最近、仙台カジノ構想とか、カジノで被災地復興をという話が、新聞等でも頻繁に取り上げられるようになった。
自分は以前から、震災と関係なくカジノ賛成で、そのことはここでも書いてきたので、大変良い動きだと思っている。
ただし、観光や雇用、周辺産業等へのプラスの経済効果を生じさせるための手段であるはずのカジノが、キーワードが一人歩きし、カジノそのものが目的化しそうという不安が、少々ある。
例えば、ラスベガスのような、カジノを中心とした複合エンターテインメント・シティ(と言う呼び名が適当かどうかは別にして)と、ソウルのような、普通の街中のホテルにカジノがあるだけとでは、同じカジノでもその意味が全然違う。
日本では、この違いですら理解できていない人が少なくないだろうが、復興カジノであれば、どちらかと言えばラスベガス型だろう。(もちろん今なら、マカオやシンガポールなど、参考にすべき形態は色々あるが。)
ところが、巨大な街を作ろうとする時に、個別の施設の話が先行しているような話を見かけるに、少々心配な感じがしている。
誤解を気にせずに言うなら、ラスベガスを目指すと言いながら、ソウルのカジノくらいしか出来上がらない手法になってやいないか?という感じか。
例えば、ラスベガス、マカオと言えば、誰もがカジノを連想する。しかし、ソウル、インチョンと聞いてカジノを連想するのは、自分のようなカジノ好きだけだ。復興のための仙台カジノ構想というからには、今後仙台と言えば、世界中の観光客がカジノを連想するような、壮大なプロジェクトを目指すハズだ。
そういう時に、仙台空港近郊にカジノが1つできるとか、関連施設の具体案を話し合うとか、そんなのはどうでも良いことだ。
そもそもそんなことは、そこでカジノ開業を許された民間業者が中心になって考えることだ。(もちろん今回は、震災復興という性格上、地元の意見が尊重されるべきだろうが。)現時点における個別の施設の具体案などは、特定の業者が当該事業を請け負うことが予め決まっているような、怪しい癒着の存在する状況でなければ、無意味なはずだ。そういう矮小化された議論に陥らないよう、今後の報道を注視したい。
ところで、一つ誤った記事を見つけた。
「"復興"カジノが仙台にできる!菅退陣にらみ加速」
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110723/plt1107231519001-n1.htm
菅退陣は関係ないだろと思うが、そこは産経のzakzakなんで仕方ない(笑)
問題は以下。
<--
「2005年にハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを直撃し、同地は壊滅的な被害を受けた。同地はもともとカジノが原則禁止で、ミシシッピー河の船上で例外的に認められていたにすぎなかった。だが、この被害で方針を転換し、復興財源確保から陸上でのカジノ解禁に踏み切った」
そのニューオーリンズは、いまやラスベガスに次ぐ一大カジノ・リゾートに変わり、「年間の売上高は500億円を超え、地元経済の活性化に寄与している」(先の関係者)。
-->
これは、とても誤解を生むし、間違っているとも言える。
ミシシッピ川はニューオーリンズを流れていて、確かにハリケーンで、ニューオーリンズは甚大な被害を受けた。しかし、ハリケーン前から、ニューオーリンズの街中には1軒カジノがあった。
船上カジノを例外として認めていたのではなく、船上カジノを原則認めて、陸地のカジノを例外的に認めていたというのが正しいのではないか。何をもって、カジノが原則禁止だった等と言っているのか、理解に苦しむ。
しかも、その陸地の1軒は、かなり巨大だった。
そこで負けたことがある人間が言うのだから、間違いない(自爆)
2000年にニューオーリンズでSIGGRAPHがあって、会社の出張で行ったついでに、旧ハラース・エンターテインメント(現シーザース・エンターテインメント)のカジノで大負けしたw
http://maps.google.co.jp/maps/place?q=Harrah%27s+New+Orleans&hl=ja&cid=8438002675536921036
確かにハリケーン後、ニューオーリンズは、カジノを活用した街の再建を計画した。しかし、原則禁止からの方針変更というより、当時も「カジノ拡大」と報道されていたはずだ。
市長は、500室以上の大型ホテルであればカジノ併設を許可するという新方針を打ち出しつつ、フレンチ・クオーター内のホテルには、カジノを許可しないと言ったと報道されていた。観光資源として、既に十分に魅力がある地域は、カジノから守る姿勢も示したわけだ。
その後の詳細は、あまり報道されていないので、正直よく分からない。
(また行ってみたいなぁ~)
しかし、議連関係者とやらが、「年間の売上高は500億円を超え」ることが地域経済の活性化に寄与していると言うこと自体、ニューオーリンズを理解していないのではないかと思う。元々メジャーな観光地であるニューオーリンズ市の税収(大半が観光収入)は、ハリケーン前の2004年で約49億ドル。当時は1ドル110円くらいの時代なので、約5400億円だ。しかも、元々カジノもあったことは上記の通り。すると、500億円のうち、増えたカジノの純粋な効果って、ナンボ?
アメリカでも有数の観光地という前提条件のあるニューオーリンズにカジノが増えたことを、観光立国発展途上の日本の仙台にカジノを作ることの引き合いに出すこと自体、とても不適切に感じる。
そこで、議連関係者とやらの知識がいい加減という前提に立ってみると、もしかして、ミシシッピ州の話もごっちゃになっているのではないかと思えてきた。ミシシッピ州も、ハリケーン被害を契機に、復興のためにカジノ法を改正した。ニューオーリンズにミシシッピ川は流れているが、あそこはルイジアナ州だ。この議連関係者とやらは、ニューオーリンズがミシシッピ州にあると誤解してやいないか。話がゴッチャになっている気がする。
水上で限定的にカジノを認めていたのを、陸上でも認めるように法改正して震災復興に成功したのは、ミシシッピ州なんで。
まあ、間違っていようと、実際に参考にすべき成功事例があるなら、目くじらたてる程のことではないとも思う。しかし、要はその程度のいい加減な知識しかない人々が、この議論を間違った方向に利益誘導しやしないか、そういうのがとっても心配なんだよね...
ミシシッピ州の、震災からの復興のためのカジノ活用の成功については、以下の方のブログに大変詳しい資料があったので、興味のある方は参考にどうぞ。
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/5093310.html
「2)カジノは産業を生む」の「<参照>」のリンク先から、資料をダウンロードできます。
コメントする