2012年3月アーカイブ

ネットと震災

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■ついに1年
この1年、何度涙腺が緩んだことか。
同時に、復興の遅さや、東電の対応など、何度怒りを感じたことか。
原発関連のムーブメントなど、とにかく激動の1年だった。まあ、激動だった割に大して進んでいないのだけどね。

最近よく考えることがある。

もしまた今、同じような震災が起こったら、僕らは1年前よりもマシな対応をできるだろうか?

次は多くの人が政府や電力会社の発表に聞く耳を持たず、パニックになるような気もする。それを避ける唯一の手段は、ネットを活用できるかどうかだろう。

ネット界隈は、震災の教訓をどう消化したのだろうか。

まあ、Twitterが役に立つというのは、今さら言うまでもない。
と言うか、もしも無かったらどうなっていたかと思うと、ゾッとする。
Googleの貢献も、無視できない。パーソンファインダーの立ち上げもそうだが、そもそもGoogleマップが無かったら、帰宅困難者はもっと困難だったろうし、被災地への支援活動も滞っただろう。

思えば、阪神・淡路大震災の時、インターネットにはそれらが無かった。Googleどころか、Yahoo!すら法人設立前だ。当然、Facebookもmixiもなければ、2chもブログもなかった。想像できるだろうか?

■社会的常識
「インターネットと情報ボランティア ―これまでとこれから ―」
http://www.heri.or.jp/hyokei/9601mzno.htm
を偶然目にしたので、ちょっと思いをはせてみる。

阪神・淡路大震災当時、大学生だった自分は、結局寄付しかできなかったように思う。ボランティアに行くべきか考えた記憶はあるのだけど、実行に移せなかった。
東日本大震災では陸前高田に行き、多くの大学生と共に活動し、昔の自分より全然偉いなと思ったり思わなかったり(苦笑)

もちろん、被害の性質や規模の違いはあるけれど、17年前の自分が能動的に支援に動かなかった理由は何だろうとか、ちょっと考えてしまった。まあ、結論は単純で、インターネットの違いなんだけど。

当時は、マルチメディアという言葉が世間を賑わせていたけれど、個人でインターネットを使えている人は極少数。それまで、月額何万円もしたインターネット接続料金をベッコアメ・インターネットが価格破壊し、やっと学生の自分でもプロバイダ契約が現実的になったばかりだった頃。

WWWなんて、大学の演算室のUNIXでNCSA Mosaic使う程度。
個人じゃ、パソコン通信のニフティサーブ経由でtelnetするのがやっと。
まだテレホーダイも始まっていなかった。

結局、TVや新聞で伝えられる情報がメインであって、少なくとも自分はネットを活用できなかった。


ところが、そんな時代の阪神・淡路大震災でも、インターネットが有効活用されたと当時話題になったりした。安否情報の提供なども、Googleすらないのに当時の人も頑張った。

その辺のことは、今はなき「インターネットマガジン」がバックナンバーアーカイブとして公開しているので、今見てみると興味深い。(読者だったけど、完全に忘れていた。)

『大規模災害とインターネット―阪神大震災にインターネットはどう対応したのか(1995年4月号)』
http://i.impressrd.jp/e/2008/01/17/343
PDF
http://archives.impressrd.jp/im/previewer.php?url=http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im199504-064-jisin.pdf

『大規模災害とインターネット第2回―残された課題と今後のインターネット活動(1995年6月号)』
http://i.impressrd.jp/e/2008/01/17/344
PDF
http://archives.impressrd.jp/im/previewer.php?url=http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im199506-076-jisin.pdf

東日本大震災でのインターネットの活用具合とは、全然レベルが違うはずなのだけど、そこに求められた役割や課題というものは、何かデジャブが...

震災後、インターネット防災訓練なんてものも始まった。

『[REPORT] 「第1回インターネット防災訓練」の裏側 (1996年4月号) 』
http://archives.impressrd.jp/im/previewer.php?url=http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im199604-210-bousai.pdf
『[REPORT] 第2回インターネット災害訓練レポート (1997年4月号) 』
http://archives.impressrd.jp/im/previewer.php?url=http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im199704-330-saigai.pdf

そして10年後

『ライフラインとしてのインターネット(2005年4月号)』
http://i.impressrd.jp/e/2008/01/17/346
PDF
http://archives.impressrd.jp/im/previewer.php?url=http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im200504-112-letter.pdf
「最も重要な課題は、「いざというときはこれを使えばいい」という社会的常識を広く浸透させることである」

ということで、IAA Allinaceみたいのを定着させるのかと思いきや、2007年3月31日をもって解散してしまった。
http://www.iaa-alliance.net/

niftyもネットの防災訓練をやってたが、この年が最後?
http://rescuenow.nifty.com/tokusetsu2007/kunren/

なんだろね。結局、震災から時間が経つと、防災意識が低下してしまうのだろうか。
これらの反省や訓練の経験が、東日本大震災でどう生かされたのか興味があるけれど...

『第1回「iSPP 情報支援連携会議 in 仙台」で語られた被災地の話』
http://i.impressrd.jp/e/2011/05/23/1134
「グーグルのパーソンファインダーのようなウェブを見ること自体、発想にない」

『阪神淡路と東日本大震災に見るインターネット共通の課題』
http://i.impressrd.jp/e/2011/08/11/1149
「96年版と2011年版には、まったく同じ1つの視点が寄せられている。それは、「被災者には直接あまり役に立たなかった」という関係者の言葉である。」

なんとも残念。
震災時のインターネットの利用方法が、またしても社会的常識となっていなかったわけだ。

パーソンファインダーが立ち上がったのが、震災の2時間後なのだから当たり前だけど、そもそもGoogle先生に責任はないのだから仕方ない。IAA Allinaceの後も、本当の意味で役に立つ安否情報サービスが整備されなかったのは、国内問題なのだから。

しかし...
「Googleが新しい災害対応の取り組みを発表 - パーソンファインダーの機能拡充など」
http://news.mynavi.jp/articles/2012/03/07/google/
「東日本大震災と情報、インターネット、Google」
http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/

ここまでGoogleが本気を見せている以上、どういう枠組みであろうと、Google抜きには有り得ないことだけは確かだ。Google抜きには有り得ないけれど、Google任せで良いのか不安という、なんとも歯がゆい感じもある。
facebookの災害用伝言板よりは、遥かに頼もしいのだけど(^^;

とりあえず、いざとなったら
http://www.google.co.jp/saigai
これを確認するというのは、社会的常識にできずとも、家族や親戚の間では常識にしたい。

まあ、安否情報に限らず、社会的常識にするには国民的なインターネット防災訓練が必要なのは間違いないけれど、簡単じゃないからね。


■そもそも最初に生き残るためには
ところで、どんなにGoogle先生が素晴らしいとしても、それを生かせるのは、地震や津波をとりあえず生き延びた人だけだ。まずは、最初に死なないことこそが重要であり、この点でインターネットは役立つのか。やはり、リアルタイムなアナウンスという意味では、緊急地震速報やTVがベストなのだろうか。

実は、東日本大震災の際、最も迅速に適切な避難誘導をアナウンスしていたのは、既存のTVではなかった。weathernewsの24時間生放送の気象情報番組、SOLiVE24だ。


http://weathernews.jp/solive24/

ここでも見られるが、うちではソラマドという無料の専用ソフトをPCにインストールし、スマートフォンにはウェザーニュースタッチというアプリをインストールし、いつも見ている。地震があると、生放送でリアルタイムに適切な情報が確実に得られるので、直ぐに見る癖がついてしまった。

以下は、東日本大震災当時の、地震発生直前からの放送の様子だが、見たことがない人は、騙されたと思ってじっくり動画を見ることをお勧めしたい。あの時、こんな的確な放送が存在したことは、もっと評価されるべきだ。


00:43 緊急地震速報 発令
03:00 揺れが強くなってくる
04:11 大津波警報
22:00 余震発生
30:11 大きな余震発生

津波が川を遡って奥地まで被害が出るとか、車で避難すると危険だから降りろとか、そんなことを既に予測してアナウンスしていることに感服する。また、震災直後から、視聴者からのウェザーリポートが届いているのも注目すべきだ。普段は、日本各地の天候に関する情報提供インフラなウェザーリポートが、震災情報インフラとしても機能するわけだ。


今、weathernewsは、「Join&Share(参加と共有)」をキーワードに、自助・共助、減災を目指している。防災ではない。減災だ。そのために、日常的に機能しているウェザーリポートという仕組みを生かそうとしている。
一部の自治体とは、既に減災プロジェクトをスタートさせている。
http://weathernews.com/ja/nc/press/2011/110801.html
http://weathernews.com/ja/nc/press/2011/110905.html

更に、TSUNAMIレーダーの配備もしている。(津波は、船舶に搭載されているようなレーダーに映るのだ)
http://weathernews.com/ja/nc/press/2012/120305_2.html
これで、津波が到達する15分前には分かるそうだ。

減災訓練も繰り返している。
http://weathernews.com/ja/nc/press/2012/120116_2.html

weathernewsの本気っぷりは、プロフェッショナルの責任感を感じる。
トップダウンの気象庁の情報と異なり、Join&Shareなのがweathernewsだ。インターネットに親和的なのは、後者であることは明らかだ。

インターネットにつながってSOLiVE24さえ見られれば、逃げるチャンスを無駄にせずに済むかもしれないと、本気で思う。こんな会社が日本にあるというだけで、安心してしまう(ってそれじゃダメだけどw)。

いずれ必ずやってくる次の震災は、前よりもマシな対応、したいよね!


個人的に唯一の弊害は、普段のSOLiVE24の放送が面白すぎて、流星群とか今まで余り興味の無かった天体ショーが楽しみになって、夜中外に出たくなってしまう点だろうか?(自爆)

写真素材のピクスタ

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