最近、非実在青少年関連のエントリーが増え、某所では犯罪関連のブログに分類されるようになり、著作権法系に分類されていたのが遠い昔のように思える今日この頃。
「常にマイナー目線から、世間様につっこみを入れる」ないし「世界の端っこで、『王様の耳はロバの耳』と叫ぶ」的な、そんな初心を忘れずに、客観的・中立的な、常にフラットでありたい今日この頃。
しかしながら、またしても非実在系なのであります(苦笑)
先日、NHK教育の「視点論点」という短い番組に、アグネス・チャン氏が登場(2010/06/07:22:50~23:00)し、冒頭で一応、今回は二次元(マンガ等の創作物)規制の話ではない、という趣旨の断りを入れて、児童ポルノ規制強化の話をされていた。で、その内容が余りにも酷く、客観的におかしいので、生まれて初めて、NHKとBPO(放送倫理・番組向上機構)に意見を送ってしまった(自爆)
(その内容は、一番最後を参照のこと)
一見、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が激増していると読めてしまう、あのグラフを持ち出して、規制強化の必要性を訴えるアグネス氏の主張は、酷い演出で、グラフに隠された事実を知らなければ信じてしまう人もいるだろうに...と眉をしかめながら見てました。
が、あのグラフがアグネス氏の言うような事実を示すものではないことは、既にこのブログでは指摘済み
http://maruko.to/2010/03/post-82.html
なので、今回はもう一つ別の話を。
アグネス氏が述べていた、国民の9割以上が児童ポルノの単純所持禁止に賛成したという、世論調査のトンデモ実態について。
この世論調査は、やはり規制強化推進の急先鋒である後藤啓二弁護士も多用する、創作物表現規制派の伝家の宝刀の一つ。
http://www.law-goto.com/0302/016/
「2007年の世論調査では大多数の国民が児童ポルノの単純所持の禁止(90.9%)及びCG・漫画も規制の対象にすること(86.5%)に賛成しています。」
つまり、単純所持禁止も、創作物への表現規制も、民意なのだから、立法府は規制立法を早く成立させろ、という圧力に使われている。議員は、こういう数字に弱い(^^;
しかし、この世論調査が実は、調査対象たった3000人のうち、有効回収数が更にたった1767人の、調査員による個別面接聴取というとんでもない調査方法で行われた結果であることは、あまり知られていないのではないか?
当時は、やらせタウンミーティングで世論操作をしていたのが前年にバレたばかりの、安倍首相の時代だ。内閣府が、どんな手を使ってこの回答に誘導したか、ちゃんと知っておかなければならない。
http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h19/h19-yugai.pdf
内閣府の世論調査は、住民基本台帳の情報を元に、委託された民間の調査会社が自宅にやってきて、直接面接して質問する。素晴らしすぎて、泣けてくる。(個人情報が民間にダダ漏れ?)
そんな、自分の情報を一方的に握っている民間の質問者に、わいせつだの児童ポルノだの面と向かって聞かれたら、仮に表現の自由を尊重したいと思っていたって、反対なんて言える人がどれだけいるだろうか?
PDFの6枚目(表記はページ5)からが調査資料だが、「資料5を提示して、対象者によく読んでもらってから質問する」という資料5は、内容が恣意的すぎるて泣ける。
・罰則が弱い
・各都道府県により規制がばらばら
・業界団体に属していない業者は規制の対象外
・有害情報に携帯電話等でアクセスして被害にあうケースも増えています
と、いきなり客観性の欠ける表現(「弱い」、「増えてる」)で、一方的な情報を回答者に植えつけている。
罰則が具体的にどうなのか、規制がバラバラで何か問題なのか、業界団体に属していない業者がどれほど存在するのか、被害にあうケースが増えているってのは何件くらい、何%くらい実際に増えているのか、全て隠して、一方的な印象を与えるメッセージになっている。
この情報を前提に答えろと言われたら、読解力のある日本人なら、誰だって「国として規制強化すべき」って結論が出るわなwww
Q2 〔回答票17〕、Q3 〔回答票18〕、Q4 〔回答票19〕の3連コンボも秀逸。
そして、後藤氏やアグネス氏が連呼する、単純所持禁止90.9%賛成の根拠となる、Q6 〔回答票21〕がやってくる。もちろんその前に、資料6で恣意的に誘導してからの回答だが(苦笑)
(ア)規制すべきである(69.6)+(イ)どちらかといえば規制すべきである(21.3)=規制賛成90.9%
資料6では、規制反対意見の理由は、「個人が持つだけであれば他に害を及ぼさないため現行のままで問題はない」しか示されていないのだ。もっと他に、「過去に適法に販売されたアイドルの写真集を所持していることが犯罪とされる危険性」など、色々と重要な反対理由は存在するだろうに、見事にスルーだ。
そしてラスボスのQ7がやってくる。CGや漫画も規制対象に86.5%賛成と後藤氏らが言う根拠だ。
(ア)対象とすべきである(58.9)+(イ)どちらかといえば対象とすべきである(27.6)=規制賛成86.5%
それ以前に提示された資料や質問が、全てこの最後の質問で創作物表現規制に賛成させるための、完璧な誘導だったのですね!わかります!!www
これにて、Q6とQ7を組み合わせると、自分用に門外不出のエロマンガを描くだけで、タイホというのが民意ということになる。
なんというか、ロリコンに同情するとか、そういうレベルじゃないですね(^^;
自分も小中学生の頃、アニメやマンガの好きなヒロインキャラを、ついエロく描いてしまったことがありますが、間違いなくタイホですね!もちろん、恥ずかしくて誰にも見せてませんが!!(なんだこのカミングアウトは!!!(自爆))
9割もの国民の皆さんは、さぞかし健全にお育ちになられたのですね!(苦笑)
...んなわけあるかゴラァ!!
ちなみにこの頃、内閣府の別の世論調査を受けたことがあるという人の話を某所で見たのですが、調査員に、特定の答えを選ぶように誘導されたそうだ。
また、見ず知らずの調査員に自宅に来られるという状況から、早く帰って欲しいという気持ちが強くなり、適当に答えたくなったそうだ。そりゃそうだろう。
ま、直接じゃないし、真偽は確認してませんが、上記PDFを見る限り、否定は難しそうですな。
でも、9割って数字は大きいよね...で、何人だっけ?
回答したのが1767人だから...え?たった約1600人の民意??
あれれれ?
後藤氏は、日経ビジネスオンラインで民主党を批判するのに、民主主義における民意の盲点として以下を指摘してますよね?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100511/214348/
「先の衆議院選挙の投票率は69.28%です(小選挙区、以下同)。そして、民主党の得票率は47.4%です。かけ算をすると、約33%。国民の3割ちょっとが民主党を支持しただけとも言えるのです。 」
「圧勝したはずの政権党を支持しなかった国民も多いのです。また、投票をした人もすべてを委ねたわけではないですよね。ですから、すべてを多数決で解決しようとすると、政権党を支持しない国民はもちろん、その他の人も含めて、多くの権利や利益を不当に害する恐れがあります。」
その論理を、是否この世論調査にも類推適用してみたらいかがで?
え?選挙と調査は違う?
それはそれ、これはこれですか。ダブルスタンダードって、美味しいですよね。
ま、規制推進派の人って、大体そういう感じですよねー
とりあえず僕は、こんな恣意的誘導の圧迫面接みたいな調査で、規制強化に反対した約1割の人々に、敬意を表します。
まあ、仮に2007年の世論調査に価値があるというなら、それよりも最近の調査はもっと価値があるはず。前のエントリーでも追記で紹介したけど、色々なアンケートがあるのですから、他も参考にしてくださいよ。>規制推進派な方々
「日本PTA全国協議会の調べによると、小中学生の親たちはマンガが子供に与える悪影響について大して心配していないし、条例などによる規制も望んでいない」
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.htm
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/17_mediahoukoku.pdf
「漫画児童ポルノ規制」 条例へ否定的意見が9割
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/100520/sty1005202250004-n1.htm
こんな感じですから。
ところで、民主党批判が目立ったのか、後藤氏はみんなの党から立候補することになってしまった。
http://www.your-party.jp/members/kounin/gotoukeiji.html
ショックだ...
自分は、みんなの党の結党当時からの支持者だったりする。
http://maruko.to/2009/08/post-63.html
一般党員だし、党に個人献金もしている。
みんなの党は、党としてのアジェンダだけが重要で、それ以外の各議員の個人的政策の不一致は問わないことも理解している。
だから、後藤氏の個人的な政策は、党の政策ではないということも理解している。創作物表現規制に反対している候補者の存在も、知っている。
しかしだ...それを理解した上でも、後藤氏の政策実現に少しでも加担することは、自らの良心の呵責に耐えられない。恣意的な調査結果で民主政の根本を歪めるような行為は、許容範囲の外だ。
これは表現の自由(憲法21条1項)だけでなく、先に示したカミングアウトのような、誰にも見せる予定もなく、自ら絵を描いて所持するだけという場合、限りなく思想・良心の自由が保障する絶対的な内心の自由(憲法19条)の問題だからだ。描画するという行為があっても、門外不出の場合まで、表現の自由の問題にすることは間違いだ。
思想・良心の自由は、あらゆる精神的自由の根幹として絶対的に侵害されないことを、特に我が国の戦前の反省から、憲法に規定したものだ。諸外国では、信教の自由はあっても、思想・良心の自由を独立して保障している憲法は珍しいそうだ。だからこそ、容易に創作物の単純所持すら処罰するようなことが有り得るのだろう。何故なら、信教の自由にカテゴライズされなければ、表現の自由で判断するしかなく、表現の自由は公共の福祉による制約が可能だからだ。
しかし我が国では、内心の領域にとどまる限り、国家との関係では絶対的に自由とする憲法が、歴史的な反省に基づいて存在するのだ。諸外国とは、思想弾圧の歴史的背景が全く異なる。思想弾圧の歴史への反省がない諸外国の憲法との違いを考慮せず、G8の国々では多数が規制しているのだから我が国も規制すべし、などという論理は、到底受け入れられない。党の経済政策等には賛成するが、それは上記権利を絶対的に保障する大前提があっての話だ。
まあそもそも後藤氏は、みんなの党のアジェンダに一致しているとも思えないのだが...
一応先週、党に対して、以下の意見を送った。
-->
参院選比例代表に後藤啓二氏を擁立するとの報道を見て、非常に落胆しております。
非実在青少年問題など、創作物表現規制反対運動が盛り上がっている今、何故このような、表現の自由を軽視する悪評高い人物を擁立するのか、理解に苦しみます。
そもそも、氏のこれまでの活動からすれば、みんなの党のアジェンダに、反する人物です。
現在、Googleで「後藤 みんなの党」と検索すれば分かりますが、みんなの党を支持していた人々が、落胆、批判の声を上げております。そして、みんなの党を非難する大きな材料とされております。
仮に、みんなの党としてのアジェンダには、表現規制が含まれないとしても、党を支持して後藤氏が当選してしまえば、氏の掲げる政策の実現に加担してしまうことになるので、私は一般党員ですが、最早党を支持できません。
後藤氏の個人的政策に、党としても賛同しているのであれば、尚更です。
擁立の撤回、もしくは、児童ポルノ対策を根拠にした過度のパターナリズムによる安易な表現規制に反対する立場を明確にするなどして、党のアジェンダに含まれない後藤氏の個人的な政策の実現に党は加担しない、と宣言できないものでしょうか。
私は、氏が元警察官僚だから批判しているのではありません。小野氏のような人物なら構わないのですが、後藤氏は許容できません。
http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201005230134.html
後藤氏の掲げる規制強化は、子を抱える親たちの大半が望まないものです。
このまま党がアクションを起こさないのであれば、私は一般党員であることに嫌悪感を感じますので、除名していただきたいと思います。除名の手続きがあれば、教えてください。
<--
丸一週間経過したが、ノーリアクションだ。
みんなの党規約第4条1項によれば、離党手続は組織規則に定められているそうだ。
http://www.your-party.jp/about/rule.html
しかし、その組織規則が見つからない。
これから、離党手続について質問しようと思う。本当に悲しいよ(涙)
蛇足:「視点論点」についてNHKへ送った意見
昨今大変大きな議論の対立がある問題にも関わらず、規制推進派のアグネス氏のみが、一方的に伝聞口調で誤った情報と情緒的な意見をしゃべり続けるという放送内容に驚いた。日本放送協会国内番組基準の第5項1号に、明らかに違反していた。
また、用いられた児童ポルノ事件増加のグラフは、客観的な論拠から、事件増加を単純に示すものではないと言 われているものだ。犯罪社会学的に、アグネス氏の説明は非常に不適切で、誤解を招くものであった。
「視点論点」は、もっと多角的な視点を提供し、視聴者に判断材料を与える番組だと思っていた。意見が対立している公共の問題について、アグネス氏のような一方的なプロパガンダ放送が許されるなら、規制強化反対の立場の論者にも登場させ、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱うべきである。
追記:6/16
後藤氏は、最新のブログでも、問題の内閣府の世論調査の数字を使っています。
http://www.law-goto.com/blog/archives/13
「内閣府の世論調査によると90%の国民は単純所持を禁止する考えに賛成しています。」
しかし、CG・漫画の規制の話に触れなくなった。理由は、選挙対策しか思いつかない。
恐らく、みんな党も、単純所持規制と創作物規制をセットで主張する後藤氏の危なさ、不人気さを理解したのでしょう。しかし、単純所持規制のみにしたからと、それが党のアジェンダである「生活重視」につながるというのは、流石に無理なコジツケだ。いくら他に、党のアジェンダと一致する主張が、後藤氏に一切ないとはいえ、苦しすぎる。
http://www.law-goto.com/
「生活重視」って、今までそういう意味じゃなかったじゃないか。
しかも、ブログのタイトルの「児童ポルノを楽しむことは自由だという民主党政権に国を任せて大丈夫か」というのは、酷過ぎる。いくら民主党だって、そんなことは言ってないだろうに、こんな三流の煽り方、恥ずかしくないのだろうか。常識的な判断力があれば、元々余程の反民主な人でなければ、こんなタイトルのブログを書く人に、共感できまい。つまり、何も支持拡大につながらないブログだ。
みんなの党は、自らのアジェンダのみを主張していれば良いのであって、その他大勢と一緒になって反民主ばかり唱えてたら、自ら存在意義を失う。初心にかえって欲しいものだ。
そんな中、みんなの党の山田太郎候補が、規制強化反対の姿勢を明確にしている。
http://www.yamadataro.jp/blog/534
7日にブログが更新されていたことを今知ったのだけど、自分も、後藤氏の擁立が決まった5日に、山田氏に直接、twitterで意見を伝えていた。そういった意見に答えていただけたのだと思う。やはり、党としての姿勢は、固まっていないということだ。すると、後藤氏が落選して、山田氏が当選すると、個人的には嬉しいw
ということで、党の支持とは関係なく、比例区は山田氏の個人名での投票をするか、考え中。
山田氏は、かかった選挙費用をHPで毎日更新して公開してるのが面白い(^^;
http://www.yamadataro.jp/
あと、やっと、非実在青少年の都条例改正案が否決された!
http://togetter.com/li/29598
これ、Twitterがなかったらと思うとゾッとする。Twitterが民主主義を実現させたと言っても良いのではないだろうか?
しかしこれは、終わりではなく、まだ始まりなんだろう。