http://japan.cnet.com/panel/story/0,3800077799,20392467,00.htm
この話題は、個々人それぞれの立場から言い分があるとは思う。
どの観点から評価するかで、結論が左右される問題だろう。
そして、誰かが正しいのではなく、誰の言い分も一定程度正しいという厄介な問題だ。
http://www.nttdata.co.jp/whatsnew/20090424.html
http://www.nttdata.co.jp/whatsnew/20090424-01.html
http://www.nttdata.co.jp/whatsnew/20090424-02.html
まず、元システム管理者側の視点から、復旧した担当者に、「ご苦労様」とねぎらいたい。
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(1)データベースサーバーのRAID5構成のハードディスク2本が同時に破損
1本の破損であれば残りの5本から情報を再構成できますが、破損が2本に及んだためデータを読み取ることが出来なくなりました。
(2)更にバックアップ用のサーバでも障害が発生
これによりバックアップのデータにも異常が生じたため、皆様の記事情報を復旧することが困難な状態となりました。
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RAID5構成で、ドライブが2台飛ぶ悪夢は、自分も数回経験したことがある。
ドライブが2台同時に故障する場合とは、単に運が悪いというより、RAIDコントローラーやマザーボードなど、ドライブ以外に原因がある可能性が高いのだけど、これは経験の豊富な管理者でなければ想像できない。また、故障と断定できない単なる可能性の段階で、ドライブ以外の高額なハードウェアの交換を決断する勇気も必要で、常識的にはドライブ同時故障は単に運が悪かったと考えるのが一般的だろう。
データベースサーバは、1日1回バックアップが他のサーバに取られていたとの説明であり、基本的にRAID5を信用しない運用も、常識的だ。しかし...
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2009年2月13日(金)
* 復旧作業中に更なるハードウェア故障が発生
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担当者の頭が真っ白になったのではないだろうか。
バックアップからリストア中に、何かが起こったわけだ。
早期復旧を急かされる中、リストアという時間のかかる作業をトライし、結局無駄であったと理解するには、さぞかし葛藤があったことだろう。
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2009年2月20日(金)
* 2003年11月4日のサービス開始から2008年8月4日未明までの情報の復旧が完了
* 上記期間における記事を閲覧できる状態に復旧
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バックアップの更なるバックアップがあったということだ。NTTデータとしては、三重のバックアップは、常識的な管理体制かもしれないが、世の中そこまでできないシステムは多数存在する。テープメディアのバックアップだろう。
よく頑張ったと言えるのではないか。その後も、様々な部分的復旧が進むが、
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2009年4月10日(金)
* 故障したハードディスクの復旧に成功
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これは驚いた。
ドライブの復旧は、容量にもよるし、RAIDがかかっているとその複雑さにもよって、非常に高額なデータ復旧費用がかかる。貴重なデータの価値を量りにかけられ、復旧業者に数百万円~天井知らずの代金を請求されることが多い。
つまり、会社としては、データを復旧させることに道義的責任を大きく感じ、かなりの高額なコストを負担したことになる。サーバそのものの交換も含め、下手したら数千万円はかかっているかもしれない。
もちろん、当初からドライブ以外の機材故障を念頭に、予備機を待機させておけば、もっと早期にスマートな解決はできたはずだが、収益性の無い無料のサービスに対して、バックアップ的なリソースにコストをかけられる会社というのは、あまり無いだろう。三重のバックアップは、常識的に十分だ。もし、一切止められないサービスなら、ストレージをisilonなどにすべきだろうか。しかし、どこまでコストをかけられるかは、システム管理者の責任の範疇ではない。限られたリソースの中で、できる限りのことは、頑張ったのだろう。と思いたい。
次に、会社としてサービス終了を決断した、経営者的な観点からはどうだろうか。
サービスを提供してしまった以上、安易に止められない道義的な責任はある。規約等で法的には免責されていようと、株式会社NTTデータとしての社会的責任を放棄できるものではない。ブログの累計のユーザー数は約10万人だが、アクティブなのは2000~3000人だったそうだ。さて、どうすべきか...
そもそも、収益性の無いサービスを何故始めたのだろうか。
社内稟議の段階で、トラブル時にこれほどコストがかかることは、想定されていただろうか。
このサービスは、今後も収益性がなくとも継続する価値はあるのだろうか。
株主への説明責任を果たせる根拠があるのだろうか...
恐らく、この不況時に、収益性の望めないサービス提供を終了するという判断は、合理的で正しいだろう。しかし、会社としての評価を下げるような撤退方法だけは、避けねばならない...さてさて。
さて、ユーザーの観点からはどうか?
アクティブに毎日利用していたら、きっと発狂ものだろう。
フザケルナ!
オレの貴重なブログを返せ!
どんだけ時間をかけて築いたブログか分かってるのか?
え?過去のブログは、99%以上復旧したの?
じゃ自分でバックアップできるんだ!
サービス終了?
まあ、引っ越すか。
無料だから、仕方ない部分はあるよね...
と、最終的にバックアップで引越しできれば、最低限の道義的責任の範囲と、大多数のユーザーは諦めがつくのではないだろうか?
あとは、納得のいく説明がなされれば...
これは、mixiの利用規約の改悪問題の時と、少し似ているかもしれない。
突然のルール改悪と、サービス終了とは、程度の差でしかない。
完全に無料のサービスを終了するNTTデータの行為と、一部有料のユーザーに対しても突然ルール改悪をやってしまうmixiの行為とを比べれば、後者の方がはるかに悪意に満ちている。NTTデータは、データ復旧の過程も公表したし、最低限のオトナの対応はできているので、mixiよりよほどマシだ。
それでも非難されているのは、以下の部分らしい。
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復旧作業の終了を受け、今後のDoblogについて検討した結果、Doblog開設時の目的である、ブログシステムを構築するための技術的知見、およびコミュニティサービスを運用・運営するためのノウハウの蓄積については十分に達成できたものと考え、サービスを終了するという判断をいたしました。
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自己中と思われたか?
しかし、これはとても正直だと思う。
恐らく、収益性の無いサービスを外部に提供するために、会社組織の中で予算を得るのに許される理由は、上記のような技術的知見、ノウハウ蓄積くらいしか無い。なので、事実として、そのような理由で企画提案者は稟議書を書き、決済責任者の許諾を得たのだろう。だから、トラブルによって高額なコストが予定外に生じた現在、あらためてこの事業の存在意義を再確認した結果、当初の目的を果たしたと考えたとしても、何も不思議はない。5年も運用すれば、そりゃ分かるだろう。
隠しているかもしれない理由は、今回のトラブルで生じたコストが、予想外に高額で、「そんなに費用がかかるなら、この不採算事業は打ち切る」というものだろう。
個人的には、後者の方が事業継続の判断では重視されたとしても、おかしくないとは思う。しかし、そんなことを表立って公表できるかといえば、NOだろう。そんなことは、常識ある社会人なら想像できるのであって、公表しない=嘘、と非難するのは、安易だろう。不採算だから、利用者の信頼を裏切ってよいことにはならないが、目的を達したのなら、データ復旧して猶予期間を設けてバックアップ手順を準備したなら、十分に無料サービスの道義的責任を果たしていると評価すべきではないだろうか。少なくとも、この点に明らかな嘘は無いのだ。
僕は、NTTデータという会社は特に好きでもないし、高コスト体質の会社だと思っているので、否定的な評価をしているけれど、今回の対応はまともだと感じた。この手のサービスを終了する際に、バックアップ手順をユーザーに提供し、猶予期間を設けたというのは、良い手本となるだろう。代替手段があるなら、十分ではないか。
逆に言うと、これで不満足なユーザーとは、無料サービスにどこまで求めていたのか聞いてみたい。mixiのように、ある日突然サービス提供者に有利な権利を規約に盛んだなら論外かもしれないが、未来永劫死ぬまで無料でブログが使えると思っていたとは思えない。責任者が出てきて、土下座でもしたら、納得するのだろうか?
ブログのような、ユーザーの情報資産を預かるサービス提供者は、無償サービスといえどもサービス継続すべき道義的責任が高いとは思うが、サービス終了自体が非難される前例にはならないで欲しい。
ネット上のサービスは、提供開始時は比較的低コストで始められるので、様々な試行錯誤が可能であり、新サービスが生まれやすい。それこそが、インターネットの特徴でもある。それが、一度始めると終了させることは難しいらしい、となったら、サービス開始時に終了の困難さを含めた経営判断が必要となり、つまりは開始が困難となる。無償のサービスに、高度の責任を求めるユーザーの存在は、将来恩恵に預かったかもしれない新サービスの目を摘んでしまう可能性がある。
もちろん、だからと言って、企業が無責任にサービスをいつ止めても良いわけではない。要は、程度の問題であり、今回のNTTデータの対応は、社会常識の範疇のオトナの対応だったと、僕は感じている。なので、これに不満を持つ人も当然存在するだろうが、全員が満足する方法など無い。
さて、ここのブログですが...
このブログを始める時、当然、どこのブログサービスを使うか、自分自身悩んだ。その時、当たり前というか、無償のサービスはいつ終わっても文句言えないとなと思ったので、無償のブログサービスは選択肢から除外した。mixiの利用規約改悪時の悪夢がよぎったというのもある。自分の著作物は、自分で守るべきだし、守れるのが今の社会だと。だから、自己所有のドメインで、以下の有料のホスティングサービスの上で、ブログを開設した。権利関係も、責任関係も明確だ。
この程度の出費で、自らの責任で情報発信できるのであれば、他人の無料サービスに頼る必要など無かろう。
もちろん、このホスティング業者が廃業する時も、いずれ来るだろう。
しかし、自らのデータを、自らの責任でバックアップし、管理できているなら、その時また新たな選択を自らすれば良いのだ。
その意味では、無償のホスティングでも良いのかもしれないが、そこは様々な自由度との兼ね合いだ。
自由だと、逆に何をどう設定したら良いのか技術的に分からず、困るという人も居るかもしれない。しかし、自分で出来ないことを他人に頼るなら、結果の不自由も一定程度仕方ない。
自由と権利を得るには、何事もコストがかかるってことを、忘れてはいけない。
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