2011年12月アーカイブ

Foresightのフォーラムに、「東京電力の料金値上げについて、皆さんはどう思われますか?」というテーマが上がった。
http://www.fsight.jp/forum/11069
コメントしたことを、色々手直しして以下に書いておく。
>注意:1月26日に東京都の動きがあったので、本文下の追記参照のこと。
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東電は、電気料金値上げを企業の権利と言ったそうだが、権利を主張するなら、その前に義務を果たすべきだろう。無責任なままの現状で、よくも権利を主張できるものだと驚く。

そもそも、値上げに直ぐさま反対表明すべきは、都民の生活を守るべき東京都。
しかし、東電の大株主で、震災後の株価下落で大損失(震災前、軽く2100円以上だった株価は、現在その十分の一に下落。東京都は42,676千株保有してるから...ギャー!!)を出している東京都にとって、電気料金値上げは株価上昇要因。
これは、都民(というより一都七県の利用者)と東京都の利益が相反している。

震災後、大株主なのに東電の経営者責任を問う発言を控えてきた東京都は、最近になって発送電分離を大阪と共に株主提案すると話題になったが、その目的が大阪とは違う。

東京都が発送電分離を求めるのは、まずは猪瀬副都知事が作りたがっている天然ガス火力発電所のためであり、これは同時に、東電が値上げすればするほど、天然ガス火力発電所建設の必要性を主張し易くなるという関係にある。(そもそも、地震・津波が来たら一発でアウトな臨海部に、天然ガス火力発電所を建設することに躊躇しない理由が不明だが、とりあえずここでは置いておく。)

橋下氏が、発送電分離で電力業界への新規参入を促し、最終的には原発依存度を下げる「脱原発」を目指しており、関西電力と対決しようとしているのとは、東京都のスタンスは全く異なる。

その点を質問されると、猪瀬氏は
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE7BJ00D20111220?sp=true
「脱原発は言う、言わないの問題ではなく、どうやって(福島原発などを)廃炉にしていくかという国民的な課題だ」逃げてしまう。東京都は、脱原発と言って東電の不利益に世論を導くつもりが、全くないということだろう。いつも都知事など、東京は日本のダイナモとか言っているのに、こういう場合だけ「国民的な課題」と主導権を放棄するのは、都合が良すぎる。いつもの論調なら、「国民的な課題」だからこそ、東京都がリーダーシップ発揮すべきなのでは?

まあ、元々都知事が原発推進なのだから、ここで消極的なのは当然ではある。副都知事も、震災直後、危機感がない政府の代わりに大株主の東京都が東電を主導しないのかと問われ、「地域の共同性を再構築する機会」だからと、「いま考えるべきことではない」答えていたくらい消極的だ。(魚拓
加えて、脱原発でこれ以上株価が下落しては、大株主の東京都にとって耐え難いということかもしれない。

本来は、合わせて東京都が大株主として将来の脱原発を主張し、いずれは柏崎刈羽原発の定期点検後の再稼動等にも反対する世論を形成すれば、電力供給が更に確実に減少するので、天然ガス火力発電所に民間の参入を呼び込むにはもってこいだ。しかし、脱原発は言わないのに、「間違いなく収益を上げる」と猪瀬氏に勧誘されたところで、マルチではあるまいし、将来供給不足になるかすら不確実な現状で、新規の天然ガス火力発電所に出資・参入したい民間企業が見つかるのか疑わしい。そんな中、出資者の説得材料として、東電の電気料金の値上げはウェルカムくらいの話ではないだろうか。(本当は、東京都の東電株の損失分があれば、天然ガス火力発電所を自前で建設できたんじゃないかというのは、公然の秘密だ(苦笑))

更に東京都は、東電所有の老朽化した火力発電所のリプレースにも関与しようとしていることを考慮すれば、東電と東京都は、対立を装いつつ、その実は極めて親密な関係にあるのではないか?


いずれにしても、東電の責任追及に無関心な東京都が大株主であることが、東電の無責任を助長している気がしてならない。電気料金値上げ問題も、そういった一連の状況を踏まえた解釈が必要に思える。

>追記:1月27日
Foresightに書いて伝わったのかどうかは知らないが(笑)、正にここで指摘した問題について、1月26日、「電気料金の値上げに対する緊急要望」という形で、やっと東京都に動きがあった。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/01/20m1q500.htm
東京電力に対するものは、以下。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/01/20m1q503.htm


  1. 「総合特別事業計画」策定の前提となる当面の収支見込、電力需給の状況、電源構成、燃料費等負担増の内容、経営合理化の具体的内容、及び中長期的なこれらの方向性などについて、明確な情報の開示を求める。

  2. 健全な競争原理が働くよう、託送料やインバランス料金の見直し等、電気事業への民間事業者の参入促進を求める。

  3. 一律定額の上乗せは、エネルギーの効率利用を阻害するおそれがあることなどから、多様かつ柔軟な電気料金メニューの設定を求める。

  4. 中小企業等に対して、特段の配慮を求める。

この内容は、一言で言うなら、「義務を果たして値上げしろ」というものだろう。震災後の対応の流れからすれば、東京電力の責任に言及した、非常に大きな一歩だと思う。
「都は、大口の電力需要家であるとともに、東京の都市経営に責任を持つ行政主体として、また、東京電力の主要な株主として、今後も要望の実現に向けてあらゆる機会を捉えて行動していくことを付記しておく。」とのことなので、是非とも行動で示してもらえるよう期待したい。特に株主総会などで東京都が大株主としてどう行動するか、注視したい。
都民は、東京都が口だけに終わらないよう、あらゆる機会を使って要望を上げる努力も必要だろう。

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