都知事が他人の言葉尻を捕らえる

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東京都副知事のブログを拝見し、疑問が沸いてしまった。

「福島原発の放水活動で東京消防報告。今後の教訓にしたいこと。」
http://www.inosenaoki.com/blog/2011/03/post-8bab.html

この副知事のブログは、前線本部が現場を理解しておらず、現場が前線本部よりも事態を把握していることを前提に書かれている。というか、そう伝わるように、文章が仕組まれているようで、なんだかおかしい。

例えばこれ。

>地震発生当初は現場と前線本部をつなぐ、無線の状態が悪く、現場の状況がよくわからないようだった。

地震発生当初って、いつの話だ?
つまり、前線本部が現場を把握していなかったのは、ハイパーレスキューが原発周辺に展開した時点の話ではない。今回の出動よりはるか前の関係ない時点での話を、ここに盛り込む意図とは?

> 現場を知らない本部の人達から、東京消防庁が現場で判断した方針を変更するよう度々要求された。

本部が現場を知らないという決め付けは、どこから来るのだろう。
20キロ離れているからか?

ハイパーレスキューは、単に現場にいるというだけで、本部よりも原発の危険性を理解した適切な判断ができたのだろうか?

ハイパーレスキューの隊員は、普段からNBC災害に備えているとはいえ、福島の原発の状況を現場で把握できるような訓練はしてないだろう。敵が目に見えないことが恐怖だったと、TVでも答えていたではないか。

それでも、客観的に様々な観測値など情報を得ているであろう本部より、現場の隊員の判断が正解とは、とても言い切れまい。

もしも本部とやらが、現場から20キロ離れていようと、原発に関して最も信頼できる判断が可能(でなければ困る)なら、つまりは本部とやらが事態を一番理解していたとするなら、以下の解釈も変わってくる。

>放水は当初4時間の予定だった。その後状況を勘案し、必要に応じ再度放水することにしていた。しかし、連続して7時間放水し続けるよう執拗に要求された。結果として、7時間放水することになったが、そのため2台ある放水塔車のうち1台がディーゼルエンジンの焼き付きにより使用不能となった。

この日はエンジンが壊れようとも、放水を続ける緊急的な必要性があると、本部が判断したのではないか?
現場で情報不足な隊員には、エンジン故障よりも優先されるべき事情を理解できなかったかもしれないが。

以下の事実も、別の解釈が可能だ。

>東京消防庁にて海から放水塔車までの給水ホースの設置ルートを800メートルの最短距離で、設定していたが、遠回りにするように執拗に要求された。

最短ルートが最適とは、どこにも書かれてない。わざわざ迂回ルートを要求される理由とは、現場では目に見えていない放射線の影響などを本部が考慮し、影響の少ないルートで隊員の人命を尊重した可能性はないのか。

もしくは、本部が想定しているその後の作業上の問題などもあって、最短ルートでホースを設置されてしまうと、後々困る事態が想定されたのかもしれない。

副知事は、理由もなしに遠回りを要求されたとは書いてないし、その本部の判断が合理的である可能性など、いくらでも想定できる。

>「俺たちの指示に従えないのなら、お前らやめさせてやる」の発言もあった。

現場が、本部が把握している状況を理解しない結果として、最短ルートや、短時間の放水を繰り返せば良いと勝手に判断していたのなら、辞めさせると言ってでも、指示に従わせなければならない理由が、本部には十分に考えられる。(その権限はなく、酷い発言ではあっても)

仮に指示に従わなかった結果でも、隊員に死者が出てしまえば、大変センセーショナルなニュースになってしまうし、本部の責任は重い。また、放水を続けない結果として、原発の状況が極めて悪化する蓋然性が高いと判断したのなら、故障の可能性があっても放水を絶対に続けさせなければならない。(放水しても悪化したのだから)

つまり、極めて合理的な理由の存在は、簡単に推測できる。

もちろん、これが平時なら許されないだろうが、指示を絶対に守らせなければならない状況というわけだ。

しかし都知事
http://www.asahi.com/national/update/0321/TKY201103210345.html
>「言う通りでなければ処分するなんて(言っても)、絶対に兵隊は動かない」
(asahi.com 2011年3月21日22時44分)
と言ったそうだ。

ハイパーレスキューは「兵隊」なのか?

むしろ兵隊なら、本部の命令に従わないことこそ、有り得ない話なのではなか。
理不尽な命令でも、従わなければならないのが、兵隊だろう。
都知事は、非常事態に舞い上がって、ハイパーレスキューが兵隊に見えるのかもしれないが、同時に平和ボケしている。
ハイパーレスキューは兵隊ではないからこそ、理不尽な命令に従う義務がないし、だからこそ平時の感覚で、「処分」発言が理不尽だと、非難できる。

>職員の命を預かる隊長としては、現場をわかっていない人達に職員の命を預けるわけにはいかない。

つまるところ、本部を隊長が信用していない/信用できない、という問題に尽きるのではないか。

>消防庁は、自衛隊の指揮下に入ったが、現場の自衛隊員と消防庁の職員とはお互いに協力して、事態に当たった。

自衛隊の指揮下に入ったなら、本部と東京消防庁の間には自衛隊が挟まってるはず。命令を無視できない自衛隊の下に、命令に従う義務のないハイパーレスキューが加わることの不具合もあるだろう。少なくとも、報道で名前の上がっているような、海江田氏が直接ハイパーレスキューに指示する場面こそ、想像が難しい。(別に、海江田氏を擁護する気はないけどね。)


まあ、とにかく、本部ってのがどんなのかが分からんとね。
本部の判断が不合理であると言える事実が、見当たらないのだよな。


なお、都知事の普段からの言動からすれば、発言を鵜呑みにできないのは都民の常識だし、彼は4月10日の都知事選の候補者であることからして、パフォーマンスの要素を排除できないと考えるのが、とても合理的な解釈だ。

先日、天罰発言を撤回し謝罪したばかりで、イメージアップが必要なのだろうが、無能な政府を攻撃する首都東京のリーダーというイメージは、とても効果的だ。だが、天罰発言の時に彼自身が記者に言ったように、言葉尻を捉えてセンセーショナルな話題にするのは、いかがなものかね。

都知事としては、「涙ぐんで慰労」したところまでで、十分だったのではないかな。

ハイパーレスキューが理不尽な現場に投入されたことも、その責任を立派に果たしたことも、国民は理解しているのだから。


>追記
先ほど、自由報道協会が都知事の記者会見をやっていた。
http://twitter.com/iwakamiyasumi/status/50125143611158528
つまり、ハイパーレスキューを送り出す時の涙が報道されず、天罰発言を打ち消せなくて悔しかったみたいだ。今回は、派手に騒いで報道されて、良かったね(苦笑)

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このページは、ranpouが2011年3月22日 11:58に書いたブログ記事です。

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