Fly to Japan

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「外国人1万人、旅費無料で日本招待...観光庁方針」(2011年10月10日03時00分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111009-OYT1T00814.htm
「観光庁は、東日本大震災後に激減している外国人観光客の回復を狙い、2012年度に全世界から、旅費無料で1万人の一般観光客を日本に招待する方針を固めた。」

ふむふむ。

「事業費として、観光庁は12年度予算の概算要求に11億円を盛り込んだ。」

げ!?と思った。

この記事に関するmixi日記だの、Twitter上の反応は、案の定だった。無駄使いだのバラマキだのと。

正直、この記事は酷い。まるで、11億単純に増やしたとしか読めない。他の情報を削って、読者に誤解を生じさせる、クソな記事だと思う。こういう場合は、業界紙に限る。
週刊観光経済新聞(第2628号《2011年10月8日(土)発行》)
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/backnumber/11/backnumber/kanko_gyosei.html#01
「12年度の概算要求は、政策的経費を今年度当初予算比で1割削減することが要件で厳しい編成となった。ただ、成長分野や地域活性化分野に充てる重点化枠は、削減額の1.5倍を上限に要求できる措置がとられた。
 観光庁の概算要求は、通常枠と重点化枠を合わせた要求額が今年度当初予算比5%増の106億5700万円。このほかに別枠として要求できる震災の復旧・復興枠で3億3400万円を計上。
 インバウンド関係の予算にあたる「訪日外国人3千万人プログラム」の要求額は2%増の88億900万円。内訳は、訪日旅行促進(ビジット・ジャパン)事業が16%減の50億8800万円重点化枠を活用したフライ・トゥ・ジャパン事業に11億8600万円、日中国交正常化40周年記念青少年招請事業に1億円など。」

つまり、通常枠(ビジット・ジャパン)と重点化枠(フライ・トゥ・ジャパン)とで、予算にメリハリをつけたというところだ。
つっこむならここだろう?

「それは、単なる予算の付け替えじゃねーの?」と。

つまり、このニュースに価値を持たせるには、本当にフライ・トゥ・ジャパン事業への重点化は、既存のビジット・ジャパン事業よりも、インバウンド(海外から日本へ来る観光客)回復の手段として適切なのか?という、議論喚起の切っ掛けになるような情報を読者に与えるべきなわけだ。それが欠けるなら、単なる政権批判の材料にしかならない。

旅行業界の現状に興味を持っている人間としては、これは単なる付け替えではなく、かなり面白い試みだと評価できるのではないかなと思っているが、是非とも業界関係者の感想も聞いてみたいところだ。

現在、震災で減少したインバウンドの回復は急務であり、観光地を抱える地方自治体は苦労している。
「京都府、外国人団体旅行に助成金 10月末まで受付」
http://www.travelnews.co.jp/news/inbaund/1109060948.html

個人的にも、観光地の外国人観光客の減少は実感しているが、出国日本人ばかり増加しているのは、なんとも皮肉だ。
http://www.travelnews.co.jp/news/inbaund/1109161607.html

観光立国を目指す日本としては、外国人が日本に金を落としてくれなければ意味がない。

この手の助成金というのは、実は各観光地で多種多様なものがあるのだけど、普通は旅行会社に対するものだったり、特定の旅行商品(パッケージツアーとか)から割引きするような形式をとっている。ところが、今回のフライ・トゥ・ジャパン事業は、一般観光客を招待するというダイレクトな手法である点が面白い。しかも、ブロガーに期待している。

「世界からの震災復興への支援に感謝を伝え、震災で傷ついた訪日観光のイメージ回復を促す。希望者を募集し1万人に往復航空券を提供する。ブログを開設するなどクチコミの発信力が高い応募者を重点的に招待。「自国民の発信する情報への信頼度が高いことから、クチコミで早期に需要を回復させる」(国際交流推進課)。」

もちろん、ブロガーに宣伝してもらうといっても、招待すること自体も感謝の一環として宣伝するのだから、ステルスマーケティングではないだろう。(まあ、同じことを隣の国がやれば、ステルスマーケティングだと騒ぐオッチョコチョイはいるだろうが(苦笑))

先日の旅博でのJATAのシンポジウムでは、こんな議論があったそうだ。
http://www.travelnews.co.jp/news/inbaund/1110031600.html

FIT(Free Individual Travel=個人手配旅行)は回復しつつあるが、団体旅行やMICEが遅れていると。

団体旅行やMICEの誘致は、ビジット・ジャパン事業の対象なわけで、これの回復が遅れているのに、フライ・トゥ・ジャパンでFITを対象に予算の重点化策をとったというのは、ちょっと面白いと思う。FITな1万人のブロガー等を招待して、口コミで各国に宣伝してもらうことが、最終的には団体旅行やMICE誘致につながると考えているのかもしれない。

まあ、ネットの口コミを宣伝に使うというのは、これが私企業であれば当たり前っちゃー当たり前な話だけど、それを観光庁がやるというのは画期的なわけだ(笑)
(俺ってカッコイイでしょ?的な自称クール・ジャパンの経産省も、少しはこういう手法を身に付けるべきだ(苦笑))

シンポジウムでも指摘されてるが、旧態依然としてインバウンド対策が後手後手な国内の旅行業界の現実もあり、業界への直接的なバラマキ支援で効果を期待するより、遥かに合理的な発想に思える。(なお、往復航空券を提供するということは、日本の航空会社が使われるような配慮は必要だろうが、いずれにしても直接金銭を受け取るのは航空会社であり、招待される外国人へのバラマキであるかの批判は完全に間違っている。)

フライ・トゥ・ジャパン事業が成立した暁には、是非とも、最終的な効果をキッチリと評価して欲しい。そして、各メディアは、ちゃんと結果まで報道して欲しい。無理かねぇ...

■追記10/14
観光庁は、3ヵ月単位で訪日外国人消費動向調査というのを発表しており、これが結構面白い。現在、6月分まで公開されている。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

・訪日外国人の旅行中支出額(日本までの往復運賃やパッケージツアー代を除く)の平均が、11万円を超えている
・FITは、ツアー客より旅行中支出額の平均がほぼ倍も高く、13万円を超えている
・国籍別では、ロシア人やフランス人の旅行中支出額が高く、特にロシア人は20万円をよく超えている(彼等は、滞在日数が2・3週間というのも珍しくなく、1週間未満が大半のツアー客とは、消費行動が異なる)

さて、Fly to Japan事業は、その仕組みから恐らくFITが対象となるのだろう。すると、長期滞在で旅行中支出が高額な人々が招待されるのではないか。(というか、そういうプランこそ選ばれるべきだ。)

1万人に対する予算が11億円ということは、1人平均は11万円のコストをかけて招待するわけだが、訪日外国人全体の平均でも彼らは国内で純粋に11万円以お金を落としていく。そこから、旅行中支出の更に高額なFITを招待するということは...

最終的な口コミ効果を別にしても、面白い事業じゃないか?

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このページは、ranpouが2011年10月10日 11:15に書いたブログ記事です。

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