2010年2月アーカイブ

フォーサイト3月号が届いた。気になったのは、「危機に瀕する日本の知的発信力」という中東研究で有名な池内恵氏の記事で、相次ぐ外交・国際政治分野の雑誌の休刊が、研究者の発表の場を奪い、研究機関の水準が保てなくなり、国際的な発言力を維持できなくなる、という趣旨の問題提起をしていた。権威の高い雑誌を作り上げ維持していくことの大変さと重要さを訴えていた。

外交フォーラム」は外務省が一定部数を買い上げて採算を取っていたが、「事業仕分け」で予算が打ち切られ、3月号で終刊。

アジア経済研究所の学術誌「現代の中東」も1月号で停刊。

日本国際研究所の学術誌「国際問題」も予算カットで紙版の発行を止め、賛助会員だけのWeb版に。(ただしこれは、印刷製本版配本サービスが始まるようだ。)

そして、「フォーサイト」も4月号で休刊。

これだけ立て続けに、外交・国際政治分野の雑誌が消えれば、そりゃ心配になるのは当たり前だ。

しかし、紙媒体にこだわらずに、紙媒体以上の発表の場として、Web化を模索することは、最早避けられない話だろうと、読みながら思った。


そしたら、何とその3月号に、4月号で休刊が決まっていたフォーサイトが、夏からWeb版でスタートすることが決定したとのお知らせが!

http://www.shinchosha.co.jp/info/emergency/foresight2.html
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/201003/monthly.html

超ウレシイですw

散々嘆いた甲斐があったか?
http://maruko.to/2009/12/foresight.html

Web版についてのアンケートが始まったので、早速答えた。
http://www.shinchosha.co.jp/ssl/foresight/enquete/

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Q13. ウェブ版「フォーサイト」にどんな機能・サービスを期待しますか?
  PCでWeb上で記事を見る分には、過去記事検索は当然に必須だろう。しかし、単に過去記事を検索できるというより、異なる号同士、異なる筆者の記事でも、関連性のある記事をジャンル・時系列で体系的に表示して欲しい。単なる検索では、Googleでキーワードで検索するのと同じになってしまう。記事の体系的な見せ方こそ、雑誌の編集の視点であり、それは過去記事の見せ方にも必要な視点だと思う。
 号単位の編集ではなく、サイト全体で過去記事も時系列で編集し、その視点を読者に提供するようなイメージだ。フォーサイトで提供される記事を受け身で読むことと、Googleで検索して情報を能動的に探して読むことは、情報に対する接し方が全く異なる。
 例えば「中東」の情報を得たいという場合に、Googleで自分の見識の範囲で思いつくキーワードで検索し、たどり着けるサイトというのは、自分の能力に依存した限られた結果であり、自分の興味の範囲内の情報しか得られない。それに対し、フォーサイトで「中東」のページを見る場合に期待するのは、フォーサイトの視点で提供された情報に受け身で接する機会を得ることであり、自分の検索能力では辿り着けない記事を読めることに、金銭的価値を見出す。
 ただし、一度契約したら、それ以前からのユーザーと全て等しく記事に接することができるのは、継続的に契約する意欲を失わせる。そこで、そういったサイトの利便性は共通に確保するとしても、継続的に契約する者へのインセンティブとして、少なくとも読者契約期間内の記事に関しては、 eBookJapan等の専用ソフト上でも良いので、ダウンロード保存可能にして欲しい。

 また、やはり継続的契約のインセンティブとして、フォーサイトクラブセミナーの在り方を考え直して欲しい。契約中の読者のみ、セミナー会場からの Ustream生中継を見れるようにし、Twitterでハッシュタグを使い、セミナーを同時に遠隔地から見ている読者同士のつぶやきを共有できると面白い。
 読者のつぶやきをフォローしている、読者でないTwitter利用者は、何の中継を見ているのか興味を持つだろうから、フォーサイトの宣伝にもつながるだろう。
 類似のサービスとして、記事もしくはジャンル毎に、ハッシュタグを決め、契約者からしか見えていない記事に関するTwitter上での読者同士のつぶやきを推奨すると面白い。つぶやきに興味を持った人が、元記事を読みたくて読者契約するかもしれない。読者同士としても、他人がどう感じているか知ることも、また、関連した情報を持つ読者のつぶやきから新しい情報に接する機会を得ることも、面白い。

 携帯や電子書籍端末への対応は、特定の端末に限定せず、広くやって欲しいが、端末によって選択的に価格設定をしても良いのではないか。

 なお、有料サイトとして、ある程度の閲覧制限は必要だろうが、完全制限ではなく、個人の外部ブログ等から、記事の一部引用、トラックバックを可能にしてもらえると、ブロガーとしては有り難いです。
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という感じで。

期待してます!!

アドビが、アップグレード版の購入に使えない、世代の古い旧バージョンのままのユーザーに対して、下取りキャンペーンを始めた。
http://www.adobe.com/jp/joc/store/eco/

でもアドビは、ライセンスの利用許諾をしているだけで、ソフトウェアの所有権は譲渡してないのに、下取りって言い方、おかしくない?

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本キャンペーンにご応募いただくには、お持ちの旧製品のメディア本体と、「エコキャンペーンお申し込み兼ソフトウェア廃棄に関する誓約書」(以下「申込書兼廃棄誓約書」)をアドビにご提出いただく必要があります。
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というので「申込書兼廃棄誓約書」を見てみると...

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【 ソフトウェア廃棄に関する誓約書 】
本状は、エコキャンペーンのお申込みと同時にお客様の旧アドビ製品をアドビへご返却されたことを条件に、お客様の旧アドビ製品に対する使用権が直ちに終了および取り消されることを確認するのもです。お客様は当該旧アドビ製品をご利用のコンピュータより速やかに削除し、当該旧アドビ製品から作成した複製物をすべて廃棄しなければなりません。当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。お客様が本状に署名し、本状と当該アドビ製品をアドビへ返却し、アドビがそれを受領後、アドビは当該旧アドビ製品とシリアル番号の「廃棄」を行います。お客様がアドビ製品のエンドユーザー使用許諾契約書に基づき当該アドビ製品を使用する権利は、お客様が本状に署名し、本状と当該旧アドビ製品をアドビへの送付を完了した時点で終了します。
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なんだ、やっぱり使用権の終了・取消しと書いてある。
で、PCからアンインストールしろと。

そんなの守るユーザーが、現実に何割いるのだろうか。

それに

>当該旧アドビ製品またはその複製物の第三者への転売・譲渡・寄贈・配布はできません。

これって、下取りと関係なく、そもそも利用許諾だけなんだから、最初から禁止してるはずではないか。下取りに出さなけりゃ、転売することが許されてるかの解釈が可能な書き方は、ちょっとオカシイ。

更にFAQを見ると、驚き。

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Q3. 対象バージョンのPhotoshopやIllustratorを所有していましたが、すでにCS2などにアップグレード済みです。このキャンペーンに応募できますか?

A3. 旧バージョンからアップグレードを継続いただいているお客さまへの感謝の気持ちを込め、上記お手続きまたは製品登録内容を確認した上で、ご応募を可能とさせていただきます。なお、アップグレード版をご購入いただくのが一番お得な選択となりますので、まずは上記価格をご参照ください。ご不明な点はアドビストアコールセンターまでご連絡ください。
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既に旧バージョンをアップグレード元として、新バージョンを安価に購入していても、同じ旧バージョンを下取りに出せて、もう1本新バージョンが買えると...

これが意味することを考えてみる。


まずアドビは、アップグレードで新バージョンを入手しているユーザーもが、今でも旧バージョンを活用しているという事実を認識しているということだ。

以前は、アップグレード版をインストールしたら、旧バージョンと併存を禁じて、旧バージョンを使いたいボリュームライセンスユーザーは、インストールの都度アドビに申請しろという無茶な利用許諾条件を押し付けていた会社であることを考えると、感慨深い。

しかし、どうして旧バージョンが活用されているのか、どうして新バージョンが受け入れられないのかという、ユーザー側の理由に耳を傾けるのではなく、どうにかして旧バージョンを捨てさせたいわけだ。


そもそも、旧バージョンから新バージョンにアップグレードしているユーザーが、どのシリアルの旧バージョンからアップグレードしているか、アドビは把握していない。

アドビはかつて、シリアルナンバーなどユーザー情報のデータベースに不具合が生じたことがあったが、いつのまにか、アップグレード版購入者のユーザー登録に、旧バージョンの購入者であることの証明を要求しなくなった。インストールの段階で、旧バージョンのシリアルが要求されるが、それがアドビに管理されているわけではない。

もっと言えば、ユーザー登録を必須とせず、登録したい人は任意に登録すれば?という態度に変わった。旧バージョンをユーザー登録せずとも、新バージョンへのアップグレードが可能な、吃驚するほどルーズなユーザー管理姿勢に移行した。

膨大なシリアル情報のデータベースの管理を放棄したのか、管理コストを削減したのか知らないが、アドビが正規ユーザーを軽視する姿勢だけは、昔から一環している。

だから、上記FAQの答えは、別にアドビが寛容なのではなく、そもそも制限できない、というのが実際のところだろう。


では、どうしてアドビが、こんな必死のキャンペーンまでしなければならなくなったのか、売上げのプレスリリースを見たら分かったので、グラフにしてみた。(昨年もグラフにしているので、手直ししただけだが。)

adobe2009_4.jpg

2009年第4四半期、なんと純利益がマイナスに転じた。

adobe2009s.jpg

もちろん、通年なら真っ黒に黒字だ。しかし、四半期とはいえ赤字というのは、営業部門が必死になるには十分な理由だろう。

ただし、この時期アドビは、Omnitureを買収している。この点を考慮すれば、不振は一時的なものかもしれない。かつてのマクロメディア買収前後の売上げに比べれば、遥かに上だからだ。

ところが、当時より純利益は遥かに下回る。最近のアドビは、利益率が極端に下がっている点が興味深い。

もしかするとCS4は、アップグレードユーザーばかりで、利益率の高い新規ユーザーが、ほとんど開拓できなかったのかもしれない。

不況の影響もあるだろうが、独占したプロユース市場が飽和気味で、新規ユーザー増加が見込めないのか?とか、色々想像してしまう。

そういうタイミングで、あえて年末にOmnitureを買収し、新規市場開拓に出たというなら、戦略としては納得だ。今まで散々蓄えてきたろうし、2008年末には、事実無根の「売上げ不振」を理由とした、600人のリストラを発表している。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20384723,00.htm
2009年の不振は、2008年末時点で予測済みだったわけだ。
(「事実無根」というのは、2008年末はまだ、過去最高の売上げだったからだ。)

自らは先にスリム化し、不況のタイミングで他社を買収して事業拡大。
上手い。上手すぎる...


しかし、ユーザー側から言わせてもらうと、事業拡大してまで余計な機能は要らんから、軽くてバグの少ない安定したソフトを希望したい...
http://www.omniture.com/jp/company/adobe_faq
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アドビ システムズがOmnitureを買収した理由は。
アドビ システムズの事業目標は、あらゆるユーザーの、アイデアや情報の関わり方に変革をもたらすというものです。アドビ システムズのコンテンツ制作ツールやユビキタスクライアントと、Omnitureのウェブ解析、計測、最適化テクノロジーを組み合わせることにより、すべてのデジタルコンテンツプラットフォームおよびデバイスを通じて、魅力的な体験やEコマースの未来を変革することのできるソリューションを提供することが可能になります。
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てへ!
今後も、現場が要望しない機能テンコ盛りな予感。

天下のアドビ様が、ユーザー目線に立ってくれることなんて、あり得ない話でしたねーーー
ちゃんちゃん!

蛇足:
>アドビはこのキャンペーンを通じて発生した利益の1%を、植林や里山保全に関する人材育成を行っているNPO団体に寄付します。
>ご購入の際にはパッケージやメディア不要で資源を節約でき、かつ送料無料で価格もお得なダウンロード版をぜひご活用ください。

価格がお得なのは、送料分の630円分だけだそうで...普通、節約したメディアやパッケージ分、ダウンロード版は販売価格を安くするものだろ?
何で販売価格は同じで、送料なんて当たり前の部分削れてるからって、お得とか言ってるの?
ユーザー側の資源節約が、丸々アドビの利益になるのに、何がエコだよ。

CS4の発売前後くらいからの販売方針とか、物凄くエグイ売り方をする会社になったと感じている正規ユーザーは、多いはずだ。時期的に考えると、クレイグ・ティーゲルが日本法人の代表取締役社長になったせいか?

追記:
やっぱ皆さんご不満のようで。
http://d.hatena.ne.jp/seuzo/20100207/1265518232

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