だからこそ裁判員

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最先端の科学捜査とされ、最高裁も証拠能力を認めたDNAの鑑定結果が覆った。19年前、栃木県で女児が殺害された足利事件。再審開始を大きく引き寄せたのも科学技術の進展だった。「無罪の決定的証拠だ」。東京高裁から8日、再鑑定結果を通知された弁護団は顔を紅潮。無実を訴え続けた菅家利和受刑者(62)も裁判のやり直しに希望をつなげた。
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この事件は、多分どの刑訴法の基本書のDNA鑑定のページを開いても、弁護人がDNA鑑定の信頼性欠如を理由に証拠能力を争って、最高裁が証拠能力を認めた(平成12年7月17日...まだ10年も経ってない!)初めてのケースとして紹介されている。それが否定された意味は大きい。

しかし、問題はそこじゃない。
冤罪というのは、違う原因で生まれる。

DNA鑑定を証拠として認めた最高裁決定は、刑事訴訟法の判例百選にも載ってるが、そこの解説文を引用する。
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最後に、本決定について、論評しておく。検査の科学性が未解明である警察犬の臭気検査・ポリグラフ検査等でさえ、証拠能力及び信用性を認めてきた最高裁の治安維持及び捜査の便宜を重視する一連の判断からすれば、上告を棄却した本決定は当然の結論であるということになろう。(鯰越鎰広:新潟大学教授)
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スゴイ皮肉だ。
裁判所ってのは、科学的かどうかすら怪しい嘘発見器(ポリグラフ)だって、犬だって、信用しちゃうわけで、そんな捜査機関ベッタリの裁判所が、科警研の鑑定を否定するわけなかろーというわけ。

今回DNA鑑定が否定されたのは、別に驚くべきことじゃなくて、当時のDNA鑑定は怪しいというのは、超有名なわけ。

そもそもこの事件は、今回否定されたDNA鑑定以外、主要な証拠は自白しかない。
目撃者もいない。
しかも自白は、遺体の鑑定結果と、殺害方法が違う。
そして当時、菅家氏は、他にも2件の少女殺人事件を自白したのに、その2件は自白が信用できないからと、地検は不起訴。

つまり、3件自白したうち、1件だけ本当だとされたわけだ。
どんな取調べだったんだ?
取調べして自白調書作文した捜査員は、どんな気持ち?

3件中2件が信用性がないなら、もう1件だって信用できないと思うのが社会常識だし、少なくとも2件も虚偽の自白するような状況なら、酷い取調べだったことくら想像できるだろ。でも、想像できない裁判官が多い。

DNA鑑定したのも、事件から1年以上後。
1年数ヶ月以上、常温でビニール袋に入れて保管されてた被害者の下着に付着してた精液(ガビガビ?)と、菅家氏が集積所に捨てたゴミから警察が勝手に採集した精液の付着したティッシュを、鑑定したわけ。(ちなみに、警察が令状なしにゴミを漁ることは、最高裁が合法と認めてる。)

みんな、ナニした後は、ティッシュは便所に流そう...じゃなくて!

そんなのが証拠とか言われても、本当に自分のかすら、信じられないわな。

でも当時、再鑑定のための残存資料は保管されてなかったとされて、DNA鑑定をやり直すことすらできなかった。(だから逆に、今ですら可能な、科警研の結果との比較を、当時は何故認めなかったのか?と、裁判所に聞きたいけど。)

そんなの、一般人なら疑問持つでしょ。

同じ頃のDNA鑑定で、死刑判決になった飯塚事件は、最後まで無罪を訴えていながら、昨年10月に執行された。

一般人なら、「え?こんなあやふやなのに、死刑にして良いの?」と思うようなのが、結構ある。

21日からの裁判員制度、色々問題も噴出するだろうけど、修正しつつ成功させる意義があるわけだ。

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このページは、ranpouが2009年5月 9日 22:53に書いたブログ記事です。

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