必殺!アドビのノーガード戦法!!

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http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/20130108_cs2_downloads.html
アドビが、CS2のアクティベーション(ライセンス認証)サーバーを停止したこととの引換えに、正規ユーザー向けに、アクティベーションサーバーを介在しないで起動できるインストーラーとシリアルを公開したそうで、当然色々と祭り状態になった。
http://matome.naver.jp/odai/2135760297416235101
http://room402.biz/adobe-cs2-is-not-free/

そもそも、ネット経由でアクティベーションするシステムが導入された当時から、将来いつまでサーバーが維持されるのか、利用し続けられるのか、自分のような社内のライセンス管理をする立場だった人間は気が気でなかったわけだけど、これがその答えというわけだ。

「技術的な理由」としているが、つまりはコスト削減だろ?という感じがしないでもない。

アドビは昔から、正規ユーザーのライセンス管理がおろそかで、自分の昔のmixi日記なんぞ読み返すと、涙なしにアドビとの格闘の日々を語れない(嘘)のだが、ユーザー管理部門のスリム化・適正化というのが、アドビの変革の歴史なのではないかと思っている。

手紙でシリアルコードを送付させて、人力でユーザー登録処理していた時代、アドビのサポートは正規ユーザー情報を管理しないともノタマイ、アドビのユーザー情報のデータベースが壊れていても、その修正に膨大な時間と労力をユーザーに負担させた。そういう意味では、アクティベーションサーバーによる自動化、その後のサブスクリプションやらクラウドの導入というのは、ユーザー管理の効率化の歴史であり、ユーザー側のライセンス管理の負担軽減の歴史でもあった。しかし、逆に言うと、そのために無駄なバージョンアップがなされ、大した機能向上もないのに新バージョンを買わせる口実にもされた。
(あんまりこの辺を語りだすと愚痴だらけになるので、やめておくけれど(苦笑))

さて巷では、こんな大胆なことをやって大丈夫なのかと、不正利用が増えるのではないかと、アドビを心配する声もあろうが、アドビがこういうことをやらかすのは、実は今回が初めてではない。アドビは昔から、不正使用を誘発することを躊躇しない会社なのだ。例えば、昔のMac版のPhotoshop等では、イントラネット上でアドビ製品が起動している数をチェックしていて、5ライセンス購入者のシリアルでは、同時に5台でしかソフトを起動できない制限があったが、Win版では無制限に何台でも起動できた。また、昔のAfterEffectsでは、ドングルというハードウェアキーをPCに接続し、これがなければプロ版の起動ができない制限があったが、あるバージョンからこれが廃止され、プロ版がノーチェックでいくらでも起動できてしまうようにされた。社内でライセンス管理する立場としては、「ドングル買わないと起動できないのですから買いましょう」と、必要数のライセンス購入を促す社内の説得材料がなくなり、困ったものだ(苦笑)

しかし、不正使用によってアドビの売上げが下がるなんてことはなく、いつも確実にシェアを拡大し、売上げは右肩上がり。これが、プログラムの著作物たるソフトウェアの面白いところだ。

もちろん、今回の本来の目的はこうだ。
「これらの製品は、7年以上前にリリースされたものであり、現在多くの方に利用されている主要なオペレーティングシステムでは動作いたしません。 しかしながら、旧来のオペレーティングシステム上で継続してCS2製品およびAcrobat 7を利用されるお客様に引き続きご利用いただけるよう、CS2およびAcrobat 7の正規ライセンスを所有されているお客様を対象として、アクティベーションサーバーを介在しないソフトウェアをアドビ システムズより直接提供させて頂いています。」
今更、CS2を使ってる正規ユーザーからは、不満の声は出ないだろう。

しかし、喉の奥に何か引っかかる説明が続く。
「弊社が不特定多数の皆様に対して無償でソフトウェアを提供することが目的ではございません。本措置は既存の正規ライセンスを所有されているお客様の利便性を損なわないための顧客支援の一環の措置であり、正規ライセンスを所有されていないお客様のご利用はライセンス違反となり得る旨、ご理解の上ご利用いただけますようお願い申し上げます。」

>ライセンス違反となり得る旨
「なり得る」とは、「なる」ではない。
なぜ、正規ライセンスを所有せずに利用する場合を、ライセンス違反と断言しないのだろうか。

>ご理解の上ご利用いただけますよう
ご理解すれば、ご利用いただいても構わないのですか?

「正規ライセンスを所有されていないお客様は、ご利用いただけません。」とは、何故書かないのか考えてみよう(笑)


■そもそもダウンロードして良いのか
例えば、パッケージ製品を購入するユーザーは、パッケージに印刷された利用規約を読み、その内容を了承してパッケージを開封することで、権利者と契約が成立するとされている。シュリンクラップ契約というが、これ自体、民法上は色々と問題がある。

今回アドビは、当初アナウンスが不適切で、無償で公開したかの誤解が広がったわけだが、アナウンスをし直した後に至っても、ライセンス条項や利用規約のようなものの表示は一切なしにダウンロードが可能なまま。というか、アクセスが集中してメンテナンスした後、ついにはAdobeIDすら不要で、誰でもダウンロードできるようにされた。言ってることと、やってることが逆だ。
不特定多数がダウンロードしたことが推測されるが、それが具体的に何に違反をするのか、その過程で表示していないままだ。

もし仮にアドビが、ダウンロード者をIPアドレスから特定し、正規ユーザーでなければ著作権侵害として訴えるとか、正規料金の3倍払え(これは不正利用者と訴訟になった場合のアドビのスタンス。損害額を正規小売価格の2倍とし、これを払った上に、更に新規に正規ライセンスを買わせる。もっとも、日本の裁判所は2倍の損害額を認めないけれど。)と請求するような対応をしたとしたら、どうだろう?

ワンクリック詐欺と、どう違うのだろうか。(もちろん違うがw)

そもそも世の中には、フリーソフトウェアやシェアウェアも存在するのであり、正規ライセンスを所有していない状態でソフトウェアをダウンロードすることが、即違法となるような慣習はインターネットに存在しない。
著作権法的には、私的使用のための複製はセーフであり、プログラムの著作物は、違法ダウンロード刑事罰化の対象でもないし、なにより今回、アドビという権利者本人が自動公衆送信している。

また上記の通り、ダウンロードの画面上に許諾条件の表示もないし、同意ボタンもなく、申込と承諾の過程が皆無なわけで、オンクリック契約、クリックラップ契約の欠片もないように見える。

つまるところ、正規ユーザーのみがダウンロードできるように制限をかけるくらい、アドビには造作も無いのに敢えてやらず、ダウンロード前にライセンス条項等を容易に認識できるステップも踏ませず、無駄に太っ腹にいくらでもワンクリックでソフトウェアがダウンロードができる状態をあえて作出している以上、正規ライセンス所有者でない者がダウンロードすることまでは、目的外だが想定済みということなのだろう。だから、「ご利用」がライセンス違反となり得るという書き方になっているわけだ。

何故こんなノーガード戦法を選択したのか、理由は色々あるだろうが、そもそも制限しても無意味だからだろう。
仮に、正規ユーザーにのみダウンロードを許したところで、アクティベーションサーバーを経由せずに起動できる共通のシリアルとセットで配布したが最後、足がつかないので、正規ユーザーがそれをコピーして第三者に渡してしまうことを防げない。どうせ防げないなら、無駄に制限をかけても意味がない。むしろ、ダウンロードを自由にすれば、不正コピーを売買して利益を貪る輩を防げるくらいの話だ。

ということで、アドビの目的ではないにしても、ダウンロードを正規ライセンス所有者に限定する気は、毛頭ないのだろう。要は、結果として最新版の売上げが減少しなければ、今更売れない旧バージョンがいくら使われても、実質的な損害はない。それよりも、正規ユーザーがアクティベーションできないことの方が問題なのだから。


■ライセンス違反となり得るのか
では、どの段階でライセンス違反が成立し得るのか。インストールするのに、どんな契約を交わしているのだろうか。

アドビ製品を買ったことがなくてライセンス条項を知らない人や、当初の祭り状態につられて、無償と信じてインストールしてみた人もいるだろう。
そういう人に対しては元より、そうでない人に対しても、ライセンス違反と言うには、その前に前提となるライセンス契約が存在しなければならない。
ソレがないなら、「ご利用いただけません」と言えない。

さて...ソレはないのだろうか?


インストール時にクリックして承諾させられる、アドビのソフトウェア使用許諾契約書というのがあるので、読んでみれば分かる。

実はこっちもノーガードだw
確実に1台にはインストールが許される規定っぷり。
ワイルドだろ~?(苦笑)

何故ならこの契約書は、ライセンス契約の存在が使用許諾の前提条件になっていない。それどころか、「お客様が本ソフトウェアをAdobeまたはその公認ライセンシーから取得し、本契約の条件に従う場合には、Adobeはお客様に対し、下記に定めるように、マニュアルに記載されている方法および用途に本ソフトウェアを使用するための非独占的なライセンスを許諾します。」という規定がある。

つまり、今回アドビがダウンロードページで主張しているような、正規ライセンスを所有している人に使用を許すのではなく、その逆で、インストール時に使用許諾条件を承諾した人に、アドビが正規ライセンスを許諾しなければならない建て付けの契約になっている。そして、本来あったはずのアクティベーション(ライセンス認証)というのは、この使用許諾契約で許可された以外のコンピュータにソフトウェアがコピーされるのを防止する仕組みだったのだ。

唯一の例外は、「お客様は、本契約の全部または一部を補足し、またはこれに代替する別個の契約書(例えば、ボリューム・ライセンス契約)を直接Adobeと締結している場合があります。」という記述。
昔、CLPというボリューム・ライセンス契約をアドビと交わしたことがあるが、あれは確かに、インストールの前にライセンスが存在した。しかしもちろん、そんな契約をするのは法人くらいであって、個人では聞いたことがない。
アドビは、単発のライセンスの場合と、ボリューム・ライセンスの場合とで、ライセンスの発生するタイミングがインストール開始と前後し得るのだ。ややこしぃ...

なので、この使用許諾契約が有効である限りは、今回配布されているプログラムのインストール開始前は、ライセンスを有しないユーザーこそ一般的であって、それがライセンス違反になるという論理には無理があるんでないかい?

言いたいことはよく分かるけど、法務部ちゃんと仕事してるの?


■どうしてこうなった
思うに、今回のような手法で製品版をアドビ自身が配布してしまう事態は、この使用許諾契約書は想定していないのだ。だから、アドビ自身から取得(今回の場合はダウンロード)さえしていれば、それは不正ユーザーではないという大前提で、用法を守るならライセンスを許諾してくれちゃう。しかも、「本契約は、権限を有するAdobeの役員が署名した文書による場合のみ変更できます」とされているので、今回のダウンロードページに何と書いてあっても、それがAdobe役員の署名した文書によるものでなければ、意味がない。契約条件の変更権限を有しないアドビ社員が、ダウンロードページにどんな条件を呈示したところで、使用許諾契約書の内容は変更できない。

ということで、アドビの社員さん、ちゃんと御社の契約書の内容理解してください。
契約書の想定外の配布方法を取りながら、使用を制限したいなら、ちゃんと御社の役員に署名してもらって、使用許諾契約書を改定してください。
現状、私的使用目的なら、著作権法的にも、使用許諾契約書的にも、誰でも使えちゃうとも解釈可能なわけで...え?だから「ご理解の上ご利用いただけますようお願い申し上げます。」なわけ?(嘘)

おや、誰か来たようだ...


■補足
今回は、そういう解釈もあるんでないかい?ってことで書いてるだけなので、これを根拠にアドビ様に立てついたりしてはいけませぬ。ならぬことはならぬものです。

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このページは、ranpouが2013年1月 9日 22:44に書いたブログ記事です。

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