法改革関連の記事が2つあった。
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/20th/2009/09/0910cont.html

1つは、会計士と弁護士業界に共通した問題として、資格試験の合格者を増やしたけれど、今になって業界側が減らせと言い出している話。
「不況で方針転換する会計士・弁護士業界の迷走」
もう一つは、再編の始まった法科大学院の、集客合戦の話。
「大再編が迫る法科大学院の「集客合戦」」

前者は、業界の既得権益保護に批判的な内容で、後者は、法科大学院構想に反対の法曹の言い分を紹介しており、偏った印象を受ける。こういう、対照的な記事の載せ方は、フォーサイトのバランス感覚だろうか?

来年の新司法試験受験予定者として、当然、後者につっこみたい(苦笑)

第1回の新司法試験の合格率が48%で、第4回の今年が27%で、ここまで下がったのが、弁護士の就職難や質の低下を受けてのこと、という指摘に対して。


受験生以外知らないだろうが、旧司法試験と新司法試験では、試験問題のレベルが、新司法試験の方がはるかに高い。例えば、今年の旧司法試験の論文試験は、全科目の合計で、問題が6ページしかない。1問の問題文が、10行程度しかないものもある。しかも、読めば一目で、論点が分かるような問題だ。ところが新司法試験は、1科目で10ページ以上なんて、ザラだ。旧司法試験では求められなかった、事例分析能力が問われており、論点を見つけられるかどうかから、試される。

当たり前だが、例えば弁護士は、依頼者が相談してくる雑然とした事実関係の中から、依頼者のかかえる法的問題点を探し出し、解決に導く。旧司法試験は、いきなり法的問題点が問になっているのに対し、新司法試験は、雑然とした事実関係が示され、依頼を受けた弁護士の立場で、具体的な攻撃防御方法を問われたりする。なので、新司法試験の問題文の大半は、前提となる事実関係だ。そこから、法的問題を抽出できなければ、ゲームオーバー。

逆に言えば、難関と言われた旧司法試験は、複雑な事実関係から法的問題を抽出できなくとも、合格できた。そんな能力は、問われなかったからだ。他の違いは、口述試験があったことだろうが、それにしても超難関だったのは、単に合格者数が極端に絞られていたからだと言える。そもそも、受験科目数からして少ない。昔の弁護士は、勉強する必要の無かった法律分野が、新司法試験には増えているのだ。

そして、弁護士の質の低下が叫ばれ始めたのは、新司法試験の合格者が現場に出るより、前からだ。法科大学院構想に反対していた法曹たちが、既に質の低下を訴えていたのだから。

思うに、旧司法試験で合格した法曹のうち、新司法試験で合格できる割り合いは、かなり低いだろう。また、最近の多くの法改正に対し、年配の弁護士などは、すでに追いついていない。改正された法律を知らない弁護士など、少なくない。新司法試験の受験生には必須の法律科目だって、全く学んだこともないなどという弁護士はザラ。そんなものは、依頼者が現れた時点で、勉強すれば良いと言う。もしくは、その分野の仕事が来たら、断る。

質が下がっているというなら、具体的にどの試験で合格した人物が、どういう質を下げているのか、はっきりさせるべきだろう。もちろん、新司法試験の合格者にも、資質に欠ける者がいるかもしれない。合格者数が増えれば、相対的に資質の欠ける人物の数が増えるのも当然だ。しかし、リーガルサービス全体の質の向上という観点から、プラスかマイナスか、第三者が客観的に測定し、論じるべきだろう。質が低下したと、既得権益層から言われても、鵜呑みにすべきでない。

そうした問題意識を前提に、合格率の低下について説明する。


新司法試験第1回とは、その年の法科大学院の卒業生しか受験者がいない。しかし、第2回は、第1回の不合格者と、その年の法科大学院の卒業生が受験する。第3回は、第1回、第2回の不合格者と、その年の法科大学院卒業生が受験する。つまり、毎年卒業生が出る以上、3回不合格で受験資格を失う者が、新規の卒業生数を上回らない以上、受験者数そのものが増加する。しかし、合格者数は、法務省のさじ加減で劇的には増えないのだから、毎年合格率が下がるのは、当たり前の話だ。そんなことは、法科大学院関係者なら、誰だって知っている。確率が下がることは、誰もが予測済み。合格率が7割だとか言われていた頃に、それを信じて法科大学院に入学した学生は、既に三振を終えているか、来年の受験で最後という人が大半だろう。

つまり、少なくとも今年の卒業生あたりは、合格率が3割程度であること自体は、入学前から予測している。全国の法科大学院の学生数と、新司法試験の合格者数の目標値は分かっているのだから、何年も前から簡単に予測可能だ。

だから、学生の側からすれば、合格率の低下自体は、大した問題じゃない。しかし、今年の最大の問題は、合格者数が減らされた、という事実だ。パーセントなんてどうでも良いのだ。

司法試験というのは、新でも旧でも、いわゆる合格基準点というのが無い。何点以上なら合格、という試験ではない。単純に言えば、合格者を何人にするか決めて、得点の上から順に、合格にするようなものだ。だから、合格者数が減ることと、受験者の質の低下は、基本的に関連性がない。質を問題にするなら、何点以上が合格か決めれば良いだけの話だが、そういう合理的な主張が無視されるのは、世の常である。

この点は、今年の合格報道は、どこのメディアも皆、大きな誤解を前提に書かれているような気がする。例えば朝日。
http://www.asahi.com/national/update/0910/TKY200909100334.html
-->
下落傾向が続いている合格率は、前年の33.0%をさらに下回る過去最低の27.6%で、歯止めがかからなかった。
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誰か歯止めを考えてたのか?(苦笑)

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同省が今年の目安とした2500~2900人も大きく割り込んだ。
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割り込ませたのは、誰だ(失笑)


今年と去年じゃ、受験者数は1000人以上増えている。昨年の合格率以上にするには、昨年2065人だった合格者数を、2438人以上にしないと、合格率は上がらない。合格率の低下に、誰かさんが歯止めをかけたかったなら、目安通りに2500人以上合格させれば良かっただけだ。初めから、既得権益層の言い分を入れて、合格者を減らす指示を誰かがしたから、歯止めがかからなかっただけだ。間違っても、今年の受験者の質が低下したことを示す証拠は無い。

一部誤解を生んでいるのは、今年の合格者の最低点が、昨年の最低点より155点低くなった点だ。これを見て、質が低下したと誤解している人がいる。しかし実は、昨年と今年とでは、採点基準が変更され、総合評価の満点自体が下がった。昨年までは、350点満点の短答試験の結果が、そのまま総合評価に加算されていた。これが今年から、半分になった。つまり、短答試験が仮に満点でも、総合評価では175点にしか換算されなくなったのであり、最低点が下がるのは自然な結果だ。
-->
なお、何故採点基準が変更になったかと言うと、短答試験の点数評価が大きすぎて、短答の順位を論文試験でひっくり返すことが、ほとんど困難な試験となってしまっていたからだ。よって、論文試験の重みを増すための措置だ。
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つまり、合格者数が減ったのも、合格率の低下に歯止めがかからなかったのも、受験生に帰責性はないし、法科大学院の質に問題がある証拠にもならない。単に、誰かの意向が働いただけの結果なのではないか?

メディアは是非、この受験者に対する裏切り行為を、大々的に取り上げて欲しい。かつ、それがどういうメカニズムで決まったか、はっきりさせるべきだ。そういうことに触れず、フォーサイトの記事も、現職高裁判事の「法曹資格者の大幅増員が質の低下を招く」などという警告を引用し、法科大学院の存在そのものを批判して終わっている。非常に、取材不足な記事だ。

驚くべきことに、フォーサイトのバランス感覚か?と書いた、既得権益批判な前者の記事ですら、試験が易しくなったと勘違いしているように読める。「試験を難しくすべきだ」、「試験が易しくなった結果、質が大幅に低下した」という弁護士の主張を、ぞのまま紹介しているのだ。単に、既存の弁護士が、「競争激化による所得減少を恐れている」のが本当のところだという記事の構成にはなっている。しかしそもそも、試験が易しくなったという指摘自体が、不適切である点には触れていない。

法務省のサイトに、旧司法試験と新司法試験の問題文が掲載されている。

旧司法試験の論文問題
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/h21ronbun.pdf
新司法試験の各科目の論文問題(下の4つ)
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h21-22jisshi.html

新司法試験の問題が、素人でも一目で分かるくらいに、旧司法試験より難しくなっている現実は、見れば分かる。新司法試験は、旧司法試験と比べても、過去に無いほど十分に難しく、これ以上試験を難しくするには、単に合格者数を減らす以外にない。

7割合格なんて夢物語は、とっくに誰も抱いてないけれど、2010年に3000人合格させるために、徐々に毎年合格者数を増やしていくというのは、今年の受験生は信じていたはずだ。まさか、合格者数が減らされるなんて、騙し打ちそのものでしかない。誰か、合格者数決定の過程について、情報公開請求すべきだ。きっとそれも、公法の受験勉強になるから、是非(苦笑)


先月、「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」なる団体が、活動を開始した。頭文字から、CCIFと呼ぶ。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20090817_309042.html

Winnyのネットワークを監視し、ダウンロードされているファイルを調べ、それがアップロードされると著作権侵害となる可能性のある人物に対し、ISP経由で警告を始めているそうだ。現在まだ、著作権法は違法なアップロードのみ禁じ、私的使用目的でのダウンロードは違法でないので、違法なアップロードに加担させられる可能性を根拠に、ISP経由の警告にとどめているようだ。

しかし、来年1月1日から施行される改正著作権法では、違法なインターネット配信による音楽・映像を違法と知りながらダウンロードすることが、私的使用目的であっても権利侵害となる。いわゆる、ダウンロード違法化である。よって、来年からは警告などという迂遠な方法をとらずに、ダイレクトに訴えることが可能となる。CCIFのオブザーバには、警察庁がいる。改正著作権法をフル活用するための、準備万端といったところだろうか?

著作権法に追加される30条1項3号には、違法なダウンロード行為そのものに罰則規定がない。しかし、行為が違法となった以上、不法行為に基づく損害賠償請求や、不当利得返還請求が可能となるのであって、権利者団体には大きな価値がある。

ところで、FAQの記述が引っかかる。
http://www.ccif-j.jp/activity.html
-->
Q.私が何のファイルを持っているのかを調べることは、盗聴ではないのか。

A.調査では、Winnyのネットワーク上に流通している「キーファイル」(ファイルの要約情報)を収集し、ユーザーが保持するファイルの名称やIPアドレス、接続時刻などを検索・保存できる技術が利用されています。調査に使用されているツールは、Winnyネットワーク上を、通常に流通している情報を取得するだけで、ユーザー間の個別の通信を傍受するような機能はなく、通信の秘密を侵害しません。
<--

はて?
通信の秘密は、いつから、ユーザー間の個別の通信の傍受に限定されるようになったのだ?

通信の秘密の法的性格に関する通説は、表現の自由の保護とともに、私生活の自由ないしプライバシー保護をもその趣旨とする。だから、保障の範囲は通信の内容だけでなく、通信の存在自体に関する事柄も含む。誰が通信しているか、などもそうだ。

例えば、内容が公になっていても、送信者の身元を明かすことまで想定されていないのなら、そこに保護法益が存在するはずだ。言うまでも無く、憲法制定当時、今のネットワーク社会を想定していたはずもなく、条文を文言のみから現代に当てはめて良いわけがない。

「通信」に関する解釈は、「特定人から特定人にあてた意思の表示」=会話を含むという立場から、「遠隔地に存在する特定の発信者と特定または不特定受信者が、特定のチャネルを利用してなすコミュニケーション行為をいう」という立場まで、学説は様々存在する。以下のP6など。
http://www.jaipa.or.jp/info/2005/iw2005.pdf

そして、通信の秘密における侵害行為態様とは、送信者の意思に反した利用が含まれる。

ネットワーク上の、物理的な位置づけから、論理的にはCCIFが受信者だと言いたいのだろう。しかし法的には、送信者の想定していない受信者は、当事者ではないと言うべきで、その解釈は理系的な技術認識とは、別次元の議論だろう。送信者からすれば、CCIFのような団体に受信されるとは、知らないのだ。

ネットワーク上に流通していれば、誰がどんな通信をしているか把握するために、受信者を装って通信を取得することが構わないというなら、本末転倒である。それこそが、通信の秘密が想定している法益(表現の自由や、プライバシー)を侵すのだから、脱法的ではないか。

こんな解釈で構わないのなら、アマチュア無線など誰でも聞ける無線通信には、「通信の秘密」は存在しないことになってしまう。

「通信の秘密」とは、「秘密の通信」ではない。

憲法は、第三者が、受信者を装って、不特定多数の送信者の通信を一挙に解析できる時代が来ることなど、想定していなかっただけだ。そういう場合は、法の趣旨に立ち返って、時代に合わせて解釈するのが、憲法である。現代における通信の秘密の侵害に該当すると、法律構成は可能なはずだ。

そんな危惧をしていたら、こんなブログを見つけた。
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20090830.html
このブログ主に、粘着的な気持ち悪さを感じる人は、少なくないはずだ。
これで、産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター主任研究員だそうだ。

単純な話、この人と何かやり取りしたら、何の犯罪もしていなくても、コッソリと調べ上げられて、プライバシーを侵害される可能性があるってことだ。幸い自分は、P2Pに興味は無いし、ブログ主にIPアドレスを知られる関係(例えばメールをやり取りするとか)でもない。しかしそれでも、抽象的な恐怖を感じる。

普通、誰かの自宅のIPアドレスを知ったとしても、それ以上に行動を調べたりしない。Winnypだからできたとしても、相手が他人に知られたくないであろう私生活に関わる部分まで、まともな倫理観があれば調べたりしない。

現実世界で考えれば当然だが、誰かのリアルな住所を知っているからと、その家からの出入りに関する情報に、興味など持たない。そんなことを調べるのは、それを仕事にしている興信所や捜査機関などを除けば、ストーカーくらいなものだ。

仮に、当初は統計的な目的で、公道を走る車をカメラを多数設置してカウントしていたとして、そこに車のナンバーが写っていたとする。ある日、意見の合わない相手の車のナンバーを知ったからと、それを統計目的で所持していたデータに照らして、相手の私生活の行動パターンをグラフにして弱点を暴き、ネットで公開なんぞするか?

現実の世界では、そういう作業はとても手間と費用がかかるし、完全な情報収集は困難なので、個人じゃ限界がある。ところがインターネットでは、一定の技術を持つ者であれば、通常では考えられないような膨大なデータを収集し、フィルタリングし、特定個人の行動を監視できてしまったという現実が、ブログで示されたわけだ。CCIFのような団体ではなく、一個人でも、同じことが可能なのだ。

恐らく、ここで非難されている「ダウンロード違法化反対家」なる人物は、このブログを見て自分であることに気付いて、今頃恐怖に陥っているだろう。また、そこまで計算して、このブログが書かれているかもしれない。

もっと言えば、無関係の人物であっても、ダウンロード違法化に反対の意見表明をすると、ここで書かれているように児童ポルノをダウンロードしたいからだろうと思われる可能性が生じてしまった。

たった1人の行動をストーカー的に調査した結果のみから、著作権法に関する正当な議論が矮小化されてしまった。言論の自由に対する脅威だし、当該人物に至っては、脅迫されたようなものではないか?

もし、1人ではなく、実はもっと大量にサンプルがあって、ダウンロード違法化に反対する人々の大半が同様であるという証拠を持っているのだとしたら、こういうブログの書き方もアリかもしれない。しかしその時は、同時に、そのように大量のプライバシーを侵害する行為者の倫理観が、ずば抜けてオカシイことを公言するのと同じになるだろう。

というか、最初から、ダウンロード違法化に反対の、ある程度発言力のある特定人物を個人攻撃する目的がなければ、Winnyノード観測システムの接続ログとIPを突き合わせたりしないだろ。

さも偶然、ダウンロード違法化反対家が児童ポルノをダウンロードしていたことを発見したかの書きっぷりで、公共性のある情報を発信しているかの装いだが、当人の行動自体が常軌を逸している。


そもそもブログ主は、「Winnyネットワーク観測システム」なるもので、何故監視しているのか。当初は、純粋にWinnyがネットワークにもたらす弊害に対する、技術的興味だったようではある。
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20060716.html

しかし、3年も情報を蓄積し続けた結果、「データから利用者ひとりひとりがどんな行動をしているか、直感的に読み取れるよう視覚化」してしまう。
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20090816.html

注釈で、「通信の秘密」について言及している部分はこうだ。
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20090816.html#f01
-->
こうした調査は(プライバシーに関わるものにはなり得ても)通信の秘密に抵触するものではないと認識している。ISPなどの通信インフラ上で調査しているわけではなく、通信の当事者である私のコンピュータで行っているものであり、(ユーザ単位のアクセス制限があるわけではない)ファイル共有ソフトは不特定多数に向けた公開サービスであって、Webのクローラが(無断リンク禁止の隠しページも含めて)全てのページを拾っていくのと同列だからである。
<--

自らは通信の一方当事者であり、当該通信も秘密でない、と言いたいのだろう。
自らの正当化理由も、この日付も、そして攻撃対象までが、CCIFと足並みがそろいすぎているのは、偶然の一致なのか?


ついでに、比較に出している事例から推測してみる。ブログ主は、無断リンク禁止の隠しページは、クローラに拾われても良いと考えているようだ。鍵がかかっていない家は、出入り自由とでも言いたいのだろうか?
鍵のかけ方に詳しそうな、このブログ主には、常識なのかもしれない。しかし、隠したいけれど隠れてないというケースは、単にコンピュータやネットワークに関する知識の存否によって生じ得る。知識の無い人間の秘密は、法的保護に値しないのだろうか。アメリカでこんな事件があったのを思い出した(苦笑)
http://wiredvision.jp/news/200806/2008061621.html

こういった例の示し方から、技術的に保護された通信のみが、通信の秘密の対象だと思っているのではないかと、勘ぐってしまう。


まあ、とにもかくにも問題は、自らと対立する言論を攻撃する道具に、使っている点だろう。CCIFの言い分が正しいと、特定個人の行動を調べ上げるような、この様な監視行為も、誰もが許されることになる。IPアドレスは、「偶然知った」と言えば、許されるようだ(苦笑)

できることと、やってはいけないことという線引きは、既に失われている。

問題は、著作権保護の要請の範囲を、遥かに超えていると言えよう。


ところで、もしも同じ行為を、捜査機関が行うとしたらどうだろう?
つまり、何の嫌疑も無い状態から、個人のIPアドレスを手掛かりに、その人物の通信に関わるプライバシーをどこまで侵害できるかだ。

CCIFや、上記ブログ主が言うように、これが通信の秘密の侵害に該当しないとなると、捜査機関が同じ手段を用いることも障害がなくなり、何も嫌疑のない国民であっても、Winnyなど利用していれば日常的に監視が可能となってしまう。令状無しにだ。そんな未来が、来年1月1日から始まるのか?
あ、もうとっくに監視されてるのかな(^^;;;


かつてレッシグが「CODE」で案じた、規制を必要とするインターネットの未来そのものに出会った、と感じた。あの本の後半には、確かこんな趣旨のことが書かれていた。
-->
インターネットは、放っておけば、どんどん規制しやすくなる。それは、過去の仕組みの不完全さがもたらした欠陥の穴を塞ぐのだが、その不完全さとは、実は憲法が保証する欠陥、自由でもある。
だから、ネットの匿名性に価値があるなら、不完全な認証を組み込むべきだし、情報のフィルタリングも不完全となるように、政府の規制によって実現しなければならない。

技術が進めば、不完全なシステムは、どんどん完全に近づく。
不完全(=自由)の価値を守るのが、憲法や法律であって、政府の役目だ。
政府の規制を弱めたからと、自由が実現されるというのは妄想だ。
自由を守るには、適切な政府の規制が要る。

不完全なシステムこそ、多様な価値観を生む。不快な現実が、規制によって全く目にすることがない世界では、何が不快か知ることもないし、現実から目を背けるだけだ。人は、好きなものだけを見ていては、成長しないのだ。

民主主義の根本は、知る権利と、表現の自由だ。フィルタリングは、これを奪う。
<--

政府ではなく、コードを書く個人によって、インターネットの自由が失われるなんて、昔はなかなか想像できなかったんだけどなぁ...

改訂版のVERSION 2.0は、まだ読んでないが、今こそ買うべきかもしれない。

-->追記
偶然、先日の衆議院選挙で落選してしまった元議員のブログの、2006年時点の興味深い記述を見つけた。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/fcacf197b9bd5659faaf21124aa6ef9e
この人の心配した通りの社会になってますね。結局、著作物の権利者団体という、ごく一部の人々の経済的利益を保護するために、多くの国民のプライバシーが危険にさらされることが正当化されるという、不思議な国ですね。この時点ではまだ、「容疑が浮上した段階でプロバイダーに「サーバーの保全要請」をかける」とか書かれてますが、最早そんな必要もなく、日常的に監視できるようになってしまうなんて、この人も驚きでしょう。残念な人が落選したものです。
<--

-->追記2
間違ってた綴りを修正(苦笑)
ちなみに私は、上にも書いてますが、P2Pとか全然興味無いので、もちろんWinnyとか使ったことありません。なので、Winnyで実際に権利侵害してる人を、擁護する気は全く無いです。プロフにも書いてますが、10年以上、著作物の制作現場で働いていた側です。DVDを年に100枚買ったりするくらい、著作物に金を払うことが大好きです(自爆)
しかし、それとこれは、全然別の話。
<--

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