東京都青少年健全育成条例改正案について、ブログで連続で取り上げるのは、本意ではない。しかし、平成22年第4回定例会(12月7日(火))本会議の、民主党代表質問に対する、青少年治安対策本部長の倉田潤氏の答弁に、あっけにとられた。
つっ込まざるを得ないというか、とても大変なことを暴露しているのに、どうしてもっと話題にならないのか、不思議でしょうがない。
以下、音声のみだが、どうして今回の条例改正が必要なのかという質問に答えている、4:26あたりから、4:52までで言ってることを聞いて、吃驚した。
性的感情を刺激する度合いが強くないから、現状で一般書棚に陳列されてる漫画について、性的感情の刺激度合いに着目した現行基準(条例)では規制できないから、新たに区分陳列の基準が必要と言っている。
つまり、今回の改正は、酷い性描写がない作品を規制することこそが目的だと、公言しているわけだ。
やっぱり、児童ポルノ漫画が酷いから規制すべきと石原都知事や猪瀬副知事が説明してたのは、全くの嘘じゃないか。お二人は、上記理由を知った上で、デマで規制反対派を批判して改正案を通そうとしているのか、倉田潤氏に騙されて、本当に児童ポルノ漫画を規制するのに必要だと誤解して、改正案を通そうとしているのか、どっちですか?
改正案の8条と7条の関係を詳細に解釈検討して、社会規範に反する性交類似行為の描写を規制すると言っても、酷い描写が規制されるだけで濫用されないから大丈夫とか、改正案に賛成しようとしている都議の方々は、倉田潤氏の答弁の問題点に気付いただろうか?
結局、改正案で規制される、社会規範に反する性交類似行為って、一体どんな行為のことなんだよ。性的感情を刺激しないが、社会規範に反する作品?
正に、規制反対派が心配してる通りの話じゃないか
もの凄くコワいぞ。
続いて答弁してる、自主規制団体に属さないアウトサイダーの作品が不健全指定の51%を占めるって話も、出版業界との意見交換で、根拠の資料を教えてくれと言われて、都が出せなかった数字じゃないか?
こんな酷いことを公言する倉田潤氏が、どんな人物か気になったのだけど、志布志事件の時に、当時の鹿児島県警本部長として県議会で、県警の犯罪を否定する答弁をした人ではないか。
鹿児島県警の架空調書問題
なんで、そんな札付きの人物が、お咎めなしに、東京でも事実を曲げて犯罪を増やす仕事に専念できるのさ。次は、警視庁警備部部長に進むエリートコースだってのは、ホンマかいな?
地方議会をナメてる?
もう、賛成とか反対とか関係なく、こんな嘘で塗り固めた条例改正がされるなんて、都民として悔しいとしか言いようがない。
■追記12/11
なんだ、都小Pも、区分陳列が既に機能していることを認め始めた。
http://ptatokyo.com/blog/?p=652
>特に、漫画等については、性的刺激の強いものを青少年の目に触れないように区分陳列する制度が、条例に基づいて既に長年にわたり実施され、定着しています。
都小Pまで、性的刺激の強い漫画は、既に青少年の目に触れないように区分陳列されていると認めだしたというのは、規制派は一斉に、主張のベクトルを変更しはじめたということだろうか。今まで散々、区分陳列ができていないと、事実誤認を言い張っていた都小Pが、真逆の現状認識を示したというのは非常に面白い。
やはり、今回の改正が、性的刺激を基準にしない新たな規制の拡大であることを、都小Pも理解しているのだろう。
そして、続けて言っていることが、凄すぎる。
>それにもかかわらず、一部には、今回の改正に限って、表現の自由を侵害する恐れがある、漫画家等の創作活動を萎縮させるなどとして、この条例改正案に反対した人がいました。
既に規制があるのだから、もっと酷い規制だっていくらだって正当化できる、と言いたいのだろう。しかし、「今回の改正に限って」なんて、大嘘ではないか。いつも、規制強化の都度に、反対運動が起こっていたではないか。そんな客観的歴史的事実すら、都小Pは無かったことにしようとしている。(まあ、他にも嘘は沢山書かれているが(苦笑))
性的刺激の激しくない漫画でも、誰かさんの社会規範に反するストーリーを規制するという、日本国憲法を知る常識人なら躊躇するような論理の飛躍を、破綻した情緒的文脈で正当化する。反対派の意見を聞かないという、民主主義的手続を省略した不正義は隠し。
子供たちには、こんな恥ずかしい大人には、育って欲しくないな。
■蛇足
丁度、文庫版が出た「ハーモニー」を読み終えた。
そこに描かれたディストピアが、都条例改正の未来と少しダブった。
もちろん、もっと壮大な、素晴らしいSFだったけど。
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