拘置期限?

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新聞て奴は、ありもしない法律用語を勝手に作るから不思議だ。
毎日に限らず、読売とかもそう。

尖閣諸島近くでの中国漁船による公務執行妨害事件で、先日、中国人の船長の勾留が延長された件も、勾留期限のことを拘置期限とか勝手に呼んでる。どうしてそうなったの?

http://mainichi.jp/select/world/news/20100920k0000m010115000c.html

ところで、起訴前勾留の延長には、裁判官が「やむを得ない事情がある」と認める必要がある(刑訴法208条2項)。

>同幹部は「『日本は法律の枠内で適切に処理する国』ということを中国に知らせる必要がある」と語り、中国側に粘り強く理解を求める考えを強調した。

と言うからには、勾留延長が違法であってはならない。
つまり、勾留延長の理由が、本当に「やむを得ない」のか、とても問題。

なんせ今回、公務執行妨害である。

本来は、とても単純な話であって、勾留を延長せにゃならんほど複雑な逮捕理由ではない。それが今更になって、何か時間がかかる理由があるのなら、逆に心配だ。証拠のビデオとかも、当然あるわけでしょう?

報道されている通りなら、勾留延長なぞせずに、とっとと起訴すりゃ良いのだ。


これ、仮に中国とか関係なくて、普通に日本人が逮捕されたケースで置き換えるなら、公務執行妨害程度で勾留延長された日には、勾留理由以外に何か目的とする「本件」があって、その証拠が足りないことを隠して取調べをする、いわゆる違法な別件逮捕ではないか?と疑われても仕方ない。

実務の別件基準説では、別件について逮捕の要件をみたすのであれば、別件での逮捕は適法だ。しかし、何か他の「本件」の取調べをするために、それを理由として示さずに勾留延長してたら、『日本は法律の枠内で適切に処理する国』とは言い切れなくなってしまう危険がある。

そしたら案の定、こんな報道もされているわけだ。

http://mainichi.jp/select/today/news/20100920k0000m010076000c.html
>保安部は、漁船が不法操業していたとして、外国人漁業規制法違反容疑でも捜査している。

こういう情報がリークされるということは、検察はいつもの調子で、別件の公務執行妨害を切っ掛けに、本件の外国人漁業規制法違反の取調べをやってるのではなかろうか。

令状主義を潜脱し過ぎないでおくれよ(苦笑)


一応、勾留事実と同時期に敢行された同一・類似の手口の余罪は、「牽連する他の事件」として相当の限度で考慮はできるけど、勾留事実よりも余罪の方が重要そうというのは、ちょっとね...せっかくの、公務執行妨害という機転を利かせた判断が、無駄になる。

まあ、別件でなくとも、普段から日本人に対して検察は、理由らしい理由のない勾留延長を平気でやってるから、ここは平等に違法に外人も取り扱うつもりかもしれないが...そうでないことを祈るよ。


ということで、公務執行妨害なら公務執行妨害らしく、チャチャっと起訴なり結論出してくれないと、物凄く心配。

重要な証拠のはずの船や船員達は、既に返してしまったのだし、外国人漁業規制法違反なんて、今更無理に自白頼りに立件しようとしなくて良い。

後から船長に、自白を強制されたとか文句言われたら、目もあてられない。

取調べの録画(可視化)はしてるかい?
くれぐれも、つっこみどころ満載な調書を、検察官が作文しないでおくれよ。

無駄に時間をかけると、妥当な結論だったものが、妥当でなくなってしまうかもしれない。


>追記9/24
このタイミングで釈放とは意外。

これが、単に故意の自白を強制するための勾留延長だったなら、珍しいけれど釈放は妥当とも言えるかもしれない。しかし、この理由はない。

「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上被疑者を拘束して捜査を継続することは相当でないと判断した」by.那覇地検次席検事

検察が、政治的判断で法を曲げると公言するとはね。
まあ、公然の秘密ではあったが...ブッちゃけ過ぎ。

しかし、妥当な結論が妥当でなくなった場面に至ってから、ビビって言い訳のつもりで、さも政治的判断をせざるを得なかったとして、自らの判断ミスの責任を他になすりつけているようにも見える。公然とはいえ、一応は秘密だったことを、次席検事は忘れてしまったのでは?(苦笑)

報道では、政治が介入した可能性も論じられているが、本当に介入があったなら、むしろ絶対に秘密にされるはずであって、記者会見で疑念を抱かれるようなブッちゃけはしないだろう。

「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない」by.那覇地検次席検事

結局、起訴に至る証拠が乏しい、と言っているのだろう。勾留延長後の報道では、証拠ビデオは、故意を認めることができるとは言いきれない内容とも言われていたことからすると、所詮は、勾留延長に無理があったということに尽きる。

これが普通の日本人の事件なら、違法でも気にせずに勾留し続けるのだろう。しかし、地検が問題の大きさにビビって、ある意味、適法な判断をせざるを得なくなったのだとしたら、皮肉だ。

思うに、勾留延長せずに、状況が悪化する前に迅速に処理していれば、まだ起訴できた可能性が高かったのではないか。カードを切る順番を、完全に間違えたように見える。

駄々をこねれば法が曲がると、一人っ子国家に学習させてしまった。

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このページは、ranpouが2010年9月20日 17:34に書いたブログ記事です。

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