猪瀬都知事の辞職によって、「また都知事選かよ!」という気分ですが、辞職は当然なので、仕方ないです。でも、都知事候補に名前のあがっている顔ぶれをみるに、都民の置いてけぼり感が増すばかりな今日この頃。何で都知事選て、いつも不美人投票なわけ?
マック赤坂氏が引退宣言した今となっては、クリープを入れないコーヒーのような都知事選をどう楽しんだら良いのかと、途方に暮れる一都民であります。
で、候補者が出揃えば、きっと「猪瀬氏の政策は間違ってなかった」とか言いだす後継候補が出てくるんだろうなと想像するので、少しでも有益な都知事選にするために、「猪瀬氏の政策も再検討が必要じゃない?」ということを、年の瀬に一石投じておきます。
■地下鉄問題
猪瀬氏は、副知事時代から長年この問題にかかわっており、2007年にはこんなことを書いていました。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/inose/071030_14th/index3.html
「営団地下鉄の民営化に関しては、いまでも「しまった」と思っている。営団地下鉄は、大して借金もない。多額の借金を抱える都営地下鉄を抱き合わせで民営化するべきだったのだ。僕は道路公団民営化に追われていたので、営団地下鉄には逃げ切られてしまった。」
つまり、東京都が都営地下鉄の負債を東京メトロに押し付けたいというのが、この話の重要なキッカケなんですね。
都営地下鉄の累積赤字はスゴくて、2010年の「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」では、「資産などを合計した企業価値から負債を差し引いた「株式価値」について、」「都営地下鉄は1800億から7300億円のマイナス」と言われてました。
猪瀬氏は、統合前に東京メトロが完全民営化されるのは阻止すると言っていたので、その順番で行くと、完全民営化の売却益を狙っている国の利益を東京都交通局の負債が減少させ、つまりは国民全体の負担に付け替えようという魂胆だったわけです。猪瀬氏は、東京メトロの株式価値を毀損しないとか言ってましたが、価値を決めるのは都知事じゃないですからね。
「株をいかに高く売るかだけがテーマでなく、利用者の目線で考えて、利用者のためにどうするかということで一元化を進めるべきである。株式価値だけを全面に押し出すのはおかしい」とも言ってたわけですが、都民の利益だけでなく国民の利益を考えている国が、株をいかに高く売るか考えるのは当たり前です。
それを猪瀬氏は、既得権益を守ろうと拒否するのが悪いとか、都営地下鉄の負の遺産も東京メトロが背負えとか攻撃していたわけで、都民以外は怒っても良いです。
都民の利益のために、全国の皆さん、都営地下鉄の債務を分担してください!
なんて、都民な自分には、口が裂けても言えません(^^;
更に昨年は、こんなことを。
http://www.inosenaoki.com/blog/2012/06/post-772b.html
>【記者】 都としては、まだまだサービス統合を一元化に向けてやっていくということですか。
>【副知事】 ちがう。僕は経営統合をやりたいが...以下略
うーん、分かりやすい。借金を押し付けるのが前提ですからね。
>【記者】 サービスの一元化のためにも、どうしても経営の一元化が必要だという理由を、もう少し詳しく教えてください。
>【副知事】 料金体系がひとつにならないでしょう。乗り継ぎ料金はサービスの一元化では実現しません。乗換えするときに、いま言ったように160円と170円で330円で70円引きの260円になる。100円くらい実質高い。
とか言ってますが、それより前の一昨年2月の「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」で、東京メトロが通算運賃制度の導入を提案してました。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/topics/h22/topi033-4.pdf
「東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐお客様に対して、現行の乗継割引制度に替えて、乗車距離を通算した通算運賃制度を導入するものです。その場合、通算運賃は都営地下鉄の運賃水準とします。」(配布資料2)
ということで、経営一元化せずとも、乗り換えても160円+170円じゃなくて、170円にする案を、東京メトロが提案していたわけです。サービス一元化のために経営一元化が必要という理由は、とっくに失われていたと思うのですが、当時から相変わらずの都知事でした。
これが実現されなかった理由は、協議会直後の東日本大震災による運賃収入の減少です。収入回復したら再検討という話だったはずなのです。
http://dia.seesaa.net/article/234219625.html
「今年夏までに結論を出すとしていた、両者をまたいだ乗り換えによる運賃負担の軽減策については、震災を理由に先送りとされた。東京メトロは前回の協議会で、現在70円となっている乗り継ぎ割引を100円とする提案と、距離制運賃をメトロと都営で通算にする(都営に合わせる)提案をしていたが、これについては、東京メトロも東京都交通局ともに東日本大震災で運賃収入が「大きく減少した」として、収入再開の兆しを待っての検討となった。」
■震災の影響
大体、震災の影響といえば、東京電力の株式の配当が得られなくなった今、東京都交通局は本当に都営地下鉄を手放しちゃっても良いのでしょうか。
都営地下鉄は、東京都交通局という地方公営企業が運営している事業の一つに過ぎなくて、ここは他に、都営バスや都電荒川線や新交通システムの日暮里・舎人ライナーや、上野動物園のモノレールとかやってます。東京都交通局の稼ぎ頭は都営地下鉄で、震災前の2番手の稼ぎ頭が、東電株の配当で黒字な都営バスでした。
しかし、震災で無配当となり...
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105250203.html
「東京電力福島第一原子力発電所の事故による影響で、東京都交通局のバス事業が今年度、赤字に転落する可能性が出ている。都は東電の大株主として毎年26億円近い配当を受けていたが、巨額の賠償を控えて2011年3月期の配当はゼロに。今後も無配が続けば、バス運賃の値上げに追い込まれかねない。」
昨年度の東京都交通局の経営の状況はこう。
http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/information/keiei/settlement.html
「収支面では、都営地下鉄が約122億6,700万円、モノレールが約2,300万円の経常黒字となり、都営バスが約4億600万円、都電荒川線が約1億9,700万円、日暮里・舎人ライナーが約17億5,400万円の経常赤字となりました。電気事業は、約12万3,000MWhを発電。約1億4,300万円の経常黒字でした。」
日暮里・舎人ライナーは開業間もないので、初期投資を回収するのに何十年とかかるのは仕方ないのですが、震災による都営バスの赤字は想定外だったはずです。ここから、黒字体質の都営地下鉄を失うことが、都民にとって本当に望ましいのですかね?
震災によって状況変わったのだから、経営統合を考え直しても、それが非難されるとは思いません。都営地下鉄の負債が大きいとは言っても、大江戸線の建設費用だって、いずれ完済できます。維持することが損失拡大につながる類の事業ではありません。
まあそもそも、我が家は東京メトロが主で、都営地下鉄なんて時々大江戸線使う程度で、そんな都民からすると、経営統合なしにサービス一元化される方が大変嬉しいのですが(苦笑)
なにしろ猪瀬氏は、「都営地下鉄は運賃の上昇率が高い。初乗りの金額は東京メトロが160円、都営地下鉄が170円で10円しか違わない。しかし、10キロ圏の料金は、東京メトロは190円だが、都営地下鉄では260円となる。収益率の低い都営地下鉄は、ドル箱路線を多く抱える東京メトロに比べて、料金設定を高めにせざるを得ないのだ。これも、利用者にとっては理不尽な負担だ。」とおっしゃってたわけで、最終的に経営統合された場合、その負担を平均化したら、逆に東京メトロの既存路線の運賃は値上がりするわけです。常識的に考えれば。
ましてや、とばっちりを食う副都心線や有楽町線を利用する埼玉県民や、東西線を利用する千葉県民に、値上げを押し付けるのは申し訳なく...
5000万円の問題以前から、都知事は自分の考えを改めることが難しい性格の人なんだなとは思ってましたが、後付の理由で本音を覆い隠し、更に合理性が失われても推し進めてしまっていたのなら、それを次の都知事が引き継ぐ必要はありません。
■都営バス24時間運行問題
いくら猪瀬氏でも、上記の不合理性には気付いていたと思うので、都営地下鉄抜きでも東京都交通局をなるべく赤字にしない方法を試行錯誤していたはずです。ただ、赤字対策とは言えず、本音とは別の理由で収益向上を図ろうとしていたはずです。それが、ニューヨークで突然発表したとかいう、都営バス24時間運行だろうと思っています。
http://mainichi.jp/select/news/20131221k0000e040178000c2.html
「都バスの24時間運行は2020年東京五輪の開催を見据え、猪瀬直樹知事が4月に訪問先のニューヨークで表明した。ただ、運転手の労務管理や人件費増といった課題もあり、都は試験運行の評価を踏まえて、路線を拡大するかどうか検討する。」
他にも、都営バス社内での無料Wi-Fiサービスなんてのも始めました。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20131220_628525.html
表向きはオリンピックを理由に、とにかく黒字化のためにサービス向上とか色々やってみようということでしょう。これは、とりあえず都民には嬉しいです。まあ、Wi-Fi使えるからと、バスに乗ったりしませんが。
ただし、現実はこうです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131220/k10014002121000.html
「バスの運転に必要な大型2種免許を持つ人が減り、数年後には大都市でも路線バスの運行が立ち行かなくなる可能性があるとして、国土交通省が、運転手の確保について話し合う検討会を初めて開きました。」
「国土交通省は、このまま減り続ければ数年後には大都市でも便数を減らしたり路線を廃止したりする会社が出てくる可能性があるとしています。」
24時間運行とか言ってる場合じゃありません。次の都知事が猪瀬氏の置き土産を継続するなら、合理的に実現可な手段を示さなければなりません。仮に24時間化で都営バスが黒字化可能となったり、都民の利便性が向上しても、運転手不足は全国的な問題です。無理に実現すれば、他所様に迷惑をかけることになるかもしれません。
24時間運行のために東京に運転手の人材が集中して、地方の路線バスが壊滅した日には、また都民は自己中だと言われても仕方ありません。でも、今のままだと、その懸念が拭えません。
■蛇足:個人的な希望
ということで、次の都知事は、都政をゼロベースで再検討できる人になって欲しいところです。個人的には、オリンピックのカヌー競技場建設のために葛西臨海公園の自然を潰すという方針も、再検討して欲しいですし(^^;
しかし、再検討するには、再検討できる能力が必要です。必然的に、ある程度の行政経験者が望ましいです。人物像的には、まだ候補として全く名前が出てないですが、最近ふと橋本大二郎さんとか妄想してます。
まあ難しいのでしょうけど。
https://twitter.com/daichanzeyo/status/414697317459972097
どうなることやら...
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