さて、中国人船長の釈放について、妄想が止まらない(自爆)
前回のエントリーは、検察の行動を純粋に司法的観点から見たつっこみであった。
http://maruko.to/2010/09/post-93.html
そこで今回は、政治的観点から、止まらない妄想を記録しておくことにする。
なお、ほぼ同じことをForesight Forumにもコメントしている。
「尖閣沖衝突事件について」の、15番のコメント。
http://www.fsight.jp/forum/5769?page=1
そもそも、逮捕せずに国外退去させてれば良かったという話がありますが、少なくとも当時の世論は、公務執行妨害での逮捕に批判的ではなかった。
その逮捕も、現行犯でなく、時間をかけて令状をとっての通常逮捕だったようなので、海上保安庁を所管する当時の前原国交相が考慮の上、逮捕というゲームのキックオフをしたものと思われます。(もちろん令状は、裁判官が発するが。)
そこで、キーマンは前原氏と当たりをつけて、9/8の逮捕後の出来事を関連付けできると、興味深いかもしれない。
9/13:船員ら帰国、漁船返還
外務省はまだ、穏便・迅速な問題解決を目指していた。
9/16:国交相としての前原氏の最後の仕事として、石垣海上保安部訪問
「国民に誇りを与える」云々の発言含め、自らキックオフしたゲームの正当性を確かめるかのような、見事なパフォーマンス。
9/17:前原外相誕生
中国猛反発 & アメリカ露骨に賞賛
分かりやすい両国の反応の差が面白かった。
これによって、外務省も対中強硬路線へ。
(直前の13日、シュワルツェネッガー知事来日に合わせたかのように、「バターン死の行進」について岡田外相が何故か公式謝罪していたが、カリフォルニアの高速鉄道計画受注のため、前原国交相が外務省に謝罪を要請した可能性を妄想していた。同州では先月、同計画の入札参加企業に、戦時中の捕虜収容所などへの捕虜輸送に関する情報を明示するよう求める法案が可決しており、JRは入札に参加できない可能性があった模様。そんな、親米・現実派の前原氏の外相誕生は、アメリカにとって願ったり叶ったり。)
9/19:勾留延長
これが、今回のゲームの勝敗の分かれ目だった。
思うに、公務執行妨害などという分かりやすい罪で、証拠のビデオがあるなら、勾留延長する必要がどこにあったのか疑問。普通に、もしも日本人の事件なら、公務執行妨害程度で勾留延長されたら、違法な別件逮捕に違いないと弁護人が怒る場面。
まあ、普段から検察は、日本人に対しても、適法とは言い難い勾留延長はお手の物なので、いつものノリで、故意との自白を引き出そうとしていたのかもしれないが、外交問題は迅速処理が常識と思っていたので、かなり不思議な対応に見えた。同時に、証拠のビデオって、起訴するには説得力に欠けるような内容で、自白頼りだったのかと妄想。
(この部分が前回のエントリー)
→中国大猛反発。本格的な反撃開始。
同日、前原外相は、米軍普天間飛行場の移設問題について、11月のオバマ大統領来日までの解決をなぜか否定。
9/21:北沢防衛相、上記前原発言に不快感
前原外相スタンドプレーが発覚。
9/23:日米外相会談
なんと、反発されてもおかしくない19日の前原発言と同趣旨の話に、アメリカも賛同。加えてクリントン氏から「尖閣は日米安保条約第5条が適用される」発言ゲット。
19日の発言は、アメリカの了承を得ているか、得られるとの確証があってのスタンドプレーだった可能性を妄想。
9/24:船長の釈放決定
前原外相曰く、「夜中、寝てるのを起こされて初めて釈放を知らされた」とか。
ゲーム前半戦完敗で強制終了。しかし、とにもかくにも、キックオフの目標は達成されたのか、釈放には前原外相もアメリカも納得の模様。
事態は収束するか...と思いきや
9/25:中国、謝罪と賠償を要求
前半戦終了のホイッスルが聞こえないらしいKY中国は、謝罪と賠償を求めてプレー継続中。後は、中国が休憩無しで後半戦に突入するか、世界中の観客が様子見。←イマココ
キックオフの成果:
やっぱ中国と張り合うにはアメリカが重要だだから、普天間問題も、沖縄に我慢してもらうしかないよねー的な世論の種まき完了。
妄想1:
そもそも、逮捕せずに国外退去させときゃ良かった問題を、前原キックオフで試合開始してしまい、ゲーム進行につれてアメリカの存在意義が重要視されていく状況と、アメリカとツーカーな前原氏に疑問符を抱く人々が、ゲーム終了のタイミングを計っていた。
妄想2:
検察は、起訴に至るには証拠に乏しく、自白が得られずに落しどころに困っていた。かと言って、公務執行妨害でなく、外国人漁業規制法違反で起訴なんぞしたら、本当に別件逮捕になってしまう。国際問題でそれはマズイ。勾留延長せずに迅速処理していれば妥当と言えた結論が、時機を逸して妥当でなくなってしまった。しかし、勾留期限ギリギリまで頑張っても同じ結論だったら、もっと妥当でなくなると焦っていた。
ま、こんな妄想は、政府がビデオを公開してくれれば、すんなりと解決するのですが...
ちなみに、日中関係への配慮は、「証拠」に当たるそうです by.法務省
http://twitter.com/kawauchihiroshi/status/25482006841
司法試験受験生の皆さん、刑訴法の論文試験で、是非書いてみてください(自爆)
蛇足:
今回、胡錦濤の名前がメディアに全く出てこない気がして、不思議に感じている。外交能力に難有りと言われる次期主席候補に問題処理を担当させて、外交能力を試してるのかなと妄想。あちらの国では、そういう試金石は珍しくない。なんというか、習近平っぽい横柄な対応だなと思っているところ。
>追記:9/28:参院外交防衛委員会
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100924-728653/news/20100928-OYT1T00431.htm
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『前原氏は「尖閣諸島は日本の領土で、主権をしっかり守っていく」としたうえで、衝突の様子を撮影した海上保安庁のビデオの内容を踏まえ、「中国漁船がかじをきって体当たりしてきた。故意ではなくミスなら、エンジンを逆回転して離れる措置をとるはずだが、そうした形跡はまったくない。公務執行妨害での逮捕は当然だ」と語った。』
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う、うーん、あなたの自己正当化は分かったから、とっととビデオを公開して、国民を安心させてくださいな。シー・シェパードの時は、すぐにビデオが公開されたわけで、今回なかなか見せられない理由って何なの?
まさか、公開すると国益を害する?
>追記:9/29
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100929-OYT1T00180.htm
なんか、この記事が疑問に答えてくれてるようで、全然答えてないのでつっこみ。
>ビデオは刑事訴訟法47条で「非公開」と定めた「公判の開廷前の訴訟に関する書類」にあたるとしている。
確かに、不起訴記録中の書類ですら、「訴訟に関する書類」に該当するので、47条本文該当というのは理解できる。しかし、同条には但書きがある。
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刑事訴訟法47条:訴訟書類の非公開
訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。
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「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる」ってことで、公開よろしく。
47条本文の守秘義務が解除されるか否かの判断は、47条の立法趣旨(訴訟に関する書類が公判開廷前に公開されることによって、訴訟関係人の名誉を毀損し、公序良俗を害し、または裁判に対する不当な影響を引き起すことを防止する趣旨)と、公益上の必要性、相当性とを比較検討する。
既に事件の内容は報道されていて、先方も公開しろと言ってるし、公益上の必要性・相当性は言うに及ばず...では?
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