2010年1月アーカイブ

最近、小沢問題関連で、検察批判の声が増えてる。

これに関して、数日前にTweetしたけれど、無反応だったので、ちょっとまともに書き起こしてみる(苦笑)

確かに捜査機関の捜査手法には、問題が多い。従来から弁護士会などが問題視している点は、今後も改善を強く働きかけるべきだろう。しかし、全てを「検察権力の暴走」などと単純化して非難する人々は、重要なことを忘れてる。

令状主義の我が国では、逮捕状も勾留状も、発布するのは裁判所である。

例えば、石川議員の逮捕や勾留を非難してる人は、その必要があると認めた裁判所については、どう思ってるのだろう?

本当に、理由らしい理由が無いのに勾留されてるなら、悪いのは、勾留請求などをした検察よりも、それを認めた裁判所だろう。検察がいくら暴走しようと、裁判所がまともなら、根拠なく国民を逮捕・勾留なんてできない仕組みになってるのが、刑事司法のタテマエ。元々、権力は暴走するのが当たり前だから、それを防止する仕組みが制度に埋め込まれているのだ。

弁護人は、逮捕・勾留中の依頼者の釈放のため、勾留理由開示請求や勾留取消のための準抗告を申し立てることができる。しかし、それが認められるかどうかだって裁判所次第だ。


ところが、この国の刑事司法の問題点は、検察と裁判所が仲良しってところにある。
刑事訴訟は99%以上の有罪率。だからこそ、裁判員制度への期待も大きいわけだ。


だから、捜査手法を非難したい人は、検察の暴走を非難するより、暴走させないためにある裁判所の機能不全こそ非難すべきだろう。(ま、今回の件で実際に機能不全なのかは、知らない(^^;)


更に、捜査情報リークの問題に関しては、刑事事件だけの問題じゃない。記者クラブ問題など、マスコミが元々抱える、情報操作一般の問題だ。政治や政策の問題なんかでも、官僚等が意図的に情報リークして、マスコミを操って世論を操作するのは、日常茶飯事ではないか。記者は、提供された情報と異なる記事を書けば、以後締め出され、その会社全体が干されたりする可能性もあるわけだ。

そういう、日本の報道全般の問題を、今回たまたま検察だけ狙い撃ちするのは、「木を見て森を見ず」ではないか?

要はマスコミは、情報戦の一方の道具に成り下がらない手法を確立すべきだ。刑事事件に限らず、政治や政策の話題でも、「関係者」のリーク情報を垂れ流さずに済むように、自己批判すべきだ。


個人的には、多少行き過ぎた世論の力で、今までの刑事司法の問題点の一部(取調べの可視化とか)でも解消できちゃったら、それはそれで望ましいとも思ってる。きっと、刑事訴訟専門の弁護士などは、シメシメと思ってるかもしれないw

しかし、過度の検察不信が裁判員裁判に与える影響なども、気になる。
捜査機関の権威が必要以上に失墜することは、それはそれで望ましくないだろう。

間違っても、今後一切検察が政治家を起訴できなくなるような事態は、非常に困る。検察の高い鼻をへし折るくらいは構わないが、彼らが再起不能になるまで殴り続けてはいけない。権力と権力の均衡は、絶妙なバランス感覚が求められるだろう。

日本の国際緊急援助隊(通称JDR)25名は、ハイチ地震から5日以上たって、やっと現地入りした。阪神淡路から15年の1月17日、TVで特番が流されていた時点では、まだハイチに到着していなかったので、TVを見ると複雑な思いがした。
「緊急」って意味、なんだっけ...

残念過ぎる対応の遅さに、疑問を持つのが当たり前だ。
四川の時は、あんなに対応が速かったじゃないか。

それが、外務省のカリブ室の担当一人の資質が原因なら、残念を通り越して、情けなさ過ぎる。
http://blog.asaikuniomi.com/?day=20100115
上記ブログには驚いた。


しかし、昨日の外務大臣の会見現場からのある記者のTweetによるとこうだ。
http://twitter.com/kamematsu/status/7938044491
つまり、元々PKO部隊が行ってる治安の悪い国だから、武器を持っていけない現行法で丸腰でいきなり救援に行かせられなかったから、ということだ。これは問題だ。

すると、他国の救助隊等は皆、武器を携帯していたのか?

アイスランド外務省の広報官は「我々は日本と同じ地震国で経験がある。財政が厳しくても、助けを求める声に応じるのは当たり前だ。」と言ってるそうだが、今回地震から24時間足らずで現地入りした彼らの救助隊は、武器を携帯していたのだろうか。是非聞いてみたいものだ。

しかもJDRは、ハイチに直行せず、JALのチャーター機でマイアミまで行って、アメリカで訓練中だったとかいう自衛隊機に乗り換えてハイチ入りしている。"偶然"自衛隊機を使えて良かったね。TV的には、良い宣伝になった?

でも、マイアミで時間無駄にしないで、直行便チャーターしなさいな。
出発までに時間かかったのに、まだマイアミで、ハイチでの治安状況、安全確保対策等を確認していたなんて説明、誰が信じますかいな。
あ、例の外務省のカリブ室の一人が、ここでも手際が悪かったのですか?(苦笑)

アイスランドの救助隊を運んだのは、アイスランド航空のチャーター機で、帰りには80人の外国人をパナマに脱出させている。他国は民間機ですよ?

あ、まさか、我が国のナショナル・フラッグ・キャリアは、債務超過でハイチまで飛べませんでしたか?
アイスランドなんて、国全体が債務超過なのに(苦笑)

そりゃJALといえば、かつてイランなどからの在外邦人救出ですら、危険だからとフライトを拒んだ会社として有名だけど...まさか今回も断りましたか?


我が国の外務大臣の発言が問題だと感じるのは、現行法を諸悪の根源にしている点だ。
法律があるから、人命救助できなかったとなれば、法律を改正しろという世論が形成される。では、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」で可能なこととは何だろう。同法3条2項によれば、自衛隊が派遣できるのだが...

JDRには本来、救助チーム、医療チーム、専門家チーム、自衛隊部隊の4構成があり、その役割の違いは、以下のJICAのサイトに説明がある。
http://www.jica.go.jp/jdr/about.html

ところが今回派遣されたのは、現時点でまだ医療チームのみだ。
その医療チームは今、現地でスリランカ軍に護衛してもらっている
http://www.jica.go.jp/information/jdrt/2009/100119.html
スリランカ軍も、護衛なんて頼まれなけりゃ、救援活動手伝えるだろうに...なんだか申し訳ない気持ちになる。

他国の軍隊に護衛を依頼するほど危険なら、そもそも自衛隊部隊も一緒に送りなさいな。たとえ武器が携帯できなくとも、自衛隊部隊がこの場面で無用という第一判断は、どうやって導き出されたのさ。法律を非難する前に、法律で最大限可能な活動を最初からしなさいな。何日も何日も検討時間を費やしたのだろ?


そして、自衛隊部隊派遣の話がやっと出たのは、18日になってのことだ。
「【毎日jp】ハイチ大地震:自衛隊派遣準備を指示 防衛相」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100119k0000m010066000c.html
この対応の遅さは、最早人災。法律のせいにしなさんな。


さて、整理してみよう。

1、異常なまでのJDR派遣の遅れ
2、パフォーマンス的な自衛隊機の使用
3、それに続く自衛隊派遣の決定
4、法律で可能な最大限の選択をせず、武器を携帯できない法律のせいで対応に時間がかかったかの発言をする外務大臣


この状況で逆算的に、迅速な対応を可能とするにはどうしたら良いかと考えれば、「自衛隊に武器を持たせて海外派遣できるようにすべきだ」、ということになる。

なんのことはない。これは、自衛隊法改正の議論だ。まさかこの場面で使われるとはな...

かつては、邦人救出に手間取って政府が批判される場面で、「だから自衛隊法改正を」という世論が形成され、2006年の改正で緊急時の在外邦人輸送が本来の任務になったばかり。対応が遅れた事実+法律が悪い、となると、法改正は楽なのだ。

まさかと思いたいけれど、外国人の人命を政治に使いなさんなよ...


しかし、外務大臣の説明が信用できないのは、訳がある。
http://twitter.com/uesugitakashi/status/7937782751
http://twitter.com/uesugitakashi/status/7937836417
自衛隊派遣を選択した後なのに、外務大臣自身は、駐日ハイチ大使と支援について確認してないってのは...

外務大臣は、自衛隊派遣の前に、駐日ハイチ大使と直に会うことくらい、すべきなのではないか?その必要もないの?

追記:
「【毎日jp】ハイチ大地震:治安の悪さ、自由な救出活動阻む」
http://mainichi.jp/select/today/news/20100121k0000m030039000c.html?inb=fa
他国の救助隊も、PKO部隊の警護を受けていることが分かった。つまり、自衛の手段など、他国の救助隊も準備していなかったということだ。それでも、迅速に現地入りしたのだ。我が国が無駄に時間を浪費している間に、後から治安が悪化したというのが、実際のところだろう。

言うまでもないけれど、現地で頑張ってるJDRの医療チームの方々や、これから派遣される自衛隊部隊の方々も、個人的には何も非難する気は無い。問題は政治。

少数意見

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喪中なんで、新年の挨拶はナシってことで、新年一本目をどう書くべきか迷ったけれど、たまには法科大学院の学生らしいネタの紹介を(自爆)

以前、朝日のGLOBEが良いと書いた。
http://maruko.to/2009/12/globe.html

実は、上記のJALの前の特集が、「日米最高裁 少数意見が社会を変える」だった。
http://globe.asahi.com/feature/091102/

これも、凄く良い特集だったので、取り上げてみる。


ここで言われている「少数意見」とは、最高裁の判決文に、一見オマケのように追記されてる補足意見や反対意見のこと。判決文に反映された多数の裁判官の意見ではなく、採用されなかった少数派の意見。

実は、これの重要性は、法科大学院に入った当初、ほとんど理解していなかった。憲法の授業で先生に重要と言われても、全然ピンとこなかった。「なんで?採用された多数派の判決文だけ読めばいいじゃん。それでも膨大で、読むの大変なんだから...」という感じ。

多分、世間一般の感覚としても、判決に採用されない少数派裁判官の意見の重要性なんて、気にする人はいないだろう。

もっと言うと、民主主義一般における少数派の救済の仕組みなんぞ、考えたこともなないかも。


上記特集の中の誰かのインタビューにも出てくるけれど、民主主義と立憲主義は、時々矛盾する。民主主義だけに任せると、いつの間にか少数者は抹殺される。だから、基本的人権を尊重する立憲主義が必要になる。それが、我が国の採用する立憲民主主義。

ところが、立憲民主主義の要である最高裁だって、裁判官の多数決だ。そこでも採用されないのが、この特集の「少数意見」。これが、社会を変えることがある。つまり、立憲民主主義の要の中の要、というところだ。

何十年前の「少数意見」が、現在の「多数意見」に変わる瞬間が、立憲民主主義が機能した瞬間とも言える。「少数意見」とは、未来のあるべき姿を予見していたりするわけだ。


そういう視点で、この年始に、上記記事を熟読することをオススメする。

なんでかって?

先月、最高裁の裁判官は3人交代した。2人が定年、1人が亡くなったからだ。
あと半年で、更に3人が定年を迎える。
たった15人の最高裁で、短期間に6人もメンバーが交代するわけだ。

今年は、かつての「少数意見」が「多数意見」に変わる瞬間を、目にするかもしれない...

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