CGの児童ポルノが摘発されたのか?

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■本題に入る前に、前提状況から
ここ数ヶ月、児童ポルノ禁止法に関し、実在児童が被害者の場合を規制対象とする現在から、被害者のいないアニメやマンガなどの創作物も規制対象に含むべきという与党の動きがあり、
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130521/plc13052123040018-n1.htm
変な改定案が国会に出されたことで、
http://taroyamada.jp/?p=3145
選挙戦の前までは話題となることが多かった。

きっかけは、みんなの党の山田太郎参議院議員が、4月に与党の改定案を公開し、問題提起したあたりからだろう。
http://taroyamada.jp/?p=2014

山田氏は、反対の立場から国会でも質問に立ち、メディアが次第に取り上げるようになった。
http://www.cyzo.com/2013/05/post_13274.html
http://news.livedoor.com/article/detail/7667547/
http://www.cyzo.com/2013/05/post_13360_2.html

ヤフオクは自主規制のようなことをアナウンス。
http://topic.auctions.yahoo.co.jp/notice/rule/adult_rules/

6月に入ってからは、参院選後に自民党が過半数となって同法の改悪を強引にしてしまうだろうということで、選挙を通じた反対の意思表示を山田氏は訴えていた。
http://yukan-news.ameba.jp/20130613-426/
http://www.j-cast.com/2013/06/23177612.html?p=1
http://taroyamada.jp/?p=3508

■本題
選挙戦が始まると、山田氏は今回の改選組ではないが、同党の候補者の応援に忙しく奔走し、新聞などもこの話題は静かな感じだったのだが、そんな11日、ちょっと驚くようなタイトルのニュースが話題となった。

「CGの児童ポルノを初摘発」(時事ドットコム2013/07/11-12:48)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307%2F2013071100306&g=soc
--
18歳未満の少女の写真を参考に描いたCG(コンピューターグラフィックス)のポルノ画像を販売したなどとして、警視庁少年育成課と南千住署は11日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で、岐阜市正木のデザイン業、高橋証容疑者(52)を逮捕した。同課によると、CGを使った児童ポルノの摘発は全国で初めて。
--

つまり、現行法でもCGが児童ポルノに含まれると捜査機関が判断したらしいということで、この問題点を理解している人々の間で、一気に注目された。そして、これに早速、山田氏が動いた。
http://taroyamada.jp/?p=2231

選挙戦で忙しいだろうに、迅速に警察庁から事件の詳細のヒアリングを受け、公開してくれた。正直、いい仕事をしてくれるなと、関心してしまった。

■問題点
そこで、山田氏によるヒアリングと論点を参考に、CG制作会社の元社員として感じた問題点を書いてみる。

まず、本件が「CG」として報道されたことに、ある種の意図を感じた。昨年12月の事案が、何故選挙戦さなかの今のタイミングで逮捕なのかというのもあるが、そもそも本件はCGですらないのではないかと。

何故なら本件は、写真のレタッチか、せいぜいアイコラに分類されるもののように読めるからだ。CGの世界では、Photoshopなどのレタッチソフトによる写真の修整は、コンピュータを使っていても、それだけでCGとは呼ばない。今どき、写真館で証明写真を撮っても背景はグリーンバックで、撮影後に好きな背景を選択して合成してもらえるのであり、コンピュータで合成やレタッチをしたらCGなんだとなると、証明写真もCGになってしまう。しかし、そうは言わないわけだ。

また、そもそも本件は、著作権法違反が先にあると思ったのだが、元の写真と修正した画像との関係が、「原著作物と翻案された二次的著作物」の関係なのか、「原著作物とその複製物」の関係なのかが、とても重要に思える。多少手が加えられていても、本質的な部分が原著作物のままで、創作性が乏しいなら、その画像は限りなく「原著作物の複製物」に近かったのではないか。
もちろん、児童ポルノ禁止法の解釈に著作権法の概念を持ち込んでも仕方ない。しかし、コンピュータを使って修正していても、三号ポルノ写真と解釈する上で問題視された部分に、著作物と言えるような新たな創作性がないなら、単純に三号ポルノ写真の複製物を不特定多数に提供した事件に過ぎなかったのではないかと思うのだ。

すると、コンピュータを使ったかどうか、CGかどうかは、実は全く問題ではないのに、そこを強調してメディアに報道させ、世論のミスリードを誘っている誰かがいるのではないか。誰かが、選挙後の法案提出の下準備として、「CG」での事件の前例を作りたかったのではないかと、疑いたくなってしまう。

次に、今回は約30年前の児童の写真が元とのことだが、もしも江戸時代の児童の写真があって、それが元にされていたらどうなっていただろうかと思った。「実在する児童」という時、それが「かつて実在した児童」まで無限に過去を含むのか。過去も含むなら、児童を題材にした写実主義の、著作権が切れてるような古いエロ絵画等があったとして、それを模写しても該当してしまうのか。

つまるところ、創作性の有無と時間的要素の判断なしに、「CGでも違法」という報道を一人歩きさせてはいけないと感じる。それを許すことが、「実在」と「非実在」との境界を極めて曖昧としてしまうのであり、法改悪を狙う人々にとっては好都合となるだろう。間違っても、「創作物でも該当する場合があったじゃないか」と言わせる事案にしてはいけない。構成要件の解釈において、この点は明確に報道して欲しいところだ。また、法改悪に反対の人は、ついに創作物が違法とされてしまった等と、本件を悪しき創作物の例として宣伝する手助けをすべきではないだろう。

■蛇足
うちのブログで山田氏を取り上げるのは、実は初めてではない。2010年の前回の参院選で、山田氏が創作物表現規制に反対の立場を表明して立候補した時が最初だ。
http://maruko.to/2010/06/post-86.html
しかし落選してしまい、残念なのでもう一度取り上げてしまった。
http://maruko.to/2010/07/post-89.html

落選した山田氏が、何故今参議院議員として活動しているかというと、昨年末になって繰り上げ当選したからだ。みんなの党から3人の議員が維新の会に移るというゴタゴタがあり、ニュースになったが、その結果、2010年に比例で落ちた内の上位3人が繰り上がり、そのうちの1人だったのだ。

この偶然がなければ、児童ポルノ禁止法の問題点は、今ほど話題になっていなかっただろう。当然、今回の事件について警察庁からヒアリングする議員がいたか疑わしく、その情報も公開されていなかっただろう。山田氏が繰り上がって、本当に良かったと思う。
公約を簡単に反故にするどっかの与党の議員は、落選当時の主張を貫き問題を追及する山田氏の姿勢を、少しは見習えと言いたい。

今度の参院選で、どうせ与党が過半数を取ってしまうのだろうが、みんなの党が議席をどう増やすか、山田氏が仲間をどれだけ増やせるか、注目したい。

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このページは、ranpouが2013年7月14日 04:12に書いたブログ記事です。

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